世界を破滅に追いやった神を前に、挑むために。、
右ストレートをぶつけ合う超サイヤ人ロゼのブラックと超サイヤ人3のカンバー。
両者の一撃は強大で、二人の拳の接触を中心に世界に光の波紋と衝撃波が放たれる。
血を胸から垂れ流すカンバーを前に、ブラックは満身創痍の肉体でありながらも笑みを浮かべた。
「フン! 何を笑っている? この程度のかすり傷でぇえええっ!!」
赤黒いオーラを放って筋肉を膨張させて、気の力で流れる血を無理やり抑えるカンバーを見て、悟空と悟空ゼノを相手にするウイスが目を細める。
「ほう……。まるで自分で傷を治す獣ですね」
やや呆れたような声だが、瞳は鋭くカンバーを見る。
ゼノもウイスに打ち込むのを止め、カンバーの桁外れのパワーを見る。
「…なんて野郎だ。超サイヤ人4になったオレのフルパワーを超サイヤ人3で超えてやがる、だと?」
「とんでもねぇ奴が出て来やがったな。ウイスさん、悪いがオラ達は、アンタに構ってる場合じゃねぇ!」
超サイヤ人ブルーの悟空が20倍界王拳でパワーを引き上げながら告げると、ウイスも笑みを返す。
「私の防御と攻撃は頭で考えるのでなく、手足が考えて動くーー身勝手の極意。あなた方に破れますか? 二人の孫悟空さん」
コレに超サイヤ人4のゼノがニヤリと笑みを浮かべた。
「神の御業の究極ーー。天使の貴方が使う身勝手の極意を純粋なパワーで上回るには、更に上を目指すしかねぇ」
「オラ達二人の悟空が作り上げた力、見してやっぞ!!」
パワーの引き上げを止め、超サイヤ人ブルーの悟空がウイスに突っ込む。
コレに超サイヤ人4のゼノが心得たとばかり、同時に踏み込んでいく。
「ほう? 流石、悟空同士。まるで互いの思考を共有しているかのような動きだな」
ビルスはカンバーとブラックの闘いから目を移し、ウイスと闘う二人の孫悟空を見つめる。
「…だが、戦闘力がいくら高くてもウイスには勝てない。ウイスの強さは、戦闘力とは違う次元のものだ。身勝手の極意を完璧に使える奴を倒すには最低でも、お前達二人とも身勝手の極意を使えなければならない。ウイスの隙を突くには肉体がそれぞれ勝手に最良の手を判断して攻撃するしかない。超サイヤ人4のパワーも超サイヤ人ブルーの洞察力も、身勝手の極意の前には無意味だぞ!!」
ビルスが二人の悟空に対して、アドバイスとも忠告とも取れる発言をする。
「…だが、身勝手の極意は極限状態にあって初めて使える境地。自分の意思で出せるものではない。まして、人間の孫悟空では身体が先にガス欠になるだろう。超サイヤ人ブルーも超サイヤ人4も、身勝手の極意を発動するのであれば不要の長物。身勝手の極意は、自然体の状態でしか使うことはできない」
ビルスの言葉を継ぐように、身体が爪先から光の粒子となって解けていってる状態のザマスが語る。
「そう。超サイヤ人に頼っていては、悟空はウイスに勝てない!!」
「…だが、孫悟空は身勝手の極意を嫌っている」
「なんだって?」
キョトンとするビルスに、ザマスが微笑みを浮かべて続けた。
「破壊神ビルス、貴方は孫悟空の傍に居ながら彼を理解できていないのかな?」
「…第7宇宙の破壊神である僕より第10宇宙の界王神見習いのお前の方が、悟空のことを知ってるって? 笑わせるなよ」
やや不快げに歯噛みするビルスに、ザマスが勝ち誇るような笑みを返す。
「ねえ! 悟空は、身勝手の極意って言うのを使えばウイスに勝てるかもしれないんだよね? どうして使わないの? どうして嫌ってるの?」
そんな二人に向かって全王が声を上げた。
コレにわざとらしくビルスに肩をすくめてから、ザマスが応える。
「簡単な話だ。孫悟空は自分の意思と力で闘いたがる男。身勝手の極意とは頭で考えるのでなく、肉体が勝手に判断して最良の答えを選択する体術。孫悟空の意思とは無関係に気付けば敵を倒している、と言った状態になる」
淡々とザマスが続けた。
「だが、それは孫悟空本人の実力だろうか? 真・超サイヤ人とて孫悟空は嫌っていた。自分のセンスだけで強敵と闘うことが出来ると知るまではな」
「身勝手を発動すれば、悟空のセンスも意思も関係なく肉体がそれぞれ勝手に判断して倒してしまう。なるほど。つまり自分の意思で身体を操った上で倒さなければ、本当に自分が勝ったとは言えない、か」
拘りーー孫悟空という戦士の拘りであり、意地であろう。
強くなること、闘うこと。
未完成の身勝手の極意では、悟空が望む闘いや勝ち方は出来ない。
自分の肉体を操る感覚が、自分が相手を殴る感触がない。肉体の衝動に身を任せることが、今のままでは出来ない。
やや呆れたようにビルスは告げた。
「本当に難儀な性格してるね、お前は」
ならばーー、ウイスに勝つ可能性があるのは真・超サイヤ人であろうか?
