ラブライブもの(仮)   作:ガイコツ紳士

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 「お、チャイムか。じゃあ今日の授業はここまで。帰ったら授業でやったとこをちゃんと復習するんだぞ?」

 

 

 「「「はーい!」」」

 

 

 

 授業の区切りが良いところで、教室内にチャイムが鳴り響く。よし……、今日も無事に予定通りのページまで進めることが出来た。

 

 学生達と同様に教科書を閉じ道具を片付け始める冴えない男性教師――僕こと橘 透は、ほんの小さく一息ついた。

 

 

 未だ若輩者のである僕が国立音ノ木坂学園の一介の教師として、花の女子高生達を相手取るのは非常に骨が折れる。

 

 

 

 

 国立音ノ木坂学園――東京都千代田区にあるこの高校は古くから伝統ある女子校として有名である。趣のある校舎と可愛らしい制服から女性に人気を呼び、入学希望者が毎年絶えない名のある学校――だった。

 

 しかしそれも少子高齢化やドーナツ現象による入学希望者の減少によって、クラスが徐々に減っていき、今年の一年生に至ってはクラスが一つだけという事態にまで発展。天下の女子高と呼ばれた音ノ木坂学園も今では過去のものとなった。

 

 

 そんな中で僕がこの高校に勤務し始めて約一年、そろそろ教師として慣れ始めてきたと感じる今日此の頃、唐突に職員会議で理事長から発表された事実――「廃校」

 

 この発表を聞いた時は言葉を失ってしまう程驚いた。なんでこんな時期に!話が急過ぎるのでは?――脳内がこの内容だけで埋め尽くされる。

 

 

 これについては時間を置いて少し考えてみれば、当然か……という結論に収まる。伝統のある学校とはいえ、入学希望者が減少し続ける現実に対し、無理にでも学校を残す理由はない。理事長の廃校宣言に他の教師の動揺が少なかったのも、皆既に理解していた部分があったからに違いない。

 

 

 

 

 廃校について学生達には二日前の放課後、理事長本人から全体に発表してある。当然というべきか、廊下を歩く度にちらほらと学生達から「廃校」の言葉を耳にした。流石に学生達もこの発表には衝撃を受けているようだ。

 

 

 現在通っている学生が卒業するまでは学校を廃校にすることはないとの話だが、それでも今年入学してきた一年生には後輩が出来ることもなく、彼女達の卒業時に祝ってくれる人が教師陣と一部の関係者だけの寂しい卒業式となってしまうのだろう。

 

 

 

 (どうしようもないのか……。)

 

 

 

所詮僕はまだ経験の浅い一人の教師、どんなに辛い現実であろうがどうすることも出来ない。せいぜい現一年生である彼女達の卒業時に、教師である僕が少しでも華やかな卒業式をプレゼントする程度だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 職員室に戻り、自分の席に着くと僕は携帯電話を開いた。メールが一件……ふむ。

 

 

 「今日はバイトあるから先に帰ってて……か。」

 

 

 にこは本当に頑張り屋さんだな、帰ったら頑張ったご褒美として美味しい夕食で労ってあげるとしよう――僕はこうしてほくそ笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は特に貯まっている仕事もなく夕食の準備もしたいことから、周りの教師の方々に挨拶を済ませ早々帰宅することにした。

 

 

 

 

 「透先生が夕食作っているのかい?」

 

 

 「そうですね。僕の妹と、家に毎晩遊びに来る幼馴染とその妹達の為にです。」

 

 

 「まだ若いのに偉いのね。私の夫にも見習って欲しいわ。」

 

 「ははは……。」

 

 

 

 こんな会話が年配の女性教師とあった。

 

 別に夕飯を作ることを苦に思ったことは一度もない。むしろ楽しいとさえ思っている。バイト終わりの年下の幼馴染の疲れた顔を、僕の作った料理で少しでも癒してあげることが出来るのならば幸いといったところだ。

 

 幼馴染――にこの家は母子家庭で、母親は3人の子供を養う為に夜遅くまで働き詰めである。そんな母親の負担を軽くする為、にこ自身も学校の負担にならない程度にビラ配りなどのアルバイトをして生活していた。

 

 母子共に仲良くしてもらっている僕自身も、よしみで出来る限りにこの負担を減らす為に、にこの家庭の分の夕食を作り開いた時間にはにこの勉強のサポートをしている。幸いにして僕は職業が教師だけあって学はあり、どの教科も万遍なく理解しているので教える分には問題ない。まぁ、教えられる側のやる気にやや問題があるのだが……。

 

 

 外履きへと靴を履き替えた俺は残っている学生に挨拶をしながら校門へと向かう。

 

 

 

 

 

 「桜が綺麗だ。」

 

 

 

 僕は一人呟いた。

 

 

 桜が綺麗だったのだ。

 

 季節が季節なだけあって、学園を囲う桜の木はどれも満開の桜が咲き乱れ、それが妙に幻想的で、見ている者を別世界へと誘っているようでもある。こんなにも美しい光景、僕は今初めて見たわけなのだが――振り返ってみれば去年も同じように満開の桜が、この学校に新任教師として訪れた僕を出迎えてくれていたはず。

 

 

 (そうか……、去年のこの時期は忙しかったからな。)

 

 

 新任教師として、ある時は同僚の教師の方々とコミュケーションをはかり、またある時は学生が知識を深める為の工夫を模索したりと日々一人前の教師となるため努力に勤しんだ。チョークを持って黒板とひたすら向き合う最中で、外の風景を楽しむ暇など僕には全然なかった。

 

 ならばこの状況は、僕が教師として成長したことに繋がるのではなかろうか――うん、きっとそうだ。そうに違いない。異論は聞かない、聞こえない!

 

 

 (よし!今日は帰りに寄り道してケーキでも買っていこう!)

 

 

 

 自身へのご褒美と甘い物好きのにこの為に――

 

 

 

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