本編では結局やり合う機会が無いので
こちらで、ぶつけてみました(´ー`* ))))
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早朝、パオズ山の山頂にて。
二人のよく似た顔立ちに体格をした青年が向かい合っている。
山吹色の道着を紺色の帯で巻き、紺色のインナーと手首にバンテージ、黒いブーツを履いた黒髪黒目の二人。
片方は左右非対称に飛び跳ねた独特な髪型であり、もう片方は一房だけ右目側に垂れて全体的に逆立った髪をしている。
孫悟空と孫悟飯である。
「悟飯、オメエの本気。オラに見してみろ!」
「…行きますよ、父さん!!」
鋭い目付きになって口もとに笑みを浮かべている両者。
それを見るのは孫悟空とソックリな髪型と顔をした山吹色の道着のズボンに紺色のインナーの上からベルトタイプの肩当ての鎧を付けた左頬に傷があるバンダナの男。
彼の肩には同じ顔をした山吹色の道着に長袖のインナーを着た少年がいる。
「よく見とけよ、悟天。お前の親父と兄貴の強さをよぉ」
「はい! 先生!!」
仲良さげな二人は祖父と孫ーー見た目は親子にしか見えない程に若々しいーーバーダックと孫悟天である。
「まったく。孫に甘いのは何処も変わらんな」
それを呆れたように見ているのは緑色の肌をした2メートルを優に越える長身の男。
孫悟空のライバルにして、孫悟飯の師匠ーーピッコロ。
「…さて、お前たち程の男が推薦する悟空の息子。はたして大会に参加させるに相応しい実力かどうか。破壊神であるこの僕が直々に見てあげよう」
重々しい空気を出しながら低い声で語るのは猫のような顔を持つ破壊神ビルス。
その横ではピッコロ程ではないが二メートルに迫るほどに背が高く青い肌をした中性的な顔立ちの男が口もとに手を当てて上品に笑う。
「あらあら、ビルス様ったら。悟飯さんやピッコロさんが悟空さん達並みに強いと知って浮かれていたじゃありませんかぁ」
「うるさいな、ウイス! 僕はまだ、この目で直に見てないんだ。コレは見る価値があるだろ。いや、ホントに慎重に慎重を重ねるくらいでなければな」
全王のはしゃぎようから察するに悟飯とピッコロの実力が悟空並なのは間違いない。
ならば、戦略をどう組み立てようか。
勝ち抜き戦ならともかく、団体戦ならば誰を順番に出すかで勝率が決まる。
先鋒戦、次鋒戦、大将戦などの形式ならば勝ちの数で勝敗が決まるのだ。
戦士は何人まで出場できるのか。
ルールはどのようになるのか。
優勝なんて実力的に悟空一人で間違いないのだ。
その悟空と同レベルの戦士がブロリー、ベジータ、バーダックにターニッブ。
ここへ更に悟飯とピッコロまで加わるーー。
破壊神である自分とまともに殴り合えるレベルの戦士がこれだけ居るのだ。
負けるわけないだろ。
正味、ビルスは他の宇宙の戦士達のことを。
ひいては全宇宙武道大会のことを完全に甘く見ていた。
「確かに悟空さん達並みの戦士が、そうそう揃うはずはありませんが。悟空さん一人で優勝できるような楽な大会にはしないでしょう。何せ、全王様だけでなく大神官様が手配されておられるようですし」
そんなビルスに釘をさすようにウイスが淡々とした表情で声を上げる。
その言葉にビルスは表情を歪めた。
「それはそうだがーー。どう考えても、我が第7宇宙は安泰だろ。この僕を相手に組み手とはいえ一対一で引けを取らない連中なんだよ? 自慢じゃないが僕を相手に一騎打ちで戦えるヤツなんて破壊神でも、そうはいない」
「破壊の力を使っても搦め手でなければ、一本取られちゃいますからね〜」
「……一言多いんだよ」
苦虫を噛んだように顔を歪めてからビルスは気を取り直すように告げる。
「だけど、真っ向勝負で僕が不利なのは事実だ。奴等を相手にするには本気で勝ちに行かないと勝てないからね」
