元プロバレー選手は、本気でバレーをしない! 作:turara
予想通り、俺と及川は同じチームに振り分けられた。チームにわかれそれぞれアップを開始する。俺は及川を誘い軽くラリーをしていた。
「田中さん。」
及川はそういい俺に綺麗なトスをおくる。流石、青葉城西高校の主将セッターともあり、めちゃくちゃ安定している。俺は、足一歩も動かしていないのにぴたりと俺の返しやすいほうへくる。
俺は、少し距離を伸ばそうとボールを少しずつ遠くへとばす。だんだん俺と及川の距離も離れ、コート、端から端までの距離になる。それでも及川は依然と完璧に俺にトスをおくる。
また、トスのフォーム、タッチも見事である。全く音がしない。及川にかかると全てのボールが正常化して戻ってくるみたいに感じた。
アップが終わり、いよいよ試合が始まる。
俺は、最初真ん中のセンターでサーブカットをする。及川をふと見ると、俺のほうを見て少し合図する。最初、俺にトスをあげると言うことだろう。
サーブは右端後ろに飛んでくる。俺はそれを確認し、レフトのポジションに移動する。アタックの準備を整え、「レフト」と叫ぶ。
及川は最初の合図通り、俺の方へトスをあげる。
無難な、少し高めのトス。俺は低い身長ながら、助走をつけ思いっきり高く上へ飛ぶ。レフトへとばすように見せかけてライトへアタックを打ち込む。
アタックはうまく決まった。
及川はニヤリと笑い、「ナイスです!」と声をかける。それから、及川は俺に「トスどうでした?もう少し低い方がいいです?」と質問する。
俺は、確かにもう少し低めでもいいかなと思ったので、「ああ。お願い。」といった。
いつもならどっこいどっこいの勝負をするが、及川が入ったことで点数はかなり偏る。というのも、及川のサーブをとるのに大学生側はかなり苦戦したようだ。また、俺のカットもそうだし、アタック力も及川が入ったことで上昇し、13対25で決着が付いた。
「結構点差ついたな。」
及川にそう言うと、「そうですね。」と相づちを打つ。及川も少し物足りなさそうである。
「次は、俺があっちのチームいこうかな。」
俺は、そう独り言を言う。大学生チームは少しカット力が弱い。及川のサーブにかなり苦戦し、3点ぐらいサービスエースを決められていたので、少し一方的な試合になってしまった。
俺はアタッカーに拘っているが、正直カットのほうが向いている。この小さい背は、アタッカーとしての能力を奪ってしまったが、逆に守るのにはとても向いていた。アタッカーとしての俺は、普通の高校生なら一般的な実力だが、守りとしての実力はほとんどプロとレベルは変わらない。
恐らく俺なら、及川のサーブにも対応できる。また、及川のツーアタックにも全然堪えないだろう。
本当は、もっと及川のトスでアタックを気持ちよくうっていたいところだが、ここまで差が付いてしまったら俺はあっちにはいるしかないだろう。
正直、俺が所属しているこのチームを及川にがっかりさせたくはないのである。
「あっちにはいるんです?」
及川はそう俺の独り言に返事する。
「ああ。勝負がこんなに早く決まったらつまらないだろ。」
俺は及川にニヤリと笑う。
「次は楽しませてやるよ。」
この俺が、アタッカーとしての地位を捨て、拾うことに意識しようと考える。絶対ボールを決めさせないという自信だけが漲っていた。
俺は、自分がこんなに守護の側でドキドキしているのは初めてではないかと考えた。
及川のサーブをAカットすれば、どんな表情が見られるのだろうと、俺はやる気になった。