ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第三十五話 反撃の礫

 ドズルside

 

 地球軌道での戦いから一ヶ月あまり。アルビオンがジャブローに到着したという報告以後、連邦軍は沈黙を貫いていた。最前線での抵抗も下火となっており、その沈黙は逆に恐怖を感じるほどであった。そのため、しばらくは戦闘らしい戦闘も起きていなかったのだが、この日ついに奴らが重い腰を上げて動いた。戦局の変化を告げるその報告は僕が執務室で仕事をしていた時に舞い込んできた。

 

「海岸に面している拠点が次々と連邦軍の攻撃を受けているようです。そして一部の情報によりますと、敵部隊はMSと……」

 

 セイラが発した言葉に思わず顔が強張る。サイド7での件、そしてハワイ島の地下にあった広大な格納庫から予想はしていたが出来れば聞きたくなかった単語だ。原作よりもパワーバランスの差は小さくなっているものの、未だに連邦の国力は侮れない。下手したらここから一気に押し返される可能性もあるのだ。

 

「とうとう奴らも戦争に本腰を入れてきたわけか。よし、遊軍として置いている部隊を各拠点への増援として派遣しろ。それと同時に内陸の基地も状況の変化にいつでも対応出来るように要請を」

 

「承知しました」

 

 僕は直ぐに指示を出した。対応が後手に回ってしまえば勝てる戦いも勝てなくなってしまう。それだけは避けたい。

 

「それと今回の件に関してなにか潜入班から情報はないか?」

 

「未だ調査中とのことです。ですが、まもなく報告出来ると」

 

「そうか、ありがとう」

 

(それにしても何故いくつもの基地を襲う? 得意の物量とはいえ、戦力を集中させ1点突破した方が良いはずだが……何かあるな)

 

 僕は人知れぬ不安に駆られていた。

 

 

 

 

 

 同時刻 ペキン基地

 

 この日、海岸線の哨戒任務に出ていたのはトップ中隊であった。様々な戦場を戦い抜いてきた彼女らは、新兵20名弱を率いるまでになっていた。そしてその偶然が、基地へと迫る危機を早期に発見するという結果に繋がる。

 

「司令部聞こえるかい! 上海地区の東からミデアが接近中! 数はざっと50機、私らはこれより迎撃に動く。すぐに増援と各地区の警戒態勢を!」

 

 トップは司令部に通信を入れると背部のガトリングを展開、すぐに厚い弾幕を張る。それに呼応するように、デルとアスもマシンガンの引き金を連続して引く。

 

「新兵ども! 今までの訓練の成果を私に見せてみ!」

 

 他の新兵達は上官の素早い行動に一歩遅れを取りつつ、近づいてくるミデアへと攻撃を加え始めた。新兵といえど練度の高い射撃にミデアはなす術も海へと次々と墜落していく。だが何機かは運良く突破に成功、浅瀬に積み荷を投下した。その積み荷をモニターで捉えたトップは、思わず体が強張る。なぜなら彼女等の前に現れたのは、連邦のMSだったからだ。その刹那、ユーリ中将から通信が入る。

 

 [トップ聞こえるか? お前達の地区の他にも複数の場所から連邦MSが上陸したとの連絡が入っている。これより海岸線を第1防衛ラインとして設定し、迎撃にあたれ。以上だ]

 

 ユーリは用件だけ伝えるとすぐに通信を切る。どうやら基地司令部も慌ただしく動いているらしい。

 

「ちっ、せっかく新兵の育成も終わって休暇が取れそうだったってのに、めんどくさいことになったもんだね。これより対MS戦闘へと移行する。1機も後ろに通すんじゃないよ!」

 

「「了解」」

 

 背部のガトリングをパージし、ヒートソードを抜きながら一気に加速する。離れていたはずの距離は瞬く間に縮まり、連邦MSの懐へと入り込むとコックピットへと正確に刃を突き刺した。一突きで主を失った連邦MSは、脱力したように活動を停止する。トップは骸となった機体を弾避けとして利用し他の敵からの射線を遮りつつ、左手の3連ガトリングで敵を葬っていく。数分経つ頃には海岸線は無数の残骸で溢れ、降下したMSは全滅していた。これで一息つけるはず……だがトップの思いはデルからの通信で消えることになった。

 

 [隊長、東より新手のミデアが複数接近中。数がどんどん増えています! ]

 

 東から接近してくるのは先ほどの数の比ではないミデアの大群。とても休息を取れる状態ではなかった。

 

「対MS戦闘に移行したのは不味かったか……デルは他の部下と共に出来るだけミデアの数を減らしてくれ。アスはMSが着地した瞬間を狙って砲撃、出来れば仕留めて欲しい。私は撃ち漏らしたMSを片っ端から切り伏せる。あと少しの辛抱だ、気合い入れな!」

