お楽しみください(´ー`* ))))
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ブロリーの修行 サイヤの悪魔と明王
孫悟空は、いつもどおり破壊神ビルスの下で修業を行うために、自分の父・バーダックと息子の悟飯、ライバルのピッコロを連れてウイスの待つカプセルコーポレーションへと足を運んでいた。
既にウイスとベジータは準備を済ませて待機している。
だが、集まったメンツの中でブロリーだけが居ないことに、悟空は首を傾げた。
「よぉ、ベジータ? ブロリーは、どうしたんだ?」
「奴なら惑星サイヤに向かった」
「ん? なんでだ?」
ターニッブの生まれ故郷にして、第6宇宙と第7宇宙の境目にある特異点に位置する惑星。
惑星ベジータとは違う、もう一つのサイヤ人達が住まう星である。
「…力の使い方よりも、今はサイヤの技で拳を磨き上げる事の方が重要ーーだそうだ」
「サイヤの技ってぇと、ターニッブやガーキンの技か。ジュードに教わるんだな」
「そのようだ。ウイスに教わるのは、技を修めた後だと言っていた」
悟空が不敵な笑みを浮かべている。
「ベジータ、ブロリーの奴、桁違いに強くなって帰って来そうだな?」
「…奴の才能と学習能力、勤勉さは他に類を見ない。俺たちも遊んでる場合じゃないぞ」
「ああ!!」
ベジータの言葉を聞き、黒い瞳に闘志を燃やして孫悟空は頷いた。
ーーーー
惑星サイヤ。
特異点と呼ばれる宇宙の境目に存在する星は、様々な時空や事象が交わる場でもある。
2メートルを越える長身の男、ブロリーはサイヤ王の宮殿に来ていた。
星を救った英雄の一人であるブロリーは、即座にサイヤ王ジュードの居る謁見の間に案内された。
「…そうか。放浪癖のあるターニッブはともかく。ガーキンも居ないのか」
「…フフ、地球ならば組み手相手など幾らでも居るだろうに。わざわざ我がサイヤに訪れた理由が技を学びたい、とはな」
王の座から立ち上がり、ブロリーの目の前で笑うのは、180を越える長身に、逆立った髪と二房の前髪を左右に垂らしたサイヤ人。
ベジットと瓜二つの顔を持つ、若きサイヤの王ジュード。
「カカロット達の亀仙流とやらを学ぶのも悪くないが、波動を練るお前達の修行が、今の俺には必要な気がしてな」
拳を握り、ブロリーはジュードを見据える。
「波動か。気を練るだけでなく、その働きを変化させる力の流れを学びたいーーと?」
「ああ。お前やターニッブ、ガーキンは己の気を波動によって雷や炎に変える。アレを学べば、短時間で強力な気を練る効率が良くなるはずだ」
超サイヤ人4の倍加や大猿の力は通常の超サイヤ人とは原理が異なる。真・超サイヤ人の能力。他の形態の力を引き出して重ねがけ、というのは力を変動させる波動を学べば消費するスタミナが相当マシになる、という訳だ。
「分かった、付き合おう。俺も最近は星間内の外交ばかりで運動していないからな」
サイヤ王ジュードはマントを脱ぎ捨て、黒の半袖シャツに白い道着のズボンを黒帯で結び、黒のブーツを履いた出で立ちへと変ずる。
コレにブロリーも頷き、ゆっくりと時の狭間ーー死者の都へと至る入り口ーー闘技場に向かっていった。
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何処までも続く荒野、天に届く程に高い階段、そして朝焼けの空。
時の狭間と呼ばれる特異点。
その荒野で二人の長身の黒髪のサイヤ人。
2メートルを優に越えるブロリーと、180センチを上回る背丈のジュードが向かい合う。
「アレから、鍛えているようだな」
「まあな。王の仕事は頭脳は勿論だが体力がモノを言う。体力があれば長時間の事務仕事にも耐えられるからな。それにーー闘いを肯定するわけではないが、守る為の手段として武力があるのも、俺は否定しない」