確かに相手に合わせて力を一気に高めるアレならば、悟空のセンスだけでもウイスに届くかもしれない。
「あの悟空達、僕の世界の悟空みたいに真・超サイヤ人になれるの?」
「…ゼノは、なれます。もう一人の方もブラックと肉体を共有していた時になってますから、おそらくなれるはず」
全王は、ジッと天使ウイスを相手に激闘を続ける二人の悟空を見つめる。
「確実に勝てる状況でなければ真・超サイヤ人は使うまい。あの力も限界を更に超えた状態からのパワーアップになる。肉体への負担は相当なものだが、それ以上に精神力が削られる。下手に変身してガス欠になれば、今度こそ勝ち目はない」
「悟空、色々考えてるんだね〜」
ザマスの解説の内容はともかく、無礼極まりない態度にフムフムと素直に頷く全王を見て、ビルスは肝っ玉が冷えるような気になる。
(この僕が、ザマスのような若輩者に振り回される日が来るなんて、ね)
だがーービルスは不思議と、ザマスやブラックへの苛立ちや怒りは消えていた。
そのことに複雑な思いを抱きながら、ビルスは消え行くザマスを見つめた後、カンバーと睨み合いをするブラックを見る。
(何故、お前は闘う? どれほどの闘いをして見せても、どれだけの勇気や不屈の魂を見せても。奪った側のお前が奪われた側の者達から憎しみ以外の目で見られることはないだろうにーー)
微かに、やるせないと言う思いが頭に浮かび、ビルスは溜め息をついてその気持ちを吐き出そうとした。
満身創痍になりながら、ブラックは決して逃げようとせずに立ち向かっている。
たった一人で強大なカンバーと言うサイヤ人に。
そんなビルスの感傷を吹き飛ばすように、強烈な打撃音と衝撃波が響き渡る。
そちらを鋭く振り返れば、ウイスが両手で孫悟空とゼノの拳を掴み止めていた。
「なんだと? あの、ウイスが手首でなく拳を掴んだ?」
拳を余裕で躱すか、手首などを掴んで止めるウイスが拳を正面から掴み止めた。
自分の記憶には、そうない事だ。
「ようやく、アンタの動きが見えて来たぜ」
「…二人がかりってのが、情けねえけどな」
ビルスの頰に流れる汗と震えは、恐怖か?
歯を食いしばり、拳を握るとビルスは叫んだ。
「な、何をしてる!? ラッシュだ!! 左右から手数で攻めろ!! ウイスの面に一撃決めてやれ!!!」
コレにザマスが意外そうにビルスを見るも、当の本人は拳を振り上げて二人の悟空に叫ぶ。
「ウイスに何かさせる余裕を与えるな! 一気に手数で畳み掛けろ!!」
瞬間、ビルスの言葉を合図にしたように二人の悟空が動く。
踏み込んで来る二人に、ウイスが真剣な表情で口元に笑みを浮かべて構えた。
(界王拳は後、どんだけ使えっか分からねえ。20倍で、やっとこウイスさんが動きを見せ始めたってのに!!)
