ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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既に無い世界の果てで、戦士達は闘う。

何の為だろうか?

それは、ひとりの男を。

友を救うため……。

そんな中で、ひとりの神は己の真意を隠して戦いの場に臨んでいたのだった。


ブラックの真意

 時の狭間。

 

 全ての時空を繋ぐ無の空間。

 

 漆黒の闇には様々な世界を表す縦長の巨大な水晶が無数に浮かんでいる。

 

 水晶には触れることも壊すこともできず、ただ覗き込めば一つの次元世界を映し出している。

 

 その場所に、三人の人物が居た。

 

「? どうしたの、父さん?」

 

 うち、一人ーー丸眼鏡をかけた銀髪をポニーテールにした青年が男に問いかける。

 

 これに逞しい逆三角形の肉体に赤いフィットネススーツを着た青い肌、尖った耳の白髪の男が周囲を見渡しながら応える。

 

「…お前が連れていたサイヤ人はどうした?」

 

「えーー?」

 

 男の言葉に青年が思わず辺りを見渡すも、自分達三人以外に他にいない。

 

「あ、あれ? カンバーちゃん?」

 

 身の丈が3メートルを越える白い拘束服を付けた長い黒髪の偉丈夫は、何処にもいなかった。

 

「……フュー? あなた、自分の飼っている猿に首輪もつけられないの?」

 

 冷たくも美しい声で話しかけてきたのは、青い肌の艶やかな妙齢の美女。

 

「ご、ゴメンゴメン、母さん。だけどさ、今はお説教を聞いてる場合じゃないというか」

 

「…まったく。ミラ?」

 

 美女は眉根を寄せて頭を横に振ると、自分の容貌と色合いが良く似た筋肉質の男を見る。

 

「手伝ってやろう、トワ。フューが連れていたサイヤ人の戦闘力も気になるが、何より。この歴史には面白いヤツが多い」

 

「ちょっと! 最近の貴方はフューに甘過ぎるわよ! 私にだって、そこまで優しくしてくれたことないのに!!」

 

 怒る美女ーートワに向かってミラは口許を緩める。

 

 冷たい容貌のミラが微笑むと、それだけでトワは頰を赤らめて何も言えなくなる。

 

「今回だけだーー。いいな、フュー?」

 

 その隙に、ミラはフューを見て告げた。

 

「わぁい! ありがとう、父さん!!」

 

 明るく告げるフューに、トワが表情を歪めた。

 

「ミラ? ホントにいいの? 甘やかすと教育によくないわ」

 

「…叱ったり、突き放すだけが教育でもないだろ。俺たちは遅くなるかもしれん。義兄上にはお前から告げておいてくれ」

 

「……仕方ないわね。ちょっと、フュー! お兄様やあのお方を待たせるわけにはいかないから、ミラに免じて見逃してあげるけれど。二度はないわよ!!」

 

 厳しく告げるトワにフューがにこやかに笑みを返す。

 

「ハイハーイ! あのお方への面会と報告は、母さんに任せたよー! じゃ、父さん! 僕たちは行こっか!」

 

「…フュー。貴方ね」

 

 眦を吊り上げるトワに対してミラが首を横に振る。

 

「俺から言っておく」

 

「……お願いね?」

 

「ああ」

 

 淡々とした表情で応えるミラに、トワの眼がキラリと光って続けた。

 

「それと、ミラ? 生意気にも貴方の創造主でもある私に向かって命令したのだから。今度、埋め合わせにデートしてもらうわよ。覚悟しておいて?」

 

「………………分かった」

 

 無表情を装うミラだが、頰には一筋の汗が流れている。

 

 これにフューが笑った。

 

「あ、母さんたら。僕に父さんを取られて妬いてるの? コレは、弟か妹が出来るのかな? だったら、妹がいいなぁ! 僕」

 

「うるさいわね! 子どもには、関係ない話よ!!」

 

 青い頰を真っ赤に染めてトワの美声が、時の狭間に響き渡る。

 

「あっちゃー、図星かー」

 

 舌を出してウインクをしながら、フューはミラにだけ聞こえるように言ってきた。

 

「……コレが世の父親が味わう板挟み、というヤツか」

 

