滅びの世界に一人残るザマス。
全てが終わったかのように見えた矢先、まだ終わらぬと残された戦士が動き出した。
ーー さらばだ。我が、掛け替え無い友垣よ。
「ち、くしょぉおおおっ!!」
「ーークソッタレェエッ!!」
孫悟空、ベジータは穏やかな笑顔をした神に向かって、声を必死に上げた。
光が自分たちの視界を全て奪い尽くし、身体が何処かに引っ張られていく。
光が晴れ、視界が元に戻って行くと、悟空とベジータの目の前には、見たこともない白い石壁の建造物と広い草原、石畳の道、美しい湖。
鳥籠を思わせる金属製の柵の向こうには、緑色の空と丸い星々が浮かんでいる。
「? ベジータ。ここ、どこだ?」
「…俺に聞くな」
困惑する二人は周囲を見渡すと、見知った集団が彼らを迎えた。
「父ちゃん! 悟飯、ターニッブ!!」
「トランクス、ブルマ!!」
バーダックと悟飯に、ターニッブ達ーー惑星サイヤ出身のサイヤ人三人に、未来時空のブルマとトランクス、マイ。
「よく戦い抜きやがったなぁ、カカロット!」
「父さん、無事で良かった!」
「ベジータ! 来てくれたのね!!」
「凄い戦いでしたね、父さん」
そしてーー彼らから離れてターレス、ザンギャ、未来のヤジロベー。
悟空の仲間達が揃っている。
「ヤッホー! よく来てくれたわね、悟空君にベジータ君!」
「お疲れ様でしたね、悟空さん。ベジータさん」
「…まったく、余計な心配させやがって。勝ったんだから、さっさとドラゴンボールに任せてこちらに来れば良かったんだ」
彼らとは別方向からの声に振り向けば巨大な石のアーチを描いた門から幼い少女、背の高い中性的な男性、猫の顔をした人間が歩いてきた。
時の界王神、第7宇宙の天使ウイス、破壊神ビルスである。悟空が彼らの名を呼んだ。
「時の界王神様に、ウイスさん、ビルス様!」
「…ということは、ここは」
ベジータに時の界王神が答えた。
「そ、貴方達の目の前にある建物が、あらゆる世界の時(ゼノバース)を管理する刻蔵庫。そして、この場所が時の巣よ!」
ウイスが上品に手で口許を隠して笑い、ビルスが悟空やベジータ、周りの仲間達を見て頷く。
「此処に来るのは、私やビルス様も久し振りですね〜」
「人間の身で、此処まで来れるあたり。やはり君達は特別な存在なのかもしれないな」
トランクスが遠慮がちに声を上げた。
「あ、あのーー時の界王神様。俺たちの他にも居た地球人達は?」
「ん? ああ、彼らは本当に単なる一般人だから。地球と一緒に私の作り上げた新しい時空に移動させてもらったわよ」
時の界王神が応える横でウイスが、杖の先についてある水晶球を掲げて映像を映し出した。
ーーーー
青い空と大地が広がり、破壊されていた建築物が元の整地された都へと変わっている。
「…お兄ちゃん、トランクスやブルマさんは?」
「わ、分かんない。ゼノ兄ちゃんも、ブラックもいない」
地球人達は、茫然としながらも空の明るさと整地された都に、自分達が夢を見ているのかと互いに顔を見合わせる。
ハルとマキの兄妹は、自分達と親しくしていた大人が居なくなったことに不安そうにしているも、レジスタンスのメンバーに見知った人達が居て安堵する。
「俺たち、生き延びられたのか?」
「でも、トランクスさん達は?」
彼らは互い互いにトランクスやブルマ、マイの存在を、ブラックやベビーから守り抜いてくれた戦士達を探し始めるも、何処にもいないと知る。
「これから、どうすりゃいいんだろうな?」
生き延びられた事への喜びもあるが、それ以上に30人にも満たない老若男女の集団を見つめて、レジスタンスの男は呟いた。
ーーーー
生きていれば、何とか希望は繋がるとトランクスは祈らざるを得なかった。
彼らの苦しみや悲しみ、これからの苦労は並大抵ではないのだ。
「ありがとうございます、時の界王神様。みんなを助けてくれて」
