――秋山宅――
みほ「ありがとう優花里さん。おかげで対策が立てやすくなったよ」
優花里「恐縮です!」
沙織「まさか大学選抜との試合が終わったら海外のチームから試合を挑まれることになるなんてビックリだね~。人気者は大変だ~」ヤダモー
華「しかし、海外の学校にまで偵察に行かれるとは、優花里さんには驚きです」
麻子「国際問題になってもしらんぞ」
みほ「あとは相手チームの戦車の資料を集めて、作戦を練るね」
優花里「あ、ウチに資料本があるはずですのでおだししますね。えーっとこの辺りに・・・」バサバサ
沙織「たいていの戦車の資料揃ってるってとんでもないよねゆかりん」
優花里「あれれ?下にあるのかな?ちょっと下に降りて探してきますね」
華「私達もお共します」
麻子「皆で探した方が早いだろうしな」
~~~
優花里「うーん、見つからないなぁ」ガサガサ
みほ「私も手伝うよ」ガサガサ
麻子「人の家の押し入れを躊躇なくガサるのもどうかと思うが」
沙織「ねえねえ、家族アルバム出てきたんだけど」
華「わあ、赤ん坊の優花里さんかわいいです」
優花里「そ、それは勘弁してくださいよー!」
麻子「人の家のアルバムで遊ぶのもどうかと思うが」
みほ「あ、あったよ。これじゃないかな」バッ
<ガサガサガサ~ ドドドドドド
沙織「わあ!押し入れの中から雪崩が!みぽりん大丈夫!?」
みほ「・・・う、うん・・・平気」ボロ
優花里「あわわわすみません西住殿!我が家の押し入れが詰め込みすぎだったばっかりに!」
みほ「ううん、私がムチャに本を引き抜いたから・・・」ピラッ
みほ「あ、押し入れの中から写真が一枚・・・」
みほ「!・・・・・・この写真・・・お母さん?」
沙織「え?どれどれ」
華「たしかに顔立ちは雑誌で拝見したみほさんのお母様に似ていますが・・・これは黒森峰の制服ですね」
麻子「高校時代の写真ということか。なぜそんなものがここに」
優花里「・・・と、というか・・・一緒に写ってる人・・・これ・・・」プルプル
秋山好子「ちょっと優花里、大丈夫?なんだかすごい音がしたけど・・・」ヒョッコ
優花里「お、おおおおお母さん!この写真!」バッ
好子「え?・・・・・・あ。あ~・・・その写真・・・ね」
沙織「も、もしかしてこの写真に写ってる人っておばさんですか?」
好子「あはは・・・まあ、そうなんだけど・・・とうとうバレちゃったわね・・・」
優花里「どどどどどどうしてお母さんと西住しほさんが一緒に写真を!?」
みほ「もしかして・・・」
好子「そう・・・・・・私としほちゃんは、昔・・・一緒に戦車に乗ってたの」
優花里「なっ!なっ!なっ!ぬゎんだってぇ~~~~~!」ガーン
華「みほさんのお母様と優花里さんのお母様はお友達だったんですね」
沙織「ていうかしほちゃんて!」
優花里「どっ、どうして教えてくれなかったの!?」
好子「隠してた訳じゃないけど、自分から言うのもなんだかね・・・」オホホ・・・
麻子「まさか親同士も同級生だったとは」
好子「しほちゃん見た目が若いでしょ?同い年で比べられるのが恥ずかしくてね」
沙織「いやいやいや、おばさんも十分若いですよ」
みほ「あっ、あの!お、教えてくれませんか!?お母さんが高校生だったころの話!」
好子「・・・うーん・・・そうねぇ・・・」
みほ「・・・っ」グッ
好子「・・・・・・まあ、もういいかしらね・・・」
好子「・・・あれは私が大洗女子学園に入学して数カ月が過ぎた、夏の始まる頃よ――」
―――・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
好子「わあ~・・・戦車がいっぱい」
好子《私は人並みに戦車が好きだったけれど、戦車道はやってなかったの。大洗は昔こそ戦車道が盛んだったけど、あの頃はまだ復活してなかったし》
好子《あの頃は今よりも戦車道はマイナーな武芸と言われてて、人気も下火で、世間から戦車道は忘れ去られそうになっていた》
好子《それでも私は戦車の何かに心惹かれて、選手でもないのに一人で戦車道全国大会の抽選会を見に行っていたの》
好子「選手人口減ってるって聞いてたけど、やっぱりそれなりに人はいるんだなぁ」
好子《その時、あの子に出会ったの》
「ちょっと西住!あなたどういうつもりなの」
好子「!」
黒森峰2年生A「みんなの前で隊長に向かってあんなこと言って。先輩達あなたに目を着けてるわよ」
黒森峰2年生B「1年坊が隊長に噛みつくなんて・・・あなた自分が何をしでかしたかわかってる?」
西住しほ「・・・」
好子(・・・強豪校の黒森峰の制服だ。もめてるのかな?)