真剣な表情に変わるビルスにウイスも淡々と表情を鋭いものに変える。
「…そう。ビルス様を相手に真っ向勝負とはいえ、有利に戦える悟空さん達。存分に楽しませていただきましょうかね。今回も」
「真っ向勝負だけでは勝てないーーか。だが、悟空達を相手に搦め手を使えるだけの戦士がいるものかどうか。にわかには信じ難いね」
ビルスの独り言に応えるように、孫悟空が蒼銀の炎のようなオーラを纏う。
同時に髪は天に向かって逆立ち、水銀の光を放つ。
黒い瞳は目付き鋭くアイスブルーに変わる。
「お、お父さん、凄い。気は感じられないけど、物凄いパワーを感じるーー!」
そのパワーの凄まじさは、見ている悟天が神の気を感じられないのに目を見開くほど分かるもの。
「更に磨きがかかっているね、超サイヤ人ブルー」
「ええ。ビルス様、コレは」
ウイスが真剣な表情で瞳を見開いた。
蒼銀の炎は緩やかに悟空の体内に納められていく。
髪の色が水銀から更に濃い蒼銀へ、アイスブルーの瞳は黒い瞳孔が開き、キラキラとした光沢が宿る。
パッと見は溢れるオーラを納めただけに見えるが、感じる力と何より髪と目の色に変化がある。
「超サイヤ人ブルーのパワーを肉体に封じ込め、常にフルパワーで戦えるようにしたのか?」
「なるほど。超サイヤ人ブルーは、常にあのオーラを身に纏っているから見た目こそ派手だが。その実は無駄にエネルギーを垂れ流している。それを回避するために悟空は身に溢れるオーラを体内に封じ込め、攻撃をする一瞬だけ爆発させようとしているということか」
鋭い黒目で睨みつけるようなバーダックの隣でピッコロがクールに言い放つ。
「なあ、ウイス? 教えてくれないか」
「何をーーでしょ?」
「悟空のヤツが優勝できない大会って、どんなだ?」
細い目をギラギラと見開き、牙をむき出して危険な笑みを浮かべているビルス。
ウイスは何も応えずに静かに姿勢を正す。
(確かにーー悟空さんの貪欲でストイックな姿勢は、今までの彼にはなかったもの。それでもお父様や全王様が楽な大会を組むとは思えないんですよねぇ)
「名付けるとすれば、超サイヤ人ブルー進化と言ったところでしょうかね?」
心の内の声の代わりに出た言葉は今、悟空が変身した形態を指している。
「父さん、新しい超サイヤ人ブルーですね」
圧倒的な力を放つ父に悟飯は軽く眉を上げただけで不敵な笑顔を見せている。
「へへっ、実はベジータが先になってんだけんどな。超サイヤ人4になるには、まだ神の気が足りねえみてえだ」
自分とは違う神の魂を持つ孫悟空ーー。
彼は尾を持たずに超サイヤ人4に変身してみせた。
つまり、神の気を極めれば尾が無くても超サイヤ人4になれるのではないか、というのが悟空とベジータの推論だった。
「…なるほど。超サイヤ人4になるためにブルーを極めようというわけですか。父さんは、相変わらず凄いなぁ」
「オメエもだ、悟飯。オメエも超サイヤ4になんのを諦めてねぇんだろ? 抑えちゃいるが、感じる気が桁違えに上がってっからな」
悟空の言葉に悟飯はニヤリと笑みを深めて白い気を全身に纏い高めていく。
目つきが鋭くなって輪郭線のあるものに変化し、悟飯は悟空を睨みつける。
「父さん、どうですか? コレが今の俺の全力です」
青いスパークが走り、強烈な気を纏う悟飯の圧力はビルスの目を見開かせる。
「コイツ…! ターニッブと同じで変身せずに戦闘力を神の次元にまで高めることが、できるのか!?」
「…超サイヤ人に変身せず、その力だけを引き出している。肉体に与えられる負荷は最小限に。且つ戦闘力は最大限に引き出す事を目的とした力の解放。如何に老界王神さまの儀式を受けたと言っても此処までのレベルに至るには、かなりの修練を積んでいるはず」