頭を下げ、丁寧に礼を述べるトランクスに時の界王神は告げた。
「いいのよ! これから、貴方達には頑張って貰わないといけないんだからね!」
屈託無く笑う時の界王神に、ベジータが訝しげに問う。
「どういうことだ?」
「……父さん。俺とマイ、母さんは、時の界王神様の都で住むことになりました。歴史改変の罪を償うために」
「! なんだと!?」
怒りに眉を釣り上がらせ、ベジータは少女の姿をした界王神を睨みつける。
「お互いに、ウインウインだと思うのよねー。トランクス達には歴史改変をした償いとして私のところで刻蔵庫の管理をしてもらいつつ、時を乱す悪人を退治するタイムパトローラーにもなってもらうの。代わりに、私は歴史の流れから外れた彼らに住む場所や研究施設、食事も提供させていただくわ。もちろん、トランクス達の地球を復興させるのも手伝わせるわよ」
「…勝手なことを! これ以上、俺の妻と息子を利用するのは許さんからな!!!」
ベジータが牙を剥き出しにして吠えつけるも、ブルマが彼の前に微笑みながら立った。
「ベジータ、ありがとう。でもね、これは時の界王神様からの厚意なのよ。荒廃した世界の復興を手伝ってくれる上に、私達に約束をしてくれたの。これ以上私やマイみたいな人間を出さないって、ね」
「し、しかし、ブルマ!」
「大丈夫よ。私やトランクスは、そんなにヤワじゃない。あなたの妻を信用できない?」
「…う、ぐっ」
そう言われたら、何も返せないのが人間として絆されたベジータの悲しいところか。
ブルマは本当に嬉しげにベジータに告げる。
「私ね、あなたに会えて良かった。あなたが、そんなにも優しい人になってくれてるなんて。本当にーー!」
口元には笑みが浮かんでいるのに、目には涙が出てくるブルマ。これにベジータが表情を真剣なものに変える。
「わ、私の世界のベジータも、生きていたら。生きて、いて、くれたら。あなたのようなーー!」
「ブルマ!!」
抱きしめていた。
強く強く、ベジータは涙にまみれクシャクシャに顔を歪めた妻を離さないように。
「ーー私、過去に行かなくて良かったわ。あなたの世界の私が、羨ましいって絶対に思うもの」
「……ブルマ」
「トランクスやマイが居てくれて、私にも大事な場所があったのに。過去の世界を見たら。あなたが、そばに居てくれたらって欲張ってしまう」
ブルマはベジータの腕の中、彼の背を抱きしめて笑っていた。
「…カカロット」
「? なんだ、ベジータ?」
自分にとって親友であり相棒である男に告げる。
「……俺は、どうすればいい?」
「みんなで一緒に暮らすってのは、ダメなんか?」
「……多分な」
ベジータにとって、ブルマは大切な妻だ。
どちらのブルマも変わらずに愛せるだろう。
だけど、それは現代に生きるブルマに相当な苦労を背負わせる。
「……だから、私はここで暮らすのよ。ここなら、あなたの事も見せてもらえるから」
「……すまない、ブルマ」
「やめてよ。私もそっちの私やトランクスに悪いし。何より、こっちのベジータにも悪いしね」
冗談っぽく明るく告げるブルマの声に、ベジータが思わず彼女の顔を覗くと。
ブルマは明るい笑顔で、イタズラに成功した子どものようにベジータに告げる。
「私の分まで、そっちの私を大切にしてあげて。ベジータ」
「……言われんでも、分かっている」
違う時空でも互いに想い合う心までは変わらない。
そんな様を見て時の界王神はニコリと笑う。
「そんなに強い絆や想いがあるから、あなた達が必要なのよね。この時の巣に」
トランクスが両親の姿を見て頷いた後、時の界王神に顔を向ける。
「……よろしくお願いします!」
とりあえず話が落ちついてきたのを見て、悟空が真剣な表情に変わると時の界王神に声を上げる。
「なあ? ゼノや界王神様達は、どうしたんだ?」
