ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

98 / 116
此処までが、ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人として挙げた作品です。

次回からドラゴンボール超ブロリー編が始まります。

よければ見てやってくださいm(__)m


閑話 伝説の超サイヤ人 その名はブロリー

 

ーー果てなき常世。

 

 時間の流れから取り残された荒野に轟音が響き渡る。

 

 2メートルを越える金剛力士の如き肉体の巨漢と、凄まじい鬼気を身に纏う漢が拳をぶつけ合っている。

 

 両者は示し合わせたかのように、左右の拳を交互に互いの中央で打ち付ける。

 

 巨漢ーーブロリーがタイミングをずらすように打ち合わせていた右拳を引いて、右手を地面について天を刺す勢いで長い左足を蹴り抜く。

 

 鬼気を纏う漢ーーリューベは強烈な蹴りを右腕で赤い光を弾かせながら脇に捌くと、踏み込んで跳び上がりながら左拳を天に突き上げる。

 

 蹴りを捌かれたと悟ったブロリーは宙で身を翻して左肘鉄を、自分に向かって放たれた拳にぶつける。

 

 凄まじい轟音と衝撃波が両者の繰り出した打撃から放たれ、呆然と見上げるサイヤ王ジュードを後方へ引き下がらせる。

 

(し、信じられん。まだパワーが上がっている)

 

 脳裏に浮かぶのは、全王や神々の前で行われた真・超サイヤ人同士の御前試合。

 

(あの時のターニッブと悟空も凄まじかったが。こと力だけならば、この二人は奴等を凌駕している…!!)

 

 リューベがブロリーの右拳を左手で掴み止め、唸る。

 

「…やりおるわ」

 

「フン。今更、だな」

 

 次撃を繰り出そうと拳を握るブロリーだが、リューベはバックステップして目をブロリーの背後にやる。

 

「…うぬの客、か」

 

 呟かれるようなリューベの言葉。

 

「呼んだ覚えはないがな…!」

 

 ブロリーが、視線だけを背後に向けて見やる。

 

 銀色の髪をポニーテールに結わえ、黒いシャツを着た丸眼鏡の青年が、ブロリー達を見下ろしている。

 

「やあ、ちょっとお邪魔していいかな? 良いよね!」

 

 そう馴れ馴れしく、親友に語りかけるような淡い紫色の肌の人物。

 

 彼は金色の瞳でニコニコと笑っている。

 

「…誰だ、お前は?」

 

「僕の名前はフュー。ちょっとした研究をしてるんだ」

 

「…研究だと?」

 

 瞳孔が開いた翡翠の瞳を鋭く細めてブロリーが睨み付けるも、フューは気にした様子もなくニコリと笑う。

 

「うん。君の力を研究したいんだぁ。今、君が成っているのは、どんな敵を相手にしてもパワーを無限に引き上げて戦える真の超サイヤ人。文字通り天下無敵の戦士ーーだよね?」

 

 意味ありげにフューはリューベを見つめるも、彼は何も語らずに冷徹に氷のような視線を返す。

 

 ブロリーとリューベという戦士二人を前にしてもフューは淡々と臆することなく、語る。

 

「そんな君に、別の次元の君をぶつけたらどうなるんだろうってさ。君の超サイヤ人には限界があるのかないのか、何処まで強くなるのか。気になるよね? ね?」

 

 嬉しげにブロリーに対して語るフューに、ジュードが目を見開いて問いかけた。

 

「…別次元? まさか、惑星の意思のようにブロリーの可能性を具現化させてぶつけるというのか?」

 

「ざんねーん。僕は可能性の具現化なんて真似は出来ないよ。そんなことしなくても、別次元から本物を取り出せばいいからね」

 

 そう言うとフューは腰の刀を一閃して横の空間に斬りつける。

 

「それじゃあ! 最初の挑戦者はーー超サイヤ人4の力と魔界の仮面の科学力! そして暗黒ドラゴンボールと洗脳の力でパワーが増大されたブロリーダーク!! この形態の恐ろしいところは、あまりの戦闘力に誰の指示も受け付けない破壊の権化になってしまっているところーーかな?」

 

 赤黒いオーラを身に纏いながら、3メートルを越える超サイヤ人4となったブロリーが現れる。白い道着のズボンを漆黒に変えて、赤い腰巻も赤黒く変色している。

 

