ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第三十六話 率いる者の覚悟

 トップ達3人は行かせまいと挟み込むように「死神」の前へ立ち塞がる。だが奴の動きは今までの連邦MSの比ではなかった。包囲網を容易く抜け、散り散りとなった新兵の方へと向かい始める。

 

「出来たばかりの部下をこれ以上やらせる……かっ!?」

 

 アスがヒートソードを抜き、奴を追跡しようとスラスターを吹かす。だが敵のその動きはこちらを誘きだす為のブラフだったのだ。急制動でこちらへと向き直った奴に対して、既に加速を始めたアスの機体は止まることが出来ず、そのまま袈裟斬りにされてしまう。

 

「隊長……すまねぇ」

 

 

 数秒後にはアスの機体は四散した。その爆炎の中、ビームサーベルを両手に歩いてくる奴の姿は、漆黒という機体色も相まってさながら死神であった。トップは奴から放たれるプレッシャーに操縦桿を握る手が震えるのを感じる。戦場を共にしてきた仲間が散った。だがそれを理由に自分が奥手になれば、死ぬのはまだ若い部下達である。新兵を率いる隊長として、それはなんとしても避けなければならない。自分を鼓舞したトップは操縦桿を握り直し、デルと通信を交わす。

 

「死に急ぎやがって…………どうせあたしらは弾切れだ。近距離の連撃で奴を仕留める。間違えても死のうとは思うな。生きて帰ることだけを考えるんだよ」

 

「ええ、娘の為にも生きて帰らなければいけません。必ず奴を仕留めます」

 

 そう言うとデルはコックピットに貼ってある娘の写真を撫で、モニターを通して「死神」を見つめる。数秒後、先に動いたのはトップ達だった。愛機を駆り、左右から奴を挟み込む。そして2機同時に同時にヒートソードを振り下ろした。だが奴は攻撃を予期していたかのように後方に避けてみせる。それはあたかも攻撃の軌道が読まれていたように見えた。それでもトップは追撃を諦めない。前傾の姿勢から無理矢理右に機体を加速させ、逆袈裟で斬りあげる。その動きは「死神」のコンピューターでも予測しきれなかったらしい。不意の一撃は奴のシールドを真っ二つに切断した。

 

「なんだ、当たるじゃないか。幽霊ではないみたいだね!」

 

 トップはヒートソードを勢い良く降り下ろす。だが今度は簡単に回避されてしまった。そして回避とほぼ同時、奴の前腕部からビームが放たれる。卑怯とも言えるその攻撃に、2人は完全に意表を突かれる形となってしまった。それでもトップは間一髪回避したが、デル機は反応が間に合わず左肩に直撃を受けてしまった。肩装甲は完全に融解し、関節にまで影響が及んでいる。分が悪いと感じた2機は直ぐに後方に大きく跳び「死神」と距離を取る。

 

 

「宇宙で連邦がビームを使ったとは聞いていたがまさか地上でも……それにしてもMS量産が始まったばかりだというのに、この動きは妙だ」

 

 トップはデルに接触回線で呼び掛ける。

 

「あいつは私を警戒しているはずだ。デルは今のうちに中継地点まで下がって司令部にこいつの情報を伝えてくれ。そして私が戦ってる間に帰還するんだよ」

 

「何を言ってるんですか隊長! 私も最後まで戦います!」

 

「あんたには本国に家族がいるだろう。死ぬ必要はないんだよ。それにもうすぐ増援が到着する。それまで耐えればあたしの勝ちさ。これは隊長からの命令だ。新兵の事頼んだよ」

 

「くっ……分かりました。隊長、どうかご無事で」

 

 命令と言われてしまえばこれ以上歯向かう訳にもいかない。デルはスラスターを吹かし離脱していった。トップは退路へと立ち塞がり、「死神」を足止めせんと腰からもう1本ヒートソードを抜いて構えた。相対する「死神」も目標をトップへと定めたようだ。その刹那、お互いが一気に加速し距離を詰めた。互いの刃がぶつかり鍔迫り合いが起きる。

 

「おっと! 可愛い部下のもとに行かせるわけないだろう? あんたはここであたしと死ぬんだよ!」

 

