ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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さあ、残すところあと一話です。

よろしくお願いいたします。


ブラックの最後 カンバーとの決着

 超サイヤ人ロゼとなったブラックだが、未だ超サイヤ人3のカンバーとの実力差は歴然としていた。

 

「……化け物め!」

 

 起死回生の神の刃もカンバーの戦闘力を下げることはできたものの、致命打には遠い。

 

 血を吐き捨てるブラックにカンバーがニィッと笑って、彼の後ろにいるゼノや孫悟空、ビルス達を見据える。

 

「ク、クククク。気に入ったぞ、貴様ら! だが、何故その力を俺にぶつけて来ない!?」

 

 先のゼノ達の闘いに血が騒ぐと言わぬばかりにカンバーが叫ぶ。

 

 それを遮るようにブラックがカンバーの目の前に移動して告げた。

 

「…分からないか? 貴様ごとき、俺一人で充分だと言うことだ。人間よ」

 

「下郎。貴様ごときが、一人で俺に勝てると思うのか? 思い上がるな!!」

 

 獣が獲物を前に唸るような低い声で、カンバーはブラックを睨みつける。

 

 その眼力を前に、ブラックは邪悪で冷酷な笑みを浮かべて告げた。

 

「試してみるがいい、愚かな人間よ!」

 

「ほざいたな? ならば望み通り、ぶち壊してやるぞ!!」

 

 赤い気炎が一気に噴き上がり、ブラックの目の前にカンバーが迫る。

 

 即座に反応し、ブラックも拳を打ち返す。

 

 秒間、数百は下らない拳蹴打の応酬を終え、気合いを入れて拳を振りかぶる両者。

 

「はぁあああっ!!」

 

「ウォオオオッ!!」

 

 真ん中でぶつかり合う二つの右拳。

 

 表情を歪めるブラックと闘争本能に目を見開くカンバーが互いに睨み合う。

 

 強烈な左ボディがブラックの腹を打ち抜いた。

 

「ぐぉっ!?」

 

 悲鳴を上げてロゼのオーラが一瞬で散り、ブラックは黒髪に戻ってしまう。

 

「…やはり体力が限界だな」

 

 ビルスが目を細めながら呟く中、黒髪になっても手を止めずに放ったブラックによる返しの左ストレート。

 

 それを紙一重で脇に躱したカンバーは、強烈な右ストレートをブラックの左頬にぶつけた。

 

「ぐ……あっ!」

 

 呻き声を上げながら脳を揺らされて半ば意識を飛ばすブラックに、追撃の左ストレートが鼻っ柱に突き刺さる。

 

「ガハァッ!?」

 

 後方に大きく仰け反るブラック。

 

 その胸倉を掴んでカンバーが吊り上げる。

 

「どうした? さっきのように刃を出してみろ!!」

 

 先程光の刃で胸板を貫かれたにも関わらず、カンバーは先程とよく似た姿勢を取る。

 

 今度は気で作り上げた大猿の大きさの両手ではなく、本物の自分の腕で掴み上げている。

 

「……き、貴様。舐めるなぁ!!」

 

 手刀を作り、紫色の光刃を生み出してブラックは先程貫いたカンバーの胸板に、同じ箇所に寸分違わず刃を突き刺した。

 

 光刃は、しばらくカンバーの胸板に突き入れようと押し込まれたが、甲高いガラスが割れるような音と共に砕け散っていた。

 

 黒い瞳を見開くブラックに、超サイヤ人3のカンバーは翡翠に黒の瞳孔が開いた瞳を向けて唸るように告げた。

 

「フン、所詮この程度か。雑魚めが!!」

 

 胸ぐらを掴む右手から赤黒い光が滲み、巨大な手を象るとブラックの身体を掴み上げる。

 

「…お、おのれ……ぇ!!」

 

「死ねぇ!!!」

 

 左手に強大な赤黒い光を生み出し、ブラックに向けて掌を突き出す。

 

 赤黒い光の奔流がブラックの肉体を飲み込んで、遥か後方に吹き飛ばした。

 

 誰もが、今の一撃に息を飲む。

 

 ゼノや悟空はおろか、ザマスやビルス、ウイスまでもが表情を強張らせていた。

 

 真・超サイヤ人のブラックやゼノが放ったかめはめ波に迫るほどの一撃である。

 

(…おの、れ。身体がバラバラになりそうではないか。だが孫悟空よ。貴様は、いつも。こんな痛みを味わっていたのだろう? どれだけ、やられても立ち上がったのだろう?)