 顔に付けた仮面は左目の部分が割れ、分厚い胸板の真ん中には痛ましいひび割れと共に、赤黒いドラゴンボール(七星球)が埋め込まれていた。

 

「うぉおおお!! 何処に居る!? カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 強烈なパワーを放つブロリーを前に、真・超サイヤ人のブロリーが瞳を細める。

 

「…下らん」

 

 黄金の炎を全身から噴き上がらせ、ブロリーがブロリーダークに向き合う。

 

 悟空よりも後ろ髪が長く全体的にボリュームが多いが、それでも悟空の超サイヤ人と今のブロリーの姿は酷似している。

 

「…! 貴様は…!! カカロット…! いや違う? 紛らわしいぞ!!」

 

 赤く染まった瞳のない目が見開かれ、パワーを引き上げる。

 

 これにフューも真・超サイヤ人ブロリーを見て笑う。

 

「確かに似てるよね。真・超サイヤ人…! 孫悟飯もそうだったけど。これに変身すると全体的な髪の立ち方がほとんど孫悟空やベジータと同じになるみたいだ」

 

「無駄口を叩いていないで、かかってくるならさっさと来い。借り物の力に飲み込まれた粗悪なサイヤ人に、この俺が倒せると思うのならーーな」

 

 悟空よりもベジータのような、冷酷で邪悪な笑みを浮かべてブロリーが笑う。

 

「…! 俺を舐めているのか? いいだろう、お前から血祭りに上げてやる…! サイヤ人!!」

 

 ブロリーダークが怒りの言葉を発しながら構える。

 

「面白いーー! 自慢のパワーを見せてみろ!!」

 

 これにフューが目を見開く。

 

「ね、ねぇブロリー? 君達って、そんなに饒舌に話をするんだね?」

 

 フューの言葉を無視してブロリーダークがブロリーに向かって突っ込む。

 

 繰り出されるブロリーダークの拳に向かい、ブロリーも拳を放つ。

 

「…! なんだと…!」

 

「その程度か?」

 

 忌々し気に目を見開くブロリーダークにブロリーは笑みを返す。

 

 真正面からぶつかり合った拳は相殺した。

 

 3メートルを越える超サイヤ人4をベースにしたブロリーダークは、体格と体重において、身体のバランスが良い真・超サイヤ人ブロリーを上回る。

 

 明らかにパワーならばブロリーダークの方が上のはずだ。それが相殺した。

 

(通常のブロリーよりも凶悪に凶暴にしているはずのブロリーダークの一撃を、その場で拳を突き出しただけで留めた? これってーーまさか、ね?)

 

 両者は力比べをするように、互いに向かって拳を押し合っている。

 

 押しきれない事実に、ブロリーダークの仮面の奥の眼が凶悪に吊り上がった。

 

「貴様ァアアアア!!!」

 

「……ふん。あんなナヨナヨしたヤツに使われている癖に、偉そうに吠えるなぁっ!!」

 

 牙を剥き出しにして吠え合う二人のブロリーは同時にその場を消える。

 

 常世の世界を大地も空も関係なく駆け回り、拳と蹴りをぶつけ合う両者。

 

 その戦いは、先のリューベとブロリーの戦いよりも激しく、周囲を消し炭に変えていく。

 

(な、なんという戦い方だ! 被害が増えるばかりじゃないか…!!)

 

 破壊をまき散らす二人のブロリーの戦い方は、相手を倒すことが目的と言うよりも、いかに周囲を破壊しながら倒すかが目的に見える。

 

 ジュードが目を見開く中、その前に濃紺の空手着を着た真・超サイヤ人が立つ。

 

「! リューベ!!」

 

「構えよ。サイヤ王たるうぬもまた、己が影を超えねばならぬ」

 

「影…!?」

 

 リューベが拳を握って構えを取るのに対し、ジュードも拳を握って腰を落とす。

 

「お前の狙いは分からん。だが、挑まれた以上ーーサイヤ王として退けぬ!!」

 

 金色のオーラを身に纏い超サイヤ人へと変身するジュードに、リューベは黄金の炎を身に纏って告げる。

 

