ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第三十二話 2機のガンダム

 AM 11:00

 

 アルビオンは予定時刻ジャストでサイド7へと入港した。その頃、ラルとその部下は搬出作業の進む研究所の中へ侵入していた。連邦軍の制服を着用していたため怪しまれることなく格納庫へとたどり着くことに成功し、トレーラーに横たわるMSに目を向ける。

 

「MSを起動したら武器を手に入れ、予め開けてあるハッチに向かえ。シャトルと合流後、ルナツーへと帰投する」

 

 そう言い終えると、ラルは手に持っていたスイッチを押した。それと同時に艦船ドックに仕掛けられた複数の爆弾が起爆する。数秒後には警報が鳴り響き、辺りは一気に騒がしくなった。兵士の意識が艦船ドックに向いてるのを確認して、MSに掛けられたシートを剥がした。コックピットに乗り込み、予め手に入れていたマニュアルを見ながら起動操作に入る。

 

「ザクとは操作方法が大きく違うな。連邦独自の規格が出来ているのか」

 

 その時、携帯していた小型無線機から部下の声が聞こえる。

 

 [1号機が見当たりません、いかがしますか? ]

 

 元の計画ではガンダム2機とキャノンタイプの奪取が目的であった。しかし、肝心の1号機はどこにも見当たらない。1秒にも満たない時間であらゆる可能性を想定したラルは、最短での脱出を選んだ。

 

「構わん、近くにあるキャノンタイプを奪取しろ」

 

 [承知しました]

 

 トレーラーからゆっくりと立ち上がり、格納庫の扉を破って外へ出る。近くのコンテナに入っているガンダム専用の武器を持ち上げると、ハッチへ向けてスラスターを吹かす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルビオンの艦内は慌ただしくなっていた。爆発の余波を受け右舷MSデッキが破損し、搬入作業が停滞してしまったのである。復旧の指揮を取っているのはアルビオンの設計を行ったテム・レイであったが、そんな彼のもとに最悪の知らせが入る。

 

「ガンダム2号機、ガンキャノン2機が強奪されました!」

 

「なんだと? 他の機体は……1号機は無事なのか?」

 

「1号機は無事です。既に搬入も終了しています。敵はシャトルで脱出した模様です」

 

 その言葉を聞いてテムは狂気的な笑みを浮かべる。

 

「そうか1号機は無事か。復旧作業は中止だ、メカニックを全員左舷デッキに集めろ」

 

 そう指示を出した後テムはブリッジと通信を繋いだ。

 

「バスク艦長、復旧作業は停止させて頂きます。私はガンダム1号機に乗り、奪取された2号機を追いますので」

 

 [そんな独断的行動を認めるわけがないだろう。貴様は所詮ただのメカニックだ、私の指示に従ってもらうぞ。貴様にはデッキを復旧するという命令を与えたはずだ。それにガンダムは最高機密だ。一概のメカニックが乗っていい機体ではない。分をわきまえろ]

 

「あなたの意見は聞いていません、ともかく復旧作業は行いませんので」

 

 テムはそう吐き捨てる。その言葉を聞いてバスクの顔がみるみる赤くなっていく。そして唾を撒き散らしながら喚きだした。

 

 [貴様ぁぁ、上官の指示に従えないものは銃殺刑だぞ! 分かっているの]

 

 テムはこれ以上会話の必要はないと判断した。途中で通信を切り、左舷デッキへと向かう。

 

「全メカニックに告ぐ。これより10分で1号機のFSWS装甲への換装を行う、一刻も早く2号機を取り返さなくてはならない。全力で事に取り組んでくれ」

 

 左舷デッキに集まったメカニックはテムの指示で一斉に動き出す。テム自身も換装作業に加わり、換装作業は予定通り10分で終了した。

 

「メカニックは全員退避! ハッチを開けろ、出撃するぞ!」

 

 1号機は射出用カタパルトに足を乗せる。そして前方のハッチが開いたのを確認すると、デッキから飛び出した。

 

「待ってろ、父さんが今助けに向かうぞ!」

 

 1号機は宇宙港を抜けて漆黒の闇へと消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MS3機の奪取に成功したラル達は、港で待機していたシャトルと合流しルナツーを目指していた。ガンキャノン2機は格納し、2号機はシャトルの安定翼に掴まっている状態だ。機内ではアムロがハモンと世間話をしながら、格納されたガンキャノンを眺めていた。