 

 光が晴れた時、前のめりになって棒立ちしているブラックの姿がある。

 

(ならば、神である俺が出来ぬ訳がない。あんな非力な幼子に出来て、孫悟空に出来て、人間如きに出来て! 神である俺が、出来ぬ訳がないのだ!!)

 

 拳を握るブラック。

 

「……! もういい。もう、いいだろ!!!」

 

 ビルスが叫ぶ中、ブラックはカンバーに顔を向ける。

 

 満身創痍であり、笑みを浮かべる余裕もない。

 

 それでも、ブラックはカンバーに拳を構える。

 

 ボロ雑巾のようなブラックの姿が地球人達に映し出され、彼らは狂喜乱舞していた。

 

「ざまぁみろ! ブラック、お前がみんなにした事は、もっと酷いんだ!!!」

 

「お父さんとお母さんの仇ぃ!! 苦しんで、地獄に落ちろぉおっ!!!」

 

「血反吐を吐け、みんなに謝れ!! そして、くたばれ、死にやがれ!!!」

 

 地球人達の大合唱にビルスが怒りの表情を浮かべてカンバーを睨みつけ、叫ぶ。

 

「…全王さま!!!」

 

「ビルス、我慢して」

 

 だが全王はにべもなく、ビルスの叫びを退ける。

 

「……何故ですか!? 私や全王様がブラックを神として裁くのなら、まだ分かります。ですが、あのサイヤ人にブラックが踏み躙られる道理はーー!!」

 

「だから、だよーービルス。ブラックは、カンバーにされている事を神や人間にして来たのね」

 

「因果応報と!? 罪を認め、慈悲を取り戻し、人間のために死のうとする神に! いや命を賭して守ろうとする一人の男に、自業自得だからと。誇りも尊厳もなく野良犬のように死ねと!? ザマスが魂を代価に世界を戻せばブラックの殺した人間も神々も蘇ると言うのに、ですか!?」

 

「ビルス。じゃあ、聞くのね。それを、ブラックに命を奪われた神や人間達に言えるの? たとえ蘇っても恐怖は消えない。苦しみは残るよ。記憶を消して無かったことにしてもブラックがしたことは、責められるべきこと。だからブラックもザマスも、何も言わないのね」

 

「ではブラック達に、これ以上どうしろとおっしゃるのですか!? 罪ならザマスが償った。憤りならブラックが今まさに受けている!! このままーー地球人達の怨嗟の声をその身に受けてカンバーに八つ裂きにされろ、と!?」

 

 怒るビルスに全王はジッと彼を見つめる。

 

「そんな死に方をブラックにさせて、ザマスを自滅させて人間達を蘇らせて、記憶を消して。それで、終わりですか!? 地球人達には何の咎めもなしですか!? それを見届ける我々、神にも誤ちはないと!!?」

 

 詰め寄ろうとするビルスをウイスが止める。

 

 だがビルスは怒りの表情のまま、全王を睨みつけた。

 

 ザマスが、ゼノが、悟空が。

 

 そして巻き物の向こうから悟空やターニッブ達が見守る中で、全王が静かに呟いた。

 

「……知りたいの。人間が変わるところ、見たいのね」

 

「…全王、さま」

 

 真摯な表情で、しかし穏やかに全王は笑っている。

 

「ビルス、君も変わったのね。ザマスも、ブラックも。だから人間も、変われるのね。……第7宇宙の地球の神。デンデから僕は、そう教えられたのね」

 

 ビルスは思う、そんな綺麗に話がおさまるのかと。

 

 地球人の怨嗟は、簡単には消えない。

 

 ブラックの本心を見ようにも、憎しみに目を曇らせた彼らは、傷付いても立ち向かうブラックの真意に気付けない。

 

 どれだけ傷ついても、思っても、詫びても。

 