「その意気やよし。されど、力が伴わねば無力ーー! 見事目覚め、使いこなせ!!」

 

 突っ込んでくるリューベにジュードも拳を打ち返す。

 

 初代サイヤ王と現代サイヤ王の戦いが眼下で行われる中、ブロリー同士の戦いは苛烈を極めている。

 

 地球に匹敵する大きさの常世の世界を目にも映らぬ速度で駆け回り、掌の大きさの気弾は星をも砕く威力を秘めている。

 

 振るわれる拳で大地が割れ、払われた蹴りで空が裂ける。

 

 凄まじい轟音と共に、ブロリーダークが片足を地面に引っ掻いて後方に下がりながら姿を現す。

 

「パワーもスピードも負けてないのに、どうしてブロリーダークの方が一方的に押されているんだ? 真・超サイヤ人とは一体?」

 

 打ち負けている。

 

 殴り合いでも、気弾の撃ち合いでも。

 

 そのことがブロリーダークのプライドを刺激する。

 

 自分に屈辱を味わせた、あのサイヤ人によく似た姿となっている目の前の存在に。

 

「ーーカカロット!!」

 

「似た姿ならカカロットと自分の区別もつかんのか? 呆れ果てたぞ!!」

 

「うぉおおお!! カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 気を高めるブロリーダークに、真・超サイヤ人のブロリーも一気に気を爆発させた。

 

「そのデカイ図体が、どれだけ不利なのかを教えてやろう…!」

 

 目の前に踏み込むブロリー。

 

 拳を振りかぶるブロリーダーク。

 

 両者は三度、拳を打ちつけ合う。

 

 衝撃波で空間が裂け、吹き飛ぶ。

 

「一撃のパワーは互角なんだよ。手数だって負けてない。何が、負けてるって?」

 

 眼鏡の奥の瞳を鋭く細めてフューが冷静に観察を始める。

 

 左の拳を放とうと大きく振りかぶるブロリーダークの目の前に、ブロリーが踏み込んでいる。

 

 強烈な左ボディが放たれ、ブロリーダークの脇腹をえぐる。

 

「ぐぅああああああ!!」

 

 構わずに左拳を打ちおろしてくるブロリーダークだが、拳はアッサリとブロリーの右掌に掴み止められている。

 

 ブロリーは掴み止めた巨大な拳を脇に受け流すと、拳を更に握ってブロリーダークの脇腹へ叩き込む。

 

「うぐぉ!?」

 

 すぐさま返しの左拳を叩き込むブロリー。

 

 ブロリーダークの巨体が、ゆっくりと後ろに引き摺られるように下がっている。

 

 ブロリーダークが拳を振る度に、三発を越える拳打が腹に叩き込まれる。

 

「ぐぉおお!!」

 

 たまらずにブロリーダークが地面に右手を突いて逆立ちになりながら右の回転廻し蹴りを放つも、ブロリーも同時に左脚を上げて廻し蹴りをぶつける。

 

 それだけでブロリーダークの蹴りが止められている。

 

 目を見開くダークブロリーの懐に跳び込み、その全身にブロリーが拳と蹴りを叩き込んでいく。 

 

 圧倒的なラッシュに目を見開くブロリーダーク。

 

 だが彼もブロリー。

 

 歯を食いしばり、右拳を握って大きく振りかぶる。

 

 真・超サイヤ人の連撃を喰らいながら、強烈な一撃で全てを取り戻そうとしてくる。

 

「虫けら、がぁああああ!!!」

 

「大人しく負けていれば痛い目に遭わずに済んだものを。流石は、俺だと褒めてやりたいところだ」

 

 同時に右拳を振りかぶるブロリーとブロリーダーク。

 

ーーギガンティック・ディストラクション!!