そう、もう一人の孫悟空。
未来時空の悟空と現代のザマスの魂が融合した孫悟空・ゼノがいないのだ。
「界王神なら、こちらに来ているぞ。ホレ」
ビルスが応えて自分の後ろを指差すと、項垂れた界王神シンと彼の背をさするキビトがいた。
「お? なんだよ、界王神様。心配したじゃねえか」
「……ありがとうございます。ですが、ゴワス様がザマスの最期を見届けると」
「ーーなんだって?」
その言葉に悟空、バーダック、悟飯が表情を変える。
「そういや、言い忘れてたな」
これに更にターレスが声を上げた。
「ゼノの野郎は、ブラックについて行ったぜ。ザマス同士でカタをつけるって言ってな」
「テメエ、なんで今頃、そんな話をしやがる?」
「悪いが、興味がないもんで」
睨みつけるバーダックに肩をすくめて、ターレスは悪びれもせずに応える。
ビルスが溜め息をついてからウイスを向いた。
「どうする? 流石に第10宇宙の話だからって放っとくとラムーシの奴、死んじゃうんじゃない?」
「……確かに。さて、どうしたものでしょうね」
ウイスが困ったものだと言わぬばかりに眉を寄せる。
「…カカロット。フュージョンするぞ」
「だな。ポタラが壊されんなら、フュージョンで」
ブルマから離れ、こちらに提案してくるベジータに悟空も頷いて返す。
二人はフュージョンしようと互いに距離を取るも、ビルスが間に入って止めた。
「やめときなよ。お前達を生かすために送ったザマスの意思を酌んでやりな」
「だけどよ!!」
「悟空、アイツは本当に世界を一度滅ぼした。ブラックもザマスも、神として許されない存在だ。破壊神に破壊されたとしても、ね」
ビルスの言葉に悟空は歯を食いしばり、悔しそうに唇を噛む。
「オラ達だって、何度も間違いを繰り返して来てんだ。何回も地球を守って来たんだ。そんでもよーーその度に」
「神と人間は同じではない。ザマスが言っていただろ? 神に過ちは許されない、と」
何かを言おうとする悟空を、ビルスは一方的に遮った。
「後はゼノに任せろ。いざとなったら、僕とウイスがゼノとゴワスを引っ張って来てやる」
「……ブラックとザマスは、ダメなんか」
「お人好しもいい加減にしろ。情けをかけるに値しない奴にまで、お前は情けをかける。いい機会だ。少しは勉強するんだね」
淡々と冷徹に告げるビルスの横でウイスが笑う。
「これ以上、あなた達に出張られたら神様の威厳なんかありませんよ。間違いは間違いといえる。ある意味、全王様に必要なーーザマスのような神は今まで、いませんでしたからねぇ」
「…やった事は許されん。ウイス、それを忘れるんじゃないよ」
鋭く告げた後、ビルスは苦い顔をする悟空と、離れたところからこちらを伺っているターニッブに顔を向けた。
「悟空。それにターニッブ。お前達、体力が余ってるなら時の界王神のタイムパトローラーを鍛えてあげなよ。この件はこれ以上、介入するな」
ビルスは一方的に告げるとウイスと共に去って行った。
ガーキンが肩をすくめる。
「なんか、納得いかねえな? スッキリしねえっつうか」
「…ターニッブ?」
プリカは何も語らないターニッブを気遣わしげに見上げてくる。
ターニッブは凛々しい表情で時の界王神に告げた。
「時の界王神様。ゼノやザマス達の様子を見る事は可能でしょうか?」
「刻蔵庫を使えば、簡単よ。歴史を一つ一つ巻き物にしてあるから、探して見つけられたら見てもいいわ。ただし」
ニコリと笑って時の界王神は悟空とターニッブに告げる。
「ウチの子たちと組み手をしてあげてから、ね?」
その言葉に、悟空とターニッブの周りから声が上がってきた。
「それなら、俺が父さんとターニッブの代わりにパトローラーの方々と組み手をしますよ」
悟飯の言葉に嬉しげにバーダックも続ける。