「フンーー! 楽しめそうだ」
構えを取る両者。
ブロリーは左手を肩の高さで前に出し、右拳を顎に置いて爪先立ちで斜に構える。
対するジュードは、ターニッブやガーキンとは異なる構えを見せた。
拳を握るのでなく、開き。
爪先立ちで紙を敷くように軽く踵を上げるでなく、地に足全体を付けて、羅漢仁王の如き構えを取る。
「…その構え。確か怨霊が模ったリューベの紛い物と同じ構えだな」
「如何にも。サイヤ王家伝来の構えだ。初代リューベから脈々と受け継がれている。この構えを知る者は、王であるという伝説のようなもんだ」
打ち込んで来いーー。ジュードは目で語った。
瞬間、ブロリーがフットワークを駆使しながら踏み込む。
長い手足もさることながら、足捌きもバーダックや悟空に勝るとも劣らないスピードでジュードの目の前を滑る。
前に出した左拳を真っ直ぐに顔へ三発、軽く距離を測るように放つ。
ジュードは前に出していた左手でブロリーの拳を左右に捌いた。
「フンーー。心眼、か。ターニッブと同じ風の拳を?」
硬い自分の拳を完全に無効化し、捌く。
自分の波動を腕や掌の一点に集め、敵の打撃が当たるタイミングで弾く事で無効化する。
タイミングを誤ればまともにダメージを食らうも、成功すれば一気に反撃できる。その見切りの技術こそターニッブがよく使う風の拳・心眼。
しかし、ジュードは自身の振るう拳は風ではないと述べた。
「そのとおりだが、俺の拳は風にあらず。全てを無に還すーー無の拳なり」
足を踏ん張り、腰を落とす受けの構えはターニッブのソレと同じ。
「アイツのモノマネとは違うというのなら、見せてみろ!!」
踏み込んで右拳を振りかぶるブロリーに対し、ジュードは右掌を突き出して中腰の姿勢のまま右足を踏み込んだ。
「!?」
気付けばブロリーは後方へ弾き飛んでいる。
(今、一瞬見えた青い光は、波動拳ーー?)
鋭く目を細めながらブロリーは地面に両足を叩きつけ、後方に滑りながら着地する。
掌から一瞬だけ放たれた光と、この衝撃は間違いなくターニッブやガーキンと同じ波動拳だ。
だがーー。
「…パッと光ったようにしか見えない、波動拳だと?」
その弾速は、ターニッブの雷光波動拳やフリーザのデスビームをも凌駕している。
まるで真・超サイヤ人フルパワーの悟空の通常打撃のように、本当に見えないのだ。
「無の波動とは、其処には無く。されど有るもの。気配なく、動きなく、されど有る。これぞ剛波動拳」
「ぬかせ!!」
両腕を顔の前でクロスにガードさせて、強引に前に出るブロリー。
「見えず、見切れず、当たるまで感じないのであれば、踏みにじる!!」
突き出された掌と大地を踏み込む音が鳴り響くと同時、ブロリーの肉体に波動拳が炸裂している。
「ぐぉおおっ!!」
悲鳴のような獣のような雄叫びを上げて、ブロリーが突き進んでくる。
「ダメージを無視して来るか。何というタフネスよ」
唸りながら後ろに下がるジュードに、ブロリーがニヤリと笑い、右掌を横に大きく振りかぶる。
「やはり、ここに来て正解だ。その技を一つでも多く俺のモノにしてみせる!!」
言うや否や、右掌に緑色の光の球が生まれ、悟空の元気玉のように世界から気を吸収して輝きを増していく。
「行くぞーー! イレイザーキャノン!!」
ブロリーはサイドスローで光の球を放つ。
弾速はジャイロ回転しながら速くなり、ジュードに迫る。
「剛波動拳ーー!!」
対するジュードも右手を大きく振りかぶり、正拳突きのように掌を前に突き出して波動拳を放つ。
「! 波動拳ーー!?」
今度はちゃんと見える気弾として放たれた波動拳に、ブロリーが目を見開く。
(俺を舐めているのか? 見えない波動拳を撃てるくせに何故、普通の波動拳を?)