 思えば自分もフューのおかげで随分と感情豊かになったもんだ、と溜め息を吐きながらミラは苦笑した。

 

 自分の夫と息子に当たる存在から離れ、トワは一人思案する。

 

(フュー。私とミラの遺伝子を兼ねて作り上げた私達の息子だけれど。あのミラがあそこまで変わるなんて、ねぇ。この私を裏切って吸収することもあった、あのミラが)

 

 自分を大切にしてくれるようになった反面、フューには無条件で甘い。

 

 トワとしては複雑な心境であった。

 

ーーーーーー

 

 光と闇が混濁する始まりと終わりの世界。

 

 三人の異なる超サイヤ人孫悟空に対して、合体ザマスはニヤリと笑う。

 

「超サイヤ人ーー。魂が私(ザマス)とまったく同じブラックはともかく。ゼノと孫悟空は同じ存在でもあるはず。それなのに、こうも変わるか」

 

「…フ。超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4。どちらの孫悟空が強いのか、これでハッキリするかもしれないなぁ」

 

 超サイヤ人ロゼーーゴクウブラックが笑いながら呟く。

 

 これに超サイヤ人4ーー孫悟空・ゼノが不敵に告げた。

 

「オレの方が強いぜ」

 

「オラの方が強え!」

 

 間髪入れずに超サイヤ人ゴッドの超サイヤ人ーー超サイヤ人ブルーの孫悟空が反応する。

 

 二人の孫悟空は互いに見合うと、主張を始めた。

 

「ーーオレだ」

 

「オラだっ!」

 

「…オレだ! オレだ! オレだっ!!!」

 

「オラだ! オラだ! オラだ! オラだぁああっ!!」

 

 叫び合う二人の悟空に、ブラックが叫ぶ。

 

「ええい、やかましいっ!! 孫悟空はともかく、ゼノ! 神たる身でありながら、なんと次元の低い張り合いをしているのだ!!」

 

 そんな三人の孫悟空に向かってザマスは呆れた表情になった後、真剣なモノに変えると淡々とした声で超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4に問いかけた。

 

「…孫悟空にゼノ。お前達は状況を理解しているのか? この場に残り続けるということが、いかに自分たちにとって危険なことなのかを」

 

 その言葉に孫悟空ゼノが笑みを返す。

 

「一々、念を押されなくても分かってるさ。オレの魂の半分はお前だぞ、ザマス?」

 

「……お前は、神としての知識を持つ孫悟空ーーというイメージが強くてな。孫悟空ならば得た知識を闘いには利用するだろうが、状況の深刻さを理解した上でーー」

 

 語りを続けようとしたザマスだが、不意に手で頭を抱えて首を横に振る。

 

「…貴様、分かった上で孫悟空として振る舞うつもりか? ザマスーー神としてではなく」

 

「そんなに呆れた顔をするなよ。それに、ゆっくり話してる暇もない。だろ?」

 

 訳知りげなゼノの言葉にザマスは気を取り直すように息を一つ吐くと、告げた。

 

「……忠告だ。ゴワス様の肉体と魂が、この無の空間に耐えられるのは三十分程度。それ以内に決着をつけることができねば、お前や孫悟空は無事でもゴワス様は消える。分かるな?」

 

 ゼノはザマスの後ろから離れたところで、こちらを窺うゴワスを見る。

 

 その口元は引き締まり、彼が決めた覚悟の頑固さを現すように眉が狭められている。

 

「…大人しく時の巣へ避難してくれーーとは聞いてもらえませんか? ゴワス様」

 

「すまんな、ザマスーーいや、ゼノ。私も見たいのだ。全王様に歯向かってでも道を語るブラックを含めた別の世界のお前たちの結末を」

 

 しばらく見合い、揺るがぬ意思を確認するとゼノはゴワスから目をそらし、呟く。

 

「……三十分、か」

 

 真剣な表情に変わり、ザマスを睨みつけるゼノ。

 

 その隣に孫悟空が並び立って告げた。

 

「焦んなよ、そっちのオラ。向こうのオラやベジータが言ってたろ? まだーー」

 

「まだ、何も分かっていない、だから足掻く、か。そうだな、そのとおりだ」

 

 ゼノの返しに悟空も口元に笑みを浮かべる。

 