 

 緑の球体のエネルギーが二人の右拳に宿り、ぶつかり合う。

 

 両者の放った一撃が、緑色の螺旋を描くエネルギーとなって二人の周囲を旋回し、強大な一つの球体となって全てを呑み込んでいく。

 

 この闘いを目論んだフューでさえも、これほどのパワーとなるとは思っていなかったようだ。

 

「……! こ、これは想定外だ」

 

 あまりの破壊の有様に冷や汗を頬にかくフュー。

 

 光が晴れ、爆煙の向こうから二人の超サイヤ人が姿を見せる。

 

「…! ば、ばかなぁあああああ!!」

 

 そう絶叫して前のめりに倒れたのは、3メートルを越える巨体のブロリーダーク。

 

 それを眼前で仁王立ちのまま見下ろして、真・超サイヤ人ブロリーは告げる。

 

「そのおかしな仮面と妙なドラゴンボールに頼った有様で、俺に勝てると思っていたのか?」

 

 心底不快気な鬼気を放つブロリーにフューが震える。

 

 自分の頬に冷や汗が浮かんでいることに、彼は気付いているのだろうか?

 

「驚いたよ。まさか暗黒魔界の科学と暗黒ドラゴンボールの力で強化されたブロリーダークに真っ向勝負で勝てるなんてね…! ならーーこれはどうかな?」

 

「…」

 

 鋭く目を細めるブロリーの前に、フューが異空間から連れだしたのは、超サイヤ人3のように長い髪を持った神の気を纏うブロリーだった。

 

「! 見つけたぞ、カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 そのパワーは、先程のブロリーダークに勝るとも劣らない。

 

「…どうかな? 今度のブロリーは暗黒魔界の力で強化なんてされてない。純粋な孫悟空への怒りと憎悪で神の気を纏うほどに力を高めているんだ。これならーー!」

 

 得意げに語るフューの目の前を、一気にブロリーゴッドが駆け抜ける。

 

 これにブロリーは、軽々と宙に浮かぶと一気にブロリーゴッドに向かって空を駆けた。

 

 同時に放たれる拳と拳。

 

 先ほどのブロリーダークと同じように相殺する両者の一撃。

 

 真・超サイヤ人ブロリーは冷徹とも言える瞳孔が開いた翡翠の瞳で、ジッとブロリーゴッドを見つめている。

 

 すぐさま、先程のブロリーダークと同じように高速移動を駆使しながらぶつかり合う両者。

 

 秒間、数百は下らない打ち合いが始まる。

 

 強烈な拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合わせながら、ブロリーは蹴りと蹴りをぶつけ合わせた一瞬で相手の脚を上空に巻き上げた。

 

「ーーなにぃ!?」

 

 同時に凄まじいノーモーションの左中段蹴りが、ブロリーゴッドの腹に槍のように突き出される。

 

 鈍い音と共に強烈な蹴りが腹にのめり込む。

 

「うぐぉ!?」

 

 前のめりになったブロリーゴッドの顎を同じ足で蹴り上げて起こすと、身を翻して強烈な拳と蹴りを繰り出していく。

 

 先程のブロリーダークとの闘いでは見せなかった技だ。

 

(おいおい。どういうことだよ? ブロリーは、どの世界でも破壊衝動に身を任せて全てを打ち砕く化身のはずだろ? 実際に僕が出会ってきたブロリーは、超サイヤ人3とか超サイヤ人4とかって形態は違っていても、やっていることは同じだった。なのにーー!!)

 

 フューは目を見開く。

 

 様々な世界を渡り歩いて、ブロリーというサイヤ人がどんな存在かは理解している。

 

 技を覚える前に全てを圧倒的な力でねじ伏せる。

 

 それがブロリーのはずだ。

 

「だけど、コイツは。他のブロリー達と同じーーいや、それ以上のパワーとタフネスを持っている癖に、技も覚えているっていうのか?」

 

 フューは即座に自分の浮かんだ考えを首を振って否定する。

 

 あり得ない。

 

 あり得るわけがない。

 

(暗黒魔界の力や超サイヤ人4を手に入れたブロリーダークも、孫悟空とベジータへの恨みから神の気に目覚めたブロリーゴッドも、この歴史には存在しない。あり得ない力を持った存在なんだ!! それを、それを!!)