「コレは、ホントに期待しちゃって良いんじゃないか!」
目を見開いて喜ぶビルスにウイスが瞳を細めて怪しげな笑みを浮かべる。
「ウフフ、コレは素晴らしい闘いになりそうですね。ではビルス様、予め言っておきますね」
「? なんだい?」
キョトンとするビルスにウイスが微笑んだまま告げた。
「途中参戦は、無しですよ」
「……! わ、分かってるよ!」
釘を刺されて少し焦った様子のビルスにウイスが呆れたような表情になる。
そんな破壊神と付き人を無視して父と息子は構え合う。
悟空は斜に足を置いて左手を顔の前に出し、右拳を腰に置いて腰を落とす右構え。
悟飯は悟空と鏡写しのように左構えを取る。
微動だにしない両者。
「…フン。打ち込む隙が互いに無ぇな」
「なら、キッカケを与えてやるか」
バーダックの言葉にピッコロが足下の石を掴み上げると手短かな岩に向かって軽く投げる。
コッという甲高い音が静まり返った平野に響くと同時、悟空と悟飯が構えたまま、同時に姿を消す。
「え? えっ?」
思わず悟天が左右を見渡すも、見つけられずバーダックとピッコロを見上げると二人は顔を空に向けている。
悟天も、そちらに顔を向けると互いの拳を顔の前に置いた手で掴み止めた姿勢で力比べをしている父と兄がいた。
「お父さん、兄ちゃん!」
悟天が名を呼んだのを合図にするかのように、二人は火の出るような拳と蹴りを連打で打ち合う。
悟飯の左ハイキックを、突き出していた右拳を顔の前まで引いて止め、返しの左ミドルキックを放つ悟空。
悟飯は掴んでいた拳が引いたと同時に肘打ちを自分の脇腹の前に構えてミドルキックを止める。
顔に向かって右ストレートを放つ悟飯に対し、悟空は当たる寸前で左に見切ると返しの右ストレートを放つ。
顔の前に置いていた悟飯の左拳に軽く拳の内側を払われて狙いを逸らされ、悟飯は払いに使った左拳をそのままボディに向かって突き出す。
腹に当たる寸前で左膝で下から蹴り上げられ、狙いを外されると悟飯は左拳を手元に引いて右左のストレートを同時に放つ。
悟空は左拳を顔の前に置いて先に迫って来た右ストレートを脇に流すと同時に前に踏み込みながら真っ直ぐに突き出した。
互いの顔に左ストレートが炸裂し、顔を仰け反らせる。
「クッ!」
「チィッ!」
すぐに元の位置に顔を戻し、悟飯が烈火の如き怒涛の連撃を放ってくる。
悟空も負けじと拳と蹴りを打ち返す。
互いの打撃が攻防一体となり、両者先の一撃以外にクリーンヒットが出ない。
「パワーやスピードもさることながら、素晴らしいテクニックだ。お互い攻撃を放つと同時に防御の構えにもなっている」
「コレは長引きますね。テクニックの勝負は頭脳ーーすなわち心理戦でもある。精神力が保たなければ一瞬で押し切られてしまう」
「それを補って余りあるパワーが両者にはあるからね。クリーンヒットが出始めたら一気に決着がつくーーか」
攻撃を繰り出すと同時に防御の構えにもなっている悟空と悟飯の動き。
ならば、構えを崩した方が一気に畳み込まれる。
ビルスは、そう見ていた。
「フン。どっちもウォーミングアップにしちゃ、まあまあだな」
「…そうだな。そろそろ、ギアを変える頃合いだ」
バーダックの言葉にピッコロが頷く。
悟天がキョトンと二人を見回した後、赤と青の混じったオーラが悟空から生み出された。
「界王拳ーー20倍だぁっ!!」
「…な!?」
一瞬で気を桁違いに倍増した父に悟飯が呆気に取られたような表情になると、それまで互角だった打ち合いが一気に悟空優勢に変わる。
ラッシュの勢い、スピード、手数が悟飯をして手が付けられない程に速い。
( コレが、界王拳。防御、スピード、パワー、打たれ強さの全てを強化する奥義。父さんの動きを見てからじゃ、ガードが間に合わない!!)