 不敵な表情に変わるとオーラを纏いザマスに構える二人の孫悟空。

 

 コレにザマスも頷いた。

 

「ーーやはり、ゼノは私であって私ではない、か。羨ましい限りだな。お前ならば全王の過ちをただした上で、人間と神の関係を見届けて行けるだろう。真に正しい正義の神として、な」

 

 薄紅色のオーラを身に纏い、ザマスは己のフルパワーを引き出す。

 

 コレに超サイヤ人ブルーの悟空が目を見開いた。

 

「と、とんでもねえ気だ。こりゃ、ビルス様やジレンとも違う強さだぞ!!」

 

「……ジレン? 今のザマスの力に比べれるんなら未来のオレは、またとんでもねえヤツに会うみてえだな」

 

 嬉しげに笑うゼノ、真剣な表情で構える悟空。

 

 そしてーー。

 

「下らん茶番は終わりだ。世界の意思の力でさっさと私以外の存在を飛ばせ、ザマス」

 

 淡々と冷酷に告げるのは、超サイヤ人ロゼのゴクウブラックとなったザマスだ。

 

「孫悟空とゴワス、ゼノを飛ばせば後はザマスとザマスの決着だ。なんの邪魔も遠慮もない。違うか、私よ」

 

「貴様一人で、私に勝てると思うのか? 私よ」

 

 その問いかけは、確認だろう。

 

 そもそも、超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4、超サイヤ人ロゼの三人がかりでも勝てるとは言えないレベルの気をザマスは放っている。

 

 可能性を取り込む真似もせず、究極のサイヤ人であった肉体も元の神をベースにした体に戻すほどに消耗しているザマスだが、それでも不死身なのである。

 

 先程の悟空達との戦いで負った傷も、失われたはずの体力も完全に回復している。

 

「勝てるかどうか、ではない。勝たねばならんのだ。神であるならばな」

 

「…神である事に拘るが故に、貴様は神に似た姿の人間という種を嫌悪した。それは孫悟空という人間を魂(こころ)から知った今でも変わらぬか?」

 

 人の身でありながら、神々よりも純粋で欲がなく、優しいサイヤ人。

 

 おそらく今後、孫悟空以外の何者にも彼のような魂は持てない。

 

 そうーー神や人間と言った枠を超えた魂。

 

 それが、孫悟空なのだ。

 

「フンーー。孫悟空の心を知ったが故に、私は人間を決して認めぬ」

 

 薄紅色のオーラを纏い、ブラックは拳を握って超サイヤ人ブルーの悟空を見つめる。

 

「神を超える人間など、私は絶対に認めん!!」

 

「…そうしなければ、神である自分の存在意義すら無くなるから、か。下らんな」

 

「な、何だと!?」

 

 ザマスの言葉にブラックは目を見開く。

 

「まだ、認められんのか。己の過ちを。弱さを認めることが未だに出来ぬのか、ザマス」

 

「…滅びを受け入れただけの愚神が。吠えるな、ザマス」

 

「愚神、か。たしかに私は愚かだ。だが、貴様のように自分の行いから目を背ける真似だけは、せん。それは己が歩んだ道を否定することになるからだ」

 

 拳を握るザマスにブラックが表情を歪める。

 

 二人のやり取りを見ていた悟空が静かに呟いた。

 

「ブラック。オメエ、もう帰ぇれ」

 

「!? なんだと、孫悟空!?」

 

 目を剥いて怒りを露わにするブラックに、悟空は淡々と告げる。

 

「戦っても無駄だ。今のオメエじゃ、あっちのザマス様にゃ、どう逆立ちしたって勝てっこねえ」

 

 言い切る悟空にブラックが怒りの表情に変わるも、口を開いて何かを言う前にゼノが割り込んだ。

 

「オレも同感だ。自分のした事に怯え始め、認める事から逃げようとしてる今のお前じゃ。あっちのオレには、どうやっても勝てない」

 

 二人の孫悟空からの言葉と二人の異なるザマスからの言葉に、ブラックは全身を震わせ始めた。

 

「だ、黙れ…っ! 黙れ、黙れ!! 私こそが神! 神たる私にーー過ちなどないのだ!!!」

 