「そっちのオレ。今更だけど、途中リタイアは無しだぜ。最後まで、超サイヤ人4のオレのパワーに付き合ってくれよな?」
「無茶苦茶言ってくれっぜ、もう一人のオラ。超サイヤ人4のフルパワーってのが、そんなにスゲエなんてよ」
20倍界王拳を使い更に気を高めなければ、とてもじゃないが付いていけない。
超サイヤ人4のフルパワーは、通常時の戦闘力の軽く数十倍はある。
その事実にブルー悟空は舌を巻いていた。
「極限にまで高めた気を両手足に圧縮させて、連打を強打にして放つーー。後先を考えないラッシュですが、功を奏していますよ。この私が捌き切れないとは」
青い肌に一筋の汗を流しながら、ウイスが笑う。
身勝手の動きを二人の超サイヤ人のスピードとパワーが上回り始めている。
「兄弟以外では、初めてですよ。久方ぶりに本気で楽しませてもらいましょう!!」
心底、楽しげに笑いながらウイスがラッシュにラッシュを返しつつーー超サイヤ人4ゼノの右拳を正面から右拳で打ち返す。
「! ぐぁああっ!?」
パワーとスピードで優る超サイヤ人4が後方に弾き飛ばされた。
ブルー悟空がウイスの後方に回り、拳を後頭部へ打ち込むも、左裏拳で簡単に止められる。
「チィ!」
悟空は舌打ちしながら、振り返ってこちらを見るウイスに無数の拳と蹴りを繰り出す。
ウイスは、今までのように捌くのでなく拳を握り、蹴りを返してくる。刹那の拍子に数百は下らない打撃を応酬する悟空とウイス。
「…まだまだ、ですね」
「!」
二、三度打撃を応酬した後、気付けば目の前に拳が現れて後方に吹き飛ばされている。
「来たーー。アレこそ身勝手の極意・極み。パワーやスピードをねじ伏せ、弱点を手足が見抜いて即座に打ち抜く。身勝手の奥義!!」
あの状態のウイスにまともに拳を合わせれば、どれだけのパワーを誇ろうと一方的に打ち負ける。
カウンターのタイミングと拳の打点が完璧になされたテクニックの究極。
正に神技である。
悟空達は果敢に攻めているのに、瞬く間に二人は打ち込んだ手足ごとボロボロになっていく。
恐るべき事にウイスは、二人からの攻撃を全くその場から動かずに打ち返していた。
「…コレが天使の本気か。だがーー」
ザマスは静かに笑みを浮かべて呟く。
「見せてやるがいい。貴様ら、サイヤ人の底知れぬ可能性と強さを!!」
何度目かの打ち合い後に吹き飛ばされ、ゼノが鋭く目を細める中、ついに悟空の界王拳ブルーが切れる。
「! お前……!」
「へ、へへ、すまねえ。ちくしょう。どうやら、先に体がガタついて来やがった」
「……気にすんなよ。どのみち、このままじゃオレ達はどうやっても奴には勝てねえ」
言い切る超サイヤ人4ゼノに、黒髪に戻った悟空が悔しげにウイスを見る。
ウイスは、淡々とした表情でゼノと悟空を見つめる。
「お終いですか? では、あなた方を時の巣へお送りしましょう。どちらの悟空さんも良い戦いでしたよ」
その言葉にゼノは超サイヤ人4を解除して、通常の黒髪に戻る。
「……流石は第7宇宙の天使ですね。けれど、私はまだ諦める訳には行かない。孫悟空としても、ザマスとしても」
「ああ。あっちのオラ達の為にも、此処にいるオラ達が負ける訳には行かねぇんだ!!」
肩で息をしながら、孫悟空も頷く。
ウイスの目が再び鋭く細められる。
彼の目の前には、黄金の光の粒子が浮かんでは消えて行った。
「……見せていただきますよ。サイヤ人の可能性。神や天使の域にも至るというーー真の力を」
ウイスの目の前には、黒髪を天に逆立て翡翠に黒の瞳孔が開いた瞳のゼノが立っている。
その隣には肩で息をしながら白銀のオーラを放ち、少し逆立つ黒髪と光沢のある銀の目をした悟空が立っている。
「あ、アレは身勝手の極意!?」
「…そうか、未来の孫悟空よ。貴様は至っていたか、神の御業に」
ビルスとザマスが唸る中、全王はジッと悟空達を見る。