好子《当時の黒森峰は強かったけど、今みたいに優勝常連というわけではなかった。準優勝やベスト4に数回食いこむものの、一番にはなれなかった》
好子《聖グロ、サンダース、プラウダ・・・強豪ひしめく戦車道界で優勝まで一歩及ばずにいたわ》
黒森峰2年生A「アンタは1年らしく上の言うこと聞いて大人しくしてればいいの。でしゃばってチームを乱すようなことしないで」
黒森峰2年生B「先輩との間を取り持つ私達の身にもなってよ。あなたがチームから追いだされるのをかばってあげてるのよ」
しほ「・・・・・・まったく、馬鹿ばっかだ」
黒森峰2年生A「なに・・・?」
しほ「隊長は『大会の目標はベスト4』と言った。私はそれに異議を唱えただけ。なぜ優勝を目標に掲げないのか、疑問に思わないのか?」
黒森峰2年生B「現実的に見てそれがちょうどいい目標なの。無理に背伸びしないで、モチベーションを維持しやすい目標がベスト4よ」
黒森峰2年生A「目指せ優勝なんて言っておきながら優勝できなかったらかっこわるいでしょ」
しほ「ほんとに馬鹿ばっかだな・・・そんな心構えで戦う者に戦車道をやる資格などない。戦車に乗っても何の意味もない」
黒森峰2年生B「なっ・・・下級生は先輩の言うことに従ってればいいのよ!上の言うことは絶対なの!社会でも戦車道でも、上の人間に逆らっちゃダメ!」
しほ「くだらない・・・」プイッ
黒森峰2年生A「あっ!ちょっと!どこ行くの!?」
黒森峰2年生B「夕飯までには帰ってきなさいよ~!今晩はハヤシライスなんだから~!」
・ ・ ・ ・ ・
華「――みほさんのお母様、先輩に堂々と噛みつくなんて、度胸があるというか肝が据わっているというか」
好子「言葉使いも男っぽかったわ。思春期だからね」
みほ「・・・なんとなくそんなイメージはあったけど・・・やっぱり我が強い人だったんだなぁ・・・」
好子「大会トーナメントの抽選会や、見世物の団体行動や戦車の曲芸パフォーマンスで会場は盛り上がってたけど、私はずっと黒森峰の生徒のことが気になってたわ」
麻子「戦車で曲芸て」
好子「帰り際になっても、なぜだかずっとあの子のことが気がかりだった。で、駅までの道を歩いていた時――」
・ ・ ・ ・ ・
好子(あ〜、満喫したなぁ〜・・・私もできることなら戦車道やりたいな・・・けど・・・大洗には戦車道無いし、私なんかが戦車に乗っても何の役にも立たなくて無駄だろうな〜・・・)
好子(あ〜あ・・・・・・戦車道か〜)
トボトボ・・・
バッタリ
好子「あ」
しほ「む」
好子(さっきの黒森峰の人・・・目が合っちゃった)
しほ「・・・なんだ?」
好子「あっ、いえ、あの、さっきの人だ。目が合っちゃったな~って思って・・・えっと・・・上級生と言い争いしてた黒森峰の人ですよね」
しほ「見ていたのか・・・あなたも戦車道を?」
好子「いえ、戦車は好きですけど・・・見る専門です」アハハ・・・
しほ「・・・・・・西住しほ。黒森峰一年生」
好子「あ、秋山好子です。大洗女子一年。西住ってことは・・・あの西住流の?」
しほ「そう。私もいずれ西住流を継ぐつもりだ。だが、そのためには強くならなければならない。今よりもずっと」
好子「は、はあ・・・」
しほ「あなたも聞いていただろう?ウチの上級生が、高い目標を掲げておいて負けたらカッコ悪いだと、そんなふざけたことを抜かしていたのを。ほんっと馬鹿ばっか・・・」
(なんだかキムズカシそーな子だなぁ・・・)
しほ「私は強くならねばならない・・・西住流を継ぐ者として、誰よりも強くならねば・・・それなのに上級生は腑抜けばかり・・・だから私は・・・!」バッ
好子「!?」
好子《・・・・・・その子は突然、道端のボロボロのみかん箱の上に仁王立ちした。そして、大きな声で、宣言するように言ったの――》
しほ「私は強くなりたい!今の腐った黒森峰では本物の強さなど得られはしない!」
しほ「人の顔色を伺い、メンツばかりを気にし、一年だ二年だとくだらないことに固執するような連中などくそくらえだ!」
しほ「私は私の戦車道を進むと決めた!誰にも縛られず、誰にも邪魔されず、自由に戦うと!」
しほ「自分達だけで練習し、自分達だけで戦い、自分達だけで勝つ!そして、黒森峰を打ち倒し、日本中の強豪達と戦い、日本一になってみせる!」
しほ「たとえ無茶だ無謀だと笑われようと、己の道を突き進む!」
しほ「それが私の戦車道だ!」
好子「っ・・・・・・!」
好子《――・・・ビックリしたわ。高校一年生の女の子が、泥だらけのダンボール箱の上で、そんな無茶な夢を語ったんだもの・・・》
好子《・・・・・・その子は、私の目を真っ直ぐ見て、少しだけ口角を上げて、こう続けた・・・》
しほ「これから一緒にやれそうな者を集めて、等級や学校に縛られない自分達のチームを組むつもりだ。どうだ、秋山。一緒にやってみないか」
好子「ーー!」
・ ・ ・ ・ ・
好子「――・・・想像もできなかった・・・一年のぺーぺーが、それも別の学校の生徒がチームを作るなんて・・・ムチャな話だわ・・・」
好子「・・・でも心の奥が熱く燃え上がるような感覚があった・・・ずっと探してた、自分のやりたいことに出会ったようで・・・」
優花里「・・・っ~~~!」プルプル
優花里「すごい!すごいよお母さん!西住しほさんと学校の垣根を越えて戦車道やるなんて!」
麻子「不良みたいだ」
華「野良チームという訳ですね」
好子「そんな無茶苦茶な話、断るのが常識的だったけど、私の答えは決まっていたわ。この子と一緒に戦車に乗れば・・・きっと楽しいってね」
みほ「お母さんがそんなことやってたなんて・・・聞いたこともなかった」
沙織「それで、それからどうなったんですか?」
好子「さっそく次の日、しほちゃんに呼び出されたの。一緒に戦車に乗るメンバーをスカウトに行くって、朝早くからね」
沙織「でっ、でっ、どこにスカウトに行ったんですか?渋谷?池袋?」
好子「聖グロリアーナ女学院よ」