 ゴワスが哀しげにザマス達を見つめ、ブラックに視線を固定する。

 

 彼の代わりに口を開いたのは、孫悟空だった。

 

「……嘘だ。オメエは過ちを心の中で認めてる」

 

「貴様ら! ーー全員黙れ!!!」

 

「真・超サイヤ人になった時、オラはオメエの心ん中も見たかんな。オメエがどんな思いで人間を滅ぼそうとしたんかも、今なら分かるぜ」

 

「うるさいと言ってる!! ザマス、さっさと孫悟空達をこの場から消せ。それとも一対一では私が怖いか!?」

 

 苛ついて叫び始めるブラックに、悟空は淡々と告げる。

 

「オメエ、もう分かってんだろ。分かってねえ頃のオメエなら、オラの言葉なんかに腹が立ったりしなかったろ?」

 

 これにゼノも黙って首肯する。更にはザマスまで口を開いてきた。

 

「…むしろ、バカにして嘲笑っていただろうな」

 

 半分はザマスであるゼノの首肯とザマス自身の言葉に、ブラックは手刀を構えた。

 

「もう良い。やはり、この私を理解するのは私自身しかいないのだ」

 

 時間の無駄だと言いたげなブラックにザマスも頷いた。

 

「無駄話は、ここまでにしよう」

 

 ザマスは再び両腕をクロスさせると、薄紅色のオーラが二人の合体ザマスを生み出す。

 

 先程のベジット達に見せた、本物と何ら変わらぬ分身であった。

 

「…三対三だ。さっさと叩き潰してやろう」

 

 分身を生み出した本体のザマスが、人差し指でブラックを示すと、他の分身は悟空とゼノに相対する。

 

「コンビネーションは取らせんぞ」

 

「大人しく我が力にひれ伏すがいい」

 

 分身ザマス達の言葉にゼノがニヤリと笑う。

 

「コイツはいい。やはり闘いは、一対一じゃないとな」

 

「ああ、フェアじゃねえからな」

 

 孫悟空も頷きながら、構えを取る。

 

 ブラックが全身に薄紅色の炎のようなオーラを纏い、ザマスの目の前に現れる。

 

 ザマスは笑みを浮かべたまま、背中に光輪を背負い片手を顔の前に出す。

 

 強烈な右ストレートを片手で掴み止めるザマス。

 

 衝撃はザマスの身体の遥か後方にまで届くというのに、ザマス自身は蚊に刺された程度にも感じていないようだ。

 

「…どうした、ブラック? コレが貴様の全力か?」

 

 全力の一撃を簡単に止められた事に目を見開くブラックを尻目に、ザマスは淡々と続ける。

 

「貴様が見下していた孫悟空やベジータは、合体していたとはいえ黒髪の状態で私と互角だったのだがな?」

 

「私ーーいや。俺を舐めるなよ、ザマス!!」

 

 灰色の瞳が薄紅色に変わり、気を高めるブラック。

 

 掴まれた拳から目に見えぬ衝撃波が、三度放たれてザマスの後方の空間を撃ち抜く。

 

 だが、ザマスは表情を全く変えずに呟いた。

 

「所詮、この程度か。ブラックよ、最強のサイヤ人孫悟空の肉体を手に入れた事で満足している貴様では、本物の孫悟空や奴と融合したゼノには及ばぬ」

 

「何だと!?」

 

 白銀の光がザマスの掌から放たれ、拳を掴み止められていたブラックは右ストレートを放った体勢のまま弾き飛ばされる。

 

「…クッ! おのれ!!」

 

 構えを取るブラックにザマスは突き放した手を出して待て、と静止すると、悟空とゼノの方を目で示す。

 

「…な、に?」

 

 そちらに目を向けたブラックは、灰色の瞳を驚愕に見開いていた。

 

 超サイヤ人ブルーの悟空は、分身ザマスを前に左右に身体を高速移動で振りながら突っ込む。

 

(左右に身体を振りながら的を絞らせずに、反動を付けて拳と蹴りを打ち込んで来るつもり、か)

 

 瞳を鋭く細めながらザマスも狙いを読む。

 

 踏み込んで来る勢いに対し、悟空の鼻先に左拳を置くようにして放つ。

 