鈍い打撃音をパオズ山に響かせながら、しかし悟飯は冷静に黒の瞳を悟空に向けている。
「どうした、悟飯。反撃して来ねえんか?」
「…ええ。今は遠慮させてもらいます」
「守ってばっかじゃ、オラには勝てねえぞ!!」
凄まじい連撃を放ちながら叫ぶ悟空に、悟飯も脂汗を額から滲ませながらガードに専念する。
実際にビルスをして今の悟空には、ほとんど攻撃を打ち込む隙がないと見える。
「悟空のヤツ、本気出し過ぎじゃないのか?」
「ええ、確かに。ですが、気付きませんか? 界王拳を発動されて防御一辺倒になりはしましたが、悟飯さんは悟空さんの攻撃に未だクリーンヒットしてないんですよ」
「…言われてみれば」
悟空の派手な動きに気を取られていたが、悟飯は悟空の動きについて行っている。
あの悟空がガードを崩せないのが何よりの証拠だろう。
「界王拳は確かに強力な技ですが、倍率を上げれば上げるほどに体力をゴッソリと持っていかれます。後、どれだけパワーを落とさずに技を繰り出せるかーー!」
「悟飯は、悟空のスタミナ切れを待ってるってのか?」
ビルスが目を見開く中、バーダックが淡々と告げる。
「まあ、悟飯にしちゃガードを崩されたら一瞬で終わっちまうんだ。カカロットの攻めは甘くねえからな」
「…ああ。悟飯に必要なのは、本質とは正反対の冷静な判断力。それも氷のようなーーな」
「少し、勿体ねえ気もするがな。アイツの激情を封じちまうのは」
バーダックの言葉にピッコロがニヤリと笑う。
「そう。激情こそ戦士の要。爆発させる瞬間まで溜め、時が来たら一気に開放するーー。悟飯の本質はやはり炎だからな」
当然、悟空は悟飯の狙いを読んでいる。
読んだ上で悟飯のガードを崩すために真っ向から攻めたり、フェイントを折り混ぜて背後に回るなどしているが悟飯のガードは崩れない。
「オラの動きだけじゃねえ。考えてることも全て見通されてる感じだ」
「父さん。俺は父さんの動きを誰よりも見てきました。誰よりもそばで父さんの考えや感じ方を。父さんは俺の中で一番の目標だから。俺は誰よりもーー父さんより、父さんを知ってるつもりです」
「へへっ、なるほどなぁ。じゃあよ、其奴を少し変えてみっかな!」
言うや否や、悟空は悟飯の前に突っ込む。
悟飯はガードの構えをしたまま、背後に目をやる。
目の前の悟空は残像。高速移動で背後に現れた悟空をとらえる。
( 違う!!)