「わざわざ、鍛えろって言ってきたんだ。そこそこ使える連中なんだろうな? ガーキン、ターレス。テメエ等も体力が余ってるだろ? 付き合え」
そう言ってからさっさと準備する彼らに、ベジータも声を上げる。
「なら、俺もーー!」
「アンタは、嫁と子どもと一緒に居てやれ」
にべもなくバーダックに言われ、ベジータが押し黙る。
こうしてバーダックと悟飯、ガーキンとターレスの四人が、時の界王神と共に巨大な石の門へと向かっていった。
ヤジロベーとザンギャも彼らについてはいくが、彼らの目的は修行ではなく、トキトキ都と呼ばれるパトローラー達の為の街を見る為である。
「ターニッブ。すまねえな」
「いや、それより刻蔵庫へ急ごう」
「……だな! つってもよ、めちゃくちゃある巻き物の中から探すんなら、かなりの量を調べなきゃなんねえな」
頭をかきながらぼやくと、トランクスが声をかけてきた。
「俺たちも手伝います」
「ゼノくんや、ブラックとザマスの結末でしょ? 絶対見逃してやるもんですか」
「私たちも手分けして調べます!」
ブルマ、マイ、最後にベジータが悟空の隣に来て続く。
「やるぞ、カカロット!」
「よっしゃ! ターニッブ、オメエはーー」
ターニッブの方にはプリカが横に並んでいた。
「こっちは、俺とお嬢さんで探す。任せてくれ」
「見つけたら、声をあげますね」
互いに頷き合い、建物の入り口にある階段を上って中に入っていく。
半球体の建物の中は天井が吹き抜けになっていて、神秘的な明かりが巨大な図書館のような内部を照らしている。
「この中から、一つの巻き物を探し出すってわけ? めちゃくちゃ多いんだけど」
「凄い量の巻き物と棚、それにハシゴや階段まである」
ブルマに応えるようにマイも声を上げる。
戦闘民族サイヤ人も、この闘いには苦戦させられるに違いない。
ベジータは静かに、隣で巻き物を見上げている悟空を見て頷いていた。
巻き物は紙を広げると映像が浮かんで映し出すようになっており、様々な宇宙の出来事を見せてくれる。
「うへー、こりゃ凄えけど。まだ、こんなにあんのかよ」
時の界王神は予め、悟空達が関わったことで生まれた巻き物だけを巨大な机の上に置いてくれていた。
ただし、その数は相当な量があり、これだけの人間が手分けして見ても簡単には終わりそうにない。
「うるさいぞ。口より手を動かせ」
悟空が愚痴をこぼす横で、ベジータが黙って巻き物を広げていく。
ーーーー
一方、時の巣より門をくぐって外に出たバーダック達は、時の界王神の案内で武舞台へと案内されていた。
彼らの前には屈強なサイヤ人や魔人、フリーザ一族にナメック星人がズラリと並んでいる。
「こ、コレはーー!?」
よく見れば、サイヤ人達は純血ではなく地球人との混血ばかりだ。
だがそれを踏まえても、悟飯や悟天よりサイヤ人の血が濃いとバーダックは感じ取っていた。
「ブウやフリーザに似た連中が、こんなに居るだと?」
「……戦士タイプのナメック星人? ピッコロさんの話じゃ少ないはず」
「へえ? 惑星サイヤ以外のサイヤ人って、まだこんだけ居たんだなぁ」
ターレス、悟飯、ガーキンの三人の言葉を聞いて、時の界王神は自慢げに胸を張ると、バーダック達に告げた。
「どう? 鍛え甲斐があるでしょ?」
嬉しげに言う時の界王神に、バーダックが凄みのある笑みを浮かべて告げた。
「…どうかな? サイヤ人にフリーザ一族と来たら、見かけ倒しじゃ承知しねえぞ。テメエ等」
全身から白い気を噴き出してバーダックが構える。
悟飯、ガーキン、ターレスも同時に構えを取ると、タイムパトローラー達も一斉に構えた。
ーーーー
それから半日が過ぎ。
刻蔵庫で巻き物を探していた悟空達にその時が訪れる。
「! やった、あったぞ〜!!」
彼らの必死の思いもあってか、ついに目的の巻き物が悟空の手の中に見つかった。