答えはすぐに分かる。
ジャイロ回転するブロリーの光弾が、ジュードの波動拳に一方的に掻き消されたのだ。
「何だと!?」
目を見開くブロリーの正面に波動拳は迫り、ブロリーはガードして受ける。
強大な爆発を起こしながら、ブロリーは波動拳の正体をじっくりと見据えた。
「なるほど。通常の波動拳と見えない波動拳を重ねているのか。器用な真似をするーー!」
腕が痺れているのを理解し、ニヤリと笑うとブロリーが両腕を大きく上下に広げて、胸の辺りに巨大な光弾を作り上げた。
ソレを両掌を上と下から挟むように持って腰だめに構え、更に練り上げる。
「波動拳ーー! いや、かめはめ波だったかな?」
強烈な光を放つブロリーに笑みを浮かべてジュードも、波動拳を腰だめにたわめて練る。
「俺も似た技を覚えているからな。喰らえ、ギガンティックゥウウ・オメガァアアア!!」
強大な青緑の光線を正面のジュードに向けて放つ。
破壊そのものの光を。
「その一撃、打ち破ってやろう。波動ぉおお! 至高ぉお拳ぇえんっ!!」
同時、ジュードの放った波動拳もブロリーに勝るとも劣らない大きさ、強さ、スピードで放たれる。
緑と青の光線が、まともにぶつかり合いーー相殺。
「ーーっ!?」
だが、ブロリーの黒い目は驚愕に見開かれる。
片足立ちをしたジュードが、猛スピードでブロリーの正面に来ている。
(コレはーー阿修羅閃空!?)
「閃空ーー剛衝波ぁあ!!」
ジュードが叫びながら、ブロリーの懐に踏み込み、左掌に波動拳を練り上げてボディを打ち抜いた。
「ぐぅお??」
(コイツーー! あれだけの気を撃ち抜いておいて、隙がまるで無いーーだと!?)
目を見開くブロリーに、ジュードが左脚の膝蹴りをボディに叩き込んでから、上・中・下段廻し蹴りが同時に放って来る。
耐え切れず後方へブロリーの巨体が仰け反る。
更にジュードの右拳が下から連続で突き上げられた。
「奥義ーー九頭龍裂破ぁあ!!!」
二連で放たれた昇龍拳はブロリーの肉体を地面から引っこ抜いて上空へ弾き飛ばし、同時に慣性の法則を思い出したかのように衝撃がブロリーの肉体を襲った。
「ぐぁああ!!!」
悲鳴を上げながら、地面に背中から叩きつけられるブロリー。
ジュードは肩で息をしながら、ブロリーを見下ろした。
「どうかな? サイヤ王の技は」
仰向けに倒れていたブロリーは、ゆっくりと立ち上がる。コレにジュードは苦笑いを浮かべていた。
「こんな程度の威力では、お前の修行になるかどうか」
ダメージを全く受けていない様子のブロリーに、ジュードは溜め息を吐きながら告げる。
「…ブロリー?」
ブロリーは、ジッとジュードを見つめるとニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「な、なんだ? その、嫌な笑いはーー?」
ブロリーは笑みをそのままに、ジュードに告げた。
「お前の実力は、こんなものじゃない。サイヤ王よ、お前が全てのサイヤ人の長を名乗るなら、その技に相応しい力を持てーー! お前から技を教わる代わりに、お前には俺やカカロット、ターニッブと同じ、真・超サイヤ人に至ってもらうぞーー!!」
「…俺が、ターニッブやリューベと同じ力に目覚めーー至る、と?」
茫然と目を見開くジュードに、ブロリーがニヤリと頷く。
「それは、良いな! うん、実に良い!!」
コレにジュードが子どものような無邪気な笑顔で頷く。
後にサイヤの明王と呼ばれるジュードと、伝説のサイヤ人ブロリーの修行が始まった。
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荒野に穏やかな風が吹く中、超サイヤ人のジュードは仰向けに倒れて黒髪に戻り、肩で息をしながらブロリーに語りかける。
