ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第三十一話 転機

 戦争膠着から2ヶ月。我々は水陸両用MSの数を揃え、連邦最大の海洋拠点であるハワイの攻略に乗り出した。ここまで攻略が遅れた理由はオーストラリア及び北米の残存部隊が合流したことに起因する。第1次侵攻では大隊規模の爆撃機により少なくない被害を受け撤退を余儀なくされた。ハワイに拠点を置く海軍の艦艇数は約200隻、航空戦力が約1200機と元々大部隊だったのに加え、残存部隊が合流したとなるととても侮れる数ではない。こちらもそれなりの準備が必要だった。

 

「潜水艦が100隻にズゴックが350、ゴックが150か。それにフェンリル隊とアンリの遊撃部隊を加えれば勝利は確実だろう。敵を分散させるため、ペキン、キャリフォルニア、シドニーの3方向から挟撃する。そして海軍艦隊及び航空機を掃討した後にシャア大佐率いる第1師団に第6師団の半数を加え、総数180機の上陸部隊が増援として空からハワイ基地に降下する」

 

 作戦室にはモニターがあり、この作戦を指揮する各部隊の隊長達が通信で参加している。中央モニターに太平洋の地図を表示させて、地図を指差しながら指示を出す。

 

「ハワイの連邦海軍を潰し制海権を確保すれば連邦は降伏するしかなくなるはずだ。この作戦に今後の情勢の行く末が掛かっている。気を引き締めて作戦を遂行してほしい。諸君らの健闘を期待する!」

 

 僕が敬礼し隊長達も敬礼を返すと通信は終了した。

 

「コーヒーです。お飲みください」

 

 セイラは落としたてのコーヒーを机に置いた。それを一口貰い、机上の写真に目を移す。

 

「ハワイの件はいいとして、問題はこれだ。なぜこいつがこの時代に……」

 

 ジャブローに潜入している工作員からの情報でV作戦について詳しく知ることが出来たのだが、問題というのは母艦についてだ。ペガサス級強襲揚陸艦〔アルビオン〕木馬の兄弟艦である。バーミンガムがいた時点でなんとなく察しはしていたが、まさかこいつまで出てくるとは思わなかった。これは思ったより苦戦するかもしれん。

 

「セイラ、ルナツーのコンスコンに繋いでくれ」

 

「承知しました」

 

 

 

 

 

 

 

 太平洋のほぼ中心に位置するハワイ基地。近海には何重にも防衛線が築かれ、空海戦力による強固な防御力を備えていた。連邦海軍最後の砦であり、ここを落とされれば連邦の拠点は本拠地ジャブローとベルファスト、そして各地に点在する小規模基地だけである。

 

「ポイントA、C、Dに反応あり。ジオンの侵攻です!」

 

 オペレーターが叫ぶ。基地内に一気に緊張が走った。

 

「航空機はスクランブル発進! 先行し、ジオンの足止めを行え! 第1から第4艦隊はポイントA、第5から第9艦隊はポイントC、第10から第15艦隊はポイントDへ展開。対潜攻撃用意だ!」

 

 ハワイ基地司令は的確に指示を出した。そして奥歯を噛み締める。

 

「あと少しで配備されるというときに……」

 

 

 

 発進から十数分、ジオンの潜水艦を捉えた400機の爆撃機は攻撃を開始する。しかし、爆弾が海面へと落ちる前に海中から激しい対空砲火が航空隊を雨のように襲った。物量で押しきろうとする連邦であったが数分経った頃には編隊はその半数を失ってしまう。だがその足止めが功を奏し主力艦隊が海域へと到着した。

 

「対潜攻撃始め!」

 

 対潜攻撃機を放出したヒマラヤ級空母群は機雷を投下、海に潜むジオン軍の殲滅を狙う。一方対潜攻撃機はその性能をフルに活かし、確実にMSを撃破していく。だが、着々と死は近づいてきていた。機雷を掻い潜ったジオンMS隊は艦艇の死角である真下から攻撃を始める。

 

「機雷原を突破されました! MSが距離を詰めてきています」

 

「ドンエスカルゴは何をやっている! 爆撃隊は全滅したのか?」

 

「付近に展開した爆撃隊は全滅した模様です。艦艇にも被害が出始めています!」

 

「海洋最強を謳歌した我々連邦海軍の命運もここまで……か」

 