皆が悟空の下へ駆けつけ、巻き物を開く。
其処に映し出されたのは無の世界。
光も闇も全てが混ざった混沌とした場所。
「…間違いない。俺たちがザマスと戦った、あの世界だ」
「よし! ゼノ達の様子を探るぞ!!」
ターニッブにベジータが頷き、巻き物の中の世界を探っていく。
そしてーー。
ーーーー
無の世界に在って滅び行く己を自覚しながら、ザマスは笑った。
まだ気配があると気付いたからだ。
「…驚いた。まだ、留まるものが居たか」
振り返れば、老いたシワと薄い緑の肌を持つ白髪の人物がいた。
「ゴワス様。何故、第7宇宙の界王神達と行かれなかったのですか?」
「その問いかけは、そのまま返そう。何ゆえ、孫悟空殿達の言葉を拒絶した?」
真剣な黒い瞳にザマスは笑った。
「告げたではありませんか。神が過ちを犯すことは許されない、と。だからこそ、私は自らを滅ぼすことで償うと」
「ザマスーー。誰にでも過ちを正す道は開けている」
「いいえ、ゴワス様。少なくとも私には、道は一つしかないのですよ」
笑って告げながらザマスは、ゴワスの背後に向かって目を向ける。
「……何をしに来た、ゼノ? そしてーー私よ」
赤い羽織に黒い道着を着た孫悟空と、黒い道着に灰色の上衣と赤い帯を締めた孫悟空がいた。
孫悟空・ゼノとゴクウブラックだった。
「何をしに来た、だと? 知れたことを。貴様を倒しに来たのだ。私よ」
ブラックが淡々と返しながら、黒い瞳に殺意を滾らせている。
「……ほう?」
ザマスは感心したように笑うと、ゼノの方を向いた。
「ゼノ、お前は?」
「…前に言っていたな? 私と話がしたい、と」
「……そうだったな。だが、それだけの為にこの世界に留まったというのではあるまいな?」
「それだけだ」
「……本気で言ってるのか?」
間髪入れずに返された言葉に浮かんでいた笑みすら消え、ザマスはゼノを睨みつけた。
「だったら、貴様はブラックを超える大バカモノだ。さっさとゴワス様を連れ、疾くこの世界より去れ」
「……ヤダね」
ハッキリと拒絶する言葉にザマスが目を見開く。
「今のは孫悟空そのものの言葉だ。ザマス」
ニヤリと笑いながらゼノはザマスを見つめる。
ザマスは一つ、ため息を吐くと頭を横に振った。
「孫悟空よ、お前はどうして。そう聞き分けが悪いんだ」
本気で呆れたというザマスの表情にゼノが明るく笑う。
「お前を死なせねえ。ゴワス様のためもそうだが、私のためにもな」
「? お前のため?」
「ああ。お前と話がしたい。だけど、こんな世界じゃゆっくり話もできない。だろ?」
ゼノの話し方や雰囲気はザマスを強く感じるが、その発想や考え方、感性は孫悟空のモノ。
ザマスには無いものだ。
「…別次元の孫悟空の可能性を取り込んだからか。ヤケに強く孫悟空を感じる。気の質もザマスより孫悟空が強くなっているな」
「…そうか? 私はむしろ、ようやく馴染んで来た感じなんだがな。この肉体と魂ーー思考がな」
超サイヤ人4を手に入れたからか、感じられるゼノの気は過去から来た孫悟空に随分と近くなっている。
気の大きさも、温かさも。
「私であり私でないザマスよ」
ゼノを微かに眩しげに見ていたザマスに向かって、ブラックが声を上げた。
「…なんだ、私よ?」
「貴様と決着をつける前に、一つ提案があるのだが?」
「……ほう? 言ってみよ、私」
言うとブラックは、自分の胸ーー心臓の辺りを右手で触ると、何かを掴むように指を曲げて前方に取り出す。
すると、金色の光の玉がブラックの右手に掴まれていた。
「この気は、孫悟空ーーか?」
「…やはりか。ブラックが真になれたのは、そっちのオレ(孫悟空)が手を貸したからなんだな」
ザマスがキョトンとしゼノが納得したように頷く中、ブラックはザマスに告げた。
「コヤツを生き返らせろ、ザマス」
「なんだと?」
