元プロバレー選手は、本気でバレーをしない! 作:turara
俺は、窓の外から体育館を見下ろす。今は、放課後で、教室には数人の生徒が談笑している。
この3階の窓からは、体育館と裏庭が見えた。
バレー部員の声がここまで聞こえてくる。
ここ、青葉城西高校はバレーがとても強いらしい。何でも県で4位にはいるとか何とか。
しかし、自分には関係ないことだと、視線をはずす。毎日、体育館を見ているのは、決してうらやましいと思っているわけではない。つらそうな練習だと見下ろしているだけだ。
俺は、乱雑している教科書を鞄をに片づける。毎日、毎日、勉強の日々。
これまで、バレーしかしてこなかった俺は、やることが無く、仕方なく勉強に手を伸ばしている。青葉城西は進学校だ。しかし、毎日暇しのぎに勉強しているせいか、青葉城西高校でもトップ10には毎回はいっている。
これまで勉強するという概念さえなかったので不思議な感覚である。
決して、バレー部員の声だしをBGMに勉強しているということではない。ただ、暇だからである。
いよいよ勉強もあきてきて、日も暗くなってきたので帰り支度をする。俺はこの後、コンビニで買い食いして、電車に乗る。そして、少し揺られて、大学へいくのである。
電車から降りると、バスに乗り5分ぐらいで目的地へついた。大学の体育館である。
俺は、マスクをし、フードをかぶる。見ばれしないよう、変装し、いつものように体育館へ入った。
体育館の中には、いつものメンバーがそろっている。もうすでに試合を始めているようだった。
「よお。」
点付けをしている大学生が俺に挨拶をする。俺も手を挙げて反応した。
俺は、ここに大学生として混じっていた。
「へえ。いい勝負だな。」
試合は拮抗している。
15体16。とってはとられてのシーソーゲームになっていた。
「もうちょっと早く来てたら入れたのにな。なかなかいい試合だよ。」
俺は、フードを被り直す。
ここの大学にバレーサークルは3つある。一つが、毎日高校の部活のようにやるガチバレーサークル。そしてもう一つが週1のお遊びサークル。そしてこのサークルは2つのサークルの間をとって週3である。ガチでもなく、遊びでもない、それがこのサークルだった。
しかし、全員バレー経験者のようで、高校のようにガチでやりたくない人がここに集まっているようだ。
メンバーは20人。だいたい15人ぐらいが毎回そろう。
そして、元バレーOBの社会人が一緒になって試合している。だいたい2コートで、チームを変え、緩く遊びのような割りに、難易度の高い試合をしていた。
俺は、試合を見ながら軽くストレッチをする。今日は、よくからだが動きそうだと、足を伸ばしながら思う。
どちらのチームに入ろうか。毎回、社会人のほうが少し弱くなる。現役から離れてかなり経っているからだろう。
俺は、今回も社会人チームに入ろうかと思う。とは言っても、実力を拮抗させるためにだいたい俺は社会人チームに入っている。実際ここの大学の人ではないので正しいのだが。それに、俺は大学生だと言っているが、とても怪しまれている。
なにを聞いても学部も学年も黙秘をし続けるから、このサークル内で、俺にそういうことを聞くのは禁句になった。しかし、高校生で大学生に混じってプレー出来るほど強いのに、高校バレーはしないと言うことはおかしいだろうと言うことで、ギリギリばれていないみたいだ。
しかしもう、そんなことは気にされなくなっている。俺は、ここに中学3年生から入っているからだ。今は、高校2年生。と言うことでずいぶんちびな大学3年生という設定になっている。それでもフードにマスク。また、俺の精神年齢的に、ぎりぎりそれが通っている。
試合は、やはり大学生チームが勝ったみたいで、社会人チームはひさびさに俺なしでいい試合ができたのにと落ち込んでいる。
俺が言うのもなんだが、社会人チームは、少し運動不足である。最後の最後だって疲れて足がもつれていた。
技術や実力は大学生チームと変わらないのに毎回負けるのはそういうところだ、と一人思う。
俺はアップを終え、みんなのいるところへ混ざる。
俺に気づいた、社会人チームの一人が俺に声をかけた。
「今の試合見てたか?おまえなしで結構いいとこまでいっただろ!」
40代ぐらいのおっさんが首にかけているタオルで額の汗を拭いながらそう言う。この少し中年太り気味のおじさんは、こうみえてもかなり強い。体の動きは重いが、トスの技術に関してはかなり上手い。アタッカーが欲しいところへ完璧にあげるセッターである。
「見てましたよ。最後、足がもつれて取り損なってたとこ。」
そう俺は、そう軽く返す。いつもこんな感じだ。俺は生意気なキャラで通っている。社会人チームにいつも混ざるから何故かこんなキャラになっていた。
「何だと!?そこじゃねえだろ見るとこ。もっとほかあっただろ。」
「・・・いや、ないっすね。やっぱり俺がいないと駄目なんだなと。」
随分上から目線だと感じる人もいるかもしれないが実際その通りである。
足のもつれてろくに動かない大人のカバーを全てやっているのが俺である。アタックにカバーにレシーブにトスに。そのときそのときで俺は、何でもやって見せた。いわゆるオールラウンナーである。
しかし俺は、そう言う緩いところが気に入っていた。もし、高校のバレーにはいれば絶対そんなことは許してくれないだろう。俺は、レシーブ専門のリベロへと追いやられるに決まっている。
俺はアタックがしたいのだ。思いっきり地面へ叩きつける感覚。そして自分の手で点をとる快感。
レシーバーが悪いといっているわけではない。ただ、俺の性に合わないだけだ。
もし背が高く生まれていたらと考えない日はない。高校バレーで、メンバーを春高へ連れてって、日本もついでに世界のトップに連れてってやろうと、そのぐらいの気概だった。
しかし、俺は背が低いし、ジャンプ力もない。その代わりすばっしっこさと俊敏さは前より凄くなったが、俺がほしいのはそれではないのだ。
俺がほしかったのはほかを圧倒する背である。
一度は、やめてしまおうと思った。自分がやりたいプレーが出来ず、強制させられるなんて苦しいだけだろうと。
しかし俺は、今でも、しつこくバレーから離れられないでいる。
根っからのバレー好きだし、こうやって遊びでもボールにふれられることが、本当に嬉しいからである。
「おーい。次の試合始めるぞ。」
そう叫ぶ声が聞こる。
「じゃあ、今日もよろしく頼むよ。エース君。」
40代ぐらいのオジサンは、俺の肩をぽんぽんと叩くと、チーム決めをしている舞台のほうへ歩いていく。
俺も、すぐにどこのコートで試合をするかを確認しにそちらへ向かった。