「まったく、凄まじい強さだな。勝てる気がしないよ、お前には」
「…フン。だが、お前とて内に秘めた力を開放すれば直ぐに追い付くだろう。お前の使う技のキレ、隙の無さ、そして多彩さは、あのリューベに匹敵している。真・超サイヤ人に成れれば、それこそ敵はない」
同じく超サイヤ人から黒髪に戻って楽しそうに笑うブロリーに、ジュードは弱ったような笑顔を向けて語り出した。
「俺はな、ブロリー。親父に王であれ、と無理矢理に鍛えられたんだ。別に強くなりたかった訳ではない。王になりたかった訳でもない。ただ王の家に生まれて選ぶ道はなく妹のプリカを守る為にと、強くなろうとしただけだ」
「……王、か。ベジータは知らんが、奴の親父の王は碌な奴ではなかったぞ。プライドと見栄、謀略の塊だ。ベジータのように自分を鍛えて腕を磨くような器がアレにあったとは思えん」
「…ベジータが、耳が痛いと言っていたが。お前とベジーターーいや、ベジータの父君とは何か?」
ブロリーから僅かに怒りの声色が聞こえ、思わずジュードは問いかけた。
「昔の話だ。しかも、当人はさっさと死んでやがる。生きていたなら一発くらいは殴ってやるが。…俺にとっては、その程度のものだ」
自嘲気味に笑うブロリーにジュードは、それ以上は聞かずに語りだした。
「なあ、ブロリー。俺達サイヤ人は、何故強くなろうとするのだろうな? 拳を交えれば、戦えば戦うほどに強くなっていく。その果ては無いというのにーー」
「……昔の俺なら考えるまでもなく、こう言っただろう。悪魔だから、だとな」
「悪魔、か?」
問いかけるジュードに頷き、ブロリーは答えた。
「俺の故郷ーー惑星ベジータのサイヤ人は他の惑星に攻め入り、住人や生物を皆殺しにして星を高く売っていた。宇宙には、自分の星を欲しがる奴は幾らでも居るからな。そんな生業をしていたサイヤ人を、今度は軍に取り込む連中が現れた」
「……」
「力で他者から命や資源を奪っていったサイヤ人が、更に強大な力にねじ伏せられたんだ。自業自得だ。そして馬車馬のようにこき使われた挙句、ソイツに滅ぼされた…!」
悲しみと寂しさを微かに感じる声音。
だが、ブロリーは笑みを浮かべていた。
「同じサイヤ人だが、無様な奴等だ。ジュードよ、踏み躙られたくなければ強くなれ。ねじ伏せられたくなければ力を持て。それが惑星を守る王の務め、だろう?」
「……力が無ければ守ることも出来ぬ。守る為には闘わねばならぬ、か」
「千年に一人現れ、血と殺戮を好む伝説の戦士。初めて超サイヤ人になった奴は、強大な力に自我を飲み込まれたのだろう。だから俺は力で劣るカカロットやベジータに負けた。そしてターニッブに、力と強さの違いを諭された」
ジッと告げてくるブロリーにジュードは向き直る。
「忘れるなよ、ジュード。力に飲み込まれた奴はただの負け犬だ」
「…ああ。俺は、俺の内にある超サイヤ人という鬼に、負けない。その力を強さに、必ず変えてみせる」
その言葉に、ブロリーは満足げな笑みを浮かべた。
ーー ならば、我と死合うべし。
雷鳴のような声が辺りに響き、強大な黄金の炎が辺りに吹き荒れる。
「これは…! まさか、貴方は生きて……!?」
「…流石は鬼! お前のような奴を神出鬼没、と言うんだったな。リューベ!!」
ブロリーがニヤリと笑みを浮かべて吹き荒れる炎の中心を見れば、濃紺の道着を荒縄で締めた超サイヤ人が、冷徹に瞳孔が現れた翡翠眼で睨みつけてくる。
強烈な破壊衝動と殺意を伴って。
「我こそは、拳を極めし者! 真なるサイヤ人リューベ!!」
「フン。ならばーー俺は悪魔だ!!」
黄金の炎を身に纏い、黄金に変化した髪を悟空達と同じような逆立ち方をさせて、ブロリーは黒の瞳孔が現れた翡翠眼に変化する。
ブロリーの修行は、続く。