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唐突だが、私には前世の記憶がある。
な…何を言っているのかわからないとは思うが私も何があったのかわからなかった…
まった!帰ろうとしないで!ふざけたのは謝るから!ポルナ○フごっことかはちょっと調子乗ってたから!
ふう、今度はふざけずに回想しよう。
ブラック会社に勤めていた私は八徹の仕事中にふと気を失った。
するとなんかモヤモヤした人型の光みたいな物が見えてソイツは神だって名乗ってきた。
『お前は今先程過労で死んだ。だがしかし、本来はここで死ぬ定めでは無かったのだ。よって別世界、あるいは平行世界へと転生させよう』
ってこっちの言葉とかも聞かずに一方的に話してきてさ。
『転生特典とやらが今は流行っているのだろう?それ、何か望みを言え。そうだな……初の転生特典ということで3つまで良しとしよう』
その時はぶっちゃけ都合のいい夢で、目が覚めたら仕事中の居眠りを部長に叱られるもんだと思ってたから、がっつり願望言っちゃって。
「十徹してもピンピンしてる丈夫な体、あと女の子になってみたい。出来れば美少女な感じで才能とかもその体に見合うように。……あとは…ポケモンを思いっきりしたい!」
ポケモンは私の青春時代。センスもいいし、楽しくって。
それで何でこうしたかというと新しいポケモンが出たらしいからそれをやりたかったんだ。
するとそのモヤモヤは少し考え込むような素振りをみせ、こう言った。
『それは『どうぐ』や図鑑等も使うのか?』
「私は廃人でも縛りプレイもないんで普通に使いますよ。というか図鑑は必ずあるでしょう?」
『…分かった。では送るとしよう』
「?」
少し会話が噛み合って無いような気もしたがどうせ夢だと思ってたいして気にしなかった私が悪いのだろう。いや、こんな事になるとか普通思わないから私は悪くない。
『これからは私が関わることも無いだろう。それでは第二の生を楽しむがいい』
「あー、はい。わかりました」
投げやりに返事した途端、浮遊感がする。足が地面についていないあやふやな感覚。というか足場がない?
下を見るとポッカリと空いた黒い穴。しかし目に見える大きさからかなり落ちるであろうことは予想できる。
うん、流石にこれは絶叫マシンとか大丈夫な私もっ
「〜〜〜〜!?」
嗚呼、起きた時に漏らしてなければいいんだけど…
・・・・・
「〜〜へぶっ!?」
勢いよく激突したが、その落ちた先がふかふかのソファであった為なんとか助かった。これが床だったら危なかった。
…というか落ちたし、全然目覚めよくないし。それ以前に近くにソファなんて無かったと思うんだけど。
目を開けるとそこは会社では無く何処かの一軒家。
ブラックで安月給な私では到底住むことの出来ない家。羨ましい……これ不法侵入では?
ヤバイヤバイヤバイ!?捕まったら今までのが全部パーになって!……いや、あの会社から開放されるなら案外捕まるのもいいのでは…?
じゃない、ダメだダメ!早いとこずらからないと!
この家の住民に見つからないように…
私は出来るだけ音を出さないように忍び足をし…なんか視線低くね?私は180センチはあったんだが大分低く見える…
「どうなってんの…?」
「……?」
「私の声こんなに高かったっけ?」
自分の体に起こった異変に戸惑っていると背後から物音がする。
この家の住民か!?と焦って振り返るとそこには150センチ少しの女の子が立っていた。結構美少女だ。
その女の子は寝起きのようでぽやっとした寝ぼけ瞳を擦っている。
「………」
「………」
お互い無言で見つめ合い、静寂が流れる。
「………」
「あ、いや、決してあ、怪しい者じゃありません!」
馬鹿じゃないの?人の家に不法侵入してる男が怪しくないわけないじゃん。
あ〜、ダメだこれ。完全に通報ルートだ。大人しくお縄につくとしよう
「何やってんの?お姉ちゃん」
「へ?」
お姉ちゃん…?
・・・・・
時が経つのは早いもので、その初コンタクトから4年。
私はこの新しい生活にすっかり慣れてしまっていた。
今世の名前は『白盾 鳴』。見た目はポケモンBW2の女主人公と一緒だ。
どうやらあの神らしきものは本当に私を転生させたらしく、体は十日の徹夜でもピンピンしてる程の丈夫な体の美少女だった……。
今は亡き祖母から譲り受けた全然ブラックじゃないホワイトなショッピングモールを経営していて、妹と二人で暮らしている。普通に生活するぶんには金には到底困らない。
15歳の私に憑依した私は今世の記憶もあり、少し整理するのに時間はかかったがそのお陰で、何も知りません。なんて事は無かったので良かった。
何故こんなに若いのに経営者になっているかは私もビックリ。
正直この体がスペック良すぎだと思うんだよね。なんか冗談みたいに売り上げが上がっていって今やイ○ンやら○ぽーとには及ばないまでもかなり規模を誇っている。勿論私が本店?です。気が重い…。
確かに前世に比べたら驚くほど良くなったが、不満が一つ。
ポケモンが無い。ゲームでもアニメでも漫画でもカードでも!
