連邦の各サイドへの政策を発表した翌朝、サイド2では連邦の駐屯基地に大勢の住民が押し寄せ、暴動が起こった。対する基地職員たちは鎮圧の為に催涙ガスや強制逮捕を実行し、暴徒たちは二時間ほどで鎮められた。
サイド3・ドズル執務室
「……以上がサイド3の生産拠点の修理状況になります」
「そうか、報告ありがとう」
報告が終わったラースは、こちらを伺うように見ている。
「どうした?」
「……あの、ドズル様は開発局の情報漏洩についてご存じでしょうか?」
「なんのことだ? ……情報漏洩だと?」
「はい、盗まれたのは最初期のモビルワーカーのデータなのですが、やっぱり報告は上がっていませんでしたか」
「ああ、そんな報告は来ていない」
「そうですか、同僚のエリックが上に報告すると言って証拠を持っていったのですが」
僕は腕を組んで考える。そして、キシリアに連絡を入れる。
「……キシリアか? ちょっと調べてもらいたいことがある。……ああ、開発局のエリックっていうやつについてだ。よろしく頼むぞ」
俺は受話器を置き、ラースに顔を向ける。
「キシリアの諜報部がエリックについて調べるが、お前もエリックに不審な点がないか注意してほしい。いいか?」
「分かりました。こちらでも慎重に調べてみます」
ラースは敬礼をして部屋を出ていく。
さて、どうするか。情報が漏れていた以上セキュリティの強化は必須になるが、その前にどこの誰が情報を欲したのか突き止めて処分しなければならないな。
1週間後
キシリアの諜報部から報告書が届いた。報告書にはエリックの出身地や家族の情報とこれまでの経歴などが示されていた。さらに、人間関係やこれまでの恋人までもが調べられ表にまとめられていた。……キシリアの諜報部隊恐るべし。
「ラース君、エリックの動きに怪しいところはあったか?」
「はい、一日に一回どこかに通信をしています。また、書類を確認したところ何枚か紛失しているものがありました」
「そうか、報告ありがとう。引き続き彼の動向に注意してくれ」
「はっ! 失礼します」
さて、ギレンに話をするか。
別階・ギレン執務室
僕がノックをして部屋に入ると、ギレンは書類に目を通していた。
「兄貴、この間話したスパイについての続報が入った」
「そうか、教えてくれ」
「ああ、彼の名はエリック・クロイツェ。同僚の話によると一日に一回どこかに通信を送っており、さらに何枚か書類の紛失があるようだ」
ギレンは顎に手を当てて何かを考えている仕草をしている。
「……前に話を聞いてから考えていたのだが、1週間後に連邦の視察が来るだろう。その中に、エリックと繋がっている誰かが混じっていて開発局の情報を盗むつもりなのだと思う」
「そうか! なるほど、ではすぐに逮捕要請を出さなくては」
「うむ、ちょっと待ってろ」
ギレンは受話器を持ち、どこかに電話をかける。
「アンリか? こちらギレンだ。……すぐに逮捕してもらいたい人物がいる。動いてくれるか? ……ああ、ありがとう。では失礼する。……これで平気だ」
「これで情報が漏れることがないといいんだけどな」
ギレンは椅子から立ち上がり、部屋に備え付けられている窓からズム・シティの町並みを見下ろす。
「これが彼が一人でやったことなら収束するだろうが、上に誰か指示していたものがいるならまだ油断はできん」
「そうだな、俺も連邦の視察が終わるまで開発局には神経を配らせておこう」
「開発部長としての義務を果たせ。場合によっては責任を取ってもらわなければならなくなるぞ」
「分かってるよ、兄貴」
「まあエリックを逮捕するのは勿論、他の開発局の面々にも目を配らせるように公国防衛隊とキシリアの諜報部に言っておく。そこまで案ずることはない」
「ああ、そうだな」
数時間後
郊外に位置する開発局の新兵器開発部では人々の往来が多く、全員が忙しそうに動いていた。そんな時、入り口のドアが勢いよく開き十人ほどの男たちが入ってくる。
「我々は、公国防衛隊だ! エリック・クロイツェに情報漏洩の容疑で逮捕状が出ている」
その言葉を聞いた瞬間、エリックが走り出し窓を開け外に飛び降りた。
「ちっ、逃がすな、追いかけろ! それと、付近の警戒に当たっている諜報部にも連絡を入れてくれ」
公国防衛隊の隊員たちは建物を出て、エリックを追いかけ始める。
一方のエリックは開発局の敷地を出て、大通りをズム・シティ市街地に向けて走り始めた。
「なんとしても逃げ切らないと……くそ!」
前から走ってくる複数人の男を確認し、急いで横道にそれる。そしてちがう大通りに出てまた走り始める。
「エリック、止まれ!」
後ろから男の声が聞こえるが、エリックは気にせずに走り続ける。なんとしてもあの方と合流しなければ。息が切れているのも気にせずに、大通りを直進していく。時間は夜中に近く、大通りでも人通りはない。そんな中をエリックは駆け抜けていくが、前方に人影を見つけて立ち止まる。人影は段々とエリックに接近してきた。その手には銃が構えられておりエリックは待ち伏せされていたことを悟った。背後に気配を感じ、後ろを振り向くとと公国防衛隊の面々が銃を構えて立っていた。
「手を挙げて、頭の後ろに組み膝をつけ」
「はぁ、ここまでか」
エリックは手を後ろで組んで、地面に膝をつく。それを確認した男たちはエリックの手に手錠をかけ、拘束する。そして付近に待機させてあった車両に乗せて、公国防衛隊本部へと連行していった。
一年戦争が終わった後の戦乱
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