ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第四十話 オデッサ防衛戦②

サイクロプス隊の罠から逃れるため速度を上げたワイアット率いる第1軍は数分で平地へとたどり着く。だが開けた視界に入って来たものは想像できないものだった。あちこちに簡易トーチカと壁が築かれ、眼前に広がるのは小規模な基地の様相であった。

 

「前方にジオンのMS反応を確認!数は...か、確認できるだけで約500!」

 

「閣下、これが敵の主力でしょうか?」

 

副官がワイアットに話しかける。その顔と言葉は、スペースノイドに対する偏見に満ち溢れていた。

 

「いや、それはないだろう。ハワイ陥落時の数と、ペキンから敵前逃亡した数を合わせれば500では足りないはず。それに作戦通りベルファスト方面に主力を向かわせているとレビルから通信が入っている。今頃、東側の連邦の数に混乱している頃だ」

 

ブリッジ内で感嘆の声が起こる。だがワイアットだけは落ち着いていた。

 

「だが小規模の部隊がここまで多いとは、少し予想が外れたようだ」

 

それと同時、格納庫から通信が届いた。

 

「閣下、1号機はこの高度でも出撃できます。先に出撃させてください」

 

その通信の主はテム・レイである。ジャブローで大幅な調整を受けたガンダム1号機はワイアットの懐刀として旗艦に搭載されていた。

 

「他のMSが出撃するには数分は掛かる。それまでの時間稼ぎをお願いしたい」

 

「承知いたしました。ガンダム1号機、出撃します!!」

 

その言葉と共に1号機は平地へと射出される。それを見て、ワイアットは不敵な笑みを浮かべた。

 

「高度を下げてMS隊を全て下ろせ。既にMSを下ろしているペガサス級は敵陣へと進み、名誉の盾となれ」

 

予想外の事態ではあったが、ワイアットは直ぐに自分が描いていたプランを修正する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連邦第1軍と相対しているのは、アンリ直属の精鋭部隊である。本隊よりも先に平地へと到着した彼らは、シュタイナーの指示で陣を完璧に整えていた。だが数十隻のMS母艦はジオン側の予想より高高度を航行していたためにMSの展開はもう少し時間が掛かるだろうと、対空装備を手に取っていた。

 

「MS1機を確認!真っすぐこちらに突っ込んできます!」

 

「あの高度から飛んだのか!?まさに飛んで火にいる夏の虫であるな。全機、武装を切り替え対応せよ!」

 

攻撃命令を出した数秒後、目視でも認識できる距離まで敵が近づいてくる。だが隊長はその機体に見覚えがあった。

 

「角付きだと!?命令を撤回する!必ず大人数で対処せよ」

 

だが隊長の新たな命令が発せられるより前に、奴はもう狩りを始めていた。トーチカの中にいたグフ2機を空中から射撃で正確に貫き、そのまま陣形内に着地する。それとほぼ同時、背後から斬りかかろうとしたドムを紙一重で躱し、ゼロ距離射撃で撃破した。その動きは並みのパイロットであれば気絶してしまうような負荷がかかっているだろう。

その光景は精鋭と呼ばれる者たちが恐怖で動けなくなるほどのものだった。その間も連邦の悪魔は餌を求め狩りを続けている。

 

「化け物が...」

 

隊長は思わず声を漏らした。気づけば陽動で虚を突いたはずのジオン軍が、逆に手玉に取られている...だがここで怖気づけばアンリの名に傷をつけることになるのだ。隊長は震える腕を押さえ、覚悟を決めた。得物を抜いて、ガンダム1号機へと肉薄する。頭上から振り下ろした鉈に対し、悪魔は盾での防御態勢に入った。だが、盾が攻撃を防ぐことはない。隊長機の一刀は当たる寸前で消えたのだ。代わりに強烈な左フックが一号機の頭を襲った。奴は一瞬態勢を崩したように見えたが、サーベルを抜いて直ぐに斬りかかってくる。

 

「っ!!フェイントはもう使えないだろう」

 

後ろに下がると同時、腰から煙幕弾を無造作に転がした。直後タイミングをずらしてクラッカーも1号機の方向へばら撒く。数秒後、1号機は煙幕に包まれる。続いて煙幕の中でクラッカーが炸裂した。隊長は煙幕の中を観察するが、奴が動く気配はない。隊長は動きを止めたと判断し悪魔を仕留めようと機体を動かす。だがその時だった。

 

[隊長!木馬が2隻突っ込んできます!]