 

 それを、超える存在などーーたとえブロリーというサイヤ人でもあり得ない。

 

 それと同等のパワーを振るったとしても、残忍で冷酷なサイヤ人そのものの存在であるはずなのだ。

 

 そこに知性は存在しないはずだったのだ。

 

 ブロリーとブロリーゴッドの拳が互いの頬を打ち貫く。

 

 だが打ち負けたのはブロリーゴッドの方だ。

 

「バカな! あり得ない!! 体格とリーチに優る伝説の超サイヤ人のブロリーゴッドなんだぞ!! ただの超サイヤ人をベースにした真・超サイヤ人に同時に打ち込んで、打ち負けるなんてあり得ない!!」

 

 叫ぶフューだが、現実は彼の言葉を否定するかのようにブロリーゴッドを後方へと仰け反らせる。

 

 先に拳をぶつけたのはブロリーゴッドの方だ。

 

「見え見えの拳だ。そんな大振りで、この俺にダメージを与えられると思っているのか? 拍子抜けだぞ!!」

 

「なんだと!!?」

 

 自分と同等以上の戦闘力を誇る自分と似た気を放つ存在に、ブロリーゴッドが怒りを露わにする。

 

「ふざけるなぁああああ!! カカロットのような小手先の技に、この俺が負けるモノかァアアアア!!!」

 

「フンーー! 阿呆が!!」

 

 正面からの巨大な右ストレートをまともに額で受ける真・超サイヤ人ブロリー。

 

 ブロリーゴッドの白目が見開かれる。

 

(コイツ…! 自分から当たりに来やがった!?)

 

 その目に向かってブロリーの拳が放たれている。

 

 まともに顔面に受けて後方へ弾き飛ばされるブロリーゴッド。

 

(拳を振り切らせる前に額で受けて威力を殺し、かつ自分の拳を相手の急所に当てているーー!)

 

 フューがジッと目を見開く。

 

 スピードもパワーも互角だったのならば、後は相手をいかにして殴り、ダメージを与えるかと言う、シンプルな回答だ。

 

 ブロリーゴッドもブロリーダークも、相手の攻撃を躱して返す等と言う真似をしない。

 

 しなくて良い。

 

 それほどまでに圧倒的な力とタフネスを誇る。

 

 だが、自分と同等の存在が技を極めていたら?

 

 当然だが、その分だけ差が出る。

 

 当たり前だ。

 

 基本能力が同じスペックのマシーンがあったとしても、乗り手が真っ直ぐにしか走らせられないか、カーブ時にほとんど減速せずに曲がれる腕を持っているかで差が出る。

 

 まして、真・超サイヤ人のブロリーは伝説の超サイヤ人よりも小柄で、無駄な筋肉が一切ない。

 

 でありながら、スピードもパワーも伝説の超サイヤ人を超えたブロリーダークやブロリーゴッドに劣らないのであれば。

 

 そんな存在が、高度な武道の技を手に入れていれば?

 

 そんな思考を続けていると、ブロリーゴッドがブロリーダークの横に弾き飛ばされる。

 

「グゥウウ! この俺が、気の上昇で負けているだと!!?」

 

「フン。気の高め方も知らんのか? 自分の才能と怒りに溺れただけの存在が、俺に勝てるものかよ!!」

 

「うるさい! この俺をーー見下ろすなァアアアア!!!」

 

 ブロリーゴッドは両手を胸の前で抱え込むように構えると緑色の強大な球体を練り上げ、身体をひねって右腰に置いてたわめる。

 

「フルチャージ・ギガンティック・オメガァアアアア!!!」

 

 ブロリーゴッドは両手を上下に広げて前方に突き出し、巨大な緑色の光線を放った。

 

 これにブロリーもニヤリと笑い、同じ構えで右腰に両手を置いてたわめ迎え撃つ。

 

「ギガンティックゥウウ! オメガ・ディストラクションンンンッ!!!」

 

 両手をかめはめ波や波動拳のように手首を合わせて上下に開き、前方にブロリーは突き出した。

 

 ぶつかり合う二つの緑色の光線。

 

 破壊のエネルギー自体は全くの互角だが、飴細工のようにブロリーゴッドの放つ気が曲がっていく。

 

 対する真・超サイヤ人のブロリーの気は、鋼鉄のように形を変えない。

 

「技自体は同じものだ。この気の練度の差はなんだ?」

 

 フューはジッと観察する。

 

 気の練りーー放たれた気の硬さが違う。

 

 同じ力で押し合うにせよ、粘土細工と鋼鉄が押し合えばどうなる?