 

 トップは一度陸地に上がり態勢を立て直す。既にデル率いる射撃部隊は攻撃を開始、複数のミデアが煙を上げ高度を下げ始めた。それでもMS隊の降下をさせるのは輸送隊の意地というところだろうか。だが無事に降下出来たとしても待ち受けているのはアスの正確な砲撃だ。着地する瞬間を狙われれば避ける術はない。

 

「やっぱりアスの砲撃は正確無比だ。しかし妙だね……さっきのより敵の動きが滑らかになっている。なにか仕掛けがあるようだ。しかし、後ろには通さないよ!」

 

 

 後ろにも防衛ラインはあるとはいえ海岸線で食い止める事が出来れば、基地全体としての負担は少なくなる。ペキン基地の主戦力であるトップ隊が最前線で敵を食い止めていれば、その間に防衛準備を整えられるのだ。その思いを胸に彼女は愛機を駆り、砲撃を運良く避けた敵MSを切り伏せていく。

 

 

 

 

 

 

 同時刻・ペキン基地司令部

 

「増援部隊より通信、あと30分程で到着するそうです」

 

 副官のアブスト少佐がユーリに通信の内容を告げる。

 

「そうか、此処もこれで持ちこたえられそうだな。他の基地も小規模な侵攻だったみたいだし、追い詰められて連邦は頭がおかしくなったんじゃねぇか?」

 

 ユーリは冗談を言いつつも、内心思考を巡らせていた。

(ジャブローから侵攻しやすいキリマンジャロやキャルフォルニア、オーストラリア東部などは分かる。だが何故ジオンの制空権である太平洋を越えて此処を襲撃できた? 何かおかしい……)

 

「増援部隊が到着次第、第1防衛ラインの部隊を下がらせる。予め知らせておけ。それとお前に頼みがある」

 

 他の者に聞こえぬようにアブストに耳打ちをする。

 

「それは!! ……分かりました。準備しておきます」

 

「まあ最悪の保険だ。現実にならなきゃそれでいい。頼むぞ」

 

 直接命令を受けたアブストはどこかへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太平洋

 

 ハワイより西200キロの地点に連邦軍のヒマラヤ級が数隻位置している。そして偶然にも何故かその海域だけジオンの哨戒は行われていなかった。

 

「作戦の首尾はどうか? どこが堅いかは判明したのかね?」

 

 そう発したのは、連邦軍大将の地位にいるグリーン・ワイアットである。彼は特別に用意された椅子に座り、ティーカップを片手に作戦を指揮していた。

 

「上海地区海岸線がとても防御が堅いようです。投入した部隊がことごとく全滅しています」

 

「そうか。崩すならそこだ。死神を投入せよ」

 

「承知しました。プランBに移行! 死神を投入する」

 

 

 艦長の指示の下、一機のミデアがヒマラヤ級の甲板から飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘開始から2時間程経った頃、ウジのように沸いていた連邦の増援はぴたりと止んだ。最前線で相対していたトップ中隊の機体はその殆どが弾薬切れを起こし、負荷も限界であった。

 

 [こちら司令部だ。内陸からの増援部隊がまもなくそちらに到着する。トップ中隊は基地に帰還し、整備と補給を受けてくれ]

 

 その通信を聞いて、新兵は歓喜の声を上げる。トップ自身も自然と笑みがこぼれ、緊張の糸がやっと解けたようだ。

 

「ほらほら、基地に帰るまでが任務だ。私たち3人が殿を務めるから、お前達は先に戻っていいよ」

 

 こうして激戦を終えたトップ中隊は基地への帰路を歩き始めた。その時、デルが音を捉える。

 

「後方よりミデアが高速で接近してきます!」

 

「ちっ、残弾がある奴は迎撃を……なに!?」

 

 それが普通のミデアであったなら、激戦を経たとはいえ直ぐに撃墜することが出来ただろう。しかし、速度が違いすぎた。奴はトップ中隊が構える前に頭上を通り過ぎていたのだ。そして、一番前にいた新兵二人の前に何かが現れる。それを即座に視認したのはトップだけであった。

 

「避け……」

 

 だが咄嗟の彼女の声が新兵に届くことはなかった。既に2機は一振で両断され、新兵はその短いパイロット人生を終えていたからだ。それから1秒程遅れて、他の者が敵を視認する。爆風の中に佇んでいたのは、漆黒に塗られた謎の機体。

 

「新兵は全員散開して逃げろ! 躊躇うな! こいつは私達が引き受ける!」

 

 

一年戦争が終わった後の戦乱

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