ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第二十八話 杞憂

 オーガスタ基地に囚われていた人々の中にはニューヤークで誘拐された一般市民も確認された。そのためガルマは彼らを連れてニューヤークに入り、市長のエッシェンバッハと会談を行った。市長である彼にとってニューヤークの市民が誘拐された事には憤りを隠せないようであり、今回の件で連邦への信頼は完全に地に落ちたようだ。彼は財界の名家出身で連邦への資金援助を行っていたようであるが、援助はジオンへと切り替え武器の調達や輸送の手配など各方面に手を回してくれるらしい。これで北米大陸は完全にジオンの勢力圏となった。現在我々はエンシェンバッハ主催のパーティに呼ばれ、ニューヤーク市の迎賓館に来ていた。財界には連邦の息のかかった奴もいるが、ここに呼ばれているのは市長と仲のいい穏健派又は連邦反対派の者達ばかりだ。彼らとの社交辞令の挨拶を交わしてから数分、ガルマとともに夜風に当たるため建物のテラスへと出た。

 

「ドズル兄さん、この度は本当にありがとうございました」

 

「いや気にすることではない。まだまだ戦いは続く。気を引き締めろよ」

 

「ええ、分かってます。兄さんはこの後どうされるんですか?」

 

「俺は一度宇宙に戻る。兄貴に直接相談したいことがあるからな」

 

「例の件ですか。まあ兄上なら「そんなこと気にするな」と言いそうではありますが……北米は私にお任せ下さい」

 

 そう話すガルマの顔は一家の可愛い末っ子ではなく、兵の命を預かる責任者の顔だった。これならシャアに裏切られて特攻することはないだろう。連邦がMS開発に足を踏み入れたなら、そう経たないうちに地球圏の戦いは地獄絵図と化す。もしもが来た時のために有能な兵を残しておくのが今の僕の責務である。特にガルマは死なせたらジオンに勝ち目はないほどのキーマンだ。たとえ僕が死んだとしても弟は守り切ると決めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AM.01:35 アジア

 

 ドズルが北米に向けオデッサを発った頃、ユーリ率いるアジア方面軍はペキン基地から北、西、南へと着実に勢力圏を広げていた。その中でもアジア南方にあるエデン基地とマドラス基地には連邦の宇宙艦隊打ち上げ設備が存在しており、ユーリ自ら部隊を率いての制圧を試みていた。しかし、連邦の執念の防衛陣形に苦戦し思うように進んでいない。

 

「トップ小隊との連絡はついたか?」

 

「いえ、現在捜索を行っておりますが発見の報は入っておりません」

 

「そうか」

 

 現在索敵任務に就いている彼らとは通信が繋がらない状態となっており、進軍を止めて捜索を行っている状況だ。

 

「この辺に連邦の大きな基地はあったか? もしかしたら大部隊と鉢合わせした可能性も否めん」

 

「この辺ですと一番近いのはマドラス基地ですかね。とはいえ30kmは離れています。その可能性は低いんではないでしょうか」

 

 時刻は真夜中。辺りは深い霧に包まれており、いくらMSといえど迷ってしまうであろうことは策略などには疎いユーリでも容易に想像出来た。

 

「厄介ごとに巻き込まれていなければいいが……」

 

 

 

 

 本隊から約22キロの地点。霧に覆われた森林にトップ小隊の姿はあった。彼女の隊はルウム戦で戦艦3、巡洋艦7という戦績を挙げ晴れて昇格、現在はユーリ直属の兵として日夜戦場を駆けていた。

 

「ったく、すっかり迷っちまった。もうマドラス周辺まで来ちまったかね?」

 

「どうしますか、大尉? このまま霧が晴れるまで待ちますか?」

 

「すんません、俺のせいで……」

 

「アスが気にするようなことじゃないよ。判断を誤ったのは私だ。デル、本隊との連絡はつかないのかい?」

 

「何度も試みてますが繋がる気配はありません」

 

「仕方ない。霧が晴れるまでここで待機だ。デル、ソナーに反応があったらすぐに教えてくれ」

 

「了解しました」

 

 

 デル中尉のグフには高精度のソナーが搭載されており、部隊の索敵役を担っている。地面に片膝をつきバックパックから伸びるソナーを地面へと打ち込んですぐに索敵を開始した。

 それから数十分が経過し、なにも起きぬまま時間は過ぎていく……その時だった。

 

「っ! ソナーに反応あり、11時の方向……これは車両です。複数の音が聞こえます」

 

「軍用車か……マドラス基地は本当に近そうだね。夜間ということに加えてこの濃い霧だ。奇襲には持ってこいだね。デル、アス行けるかい?」

 

「「いつでもいけます」」

 

「よし、デルはそのまま索敵を続けて車両がどっちに向かうか特定してくれ。おおよその場所が分かり次第仕掛ける!」

 

 耳に流れ込む音に意識を極限まで集中させ、車両が進む向きと数を把握する。

 

「…………6時の方向に向かって行きます。数は16両」

 

「よし、作戦開始だ!」

 

(戦闘が落ち着いたら必ず会いに行くからな)

 

 デル機のコックピットにはサイド3に残した娘の写真が貼り付けられている。その写真を左手で撫でてから、先に移動を開始した2人に追いつくためデルの機体も歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 2月26日・サイド3

 

 ガルマとパーティーに参加した2日後、僕はサイド3に着いた。戦争の火蓋が切られてから此処に戻ってくるのは初めてだな。色々したいこともあるが、今はギレンに会うのが先だ。

 

「ドズル、わざわざ戦勝報告をしにきたのか?」

 

「いや、いささか面倒なことになってな。兄貴の知恵を借りにきた。どうも俺は戦略面には疎くてな」

 

「そうか、ならゆっくりと話を聞こう。まあ座れ」

 

 椅子に座り、これまでの戦闘の経過と件の事を伝えるとギレンは笑みを浮かべる

 

「連邦がMS開発か。だが今は情報が圧倒的に少ない。こちらでも調べは進めるが、そんなに気にすることではないだろう」

 

「何故だ?」

 

「ジオンには最強の矛、〔銀の流星〕がいるからだよ」

 

 こちらを見てニヤつくギレン、それを聞いて察する僕。

 

「まさか〔銀の流星〕って俺のことか?」

 

「知らなかったのか。兵たちの間では英雄として崇められているぞ」

 

「まじかよ」

 

「それに連邦のMSが開発されるなら、奪取してしまえばいい」

 

 僕はネームドのエースかよ。特にネームドになるほどの活躍なんてしてないんだけどね。

 

「不確定な未来の話などする前に、早く地球を占領してくれると助かるのだがな」

 

 どうやら僕が悩んでいたことはギレンの中ではとても小さい事らしい。とんだ無駄足だったようだ。

 

 

 

一年戦争が終わった後の戦乱

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