「見せて、悟空。悟空たちの可能性を」
ゼノが叫んだ。
「行くぜ。…オレに付いて来い! 孫悟空!!」
「オメエこそ、遅れんじゃねえぞ。孫悟空!!」
互いに向かって二人の悟空が叫び合うと、ゼノは黄金の髪に変わり黄金の炎を、悟空は白銀の髪に変わり、白銀の光をオーラとして身に纏う。
「「勝負だぁああああっ!!!」」
コレにウイスが目を見開き、構える。
ゼノの右手からは薄紅色の光が、左手から蒼銀の光が、全身から赤みがかった金色の光が一瞬だけ現れて黄金の炎に飲み込まれていく。
「真・超サイヤ人の、フルパワーだぁあ!!」
「身勝手の極意ーー行くぜぇええっ!!」
ウイスが体勢を前傾に構えて、突っ込んで来る二人に向かって真っ向から駆け抜ける。
三人が激突し、無の世界が衝撃で震えながら再び爆発した。
凄まじいパワーとパワーのぶつかり合いにビルスがニヤリと笑った。
「嬉しいだろ、ウイス? 僕にも気持ちが分かるよ。こんなに楽しい時間が出来るなんて。つい百年前には思いもよらなかった……」
真・超サイヤ人に変身したゼノは、ガードを初っ端から考えていない特攻を仕掛けてくる。
その無茶苦茶な勢いと的確に点で急所を狙ってくる打撃に、ウイスをして舌を巻いた。
更に反対からは身勝手の極意を発動した悟空が、未熟ながらも完璧な神技で最良の選択と方法で打撃を見舞ってくる。
二人とも、ペース配分を考えてない文字通り全力のラッシュである。
ゼノの攻撃は、先のブラックと戦った真・超サイヤ人フルパワーの悟空と同じ。
繰り出される打撃が一切、見えない。見切れない。
鈍い音と共にウイスの身体が仰け反る。
(当てやがった。あの野郎、ウイスに当てやがった!!)
ビルスがガッツポーズを取りながらも、闘争心に溢れた笑みを浮かべてゼノを凝視する。
「無茶苦茶しますね、あなたーー」
呆れたような声音のウイスであるが、攻撃を掴み止めることが出来ない。
避け、捌くのが精一杯の連撃。
(悟空さんの本気がこれほどとは。ビルス様が真っ向勝負で一本取られる訳です。この分だとブロリーさんやベジータさんも私やビルス様に見せている実力が本気かどうか、怪しいものですね)
真・超サイヤ人のゼノの打撃を予測と身勝手で捌こうとするも、横から拳と蹴りを打ち込んできた身勝手の悟空に阻まれる。
身勝手の悟空に自分の捌きや打ち込みを無効化され、速すぎて見切れないゼノの打撃は身体を屈めたり反らして躱すしかないーー。
あのウイスが、たった二人の人間を相手に手こずらされている。
このままの勢いで攻め続けられれば、ウイスと言えどクリーンヒットを貰うのは時間の問題だ。
「ウイスが真っ向勝負に拘れば、の話だが」
ビルスの呟きに応えるようにウイスが動く。
ゼノが拳を、悟空が空中で身をひねりながら蹴りを繰り出す瞬間、ウイスの周りの空間が歪み、拳と蹴りが空振った。
「「なに!?」」
確実に当たるはずだった拳が外れたことに、ゼノも悟空も目を見開く。
「お見事です。ですがーー」
人差し指を身勝手の悟空に向け、青く細い光を放つ。
「しまっーー!」
完全に無防備だった悟空はまともに光線を浴び、後方に吹っ飛ぶと同時に身勝手の光が霧散して黒髪に戻ってしまう。
コレにゼノが目を見開く。
「今のは、まさか……!?」
ウイスがニコリと微笑んで返す。
「ええ、破壊神の破壊の力です。悟空さんの身勝手の極意を無効化させていただきました」
ウイスの微笑みにゼノが目を細める。
ザマスが静かに呟いた。
「コレだーー。どれだけ戦闘力を上げようとも天使や破壊神には、神の力がある。コレを打ち破らねば、勝てない」
「当たり前だ。そんな簡単に破壊神や天使が負ける訳には行かないからね」
ビルスも答えながら、ウイスを見ている。
(とはいえ、お前がそこまで追い詰められるとは。ゼノともう一人の悟空は、僕の世界の悟空達に比べても見劣りしない域に達しつつあるーー!)