 目の前にある拳を悟空は右腕で跳ね上げ、左拳をボディに突き出す。

 

 放たれた拳はザマスの右手に掴み止められ、至近距離で一瞬、睨み合って静止。

 

 そこから両者は足を止めて火の出るような打ち合いを始めた。

 

 拳や蹴りを打ち込みあい、打ち負けた方が一気に勢いに飲み込まれる打撃の応酬。

 

 右拳を互いの中央で打ち付け合い、止まる。

 

「素晴らしい戦闘力だが、我には届かぬぞ。孫悟空」

 

「…確かにな。ベジットと互角なだけはあるぜ。けんど、こっから先はアンタも知らねえんじゃねえか?」

 

「……ぬ?」

 

 訝しむも背に光輪を背負い、ザマスは掌から白銀の光を放って悟空を弾き飛ばそうとする。

 

 瞬間、悟空のアイスブルーの瞳がより濃い蒼に変わり、キラキラと光沢が生じる。

 

 同時に全身に纏っていた緩やかな炎のような青いオーラが孫悟空の体内に吸収されて無くなる。

 

「こ、コレは!?」

 

「超サイヤ人ブルーの先さ。過去から来たオラでもコイツには成れてなかったよな」

 

 本来ならば触れたものを弾き飛ばす白銀の光が無効化された事にザマスが目を見開くと同時に、悟空の右ストレートが左頰に直撃した。

 

 大きく後方へ仰け反るザマスに、怒涛のラッシューー超龍撃拳が放たれる。

 

「うおりゃあああっ!!」

 

 咆哮を上げ、あらゆる拳と蹴りをザマスに叩き込みながら、悟空は冷静な頭で判断する。

 

 自分の打撃が、痛みを感じずに回復してしまう不死身のザマスには効果を期待できない。

 

 自分に出来るのは、連打でザマスの動きを封じる事と、極限まで高めた一撃で一気に倒す事。

 

 ブラックと対峙するザマスが、淡々と告げる。

 

「……超サイヤ人ブルーを更に進化させたか。流石に素晴らしい戦闘力だが。アレでは私は倒せない。それは孫悟空も分かっているだろう」

 

 どれだけ打撃を叩きつけても、ダメージを感じない上に回復するのだ。

 

 まともな手段では勝てない。

 

 戦闘力を圧倒的に上回るならともかく、今の悟空はザマスと互角に渡り合うのが精一杯だ。それでもーー。

 

(俺のロゼを上回っている、だと? コレが孫悟空の本当の実力か!?)

 

 それでも、ブラックを優に凌駕した戦闘力を悟空は叩き出している。

 

「…分かるか、私よ? 孫悟空の肉体を手に入れただけで満足していては。お前は一生、孫悟空には勝てないのだ」

 

 今の悟空の力や肉体は、ブラックとなったザマスの肉体そのもの。

 

 神の魂を持つ超サイヤ人ロゼになった事でブラックは満足していたが、その先の境地に本来の悟空は届いていた。

 

 その事実にブラックは屈辱に顔を歪める。

 

「…肉体を得ただけでは、孫悟空には勝てない。だからドラゴンボールで交換したのだろう? 自分の身体を孫悟空と同じ肉体に作り変えるよう頼むのではなく、な」

 

「……何が、言いたい? もう一人の俺よ」

 

「簡単な事だ。お前はな、ブラック。はじめから孫悟空に勝てないと思っていたのだ。神であることを自称し、全てを凌駕する力を持つ肉体を得ても、孫悟空本人と対峙して勝てるとは、思わなかった。違うか?」

 

 告げるザマスの言葉は淡々としていて、感情の起伏を感じさせない。

 

 まるで事実だけを告げるように。

 

「だから、身体を入れ替えられて戸惑っていた孫悟空を殺したのだろ? 肉体を戻されぬため、第7宇宙の破壊神に知られぬため、計画を邪魔されぬため。様々な言い分はあるが。一番の理由は、孫悟空には勝てないからだ」

 

「俺が、孫悟空を恐れている、というのか?」

 

 ザマスは肩を竦めて告げる。

 

「恐れているーーではなく。そうだな、言うなれば嫉妬している、かな?」

 

「………っ!!」

 

