ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第三十七話  撤退までの戦い

「俺のザクは用意出来ているか!」

 

 格納庫にユーリの声が響き渡る。予備戦力として温存されていたMS及び機材の搬出作業で慌ただしかった庫内はその一声によって一気に静まった。

 

「司令のザクはいつでも出撃出来るようにしてあります。しかし本当に出撃なされるのですか?」

 

「俺の判断ミスで200名近い部下が命を落とした。司令という立場でありながら殿を務めるというのは無責任だろうが、全ての責任は俺が負わなければならないのだ」

 

 愛する部下達を自分の指示で死なせてしまったということは、到底看過できるものではなかった。司令という立場を捨ててでもその償いをしなければならない……ユーリはそう考えていた。

 

「ユーリ司令、私たちも残らせてください」

 

 ユーリの発言を聞いて名乗りを上げる者達がいた。副官アブストとバリー、ルネンである。この3人は開戦時からユーリ直属の叩き上げでありとても強い忠誠心を持っていた。

 

 

「……時間になったら撤退しろ。それが条件だ。出撃するぞ!」

 

「はっ!」

 

 4人は各々機体へと乗り込み、格納庫から出撃していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドズルside

 

 僕は今ワルキューレのブリッジで臨時の会議を行っている。諜報員から「オデッサ殲滅」の報が舞い込んだからだ。今起きている連邦の積極的な攻勢もその1つであり、真の目的はペキン基地奪還による橋頭堡の確保であった。そのためアジア方面軍の全面撤退を決定、敗走に見せかけオデッサで迎え撃つ準備をしていたのだが現実はそう甘くはなかった。既にペキン基地は戦力の1/3を損失、非常にまずい事態だ。

 

 [今回の事態、ドズル閣下に落ち度があるのではないでしょうか? ]

 

 デラーズが核心を突いてくる。だが今回ばかりは僕が悪い。

 

 [このままアジア方面軍主力が壊滅するようなことがあれば、閣下と言えど責任逃れはさせませんぞ]

 

「そんなことはさせん。ペキン基地もマドラス基地も撤退を開始しているのだ、これ以上の被害は必ず食い止めてみせる」

 

 [……ハワイ基地の副司令が連邦と繋がっていたそうで。その者はこちらで始末しましたが、どうやら閣下は危機管理能力が少し甘いようですな]

 

 [デラーズ中将、少し言い過ぎではないか? ]

 

 奴の強い口調にガルマが止めに入る。デラーズが何か言いかけたが、僕が遮る。

 

「今は戦争中だ。これが終結したならば責任を取ってどんな罰でも受けよう。しかし今は繋いでくれた者達の為に必ず勝利しなければならないのだ」

 

 

 その時今まで散っていたシリウスさんや沢山の部下達の顔が浮かぶ。そして先ほどモニター越しで話したユーリ……彼の顔は覚悟を物語っていた。だが死なせはしない。そのために一番足の速いワルキューレでペキンに向かっているのだ。

 

 [その覚悟があるならよろしいでしょう。私からは何も言うことはありません]

 

「とりあえず今の状況及びオデッサ防衛作戦は共有が終わった。今後の対応はその指示通りに頼む」

 

 数分後、会議は終了した。だがこの時の僕はデラーズの思惑に気づくことが出来なかった……

 

 

 

 

 

 

 ペキン基地からおよそ50キロ。連邦部隊は海岸線以降特に反撃を受けることもなく、着実に内陸部へと進撃を続けていた。しかし、そこに4機のMSが立ち塞がる。

 

「散っていった部下達の仇は、お前ら全員の命で償って貰おうか!」

 

 最初に動いたのはユーリのザクであった。専用の得物であるヒートナタを構え、敵陣へと肉薄する。そして先頭にいたジムを真っ二つに叩き切ると、辺りを見回した。どうやら「死神」はいないらしい。

 

「どけどけぇ! 戦争屋のお通りだ!」

 

 目の前に立ちはだかるジムを次々と切り伏せ、教本通りであろう陣形を崩していく。対する連邦部隊は4機を取り囲むように陣形を変更、逃げ場のないように円を形作った。中心で暴れる獣達を止めるため果敢に攻撃を加えるが、ことごとく返り討ちにされて破片を散らしていく。数で言えば100倍くらいの差はあるのだろう。だが強い意志と士気の高さが、数的有利を阻止していた。

 

「まもなく第1陣が発進します!」

 