咄嗟に悟飯は自分の後頭部を庇うように右腕を上げる。
ガードに上げた腕に悟空の飛び回し蹴りが炸裂した。
「悟空の動きを読み切ったのか!?」
「…いいえ。今のはまさに勘と呼ぶのが正しい。防いだのは事実ですが」
ビルスが目を見開き、ウイスが解説する中、体勢が崩れた悟飯の目の前に悟空が踏み込んでくる。
「……クッ!?」
「防ぐだけじゃ、オラには勝てねえ。本気を見してみろ、悟飯!!」
姿勢を低くしながら、懐に踏み込んでくる悟空。
右ストレートを紙一重で躱すも、悟飯の頰に赤い血の筋が生まれる。
正に天衣無縫の攻め。
悟空は、悟飯の予測の全てをなぞりながらも、なお覆してくる。
「コレがーー父さん。孫悟空の実力!!」
上、中、下に散らされる左回し蹴りを捌きながら悟飯は引きずられるように後退する。
このままでは突破されるのも時間の問題。
更に激しく動く悟空の動きを見て悟飯は目を見開く。
( まさかーー! 俺は、父さんのスタミナを見誤っているのか?)
20倍界王拳は、肉体にかかる負荷が尋常じゃない。
短期決戦にしか使えない技のはずだと悟飯は見る。
( 自分を信じろ。最後までーー!)
悟空の動きや挑発に乗せられるな、と自分に言い聞かせながら、ガードの姿勢を崩さない。
すると、しばらくして悟空の身に纏うオーラが消えた。
「……グッ!?」
跳び上がりながら拳と蹴りを繰り出していた悟空は、一旦後方に飛び下がると距離を置いて悟飯に構える。
「界王拳を解除したのか!?」
「…いいえ。解除せざるを得ない程に肉体に限界が来たようですね」
ビルスにウイスが応えたところで、バーダックが静かに悟飯を見つめる。
( 悟飯。相手の狙いを読み違えるなよ)
冷静な声を心の中で上げ、バーダックはチラリと肩で息をする悟空を見つめた。
濃くなっていた超サイヤ人ブルーの髪の色が元の明るさに、瞳も青緑色の瞳孔の無いものへと戻っている。
何より、息が上がり始めた悟空の顔には汗が浮かび上がっていた。
「…クッ!!」
ガクリッと膝が揺れて崩折れる悟空の目の前に悟飯が踏み込む。
「貰ったぁああっ!!」
白い気を吹き上がらせ、悟空の目の前まで来ると悟飯はフルパワーで悟空のボディに拳を打ち抜く。
「ぐぁあっ!!」
ガードしようにも間に合わず、まともに拳打を受ける悟空へ、悟飯が手を緩めずに拳と蹴打を叩きつけていく。
ほとんどノーガードになりながら、悟飯の打撃を浴び続ける悟空。
打撃を食らうたびに後方へ顔を仰け反らせ、血を口から吐く。
「お、お父さぁああんっ!!」
情け容赦のない打撃に思わず悟天が悲鳴をあげるも、悟飯は手を緩めずに拳を叩きこむ。
「……父さん。勝たせてもらいます!!」
体が揺れ、ダメージに血塗れになる悟空に向けて悟飯は更に気を高め、拳を握って叫んだ。
「龍翔拳ぇええん!!」
右ストレートをボディに叩きこみ、顎が下がったところを全力の左アッパーで打ち抜く。
悟飯版の龍拳。
確実性を取るため、悟空のように全身で打ち込むような真似はせず、右ストレートで相手の動きを止めてから顎に向かって跳躍しながら拳を叩きこむ。
ターニッブの使う真・昇龍拳に酷似した一撃。
「行けぇえっ、悟飯ぁああんっ!!」
「お父さぁああんっ!!」
「……チッ、やはりカカロットの方が上手か」
ピッコロ、悟天が叫ぶ中、バーダックが舌打ちと共につぶやく。
悟飯の跳び上がりながらのアッパーを悟空は紙一重で顔を横に倒して避けたのだ。
「なっ!?」
「…へへっ、油断したな。悟飯!!」
全力の一撃は、ガードを崩さなければ放てない。
それを見越して、孫悟空は敢えて攻撃を受けていた。
( まさか! 俺の打撃を浴び続けていたのは、自分が余裕が無いことを演出するためのフェイク!?)