「戦闘力、心、仲間。自分には無いものを全て持ち合わせる孫悟空に、お前は嫉妬している。しかも、勝てないと心の何処かで感じてしまった。だから、孫悟空そのものになる事で自分には無いものを得ようとしたのだ」

 

 だがーー、とザマスは続ける。

 

「そうなると、孫悟空を私の力で復活させた貴様の行動が説明出来なくなるわけだ」

 

 ニヤリと笑うザマスにブラックが吐き捨てた。

 

「くだらん。俺が心変わりをした、とでも言いたいのか」

 

「…違ったか? 少なくとも以前の貴様ならば、人間を庇う真似はしなかった。まして神々の最大の罪だとしていた孫悟空を復活させろ、とはな」

 

「………」

 

 黙り込むブラックを前にザマスは笑った。

 

「自分の心を認めてみよ、私。それが出来ない今のお前は我が敵に値しない」

 

 勝ち誇るかのように両腕を組んでザマスは告げた。

 

 一方、超サイヤ人4となったゼノと分身ザマスの方は、互角の戦いを繰り広げていた。

 

 強烈な打撃と野生的な反射神経と動き、更に冷静な神の視点という折り紙付きの戦闘力に、ザマスは舌打ちしていた。

 

「言いたくは無いが、流石だな。我が神の視点と孫悟空の力が組み合わされば、コレほどまでに高まるか!!」

 

「…反則だってんだろ? オレもそう思うけどよ、流石に手段を選んでらんねえからな」

 

 強烈な打撃を交換し、右ストレートを顔の前で構えた左手で互いに掴み止めてからザマスは語る。

 

「フン、私と話がしたいのだったな? 神の思考とサイヤパワー、そして人間の勇気が合わさった貴様の力に免じて闘いの中でなら応えてやろう、ゼノ」

 

 金色に黒の瞳孔が現れた瞳は揺らがず、ザマスから目を逸らさない。

 

「…ザマス、オレは罪滅ぼしに消えるお前の気持ちが分からんでもない」

 

「………ほう? 流石は私、と言っておこう」

 

「だがーーソレじゃ罪滅ぼしにはならねえな」

 

 淡々と言うゼノをザマスは静かに見据える。

 

「どうせ死ぬ気なら、お前が犯した罪を本当に滅ぼそうとは思わないのか?」

 

「…流石に、ソレは無理だ。出来るならとっくにやっている。全宇宙の神々と人間を蘇らせるには我が魂だけでは足りぬのだ。そもそも、ソレが出来るなら時の界王神やドラゴンボールになど、頼りはしない」

 

「お前一人なら、だろ? 二人なら?」

 

 その言葉にザマスは一瞬だけ目を見開くと、馬鹿馬鹿しいと首を横に振る。

 

「お前は界王神だろう? 簡単に命を捨てるような真似をするな」

 

「今、命を懸けないで、いつ懸けんだ!?」

 

 叫びながら拳を繰り出すゼノに、ザマスも叫びながら殴り返す。

 

「コレは、私の罪だ!! 別の世界の私とは言え、お前は無関係だ! ましてや、この世界の孫悟空でもあるお前を巻き込めるものか!!」

 

「…一星龍が言ってたよな? 世界を背負うに不足なのかってよ。同じザマスであるオレにも、そう言うか!?」

 

「貴様には、待ってる者が居るだろうが!! 友が、仲間が、師が!! そんな大切なモノを捨ててまで、こんな所で死ぬつもりか、この愚か者が!!」

 

「このまま犬死にするくらいなら、いっそ皆を救ってから消えやがれ! その為に命が足りないなら、オレの命をくれてやる!! そのぐらい、オレにも出来るだろ!!」

 

 凄まじい気を放ちながら殴り合う二人を他所に、悟空が自分の向かいのザマスを睨みつける。

 

「どいつもこいつも、ザマス様よ。アンタは死ぬ以外に道を探そうとしねえんかよ!?」

 

「生きるーーという選択肢はない。何度も言わせるな、孫悟空。しかし、ゼノめ。そんな事を考えていたか」

 

 やれやれ、と首を横に振るザマスに悟空が叫んだ。

 

「命が足りねえんなら、オラの命もやる。そんで、殺されちまった皆んなを助けられんのか!?」

 