 その時旗艦の甲板に一機のMSが着地する。そのMSは艦橋を一瞥するとアイアンネイルで容易く貫いた。

 

 

 

 

「こちらアンリ、ペキンルートの敵艦隊の一掃に成功。降下部隊に連絡を」

 

 [了解しました]

 

「我々は潜水艦ドックより基地内に侵入する。全機ついてこい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハワイ上空に到着した上陸部隊は輸送機から飛び出し、降下を開始した。

 

「事前に決めた通りに行動だ。間違っても功を焦るな」

 

 ハワイ基地は対空能力のほぼ全てを航空機と空母群に頼っていた。そのため基地上空の弾幕はほぼ皆無に等しい。一度上空まで入ってしまえば、占領自体は容易いのである。そのため1時間も経った頃には小島も含めて制圧を完了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 オデッサ・司令部執務室

 

「ドズル様、シャア大佐より緊急連絡です」

 

「何? 繋いでくれ」

 

 モニターに映し出されたシャアの顔は困惑に満ちていた。

 

 [ドズル様、私達はハワイの制圧に成功致しました。]

 

「勝利報告の割には暗い顔をしているが、何かあったのか?」

 

 [緊急連絡とさせていただいたのは、ハワイの地下に巨大な施設があったからです。まずはこちらを御覧ください]

 

 画面が切り替わり、シャアが撮影したと思われる映像が流れる。そこに映し出されたのは地下と思われる場所に作られたMSの格納庫だった。

 

「これはMSの格納庫……だな。どのくらいの大きさだ?」

 

 [しっかりとした調査はこれからですが少なくともMS500機は容易に整備可能かと。これが本島の規模であります。他の小島の地下にも小規模の施設が複数見られることから、連邦は既にMSの量産体制を整えているのかもしれません]

 

 まだV作戦も完了していない段階だぞ。V作戦と並行して地上でもMSの量産が進んでいたということなのか? 事態は思ったより深刻なようだ。

 

「そうか、報告ありがとう。引き続き調査を進めてくれ」

 

 [はっ! ]

 

 敬礼とともに通信が終了する。

 

「この戦争、泥沼化するかもしれん」

 

 勝利の兆しが見えた途端にこれとは……これも歴史の修正力というやつなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルナツー

 

「パトロール艦隊より通信。[地球軌道上にて連邦宇宙艦隊の打ち上げを確認。我、静観せり]です」

 

「予定通りそのままこの宙域まで来てもらう。あくまで侵攻を受けたという形で迎え撃たなければならないからな」

 

 連邦の侵攻を確認してもルナツー司令部は落ち着いている。何故かといえばこれが陽動作戦であると知っているからだ。連邦の狙いはルナツーに駐留するジオン軍の意識を侵攻してきた大部隊に向けさせ、その間にアルビオンをサイド7へ届けることであった。すでにその作戦はジオンへと筒抜けだった訳だが、陽動に掛かったふりをするようにドズルから指示が出されていた。[できるだけ戦闘を引き伸ばし、なおかつ自軍の被害は最小限に留めよ]との指令を受けたコンスコンは、駐留部隊を3つに分け補給と整備のローテーションを作り長時間戦闘への準備を整える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナツー宙域で戦闘が開始されたようです」

 

 アルビオンのブリッジでオペレーターが淡々と告げる。

 

「宇宙の猿はこんな低レベルの作戦にも引っかかるのか。流石は知能を持たない下等生物だ」

 

 艦長を務めるバスク・オムはそう吐き捨てた。

 

「予定通り10:00にはサイド7へ入港します。その後はガンダム等を回収し、ジャブローへと帰還する手筈です」

 

「コリニー大将からのご指名だ。必ずやり遂げて彼の立場を確かなものにする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイド7

 

 その日研究施設内は慌ただしく時が過ぎていた。ラルの工作によりMSの搬出作業が遅れていたためである。ラルは隠れ家で一人の少年と話をしていた。

 

「アムロ君、本当に私達に着いてくるんだな。後戻りは出来ないぞ」

 

「父の暴走を止めるために僕はできることがしたいです。僕はあの人が許せない」

 

「分かった。では港に迎えのシャトルがある。そこに向かってくれ。私達はMSを奪取したら合流する」

 

 アムロは隠れ家を出た。ラルも準備を終え部下と共に研究所へと向かう。

 




この小説の豆知識 ズゴック→ズゴックE ゴック→ハイゴック

一年戦争が終わった後の戦乱

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