ギレンside
ルナツー宙域へと足を踏み入れつつあるギレン率いる第3・第4艦隊は、長距離索敵部隊を出撃させルナツー付近の状況を調査していた。
「ザクフリッパー隊より通信。連邦艦隊は要塞の外に展開。総数は確認できるだけで約60隻。ルウム艦隊の撤退を考慮して総数は100隻前後かと思われます」
私は通信機を持ち、席を立った。
「ふむ、それではルナツー攻略を始めようではないか」
一度深呼吸をして、マイクを持ち直した。
「この基地を押さえることはジャブローを押さえるにあたりとても重要な意味を持ってくる。皆頑張って欲しい。ジーク・ジオン!」
拳を高々と掲げる。そして通信を終えると、私は副官に指示を出す。
「Aプランでいく。MS隊は全て発進。艦隊は後方から援護射撃を行う。各艦、戦闘配置だ」
「はっ! MS隊は2つの隊に別れ、要塞前面に展開している連邦艦隊を攻撃せよ!」
初めてにしては良い指揮であるな。この分なら私は座っているだけでも良さそうだ。
「ここにはレビルがいる。うまく接触できればいいが……」
私は誰にも聞こえないように呟いた。
ルナツー 連邦艦隊
ティアンムを送り出したルナツー残留艦隊は基地前面に展開し戦闘準備を整えていたものの、実際にジオン艦隊が攻めてくるとは夢にも思っていなかった。各艦の中ではトランプなどの娯楽を楽しむ者、睡眠をとる者などがほとんどで実際に戦闘準備を整えている艦はレビルの直接の指揮下にあった数隻のみであった。そんな中、アナンケのレーダーが、ルナツーに高速で接近してくる反応を捉える。
「レーダーに反応あり! 高速で近づく熱源が100、200.数えられるだけで800の熱源を確認! ミノフスキー粒子が高濃度散布されており、統制精密射撃は不能」
「窮鼠猫を噛む。…か。噛まれたな、思いっきり。各艦戦闘準備は整っているはずだ。砲撃を開始させよ」
[敵の襲撃を確認。各艦砲撃を開始せよ。繰り返す。]
アナンケから全艦に通信がなされた。だが突然の襲撃ということに加え、配置についている者は少なく実際に砲撃が開始されたのは、レーダーに熱源を捉えてから3分ほど経ってからであった。その頃にはジオンのMS隊は連邦艦隊からわずか2キロという位置まで接近しており、とても迎撃が間に合うとは思えなかった。
アルマン少尉side
[全機、目標を捉え次第攻撃を許可する。但し、要塞を傷つけることはできるだけ避けろ。]
MS隊を率いるのはノイエン・ビッター少将だ。彼は将校でありながら自らザクを駆り、我々新兵を鼓舞してくれている。しかしここにいるビッター少将を含めMS隊は全員が初陣であり、皆が緊張と高揚感に包まれている。そんな中、旗艦グワジンから戦闘開始の命令が下り、僕達は前方に展開する連邦艦隊へと機体を進め始めた。既にミノフスキー粒子は戦闘濃度で散布されており、かの有名な連邦の精密射撃は意味をなしてはいない。
「ジオンは必ず勝つ! 僕はそのために敵を討つ!」
バズーカを肩に構え、綺麗に隊列を組む連邦艦隊の奥深くを目指して真っ直ぐ突き進む。隊列の先端にいたサラミス級を射程内に捉えると同時に、バズーカの引き金を引く。放たれた弾頭はサラミスの艦橋へ直撃し、一撃で巡洋艦を大破へ持っていった。時をほぼ同じくして連邦艦隊の本格的な迎撃が開始され弾幕の雨が、順調に進みつつあったMS隊へと降り注ぐ。
「そんな薄い弾幕で僕を落とせると思ったら大間違いだぞ!」
サラミスの主砲がこちらを照準に捉えると同時に機体をロールさせ、放たれた光条を避ける。パイロットの技量が低ければ命中する可能性はあるがその心配はないだろう。敵艦の主砲の動きをしっかりと見れば、砲撃のタイミングはなんとなく掴める。
「ドズル閣下が仰る通り、砲撃のタイミングと弾道は予測できる。このまま奥へ進み、大物を狩ってやる」
機体のスラスターを吹かせ艦隊の中核まで進もうとしたが、モニターにザク3機を捉えた。そのザク達は黒を基調とした色に塗装されており、誰の機体かはすぐに分かった。
「黒いザク…ギレン様直属の特務隊だ。こんなところでお目にかかれるとは…」
彼らの機体は付近の艦艇を3機で連携攻撃して撃沈しながら、連邦艦隊中核へと向かっていった。
「一際目立つ艦艇、あれがアナンケだ。オルテガ、マッシュ、仕掛けるぞ! うまく攻撃し、レビルを脱出させる」
「まずは1発目! 出てこいレビル!」
マッシュが対艦ライフルをアナンケの船体へ撃ち込む。続けて2発目、3発目と立て続けに放ち、弾が尽きたのを確認すると弾倉を取り替えた。一方ガイアは砲塔をバズーカで潰して回り、アナンケを無力化していく。数分も経つと船体の各所で爆発が起こり始め、完全に戦闘不能に陥った。