 アブストが叫んだ。第1陣には非戦闘員や反連邦派の地域の住民が多数乗っている。兵士達が乗る第2陣が発進するまでは15分弱……そこまで耐えればユーリ達の勝ちである。アブスト達も少しずつ敵の数を削っており、このまま時間まで押しきれるだろうと思っていた。

 

「手練れはいねぇのか! 部下達を殺したアイツはどこにいる!!」

 

 一番近くにいたジムのコックピットを叩き切り、蹴り飛ばす。辺りにはジムの残骸が積み上がりつつある。次の獲物を探そうと顔を上げたとき、ジムの群れの中に1機見た目が少し異なるものを見つけた。どうやら指揮官機のようだ。ユーリはペダルを踏み込み、一気に加速する。

 

「お前を殺せば、全体の動きは鈍るよなぁ!」

 

 付近のジムを蹴散らしながら、隊長機の眼前へと迫る。そして、真上から唐竹割りを繰り出した。隊長機はシールドを使いそれを受け止めるが、ユーリは無理やり振り下ろす。その桁違いのパワーは隊長機のシールドを腕ごと真っ二つにしてしまう。だが隊長機は次の1手を既に用意していた。シールドでガードすると同時に、右手でビームサーベルを掴んでいたのだ。奴は刃の展開とほぼ同時に右手を突き出した。その一撃はユーリ機の左胸の端を溶かす。そして更に追い討ちを掛けるようにバルカンを乱射した。そのうちの1発は偶然にも頭部カメラに命中してしまう。

 

「おもしれぇ! もっと楽しませてくれ」

 

 補助カメラに瞬時に切り替え、反撃に転じる。先ほどまでと違い、力ではなく手数で攻めていく。奴もそれに対応するが、左腕がない分バランスが崩れやすい。少し攻撃のリズムを変えてあげれば簡単に崩せる。その一瞬を見逃さず、渾身の一撃を浴びせた。それはコックピットを的確に捉え、隊長機は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。それを見た他の兵士は明らかに動きが鈍った。だがその時、

 

 [アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ]

 

 戦場に不気味な声が響き渡る。「死神」が来襲したのだ。付近に棒立ちになっていた味方のジムを躊躇なく切り伏せ、ユーリに襲い掛かる。直後、奴が繰り出した連撃にユーリはなんとか対応、ナタで受け止める。

 

「可愛い部下達を殺しやがったのは貴様か!」

 

 トップ隊からの通信で大まかな行動パターンは聞いている。それでもユーリの額には冷や汗が浮かんでいた。距離を開けたら負ける……そう判断したユーリは奴の懐へと潜り込み、逆袈裟の攻撃を繰り出した。だがその攻撃は学習済みらしい。いとも簡単に避けられてしまう。更に攻撃を食らわせようとしたユーリだったが、「死神」の方が少し速かった。奴の一振は左腕から左足にかけて斜めに切断する。ユーリが咄嗟に半身下がらなければ勝負は決していただろう。だが片足を失った機体が立っていられるはずもなく、地面へと無惨に転がる。

 

「くっ、ここまでか……」

 

 ユーリは死を悟る。しかしいつになっても凶刃が下りてくることはなかった。刃は白いドムが受け止めていたのだ。ドムはその体勢のまま「死神」を蹴り飛ばす。

 

 

 ドズルSide

 

 間一髪の所だった。あと数秒降下が遅れていたらユーリは死んでいただろう。目の前でマツナガが「死神」と刃を交えている。……予想通りペイルライダーだな。マツナガが奴を押さえている間に僕は道をこじ開ける。

 

「ユーリを保護しろ! 少し離れたところに輸送機を待機させている、急ぐんだ」

 

 周りにいるジムは所詮新兵、脅威はない。さっさと蹴散らしてしまう。そしてユーリの部下達と共に連邦の包囲網を脱出した。

 

「死なせるわけにはいかないんだ、ユーリ中将」

 

 [閣下の手を煩わせてしまい申し訳ありません……]

 

「責任は全て俺にある。お前が気にする必要はない。ペキン基地を脱出した者達も無事だ。安心しろ」

 

 その後10分くらいで輸送機へと到着する。マツナガも殿を務め、無事に戻ってきた。その後直ぐに離陸し、オデッサへの飛行に入る。

 

 

 僕は窓からペキン基地を眺め、散っていった者達へ謝った。そして煮えたぎる怒りで拳を強く握りこんだ。

 

「この借りは直ぐに返させてもらうぞ、ワイアット!」

 

 その後、ペキン基地は連邦の手に戻り、オデッサ総攻撃への足掛かりとなる…

 

一年戦争が終わった後の戦乱

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