胸中で呟くと黒髪になってもまだ、闘うのを止めようとはしない悟空を見る。
ウイスは肩で息を切らしている悟空を見た後、真・超サイヤ人のゼノを見つめる。
「次は、あなたの番ですよ。真・超サイヤ人ーー。無限に気を高める力も、無効化してしまえば処理は容易い」
「…さあ、ソイツはどうかな? 決着をつけようぜ、ウイス殿!!」
とはいえ、ゼノは先程までのようには攻めれない。
特攻を仕掛けようとして、ウイスの左手の人差し指から先の身勝手を消した光が輝いているのを見、止まる。
ガードを捨てて攻撃のみに意識を絞れば、間違いなくあの無効化の光に当たる。
特攻が使えないのであれば、駆け引きしかないのだが。
「……なるほど。身勝手のオラを先に無効化したのは、身勝手なら無意識にでも避けるから、か」
ガードを捨てて見切れない打撃を繰り出す特攻と、無意識下で攻撃を回避する神技。
ウイスにとって厄介だったのは言うまでもなく後者であった。
前者は攻められる前に当てれば良いからだ。
「ガードを捨てた貴方の特攻、実に素晴らしい域でした。ですが、無効化の光を前にソレは勝負を捨てるようなものです。かと言ってフルパワーの特攻を使わないのであれば、貴方には万に一つの勝ち目もない。このまま真・超サイヤ人の力を無駄に垂れ流し続ければ、ガス欠になる」
天使ウイスーー。
どこまでも冷静沈着に、淡々と悟空やゼノの能力を見極めて特殊能力で無効化してくる。
恐ろしい強さだ。
「…だが、オレは負ける訳には行かねぇ!!」
賭けるしかないーー。
孫悟空とザマスの融合である自分のセンスに。
瞳を閉じ、感覚を研ぎ澄ませ。
サイヤ人の闘争本能を、破壊衝動を限界まで高めろ。
攻撃にキレを、スピードを、パワーを、手数を。
過去から来た自分のように。
最強の自分を思い描け。
ソレを超えてくる自分の真・超サイヤ人を、更に上回れ。
「オレは超サイヤ人ーー孫悟空・ゼノだぁああ!!」
ウイスの瞳が鋭く細まる。
「…超サイヤ人4フルパワーのパワーアップを引き出して来ましたか。無限に気を上げる今の貴方が使えば超サイヤ人4よりも倍率はデタラメなモノになる。いいでしょう、あくまでサイヤ人の可能性で神の技を、天使の聖域を破ると言うのであれば見せてご覧なさい」
笑みを浮かべて拳を構える。
「ーー貴方の本気を」
瞬間、ゼノが消える。
ビルスの目にも霞むほどにしか映らない速度で、獲物を狩る獣のように俊敏に無駄なく、ウイスの目の前に入り込んだ。
「野郎、ウイスの懐に簡単に入り込みやがった!!」
「半分は私だーー。神の思考と動きを取り込んだ孫悟空ならば、簡単に出来るさ」
懐に入り込んできたゼノに向かって、ウイスは左拳を打ち下ろす。
顔面を捉えたはずの拳は、ゼノの左腕にぶつかると脇に回り込みながら側面に移動してウイスの左腕の外から拳を打ち込んでくる。
いや、打ち込んでいた。
「……な!?」
目を見開くウイス。
首が後方に仰け反り、頰に衝撃が走った。
「打ち終わりすら、見えないだと?」
「……あの腕捌きと足運びは、ザマスのものか」
ビルスが先程までと変わらないゼノの攻撃速度に舌を巻けば、ザマスが自分の動きを取り込んでいるゼノに目を見開く。
「受けを意識したら攻撃が鈍るんじゃないのか!?」
「孫悟空は、受けを意識していまい。ならばーー」
(融合した魂が、それぞれの役割を分担していると? そんなバカなーー!)