ブリッジ内は炎に包まれ、辺りにはモニターの破片やブリッジ要員の血が浮いている。
「CIC応答なし。機関出力低下。戦闘継続は不能。この艦ではもう戦えません」
「レビル将軍、お怪我はありませんか? 旗艦を移しましょう。こちらへ」
「うむ」
副官に連れられ、レビルはブリッジを出る。
(ジオンは予想以上に本気だ。我々は眠れる獅子を起こしてしまった)
「後は俺に任せろぉぉぉ!」
オルテガはザクの全高程もある大斧を振り上げる。推進機のスイッチを入れ、そして一気に振り下ろした。艦橋上部から付け根に向け一直線に溶断していく。それとほぼ同時にレビルを乗せた脱出艇が発進した。偶然船体下部にいたマッシュがいち早くそれに気づく。
「船体下部から脱出する船を確認。レビルの船以外は落とす」
対艦ライフルを構え、一番最初に出てきたランチを破壊する。次に出てきたランチには装飾が施され、船窓から目標の人物を視認した。
「よし、このランチごとグワジンに持って帰る」
ガイア、マッシュの二人でランチを抱え込み、反転して母艦を目指す。
グワジン内・ブリッジ
「ルナツー艦隊の損耗率は約6割を突破。このままいけばあと数十分で制圧できると思われます」
「艦長、全艦に反転の命令を出せ。もうすぐ出掛けてた住人が帰ってくるはずだ」
「ルウム迎撃艦隊ですね。承知しました。全艦反転及び一斉射用意!」
数秒後、ジオン艦隊はその場で艦首をルウム方向へと向ける。敗走してくるティアンム艦隊を壊滅させるため、全ての艦が砲撃準備を整える。
「レーダーに敵艦隊の反応を確認! 有効射程距離まであと1分、数は32!」
「撃ち方用意!」
ブリッジ内に緊張が走る。全員が息を飲み、その時を待つ。
「あと30.20.10.5.4.3.2.1.射程内に入りました!」
「撃て!」
刹那、ジオン艦隊からの嵐のような砲撃がティアンム艦隊を襲った。しかし彼らの艦隊は既に満身創痍であり、反撃出来たのはほんの一握りである。あとの艦は一方的に攻撃され、あっという間に暗い宇宙の塵となっていった。その戦闘はまさに一方的な蹂躙であり、ティアンムはその怒涛な攻撃に恐怖した。
「上出来だな。通信士、特務隊から連絡は?」
「はっ、数分前に目標を達成したと通信が入っております」
「そうか、グワジンに彼らが到着したらオープン回線で連邦軍への降伏勧告を行う。準備しておけ」
(これで作戦の第一段階は成功だ。あとはルナツーを占領するのみだな)
数刻後、特務隊の3人がグワジンへと帰還した。ルナツー司令のレビルを連れて。
グワジン内にある応接室。そこにレビルは連れてこられた。
「ようこそレビル司令。お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
「ギレン殿、これはどういう事です? 私は捕虜になったのでは?」
「そんなわけないでしょう。私はあなたと話がしたかった。この戦争にジオンが勝つには、ジオンに貴方が必要なのですよ」
「つまりジオンに寝返ろと?」
「そういう事です。是非検討していただきたい」
「……分かりましたとは言えませんな。こちらはほぼ全滅状態。違う派閥の人間だとしても、同じ部隊の者が大勢殺されている。その部隊の長が敵に寝返ったなんてことあってはならないでしょう」
「そうですか、残念です。ですが貴方はいずれ、必ずこちらにつくと思いますよ。仕方ないですが本日はお帰り頂きましょう」
「帰る? どこにですか?」
レビルは顔に皺を寄せ、疑問を口にした。それもそのはずだろう。交渉が決裂した時点で捕虜になるはずだからである。
「もちろんジャブローへです。私と貴方が話しているうちに外は停戦しています。こちらの降伏勧告の内容はルナツーの明け渡し。さすればレビル司令は解放すると伝えました。その結果彼らは戦闘を止めた」
「そうですか。では貴方の言う通りジャブローに帰るとしましょう」
「彼をランチまでお連れしなさい」
私の護衛にレビルをランチまで誘導させた。
そしてルナツー守備艦隊はティアンム艦隊も含め、全てが地球へと撤退を完了。ルナツー攻略戦はジオンの圧勝であった。こちらの被害はザクの小破2と中破3のみという微々たるものだった。
「ドズルが来るまでになんとか片付いた。さて祝杯の用意でもしておこうか」
一年戦争が終わった後の戦乱
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