 決して地球人にはーー。

 

「ブラックゥウウ!!」

 

 その時だった。

 

 怨嗟が満ち溢れている声の中から、一際大きな純粋な意思を秘めた叫びがビルス達に。

 

 ブラックの耳に届いた。

 

「頑張れぇえええっ!!」

 

「ブラックゥウウ!!」

 

 幼い兄と妹が、必死になってブラックに呼びかけてる。

 

 ゼノが思わず目を見開いて胸を押さえ、声を震わせた。

 

「ハル、マキ。お前達は……っ!!」

 

 そんなゼノに隣の悟空がニッと笑いかけて、何も言わずに肩を叩く。

 

 親をブラックに殺されて孤児になった子ども達。

 

 恐怖に震えながらも、必死にブラックに叫んできた兄。

 

 兄を必死で庇おうとする妹。

 

 二人の声が聞こえた時、ブラックの黒い目に銀色の光が宿っていた。

 

 映像の中、地球人達はブラックを応援する幼い子供たちを睨み下ろす。

 

「何を考えてるんだ? アイツは、お前達の家族を殺したクズ野郎だぞ!!」

 

「そうだ、そんなヤツを応援するなんて。死んだ両親に対する裏切りだ!!」

 

 そんな大人達からレジスタンスの服を着た二人が、子どもを庇うようにして下がらせる。

 

「違うよ。ブラックは、もう違うよ!! ブラックは、僕とマキを悪者から助けてくれたんだ!!!」

 

「ホントなの!! ホントに、ブラックはーー!!」

 

 必死になって訴える子ども達に対し、憎しみに満ちた目を地球人達は向け始める。

 

「だったら、何だ? お前らは助かったからブラックの味方をするっていうのか?」

 

「子どもの言うことだ、やめろ!!」

 

 レジスタンスの男が必死に止めるも、次々と憎しみに満ちた言葉が吐かれる。

 

「ふざけるな! 俺の子どもはアイツに殺されたんだ!」

 

「私の坊やもよ!!」

 

「自分が助けられたから、だから悪党じゃない? アレを許せって言うのか? 何様だよ、ガキのくせに!!」

 

 地球人達の変貌に巻き物を見ていた悟空が、右手の人差し指と中指を立てて額につける。

 

「あの子達を連れて来っから、待っててくれ」

 

「……孫くん」

 

 ブルマが不安そうに悟空を見る中、もう一人の悟空が無の世界から声を張り上げた。

 

「…いい加減にしろ!!!」

 

「……孫、悟空」

 

 ゼノが目を見開く中、悟空は地球人達に向かって叫ぶ。

 

「黙って聞いてりゃ、オメエら。情けなくねぇんか!? そんな子どもに八つ当たりするなんてよ!! ブラックのした事を許せねえってのと、その子たちは関係ねえだろ!!」

 

「うるさい! お前に俺達の、奪われた者の苦しみが分かってたまるか!!」

 

 悟空の言葉に地球人達が更に叫ぶ中、全王はジッと地球人達を見つめている。

 

「甘ったれてんじゃねえぞ!!!」

 

 怒号を全てかき消すほどの悟空の一喝。

 

「オメエら、今やってる事がどんだけ悪りいことしてっか分かってんのか!? オメエらのしてるこたぁ、ブラックと変わらねえ。いや、それよか悪りい!! よってたかって子どもを脅すなんてよ、最低じゃねえか!!!」

 

 悟空の声は、微かに震えている。

 

 怒りとーー悲しみに。

 

「よく見てみろ、聞いてみろ! オメエら、自分の大切なモンが何を望んでんのかも、聞こえてねえんか!?」

 

 悟空の言葉に応えるように、青い生命の光が地球にーー宇宙にーー世界に満ちていく。

 

 誰かが「あ」と呟いた。

 

 ハルが、マキが目を見開いて震えている。

 

「お、父さん? お母さん…っ!」

 

「パパ、ママァ!」

 

 穏やかな笑顔で父と母がハルとマキを見ている。

 

 がなり声を上げていた男も喚いていた女も、自分の知り合いや友人、家族が目の前に現れている。

 