 

「ハモンさん、あなたも軍属なんですか?」

 

「私はあの人に付いてきてるだけよ。軍籍はないわ」

 

 その時、接触回線でラルが呼び掛ける。

 

 [何か嫌な予感がする。ハモン、私はここに残る。ルナツーに戻ったら増援を呼んでくれ]

 

「分かりました。お気をつけて下さい」

 

「ラルさん、僕もなんだか嫌な感じがします。無理はしないで下さい」

 

 [ボウズの勘が当たるのはこの数ヶ月で何度も経験している。今回ばかりは当たらないで欲しいがな]

 

 2号機は安定翼から手を放し、みるみる遠ざかっていった。

 

「坊や、少し飛ばすわ。舌を噛まないようにね」

 

「わ、分かりました!」

 

 シャトルは1段階加速し、ルナツーを目指して飛び続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 ラルはモニターを注意深く睨む。その集中力は凄まじく静寂に包まれた宇宙が映し出されている中で、一瞬だけ現れた光点を見逃さなかった。

 

「くっ!」

 

 機体をロールさせ緊急回避を行う。その刹那、元々機体がいた場所を桃色の光芒が通りすぎた。ラルが光芒の放たれた方向に視線を向けると段々と近づいて来る機体を視認する。それはラルが奪ったのとは違う見た目をした黒いガンダムであった。ラルは咄嗟にライフルを構えるが、対するガンダム1号機は距離を保って静止した。その行動にラルは困惑の表情を見せる。その時、1号機のパイロットからオープン回線で呼び掛けられた。

 

 [息子を返して貰おうか! ]

 

「貴方はテム・レイ少佐ですな。アムロ君なら本人の意思で既にルナツーへと向かっている。本人が嫌がっているのに返すわけにはいかんでしょう」

 

 ラルは対話で解決できると判断し、テムとの会話を試みる。しかし、その期待は次の言葉で裏切られた。

 

 [アムロ? そんな名前の奴は知らん。私が返して貰いたいのはその機体だ。私の息子である2号機を返してくれ]

 

 冷徹な言葉に、ラルは思わず感情的になる。

 

「貴方は自分が何を言っているのか分かっているのか!? 私がアムロ君と初めて会った時、彼は貴方を尊敬していた! そんな彼を冷たく扱い、挙げ句実験のためのモルモットにしようとするとは……それでも貴方は1人の父親か!」

 

 [何度も言わせないでくれ。私の息子は1号機と2号機だけだ。返して貰えないのなら、無理にでも連れて帰る! ]

 

 1号機はバックパックからビームサーベルを抜いた。そして一気に距離を詰めてくる。

 

 [さあ返して貰おうか! ]

 

「頑固な父親だな。しかし、焦りは自らの滅びを招くぞ」

 

 コックピットを狙い正確な横薙ぎを繰り出した1号機に対し、ラルはスラスターを吹かして後ろに下がることで回避しながら、同時に牽制のバルカンを放つ。

 

 [そんなもので私を止められると思うな! ]

 

 

 1号機はシールドで全て弾くと、2号機の懐に入り込むため一気に加速した。今度は避けられないと感じたラルはビームサーベルを抜き、応戦の構えを見せる。距離を詰めた1号機は上から刃を振り下ろす。その一撃を難なく受け止めたラルは1号機の腹部を蹴り、その反動を使って1号機から離れる。

 

「もうそろそろ終わりにしましょう。貴方は既に檻の中だ」

 

 その言葉でテムも初めて自分が置かれている状況に気づいた。1号機は十数機のザクに囲まれていたのだ。

 

 [これで私を追い詰めたつもりか? そうなら残念だよ]

 

 1号機はなんの前触れもなく、いきなりビームライフルの引き金を引いた。予期していなかった攻撃に一瞬対応が遅れた小隊のザクが直撃を受け爆散する。

 

「狙いを定めずに放った……のか? 奴の視界には映っていなかったはずだぞ。それにザクを一撃で葬り去るとは、連邦が開発した武器は戦艦並みのようだな。これは少し苦戦するかもしれん」

 

 

一年戦争が終わった後の戦乱

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