淡々と告げるブラックに、ゼノが目を見開く横でザマスが静かに口を開いた。
「…それは構わぬが、どういうつもりだ? 孫悟空の魂がなければ、お前は真に至れぬぞ?」
「孫悟空の力など要らぬ。私は神だ、神ならば人間如きが至れた以上の境地に立たねばならん」
ザマスは静かに瞳を細める。
「孫悟空の力を借りていては、いつまでもザマスは孫悟空を超えられぬ。そういう話か? 私よ」
「愚かな。既に私は、孫悟空には至れぬ境地に達している。しかし、このまま魂が混じれば人間の不純な思考が私の行動を邪魔するのだ。よって孫悟空の肉体さえ私が使えれば、後は用無し。美しき神の戦いの邪魔となる」
「…なるほど。では何故、蘇らせる必要があるのだ?」
「単純な話だ。時空を越えてまで私の肉体を求めて来たのだからな。その必死さに免じ、新しい肉体を与えてやろうと思っただけのことよ」
ザマスは静かに頷くと、続けた。
「良かろう、私よ。確かに決着をつけるべきは私自身であり、孫悟空は無関係と言えるからな」
それだけを告げるとザマスの銀色の瞳が輝く。
瞬間、ブラックの持つ魂が弾けて空気と混ざり、粒子となって肉体を象る。
黒髪黒目、左右非対称に跳ねた剛毛。
青い二の腕まである長さのフィットシャツをインナーに付け、左胸にカプセルコーポレーションの○字にCの入ったマークを付けた山吹色の道着を上に羽織り、腰の青い帯で結んでいる。
リストバンドも布タイプではなく、インナーと同じフィットしたものに変え、靴は青いマジックテープタイプのブーツを道着ズボンの上から履いている。
「……」
カプセルコーポレーション製の道着を着た孫悟空はキリッとした目付きでザマス、ブラック、ゼノを順に見つめていった。
「…なるほど。私と戦った孫悟空より更に未来の存在か」
魂の情報を基に肉体を復元させ、固体化する。
世界の意思ザマスにとっては朝飯前だった。
「ブラック……っ!」
復活した悟空は、一瞬でブラックの目の前に踏み込むと右拳を相手の左頬に叩きつけた。
ブラックは大きく後方に首を仰け反らせるも、ゆっくりと元の位置に体を戻す。
「…今ので、チチと悟天を殺したのをチャラにする気はねえぞ。後で、必ず叩きのめしてやる…!!」
「……フン。状況を弁えず、私に牙を剥いてくるなら先に殺してやるつもりだったが。少しは利口になったか」
互いに殺気丸出しで睨み合いした後、ザマスに両者は顔を向ける。
「やれやれ。それだけ、いがみ合いながらも私を倒す事には同意する、か?」
「大人しくアンタが、あっち(過去)のオラやゼノの言う事聞いて時の巣って所にゴワス様達と行くんなら、オラ達が此処で戦う理由はねえ」
孫悟空の言葉にザマスはニヤリと返す。
「断る。と言ったら?」
「ならーー力尽くでも引っ張ってやる!!」
気合いの咆哮と共に、孫悟空は蒼銀の緩やかな炎のようなオーラを纏う。
超サイヤ人ブルーである。
「……邪魔をするな、孫悟空。ザマスを倒すのは、同じザマスである私だ!!」
ブラックが気合いを入れて薄紅色の炎のようなオーラを纏い、超サイヤ人ロゼに変身する。
そして赤い羽織を翻し、孫悟空・ゼノが赤と金色の混じったオーラと共に、長い黒髪に剥き出しの赤い体毛が生えた上半身に変身した。
「早い者勝ちって所だな。ザマスーー覚悟してもらうぜ」
超サイヤ人4が冷徹にして野性味のある金色に黒い瞳孔が現れた瞳でザマスに笑いかけた。
こうして、三人の超サイヤ人孫悟空が、世界の意思と融合した合体ザマスの前に並び立ったのである。
「……まったく。いいだろう、孫悟空に私よ。お前たちを倒し、この世界から弾けば良いだけのことだ。ゴワス様を含めてーーな」
薄紅色のオーラを纏い、ザマスは三人の孫悟空に向かって構えた。
最後の戦いが、今はじまる。
次回も、明日の午前7時です。
よろしくお願いいたします。