 彼らは、静かに悟空の言葉を代弁するように語る。

 

ーー 世界は救われる。自分たちは大丈夫だから。神さまが救ってくれるから。だから、泣かないで ーー

 

 虚像のように半透明だった肉体は、徐々に色がハッキリとして。

 

 実体が顕現していく。

 

 破壊され、荒廃していた街並みが、元の復興し始めていた活気ある街に生まれ変わっていく。

 

「……神、さま?」

 

 ハルが目を見開いて空を見れば、緑色の肌をした端正な顔立ちの神が背に銀の光輪を背負って、己の身体を文字通り粉にしながら世界を戻していく。

 

 蘇らせていく。

 

「……あ。ああ」

 

 蘇るのだ、と理解した大人たちは、怨嗟の声を上げる口を閉じて膝から崩れていく。

 

 愛する人の笑顔が、声が、彼らから怨嗟の声を奪ってただただ、涙を流させていく。

 

 戻らぬはずの命が、帰らぬはずの人が。

 

 自分の下へと帰ってくれる。

 

 それが、どれだけの事かーー。

 

「…奇跡だわ」

 

 ブルマが、思わずという声で呟く中、目の前の悟空が首を横に振る。

 

「奇跡なんかじゃねえ。みんなの思いが、願いが世界に通じたんだ。ザマス様やブラックやゼノ、神さまたちにオラ達人間の思い。大地や海や、空、星々が。同じことを祈ってんだ……っ!」

 

 泣き笑いのような表情になる悟空を前にベジータもターニッブも何も言わず、ただ温かな光に包まれていく世界に向き直る。

 

 世界が救われていく中で、轟音。

 

 カンバーの拳が黒髪のブラックの掌に掴み止められた。

 

「…死に損ないめが。まだ、無駄な足掻きを続けるか?」

 

 瞬間、ブラックの身体を薄紅色の光が包み、髪が逆立って薄紅金に輝く。

 

 その瞳が、銀色に輝いたまま。

 

「! まさか、アレは身勝手の極意!?」

 

「バカな。身勝手と超サイヤ人は併用できないはず。自然体でなければならない身勝手と、気と闘争本能を高める事で変身する超サイヤ人は全く逆のーー!」

 

 ビルスが目を見開き、ゼノが呟く中。

 

 ブラックはニヤリと不敵に笑う。

 

「何がおかしい? 下郎めがぁあ!!」

 

 強烈な踏み込みからの巨大な右拳を繰り出してくるカンバーだが、鈍い打撃音と共にブラックの拳がボディに突き刺さっている。

 

 頑強な肉体のカンバーの目が見開かれ、顎が下がり前屈みになって身体をくの字に折り曲げる。

 

「な、にぃ!?」

 

 拳の威力、スピードは先程までのロゼと変わらない。

 

 だが今のブラックの拳は、カンバーの筋肉を簡単に貫いてみせた。

 

「おのれぇ!!」

 

 拳を振りかぶるカンバーの目の前にブラックは簡単に踏み込むと、自然な動きで流れるように左の肘鉄を鳩尾に叩き込む。

 

 動きの止まったカンバーの顎を右拳で下から突き上げて、仰け反ったところを更に左脚を振り回して蹴り込んで吹き飛ばす。

 

 本来なら超サイヤ人ロゼの攻撃でダメージを負うはずのないカンバーが、ガードも筋肉を硬化させる受けも出来ずに吹き飛ぶ。

 

「ま、間違いない。相手が察するのが困難なほどに自然体の動き。攻撃も防御も無意識に行うが故に、予測も不可能。そして急所を針で点を突くかのような正確無比な打撃。アレぞ、正に身勝手の極意!!」

 

 ビルスが目を見開いて拳を握り、熱く叫ぶ。隣で悟空が口元を笑みに歪ませ、震えている。

 

「…し、信じらんねぇ。あ、あのクソ野郎。身勝手の極意と超サイヤ人ゴッド超サイヤ人を同時に使いやがった。オ、オラにもゼノにも出来ねえ事を!!」

 

 その言葉を聞いてか、ブラックはニヤリと笑んだ口元を大きく開けて高笑う。

 