「やめよ、孫悟空。私の罪に貴様は無関係だ」

 

「アンタに救われた命だ。皆んなを助けられんなら、オラも一緒に死んでやらぁ」

 

 ニヤリと笑う悟空に、分身ザマスは顔を歪める。

 

「……ゼノめ、余計なことをベラベラと!!」

 

 吐き捨てたのは、ブラック。

 

 コレに対峙するザマスが、目を見開くと共に笑った。

 

「貴様……、そう言うつもりか。だからザマス以外を飛ばせ、か」

 

「……フン。何を笑っている、ザマス。もはや、不死身のお前は用済み。俺は俺のやり方で正義を示すのみだ!」

 

「まあ、そう言うことにしてやろう。私よ、確かに私を倒して世界の意思の力を取り込めば、全てとは言わぬが罪滅ぼしになるかもしれんな」

 

 そう言いながら、ザマスは構えを取る。

 

「もっとも、お前には出来ないかもしれぬが、な」

 

「…フン。神たる俺に不可能などないーー。いや、孫悟空ならば限界はない!!」

 

 超サイヤ人ロゼのオーラを再び解放し、ゴクウブラックはザマスに向かって突っ込む。

 

 先までと違い、アッサリと懐に入り込んだブラックにザマスは目を見開くも、白銀の光を身に纏って触れた瞬間に吹き飛ばそうとする。

 

 だがロゼのオーラがザマスの放つ光を踏み躙り、背中の光輪が弾け飛んだ。

 

「なにぃ!?」

 

「孫悟空に出来たことを、俺が出来ぬ訳がない。俺の身体もまた、孫悟空なのだからなぁ!!」

 

 灰色だった瞳は薄紅色に変わり、キラキラと光沢を放っている。

 

 進化した超サイヤ人ブルーの姿を見ただけでブラックは、悟空と同じ境地に至ってみせたのだ。

 

 ブラックの拳を顔でまともに受け、ザマスは後方に弾け飛ぶ。

 

 其処にブラックは薄紅色の光球を両手をたわめて練り上げると前方に向かって突き出し、放つ。

 

「超ブラック・かめはめ波ぁあああっ!!!」

 

 野太い光線が目の前に迫るも、ザマスもまた姿勢を舞空術で制御すると、両手を大きく広げてから前方に手首を合わせて突き出す。

 

「激烈・神王砲ぉおおおおっ!!!」

 

 薄紅色の光と青白い光が互いの中央でぶつかり合い、押し合う。

 

 一瞬の拮抗を経て、一気にザマスの光がブラックの光を押し返していく。

 

「…お、おのれ!」

 

「勝てるはずがあるまい。我が姿と力は、貴様自身と私が合体したものだ」

 

 涼しげな表情のザマスにブラックが叫び返す。

 

「舐めるなよ、ザマス! 俺はーー!!」

 

 ブラックの気迫に薄紅の光が少し勢いつくも、ザマスの放つ光に押されていく。

 

ーー 俺は、お前みたいに弱くない!!

 

 声が頭に響く。

 

 自分の刃を前に怯えながらも退かずに叫び返してきた非力な少年。

 

 ジャネンバベビーに囚われた身の上でありながら、最後まで自分の命を犠牲に皆を守ろうとした少年。

 

「フンーー。愚かな人間の子よ。貴様如きに俺が負けるものか!!」

 

 この程度で音を上げるものか、あんな幼く非力な存在に出来て自分が逃げるなど神としてーー否、ザマス自身が許せない。

 

 ブラックの気迫にザマスは静かに銀の瞳を光らせる。

 

 すると、ブラックの背後に薄紅色のもやが現れ、ブラックを弱いと宣言した幼い少年ハルの姿を象る。

 

「愚かな人間(ヒト)の子? お前の背後にいる、あの少年のことかな?」

 

「……っ!?」

 

 ブラックが首を振り返ると、其処には当然だがハルの姿がある。

 

 変化は劇的だった。

 

「……ザマス、貴様」

 

「話をしている余裕があるのか? お前が負ければ背後の少年も消し飛ぶぞ? まあ、その前に無の空間が子どもを取り込むか」

 