 

「ぬぅあああっ!?」

 

「ふん。才能の上にあぐらをかいている貴様が、この俺を超えることなど出来ぬ!!」

 

 一方的に押されていく自分のエネルギー波に、ブロリーゴッドが目を見開く。

 

 勝負あった様に見えた闘いはしかし、未だ終わりを見せない。

 

 神気を高めるブロリーゴッドの横でブロリーダークも立ち上がり、赤黒い気を纏ったのだ。

 

「カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 ドラゴンボールの前に両手を上下に構えると黒と緑の光球が生み出される。

 

 それを両手で挟み込むように掴み、頭上に掲げる。

 

「…! なにぃ?」

 

 真・超サイヤ人のブロリーが訝し気に目を細める中、ブロリーゴッドがニヤリと笑う。

 

「フハハハハハ! どうやら、アイツもお前を狙っているようだな…! だが、お前を倒すのは俺だぁ!!」

 

「覚悟はいいか!? たっぷりと返してやる!! とっておきだぁ…!!!」

 

 これにブロリーダークも笑いながら、頭上に掲げた光の球を細い槍状に変えていく。

 

ーーダークブラスト・スティンガー。

 

 それを右手に掲げて槍投げのように二人のブロリーがぶつけ合う気に向かってぶつける。

 

 瞬間、粘土のように曲がっていたブロリーゴッドの気功波と一つになり、互角に押し合う。

 

(二人のブロリーの気が合わさることで、気の練度も真・超サイヤ人に匹敵するほどに変わった。これならーー)

 

 ニィっと笑うフューの眼が、再び見開かれる。

 

「二人掛かりで、この程度か?」

 

「「!?」」

 

 3メートルを越える巨漢二人が、目を見開く。

 

 真超サイヤ人の纏う黄金の炎に赤い光が放たれ始めた。

 

 自分たちを一人で押し返すブロリーの背に、幻影のように半透明の赤い体毛の生えた3メートルを越える黒髪の巨漢が浮かび上がる。

 

「な、にぃ!?」

 

「な、んだ、とぉ!?」

 

 幻影の超サイヤ人4ブロリーは、真・超サイヤ人のオーラに取り込まれるように消え、一気にブロリーの気が爆発する。

 

「終わりだぁあああっ!!!」

 

 放たれていたブロリーの光が一気に倍近くまで大きくなり、ダークとゴッドの合わせた光を蹴散らした。

 

 二人の巨漢は咄嗟に両腕を交差させ、球体状のバリアを使って防ぐ。

 

 否、止められたのは一瞬。

 

 目を見開く二人のブロリー。

 

 脳裏に浮かぶのは、自分を打ち破った三人の憎き親子。

 

「ば、ばかなぁああ!?」

 

「か、カカロットォオオッ!?」

 

 二人の巨漢は、背後に現れた時空の裂け目へと、真・超サイヤ人の放った光に吹き飛ばれていった。

 

 そのあまりの威力に、フューが息をのんで固まる。

 

「……じ、冗談でしょ? いくら時の狭間とはいえ、単なる気功波の衝撃で時空の壁を吹き飛ばしたっていうの?」

 

 それを行なったサイヤ人は息一つ切らしていない。

 

 あれだけの激闘を繰り広げ、二体の強化された伝説の超サイヤ人を真っ向から下しておきながら。

 

 フューは改めて真・超サイヤ人のブロリーに向き直る。

 

 圧倒的な鬼気を纏いながら、確かな知性と理性を放つ瞳孔が現れた翡翠眼を見つめる。

 

「……君、ホントにブロリー? ちょっと僕の知ってるブロリーと違って隙はないわ、強いわ、どうかしてない?」

 

 何も語ることなく、ブロリーはゆっくりとフューに向かって前進してくる。

 

「き、君達の歴史の悟空やベジータは、君と同じか、君より強いの? じ、冗談だよね?」

 

 焦っている。

 

 このまま戦えば、勝てるとは思えない。

 

 あのカンバーさえも制御するフューが、震えている。

 

「なんでだよ? なんで、そんなに強いんだよ? そんなに強いなら、慢心して油断して、やられてくれるじゃないか。それが、サイヤ人だろ? なのにーー!!」

 

「……言いたいことは、それだけか?」

 

「!!!?」

 

 ヒステリックに叫ぶフューを静かに見据える。

 

 その表情は先程までの悪魔の笑いとは無縁。

 

 厳しく顰められた眼は、鬼の如き迫力でフューを睨みつけている。

 

「…この俺を相手に実験と言っていたな? その代償は、お前の命で勘弁してやろう」

 

 拳を振り上げて、構えるブロリーにフューも冷や汗をかきながら腰の刀に手を伸ばす。

 

「ちょっとシャレにならないよ、お前は!?」

 

 突っ込んで来た拳に刃を叩きつける。

 

 刀は折れず、拳は斬れず。

 

 お互いに力を増幅させている。

 

(嘘だろ? パワーの上限が、まだあるのか!?)