 左手のヒートソードで突きを繰り出す。しかし「死神」はそれを半身引くことで回避、同時にトップ機の伸びきった左腕をビームサーベルで切り落とそうとした。だがトップの方が素早く後ろに下がったことで間一髪避けて見せる。腕からのビームに警戒しながらの格闘戦は不利であるが、トップは攻撃の手を緩めようとはしない。2本のヒートソードで猛攻を仕掛け続ける。トップからは「死神」は刃を受けるので精一杯なように見えていた。そしてその猛攻が奴の隙を作る。ここだと感じたトップは一気に踏み込み、コックピット目掛け逆袈裟を繰り出す。渾身の一撃は完全に奴を捉えた……はずだった。だが奴はそこにはいなかったのだ。一瞬のうちに回避し、距離を離したらしい

 

 [アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ]

 

 その時、辺りに響き渡る嘲笑うような不気味な笑い声と共に「死神」の機体各所が発光しバイザーの色も変化した。その姿はまさに死神そのもの。

 

「これが本性ってことかい……しかし姿が変化したところで!」

 

 トップは再度斬りかかる。しかしその刃が振り下ろされることはなかった。なぜなら既に右腕は切り飛ばされていたからだ。

 

「なっ!?」

 

 その状況を理解するのに1秒というごく僅かな時間を要してしまった。それがこの戦いの勝敗を決定づける事となる。奴はすぐに左腕も切り落とし、トップの機体を蹴りとばす。それによりトップ機は何も出来ず仰向けで地面へと倒れこむこととなり、完全に無力化されてしまったのである。足で踏まれ、上体を起こすことも叶わなくなったトップは早く殺してくれと言わんばかりに操縦桿から手を離した。だが奴はすぐには止めを刺さず、海岸線を指差した。仕方なくトップ機が顔を向けると、そこには先ほど自分達が阻止した部隊の倍程のミデアが姿を現していた。それを見たトップは青ざめる。

 

「あれが本隊だと言うのかい……私らは先遣隊相手に勝って満足してたらしいね……」

 

 

 [アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ]

 

 先程と同じ笑い声……それは子供のように感じられた。そして次の瞬間、奴のビームサーベルがトップ機のコックピットを貫いた。

 

 

 トップ機の敗北により第1防衛ライン右翼は完全に崩壊することとなる。一方、激戦の末沈黙した骸を見下ろし佇んでいた「死神」であったが、何かを感じたのかスラスターを使い高速で移動を開始する。その方向には急いで駆けつけた増援部隊の姿があった。

 

 

 

 

 

 ペキン基地・司令部

 

 戦場から離脱したデルは、30分ほどで基地へと到着した。既に「死神」の報告は通信で終わらせていたが、ユーリ司令に直接報告したいと司令部へと足を踏み入れる。しかし、司令部内は緊迫した状況であった。司令を見つけたデルはすぐに駆け寄り状況を聞く。

 

「ユーリ司令、トップ隊ただいま帰還致しました。連邦の新兵器によりアス中尉と新兵数名を失ってしまう結果となりましたが、トップ少佐が必ず仕留めてくれるでしょう。してこの慌ただしい状況は?」

 

 デルの言葉を聞いたユーリは思わず言葉を詰まらせる。

 

「……第1防衛ラインの部隊が…………全滅した。増援として来た部隊も含めてだ……」

 

「私たちの右翼は崩れましたが左翼は健在だったはずです! 何故……まさか!?」

 

「奴が右翼側から強襲し本隊の上陸を援護したらしい。おかげで戦線は混乱、圧倒的な戦力差も相まってものの十数分で150機余りが全滅。連邦はそのまま内陸へと侵攻を続けている」

 

「そんな……では隊長も……」

 

「ああ、ビーコンの消失及び増援部隊からの緊急連絡で把握した。お前たちにはすまないことをしたと思っている。俺の完全な判断ミスだ。先程ドズル閣下に連絡を取り、ペキン基地を一度放棄することになった。1/3以上を損失した今、もうここでの勝機はない」

 

「くっ、それでは第1ラインの我々はただの捨て駒のようなものではないですか!」

 

 デルは声を荒らげる。

 

「すまない……全ての責任は私にある。償いとはほど遠いかもしれないが全員の撤退の時間は私が稼ぐ」

 

 その言葉にデルはユーリの顔を見る。司令としての責任……ユーリの覚悟は固いようだった。

 

「今部隊の撤収を急がせている。デルはそちらの誘導に回ってくれ。ザンジバルは予めアブストに準備させておいた。頼んだぞ」

 

ユーリはMS格納庫に向けて歩いていく。デルはその背中を黙って見つめることしか出来なかった。

一年戦争が終わった後の戦乱

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