他の前世のものは一通り揃っているくせにポケモンだけが無い。
あの神?は本当に願いを聞いていたのだろうか?それともこのハイスペックが3つ目の特典でポケモンは却下されたとか?
う〜ん、分からん。
正直ブラック勤めの時と比べると大分明るくはなったし、そこは良かったけど、頼んだものでこれだけが無いとなるとやっぱりモヤモヤする。
なにげに一番やってたゲームだし。癒やし系はポケモン結構多いし
「ホントに何でかなぁ〜?」
そう思いながら寝る支度をする。明日は我が妹が北海道から帰ってくるため、何か面白い話でも期待しておこう。
目を閉じると意識は朦朧としていき、1分後には静かな寝息だけがたっていた。
〜翌日〜
「ただいま〜、お姉ちゃ〜ん!」
「はい、お帰り〜」
時刻は昼、少し待ちくたびれていたところに丁度妹が帰ってきたところだ。正直そろそろ寝ようかなと思っていたから助かる。
片付けをしている妹の優莉は、今年で15になる。
ウチのショッピングモールでの懸賞に当たり、夏休みを使って3人の友達と3泊4日の北海道旅行に行ってきたのだ。
一応向こうには知り合いがいるので、その人に面倒を見てもらった。後でお礼の品を送らなければ。
因みに私はここ最近殆ど仕事をしていない。ぶっちゃけ後進の教育が進んでいて出番が無いのだ。
私が仕事をしようとすると必死に止められるのだ。解せぬ
一応私がトップということになってはいるが先程述べた通り仕事量は精々がちょっとした確認程度。
でも何かあったら責任は私持ち。なめんな。
「でさ〜。………聞いてる?」
いつの間にやら優莉がこちらの顔を覗いている。
「あ、ごめんごめん。聞いてなかった」
「も〜、お姉ちゃんってたまにそういうとこあるよね。仕事忙しいの?」
うーん、これはかなり癒やされる。前世はホントに孤独だったからねぇ。仕事疲れを癒やすものが少なかったんだよ。
今は別に仕事してないけど
「いや、ちょっと考え事してただけ。仕事はね。うん。最近殆どやってないから。うん」
「そ、そうなんだ…」
私渾身の死んだ目に引いている妹。ちょっとやりすぎたか?
「えーと、それで何だって?」
「あ、うん。スキーしたときにホップとビートが競争始めちゃってさー。ルート外れちゃって危うく遭難しそうになっちゃって」
「そうなんだ」
ちなみにこのホップ君はあだ名である。当たり前だよなぁ?
ビート君は美しい衣に音でビート。親が作曲家だったらしくこんな名前になったらしい。
「どうしたの?」
「いや、別に迷ったとかじゃ無いんだけどね。マリィと一緒に追いかけたら、二人はコースに戻るでもなく立ち止まってて。それで、私達も何かあったのかなって思って見てみたらね?なんかそこだけ吹雪いてて可笑しいなって思ったら…雪男みたいなのが遠くにいてね。直ぐに見えなくなっちゃったけどその後皆で大騒ぎしちゃって」
一部分だけの吹雪に雪男…。確かに不思議だ。
「結局時間になっても戻ってこないから、って淡竹さんに連れ戻されちゃったんだよね。一応ホップが写真撮ってるらしいから後で見せてもらうんだ!なんたってUMAだもん!」
「UMA、ねえ…。なんか最近そういう変な事多いよね。果物がおかしくなったり、見たことも無い生物を見かけたーとか。ウチで贔屓にしてるところもそんな感じらしいけどね〜」
そう、こういったことは最近多く起こっておりニュースにも取り上げられるほどだったりする。
「ふ〜ん。そうなんだ。ちょっと調べてみるね」
「妹よ、もうちょっとニュースを見る事をオススメするよ…」
どたどたと音をたてて廊下へ駆け出していく。自分の部屋に向かったのだろう。
「って、バッグ置きっぱなし…」
(仕方ない、片付けてやるか……。)
テーブルの上のバッグに近づき手にかけると、モゾモゾとバッグが暴れだす。
恐る恐るそのジッパーを開くと、何か大きな影が勢いよく飛び出した。
「わっ!」
飛び出してきた『何か』は尻もちをついた私の前に着地する。
それは、半透明の棘状の殻を持ち、雪のように真っ白な体色と前方に張り出した短く丸い二つの突起。そして
「ふんわ」
―――少女はその日、運命に出会う。
鳴き声違うやんけ(素)
同じ様なジャンルを読んでて書いてみたくなった。
後悔はちょっとしてる。
(追記)
ちょっと詰め込みすぎたな、とも思う。人名の出し過ぎかな?