元プロバレー選手は、本気でバレーをしない! 作:turara
俺が、そいつとであったのは小学校4年生の時だった。そいつは公園で一人、身の丈に合わない堅い高校生用のバレーボールを必死に追いかけていた。
オレンジ色の髪の毛にでっかく少しつり上がった目。何より印象的だったのが、一人のくせに余りに楽しそうにボールを追いかけていることだ。
この町に小学生が入れるバレーチームはない。恐らく毎日一人で練習しているのだろう。一人遊びにしては上手で、オーバーもレシーブもたどたどしいが練習の跡が見られた。
微笑ましく眺めていると乱れたボールが俺の元へ飛んでくる。
俺は、走ってボールの下へ行くと、その少年に向けてポーンとボールをアンダーで返す。
優しく、ふんわりと上がったボールは、丁度少年の腕の前へ行く。少年は、俺がボールを返してくれたことが嬉しかったのか、必死になってまた俺にアンダーを返してきた。
腕を大きく振り上げ、俺へ届くよう精一杯返す。案の定変な方向へ行ったが、元プロの俺は、そんな乱れたボールも完璧に少年に返す。
何度かラリーが続き、少年も慣れてきたように俺へと返す。
俺は、少しいたずらをしたくなって、俺の頭上へと飛んできたボールをトスではなく軽いアタックで少年に返す。
少年は、「うわっ!」と言いながら必死にボールを追いかけたが、結局後ろの上へ飛んでいってしまった。
少年は、バレー仲間に初めてであったようで、始終うれしげにボールを追いかけていた。
俺は、そんな彼を見て懐かしい気持ちになる。昔は、俺もこんな風な笑顔でボールを追いかけていたっけなと思い出す。
俺は、元プロバレー選手だ。かつての俺は、日本代表の絶対的エースで、その外国人並の高身長とパワー、そしてジャンプ力を生かし、世界相手に戦っていた。
俺は、バレーの試合中にボールで足が滑り、頭を強うぶつけ死んでしまった。
生き返ったときには、こんな小さい姿になり、また小学校の生活をおくっている。
俺が死んだのは、オリンピックの前日のアップだった。こんな悔しいことはなかった。この日のために、つらい練習を積み重ねてきたのだというのにだ。
俺は、だから今度こそ日本のエースになりプロのオリンピックっで日本をメダルに道びきたいと思っている。
こんな小さい姿になって、思うように体も動かないが、バレーを欠かさない日はない。
俺は、目の前の少年を見、再度またそう強く思った。
しかし、このときの俺はまだ全く想像さえしていなかった。俺は、世界を目指すどころか、高校バレーでさえ活躍できないということに。