思考は完全に一つだというのに、ザマスの受けと足運びで安全圏から急所を目掛けて打ち込んでくる。
神の体術とサイヤ人の闘争本能が兼ね合わさっている。
「コレは、ちょっとズルが過ぎるんじゃありませんか? 悟空さん」
「ズル? …何のこったかオレには、サッパリ分からねぇなぁ」
本来、ザマスの動きならばウイスは大して脅威には感じない。
理に適った動きをするザマスは、ベジータよりも頭で考えて行動するタイプーーつまり、読みやすい。
脅威的な反応速度と移動スピード、そして見えない通常攻撃さえなければ。
(おまけに気が無限に上昇するわけです。早めに決着をつけることが出来なければ、手がつけられなくなる)
鈍い音と共に今度はゼノが後方に仰け反り、吹き飛ぶ。
「ガハァッ」
「もう一人のオラ!!」
宙で姿勢を制御し、吹き飛ぶ自分の身体を制止する。
しかし目の前にはウイスが踏み込んできている。
拳を振りかぶるウイス、咄嗟に顔面を庇うゼノの腹にパンチの起動が変わって打ち込まれる。
「な、ん、だ、と?」
ガードが解けた顔面に左右のフックが叩き込まれて後方に仰け反るも下半身だけは、その場から動くまいと踏ん張る。
「タフネスも流石ですが、迂闊に耐えると折角の足運びができませんよ」
長い脚が槍のように突き出され、ゼノの胸を爪先で蹴り抜いた。
開いた距離。
左手の人差し指を立ててウイスは、後方に吹き飛んでいくゼノを見据える。
空中で静止して吹き飛ぶのを拒むゼノ。
動きが止まった目の前に無効の光が迫っている。
「龍ぅうう拳ぇええんっ!!」
黄金の光に満ち満ちた右ストレートを目の前の無効の光へ放つ。
黄金の龍も身に纏う炎のような激しいオーラもアッサリと消えるも、ウイスの放った光も消された。
「! 天使の力をかき消した?」
ただの超サイヤ人に戻っているゼノ。
彼に向かって悟空が手をかざす。
「受け取れ、もう一人のオラアアアッ!!」
白い気が超サイヤ人のゼノに流れ込み、一気に黄金の炎を取り戻す。
「サイヤパワーを取り込んで真・超サイヤ人の起爆剤にしたというのですか?」
「ウイス殿、コレで最後だーー!!」
ゼノが青紫色の光の球を二つ左右の手から生み出して、上下に構えてから手首を合わせて右腰に身体を捻り、たわめる。
「10倍ーー! かぁー、めぇー、はぁー、めぇー!!」
ウイスの目が鋭く細まり、左手の人差し指を構える。
「かめはめ波は気を凝縮して放つ瞬間に一瞬、無防備になる。私を相手にその技は通じませんよ!」
気を凝縮する為に動きを止めるゼノの胸を狙って放たれる無効の光。
しかし、当たる寸前でゼノの肉体が消えた。
「ま、まさかーー!」
目を見開くウイスの懐に、真・超サイヤ人が踏み込んでいる。
「ーー瞬間、移動っ」
「波ぁああああああっ!!!」
ウイスの言葉がゼノの光によって遮られ、姿も飲み込まれていく。
悟空の使う真紅の10倍かめはめ波と違い、ゼノのソレは青紫の光だった。
その威力はビルスに両目を大きく開かせ、ザマスをして震えるほどの一撃である。
「惑星サイヤで戦った頃の悟空の真・超サイヤ人を超えてやがる」
「本物の孫悟空ーーか。貴様もまた、真の超サイヤ人のようだな。ゼノよ」
全てを吹き飛ばす一撃。
ゆっくりと光が止み、爆煙の向こうからウイスが少し煤けた自分の姿を見下ろした後、不機嫌そうに告げた。
「……まさか、瞬間移動とは。本気出し過ぎですよ、悟空さん? 服が焦げたじゃないですか」
対峙する孫悟空・ゼノは、鋭い翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で睨みつける。
「…フゥ〜、分かりました。全王様、悟空さんとゼノさんは残るそうですが、よろしいでしょうか?」
ウイスの言葉に全王を皆が振り向けば、其処に全王の姿はない。
「……あら?」
キョトンとするウイスを前に全王は、ゼノと悟空の二人の手を掴んで笑っていた。
「凄い凄い!! やっぱり悟空は、凄いのね!!!」
頰を紅潮させてはしゃぐ全王の姿にウイスが、疲れ切ったと言わんばかりに溜め息を吐く。
「いつも偉そうに僕と悟空達の修行を見ていた癖に、派手にやられたな。ウイス?」
不愉快そうにウイスはビルスを振り返ると肩を竦めた。
「たまたま、気分ですよ。気分。気分が乗らなかっただけですよ」
「ふぅん?」
意味ありげに笑うビルスをウイスは不機嫌そうに見た後、杖を取り出して自分の汚れと傷を消してしまった。
「…さてと、最後は奴らか」
「……ええ」
ビルスが真面目な表情に変わって呟くと、ウイスも同じく最後の闘いを見る。
超サイヤ人ロゼとなったゴクウブラックと、超サイヤ人3となったカンバーの闘いを。
次回、反響が強かったブラック対カンバーですね。
明日の午前7時です。
よろしくお願いいたします。