 

 目を見開いてブロリーの底無しのパワーに震え上がるフュー。

 

 受け流そうと刀を移動させようとして、拳が刀に張り付いているように付いてくるのを悟る。

 

(コイツーー!? 僕の受け流しを見切ってる!?)

 

「ほぅら、どうした? 流せるものなら流してみろ……」

 

 パワーが無限に上昇するだけの力のはずだ。

 

 ブロリーが、理性や知性を持って武道の技を使い闘うなどあり得ない。

 

 そうでなくても、奴は強いのだ。

 

 ありえない程のパワーで、全ての戦士を根こそぎ叩き潰して見せるのだ。

 

 そんな化け物に知性が宿るなど、認められるものか。

 

「認めるものか、そんなバカげた話をぉおお!!!」

 

 絶叫するフューは、超サイヤ人のように髪を逆立たせて瞳の周りが黒く染まる。

 

 一気に戦闘力を高めて左手に紫色に光る刀を生み出すと、逆手二刀流で交差に斬りつける。

 

 ブロリーの拳は、待っていたとばかりに自分を止めていた鋼の刃を下から打ち上げてズラすと、左手に光の球を生み出して光刃に叩きつけた。

 

「うわぁああっ!?」

 

 後方に吹き飛びながら宙返りして、赤く光る手裏剣の形をした気弾を投げるフュー。

 

 手裏剣は、その場で回転しながら止まり、ブロリーが近づくと連鎖的に爆発した。

 

 その間にフューは体勢を立て直して宙で静止する。

 

「……嘘、だろ?」

 

 煙幕効果もある万能手裏剣の気弾だが、煙が晴れた先にブロリーはいない。

 

 あり得ないと思う。

 

 自分の動きを読めるものなど、いない。

 

「そろそろ、覚悟はいいなぁ?」

 

 振り返った先には巨大な左拳が打ち下ろされている。

 

 咄嗟に刀をクロスさせて受けるも、衝撃に柄を持つ手が痺れ、後方へ上半身も仰け反る。

 

「こ、こんなーー!?」

 

 目を見開くフューの前に右手の中に強烈な緑色の光を放つ気を練り上げたブロリーが、冷徹な鬼眼で拳を握り打ち込んできた。

 

「ギガンティックーーディストラクション!!」

 

 黄金の大猿が口を開けて牙を剥き、咆哮しながらブロリーの右拳に宿っている。

 

(こんなの、受け止められるものか!?)

 

 必死の形相でフューはバックステップしながら身をよじって躱そうとする。

 

(間に合ぇええっ!!)

 

 目の前鼻先数センチに迫る拳をギリギリで首を捻って避け、後方へ大きくジャンプしながら次元を斬る刀を振るう。

 

 十字に斬り裂いた次元の壁は、別の世界へと繋がっている。

 

 フューは後ろを振り返ることもなく、次元の穴を通り抜けていった。

 

「……フン。脅しにしては、優しすぎたな」

 

 黒髪黒眼に戻りながら静かに呟くブロリー。

 

 彼の背後には、黄金の炎を纏う当代サイヤ人の王の姿があった。

 

「……フン。まだまだ、俺の修行は終わりそうもない」

 

 サイヤの鬼とサイヤの王の組み手を見ながら、ブロリーはニヤリと笑みを深めていた。

 

ーーーーーー

 黄色い空。

 

 岩場と砂漠。

 

 あるのは巨大な獣とダニの群れ。

 

 丸いダニの卵からねっとりした黄色い液体を飲みながら黒髪の青年は空を見上げた。

 

「呼んで、る?」

 

 高笑うその楽しそうな声は、不思議と自分によく似ている気がした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。