「…待ってたぜ」
振り切ってしまった拳は戻しようがなく、悟飯の耳には悟空の静かな声が届いている。
「オメエがガードを開ける、瞬間をなぁ!!」
同時に悟空の全霊の右ストレートが悟飯の左頬を捉えている。
( コレは父さんの! ーー龍、拳っ!?)
気付いた時には遥かに後方へ吹き飛ばされている。
たった一撃。
無防備な状態で、まともに食らった一撃が一気に自分の体力を奪っていった。
「悟空のヤツ! 演技派じゃないか!! わざとピンチを演出して相手に隙を作らせるなんて!!」
「逆を言えば、そこまでしなければ悟飯さんのガードを崩せなかった、ということですね」
興奮するビルスと嬉しそうに笑うウイスを他所にピッコロが戦慄した表情で悟空を見つめる。
「あ、あの野郎。悟飯のガードを崩すためにわざと界王拳で無茶して、スタミナ切れを演出しやがったのか!?」
「……俺達は戦闘力が拮抗した組手ばかりしてるんでね。相手の裏をかかないと、まず勝てねえんだ」
「兄ちゃん…っ!!」
バーダックが淡々と自分達の普段の組手を思い返し、悟天が兄の危機に目を見開く。
全身を地面に叩きつけられた後、悟飯がゆっくりと立ち上がる。
「父さんは、やっぱり凄いなぁ」
ニコリと笑って悟飯は悟空を見つめる。
対する悟空は不敵に笑いながら、超サイヤ人ブルーの状態から黒髪黒目の状態に戻る。
「…悟飯。こっからが、本番だ!!」
これに悟飯も頷いて構える。
「分かりましたーー!」
両者の足元から黄金の炎のようなオーラが噴き出し、黒目が翡翠に黒の瞳孔が現れたモノへと変わる。
オーラが全身に纏わると、悟空の髪は天に向かって逆立ちすると同時、両者の髪は黄金に輝き始めて炎のように揺らめく。
桁が違う戦闘力を叩き出していた二人は、更に無限に気を高めていくーー真超サイヤ人へと。
「ーーコレが、俺の全力だ! 本気で来い!!」
「本気で行きますよ! 父さん!!」
互いに向かって叫んだ後、拳を振りかぶって中央でぶつけ合う。
互いのパワーが互いの力を高め合い、一気に臨界点を超えていく。
「真超サイヤ人ーー。もしかすると、大会では使用禁止になるかもしれませんね」
「!? な、何故だ!?」
ビルスが思わず詰め寄ると、ウイスが淡々と述べる。
「単純な話です。あまりに強すぎると全王さまが退屈がるかもしれません。まあ正式に言われてはいませんが、やはり武闘大会に向けるならば超サイヤ人ブルーを鍛えた方が良いかもしれませんね」
「…直前で言われるかもしれない訳か。確かに全王さまや大神官さまなら有り得るな」
一抹の不安を語る破壊神と天使。
それすらも吹き飛ばすかのように、二人の黄金のサイヤ人は猛々しく叫んでいた。
「…そうだ、悟飯。セルん時から俺の目の前にゃ、オメエが居たんだ!!」
「父さんーー! 俺の全力で、今日こそ父さんを超えてみせる!!」
激しくぶつかり合う二人は、同時に腰だめに両手をたわめて青い光を作り出す。
「「波ぁあああああっ!!!」」
互いに両手を突き出し、青い光を押し合う。
天井知らずの気の上昇と、感じられる余波を見てビルスは頰に一雫の汗をかいた。
「あ、有り得るな。使用禁止ーー!」
そんな破壊神の心配をよそに、孫悟空と孫悟飯はパオズ山にて空前絶後のパワーをぶつけ合っていた。
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閑話シリーズも、ちょくちょくリクエストに答えていけたらなぁと思います(´ー`* ))))