「ク、ハハハハハ!! どうだ。孫悟空、ゼノ、ザマス! このカンバーというサイヤ人は、破壊神ビルスが認め、貴様らでも一対一では勝てぬほどの強さを持つ! それを、この俺が超サイヤ人ロゼの状態で神の御業を使い叩き潰す! 孫悟空には出来ぬーーしかし正真正銘、孫悟空の使う技でなぁっ!! こんなーーこんな愉快な話はないぞ!!」

 

 カンバーが気を纏い、打ち込んで来るのを身勝手の極意が手足を操り、急所に放り込んで返していく。

 

 打ち合いにすらならない。

 

 攻撃は全て紙一重で捌かれ、全ての打撃はカンバーの意識の外から急所に叩き込まれる。

 

 右ストレートを紙一重でかいくぐり、目線をカンバーに固定したまま見向きもせずにノーモーションのボディ。

 

 左拳が突き刺さり、カンバーの眼が見開かれると同時に、壮絶なラッシュがカンバーの全身に叩き込まれる。

 

「グゥウウ! おのれぇええっ!!」

 

 あらゆる角度から拳と蹴りがカンバーに打ち込まれ、ついにカンバーは後方に下がった。

 

 殴り合いでは分が悪いと悟ったのか、ブラックの真上に移動して赤い気で巨大な手を象らせると左右の手と合わせて4つの光の球を作り出す。

 

 それらは巨大な手も光に吸い込まれて胸の前に収束され、一つの強大な塊となる。

 

「消え失せろぉお!! ハァードデザストルゥウ・イレイザァァアアア!!!」

 

 すべてを呑み込むような圧倒的な赤黒い気が、ブラックに向かって放たれようとしている。

 

 その時ーー。

 

 人々の願いの光がーー青い光の粒子が、無の世界に満ち溢れてブラックに流れていく。

 

「! これはーー人間どもの気、か」

 

 ブラックが振り返ると、孫悟空と孫悟空・ゼノが揃って手をこちらにかざしている。

 

 二人の孫悟空の元気玉を操る能力が、世界に満ちた“願い”をブラックの肉体に送っている。

 

「みんな!! オメエ達の願いを、元気を! ブラックに届けてくれぇええ!!」

 

「誰よりも、命を愛する男のため。みんなの為に! 元気を、頼む!!」

 

 その輝きに光の粒子に変わっていくザマスが目を見開いている。

 

「う、美しいーー。これが、人間たちの願いの光ーー! 命の輝きだと言うのか」

 

「うんーー! うんーー!!」

 

 全王が頰を紅潮させて喜んでいる。

 

 光を注ぎ込まれているブラックは静かに拳を腰に置いて、気を高めていく。

 

「ハァアアアア!!!」

 

 黄金の炎が、白金の光を纏ってブラックの全身から噴き立つ。

 

 黒の瞳孔が開いた翡翠眼ーー黄金の燃える逆立つ髪。

 

「ーー真・超サイヤ人、か。まさか人間どもの気で変身できるとは思わなかったぞ」

 

 超サイヤ人ロゼの状態から更に一回り上の気を放ちながら、ゴクウブラックは無限に気を高めていく。

 

「凄いのね! ブラック、君はーーどこまでも強くなるのね!!」

 

 ビルスが目を見開き、神の極意とサイヤの可能性を兼ね合わせた力に震える。

 

「こ、これほどまでに悟空の肉体を使いこなしているというのか! それも限界以上にーー!!」

 

「ええ。ですが、この力ーー! ブラックは命を完全に燃やし尽くすつもりのようですね」

 

「!? どういうことだ?」

 

 淡々とした言葉にビルスが振り返ると、声の主ーーウイスはブラックの放つ力を見て語る。

 

「アレでは器ーー肉体が持ちません。身勝手の極意は、それだけでも悟空さんの肉体を短時間で行動不能にしてしまうほどに反動が大きい。真・超サイヤ人も、肉体と魂の消費を持って気を無限に倍化させていく。二つを同時に使う等、命を捨てる行為です」

 

 目を見開くビルスや悟空達の前で、真・超サイヤ人となったブラックが身勝手の光を放ちながら、両手を右腰に置いて腰だめに構える。

 