 嘲笑うザマスにブラックの瞳が翡翠に変化し、黒の瞳孔が開く。

 

 同時に緩やかな炎のオーラが激しくなり、頭髪と共に黄金へと変わる。

 

「真・超サイヤ人ーーか。やはりブラック、お前は」

 

 ザマスの呟きをかき消すように、ブラックの咆哮が響き渡る。

 

「愚かな神が。俺の前で、その子どもを巻き込んだこと! 死して後悔せよっ!! ザマスゥウウッ!!!」

 

 薄紅の光が青白い光に変わり、ザマスの光を押し返すに飽き足らず、全てを照らし尽くした。

 

「こ、このとんでもねえパワー。コレが、真・超サイヤ人なんか……!?」

 

「……ブラック、か」

 

 無の世界は、ブラックの一撃で震えた。

 

 ブラックの放つかめはめ波の威力に悟空とゼノが目を見開く。

 

 デタラメに気を上げていくブラックを見つめ、ザマスは満足そうな笑みを浮かべてコッソリと気で作り上げたハルの人形を霧散させる。

 

「来るがいい。人間の肉体を得て神の務めを果たそうとするものーーゴクウブラックよ」

 

「思い上がった愚神ーーザマスよ。我が神の拳で貴様を討ち取ってくれよう」

 

 両手を広げて構えるザマスに、ブラックも顔の横に左手を上げ、右拳を腰に置いて腰を落とし構える。

 

 ザマス達の戦いが始まろうとした、その時だった。

 

「何っ!?」

 

「…ぬ?」

 

 対峙するブラックとザマスの二人に向かって、赤黒い気を固体化した巨大な手が爪を薙いできたのだ。

 

 片手で巨大な気の手を弾き飛ばす二人の戦士。

 

 彼らが見据える先には、赤に黒の瞳孔が浮かんだ瞳を持ち、足先まである長い黒髪の偉丈夫が無の空間で立っている。

 

 左頬に擦り傷があり、腕には金属の枷が付いている。

 

 濃紺色の道着のズボンに赤い帯を巻き、赤い袖が破れたシャツを着ている。

 

 その尻からはサイヤ人である事を示す尾が生えており、特筆すべきは口を覆う金属のマスクだろう。

 

 囚人がするようなモノを付けられた3メートルを越える身の丈の男は、ザマスとブラック、ゼノと悟空に向かって獣のように叫んだ。

 

「貴様らのようなヤツらが、まだ居たとはなぁ!! 俺の渇きを満たすため、俺と戦えぇええっ!!!」

 

 赤黒い邪悪な気を纏い、謎のサイヤ人はブラックに殴りかかる。

 

 その巨大かつ頑強な左拳は、真・超サイヤ人となったブラックの右手に掴み止められていた。

 

「……ほぉ?」

 

 口が裂けたような笑みを浮かべているだろうサイヤ人に対し、ブラックの翡翠に黒の瞳孔が浮かんだ瞳が細まる。

 

「何処から現れたか知らんが。今、この場で、俺とザマスの戦いを邪魔した事。後悔するがいい!!」

 

 薄紅色の雷が拳を掴んでいた掌から走り、巨漢のサイヤ人を後方に弾き飛ばす。

 

 コレに狂おしい笑みを浮かべてサイヤ人は拳を繰り出そうとするも、脇に現れたザマスの蹴りに吹き飛ばされる。

 

「ククク、やはり強いな! 面白い……っ!!」

 

 同時に分身ザマスの姿が消え、ザマスは現れたサイヤ人に告げる。

 

「古のサイヤ人か。貴様どうやって、この無の世界へと現れた?」

 

 ザマスから離れた位置で超サイヤ人4ゼノと超サイヤ人ブルー進化の悟空が、ゴワスを庇いながら謎のサイヤ人に向き直る。

 

「お前たちのような男を拳でブチ壊すことこそが、この俺の喜びよ!!」

 

 大猿を思わせる野獣のような咆哮を上げて、サイヤ人はブラック達に襲いかかった。

 




いやー、カンバーやフューは絡まない予定でしたが。

少し構想を変えてぶち込んでやりました(´ー`* ))))

次回は、明日の午前7時です。

お楽しみに(´ー`* ))))

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