 

部下からの緊急通信を聞き、空を見上げる。部下の発言どおり、上空から速度を緩めず降下してくる木馬が視界に入った。だがあまりにも速度と角度が不自然だ。砲撃支援とも思えない。そして隊長は一つの可能性にたどり着いた。

 

「あの速度、まさか特攻...ちっ!」

 

煙幕を切り裂くようにビームが飛んでくる。隊長は強引に機体を右にずらし回避行動を取ったが、それでもよけきれず肩の装甲が溶けた。態勢を整え視線を前に向けたとき、ちょうど1号機が煙幕から姿を現したところであった。盾に傷は入っているが、本体は無傷のようだった。奴はツインアイを不気味に赤く光らせこちらを睨んでいる。だが隊長は違和感を感じた。煙幕に包まれる前、双眼は黄色に光っていたはずなのだ。しかし、考える余裕は与えられなかった。先ほどまでの戦闘の2倍以上の速さで1号機が加速したからだ。奴は息をする暇もなく懐に入ると、ビームサーベルを逆袈裟に振り上げた。その斬撃は、隊長機の左腕を容易く吹き飛ばす。そのまま返す刀で息の根を止めようとする1号機だったが、急に動きを止めた。その刹那、黄色い閃光が隊長機と1号機の間を寸分違わず通り過ぎる。一瞬の間を経て、1号機は閃光を放った主の方へ顔を向けた。その視線の先には航空機に乗ったもう1機のガンダムがこちらを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロside

 

テム・レイはガンダムに心を奪われ、自分の体を犠牲にして暴走している。僕は息子として、そして1人の軍人として奴を止めなければならない。そう自分に言い聞かせ、眼下のガンダム1号機を見つめる。

 

[アムロ君、我々はまず木馬を2隻片付ける。1号機は任せていいか?]

 

「了解です、クランプ大尉。そちらは頼みます」

 

僕はSFSを自動操縦に切替え、地上に降り立つ。それと同時、コックピット内に警報が鳴り響いた。1号機はすでに標的を僕へと変更し、急速に近づいて来ている。そのため1号機とまったく同じ動きで距離を詰め、ビームサーベル同士を切り結ぶ。その時、接触回線により父の声が聞こえた。

 

[息子を返せ!この外道が!]

 

聞き慣れているはずの父の声...だが今は全く別人のように聞こえる。

 

「父さん!!僕だ、目を覚ましてくれ!」

 

僕は必死に呼びかける。だがその想いが最愛の父へ届くことはなかった。通信などお構いなしに、奴は再び刃で切りかかってくる。

 

[私の息子を返せ!!]

 

僕は仕方なく一度距離を取り、牽制のバルカンを発射する。それと同時、付近の友軍に通信を入れた。

 

「こちらランバ・ラル隊のアムロです。角付きは自分一人で引き受けます。あなた方は後続の連邦MSの対処をお願いします」

 

友軍が通信に従い態勢を整え始めるのを視界の端で確認し、左手に持っているビームライフルを1号機の足元へ撃ちこむ。すると1号機は後ろに飛ぶことで回避した。その動きは僕が予想した通りだ。続けて2射目、3射目と放つと奴は更に後ろへと下がる。それを何回か繰り返すと、やがてある場所へとたどり着く。

 

「ここなら味方への被害は少ない。存分に話し合えるよ、父さん」

 

2機のガンダムが辿りついた場所は主戦場から少し離れた盆地だった。僕は最初に着地する前に端にあるこの盆地を見つけていた。自軍の状況と1号機の脅威を判断した結果、奴を戦場から追い出すことが最適解だろう。迎撃は既存の部隊とクランプさん達に任せればいい。

 

[貴様、私の息子に何をした。動きがまるで違う。変わっていないのは外装のみか]

 

「腐っても技術屋なのは変わらないね」

 

[私の息子を奪っただけでは飽き足らず、肉体改造まで行うとは悪魔の所業だ!]

 

それと同時、1号機が距離を詰めサーベルを振り下ろす。僕はその軌道を凝視し、一気に前へ踏み出した。それにより1号機の刃は空気を斬るだけに終わり、動きが一瞬止まった。僕はそこを見逃さずすぐさま蹴りを入れる。どうやら思い付きでやったことでシステムを欺けたようだ。奴は態勢を崩したが、直ぐに起き上がりこちらに迫ってくる。勢いよく振り下ろされる刃を受け止め、そのまま激しい鍔迫り合いへともつれ込んだ。奴が放つ殺意のこもった斬撃を何とか受け流しつつ、突破口を探る。

 

[逃げるだけでは私には勝てんよ!ハハハハ!]

 

「システムの意識外を突かなければ父さんは倒せない。どうする...」

 

思考出来る時間はそう多くはない。僕は一つの可能性に賭け、大きく距離を取った。そして1号機の足元へ向け、バルカンを放つ。狙いは機体を覆うほどの砂煙を作ること。次に、通信をオープン回線にして叫ぶ。

 

「これでチェックメイトだ!」

 

盾を機体全面に構え、1号機へと突っ込む。奴からは砂煙で僕の機体は捉えられないはずだ。僕は意識を研ぎ澄ませる。チャンスは1回しかないだろう。

 

「....!」

 

その時、脳に電流のようなものが走った。それを起点に一気にジャンプする。刹那、機体が存在していた場所を凶刃が通り抜け、盾が両断された。一方の僕はサーベルを両手で構え、空中から1号機めがけて振り下ろした。だがその刃が下りる寸前、奴が強引に機体を反らしたことで1部分を溶かすだけに終わる。

 

「まだだ!」

 

着地と同時、右手だけで無理やり斬り上げる。その一撃は、避け終わりの1号機の両腕を切断するに至った。

 

一年戦争が終わった後の戦乱

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