 薄紅色の雷を纏いながら、強烈な一つの蒼い光が手の中で生み出される。

 

「か…! めぇ…! はぁ…! めぇ…!!」

 

 カンバーとブラックの黒の瞳孔が拓いた翡翠眼が、同時に見開かれる。

 

「とどめだぁああああっ!!!」

 

「波ぁあああああああっ!!!」

 

 ブラックが両手を突き出し、カンバーが叫ぶと同時、赤と蒼の光が二人の中央でぶつかり合う。

 

 互いの強烈なパワーが、空間を捻じ曲げて無の世界の次元の壁を壊していく。

 

 それでも両者の気は衰えることを知らず、どこまでも高まっていく。

 

「ぬ、ぬぅうううっ!!」

 

 ブラックの肉体から漆黒の稲妻が走り、己の肉を裂いて血を流していく。

 

「! 身勝手の反動か!!」

 

「元々、身勝手の極意が発動するほどに肉体が追い込まれていたのです。そこに真・超サイヤ人で更に負荷をかけた上で身勝手の極意を使う等ーー!」

 

 ビルスが目を見開き、ウイスがブラックの肉体の状態を推察する。

 

 カンバーの放つ光が、徐々にブラックのかめはめ波を押し返していく。

 

「ククク! 此処までのようだなぁ!!」

 

 歯を食いしばり、必死に耐えるブラックを睨みつけ、超サイヤ人3カンバーは叫んだ。

 

「さあ、死んでしまぇええええっ!!!」

 

 力を入れた瞬間、胸元から血が噴き出る。

 

「!」

 

 一気に脱力を感じながらカンバーは目を見開いた。

 

(なんだと? 先程までの連撃で塞いだ傷が開いたというのか!? ふざけーー!!)

 

「ふざけるなぁああああ!!!」

 

 カンバーの放つ気迫に反し、放っていた光が弱まる。

 

 ブラックが目を見開き、叫んだ。

 

「終わりだぁあああああああっ!!!」

 

 一気にブラックの放った光が数倍に大きさを膨れ上がらせ、カンバーの光を飲み込んだ。

 

「ば、バカなぁあああああっ!!!」

 

 かめはめ波の光の奔流がカンバーという巨体を飲み込み、遥か彼方まで一気に貫いた。

 

「ーーフ、俺の勝ちだ。孫悟空」

 

 その手応えと己の勝利を確信したブラックは、意識をゆっくりと闇に沈めていった。

 

ーーーー

 

ーーック! ブラック!!

 

 声が聞こえる。

 

 ブラックは、ゆっくりと重い瞼を開いた。

 

「ブラック、しっかりしろ!!」

 

「心配すんな! 今、オラの気を分けてーー!!」

 

 同じ声が聞こえる。

 

 男性にしては高く、女性にしては低い声。

 

 片方はクールな口調で、片方は少し訛っている。

 

「ゼノ、孫悟空ーー? 其処に居るのか?」

 

 息を呑む気配がする。

 

「ブラック、オメエ?」

 

「お前、目がーー?」

 

 ブラックはひどく愉快だった。

 

 きっと暗闇の向こうでは、二人の孫悟空は悔しげに表情を歪めているだろう。

 

 自分は、ザマスの魂だけで孫悟空にもゼノにも勝ったのだからーー。

 

「チッ。何も…見えん。これでは貴様らが、俺の力に悔しがる顔が見れぬではないか…!」

 

 息を飲んだのは、悟空かゼノか。

 

「…! あ、ああ。スゲェ力だったぞ。身勝手と超サイヤ人を同時に使うなんてよぉ…!!」

 

「見事な力と技、そして心だった…! 同じザマスとして誇りに思ったぞ…!!」

 

 二人からの称賛の言葉に、ブラックはニヤリと笑みを強めて告げる。

 

「と、当然だ…! 俺は、俺こそは真の神なのだからな。人間や人間と融合した神になど、劣るわけが無いのだ」

 

 息も切らしながら、それでもブラックは笑っている。

 

 悟空の気もゼノの気も肉体に流されているが、まるで底の壊れたバケツのように漏れていき、肉体を気がーー生命力が満たすことはない。

 

「オラ、オメエと一対一で闘いてぇ! チチと悟天の仇を、取らせろよ!! このまま、勝ち逃げなんぞオラは許さねえ!!!」

 

 頬に当たる温かい雫。

 

 それをブラックは笑う。

 

「ククク…! 涙を流すほど悔しいか…! いいぞ、これでようやく。俺は貴様に勝てた…!!」

 

「…っ! ブラック…!!」

 

 咄嗟に顔を背ける気配を感じるも、ブラックは笑ってやる。

 

 さぞ悔しいのだろう。

 

 あの孫悟空が自分を前に涙を流すなどーー。

 

「ブラックよ。私は、貴様やザマスが憎かった…! 同じザマスでありながら、悪に堕ち。ゴワス様や孫悟空を多くの罪のない人間や神を殺した貴様が…!! 憎かったんだ!! なのに…!」

 

 ゼノの必死の言葉をブラックは笑う。

 

「勘違いするなよ。俺は自分のしたことを誤ちだなどと思っていない。俺は、正義を為したのだ…!! 堕落した神々と欲深い人間を全て裁き、世界をあるべき美しい姿へと変えたのだ…! 結果は、どうあれ俺は俺を否定などしない…!!」

 

「…! ならば私は貴様を永遠に許さん…! たとえ、地獄に貴様が堕ちようとも!!」

 

「…そうだ。それでいい。それでこそ、貴様は私だ…!!」

 

 ゼノが黙るのを確認したのか、今度はビルスが声をかけてきた。

 

「見事だーー! お前のことは大嫌いだったが、神としての矜持と姿勢は大したものだったよ」

 

「破壊神ビルス。今頃ノコノコと出て来て俺の評価とはーーつくづく無能な神よ」

 

「………ああ。そうかもな」

 

「フン…! 破壊神ともあろう者が、随分と甘くなったものだ。あなたも孫悟空に絆されたか」

 

 そう言うとブラックは、自分と同じ気配のする最後の男に声をかける。

 

「ザマスよ。これが俺の答えだ…!」

 

「見事だ、私よ。貴様の力と姿ーー世界の意思としてもザマスとしても。決して忘れぬぞ」

 

「…! フ、フフフ! 悪くはない。最後の最後で俺は貴様や孫悟空、ゼノを超えることができた。満足だ」

 

 ブラックの気が、どんどんと減っていく。

 

 もはや、それを止めることはできない。

 

「ブラックーー。僕、忘れないのね。君も、ザマスも」

 

「……そうか。そろそろ時間のようだな」

 

 全王に一言だけ応えると、ブラックは己を抱く孫悟空を見えない目で見上げる。

 

 そこで無様に悔し涙を流しているであろう男を嘲笑う。

 

「……ごきげんよう、孫悟空。そしてーーゼノ。先に逝くぞ、ザマス」

 

 その言葉を最後にブラックはゆっくりと重い瞼を閉じた。

 

「……? ブラック……?」

 

 金色の光の粒子となって、ブラックの肉体は一瞬で宙に霧散していく。

 

「ブラックゥウウウウウウウウ!!!!」

 

 無の世界にて、孫悟空の絶叫が響く。

 

 そしてーー静かに頬を涙で濡らすゼノが、ブラックの肉体を象っていた光の粒子が天に還っていく様を見上げて見送る。

 

 涙がこぼれないように。

 

 ブラックに笑わせないために。

 

「さらばだーーゴクウブラック。もう一人の私よ……!!」

 

 消えゆく無の世界で、一人の戦士が逝った。

 

 その男は独善の塊であり、視野が狭く、己の目的の為ならば無辜の存在を平気で手にかける冷酷非情な存在。

 

 その滅びを望まれ、憎まれた神。

 

 そんな神を、それでも悟空とゼノは見送った。

 

 決してーー忘れないために。

 




次回、ついにザマス編が終わります。

最終回を終えた後に

長いストーリーにお付き合いくださり、ありがとうございました。

閑話を挟んだ後に、ドラゴンボール超 ブロリーに続きます。

よろしくお願いいたします。
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