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――対聖グロリアーナ女学院戦、練習試合会場――
しほ「申込試合を受けてくださり、感謝します。聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長、ダージリン殿」
旧ダージリン「こちらこそ、あの西住流の後継者の方と試合が出来るのは貴重ですわ。それにしても・・・そちらのチームは1輌だけのようね。5対5の試合と聞いていましたけど?」
しほ「そうでも言わないと、試合すら組んでもらえないかと」
旧ダージリン「ふふ、かもね。そちらが1対5でいいと言うのであれば、こちらも手は抜きません。では・・・いい試合を」ザッ
しほ「・・・」
好子「い、いくらなんでも無茶だよしほちゃん!私達ズブの素人だよ。二時間でルールブックを読み込んだけど、まともに試合なんてできないよ!」
しほ「私が操縦をする。秋山は装填手だ。指示を出すから、砲弾を装填してくれ。五十鈴は砲手だ。合図をしたら撃て」
百合「それだけなら出来るかと思いますが・・・上手くお直撃させられるでしょうか」
しほ「照準は合わせなくていい。砲身ごと、車体ごと私が狙いを定める。秋山も、慌てずにやってくれればそれでいい」
好子「勝てっこないよしほちゃん・・・1対5で・・・素人二人も乗せてる戦車じゃ、誰だって負けるよ」
しほ「かもしれん。だが、やる。私を信じろ。この試合は価値のある試合になる」
好子「負けるってわかっててやって、価値なんかあるのかなぁ・・・」
審判「では、試合開始!」
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ティーガーⅠ<ギャラギャラギャラ・・・
百合「なんだか落ち着きません。聖グロリアーナの方々とお試合をするというのは、裏切っているような気分ですわ・・・」
好子「戦車道チームに所属していないとは言っても同じ学校の生徒だもんね。弱点とか知ってる?」
百合「さあ・・・ガソリンが無くなるとお走りになることができないとか?」
しほ「フラッグ車がチャーチル、マチルダⅡが二輌、クルセイダーが二輌だ。チャーチルは装甲が厚いが、ティーガーなら撃ち貫ける。勝てない相手ではない」
好子「言うのは簡単だけど――」
< ド ワ ッ !
好子「「わあっ!?」」グララ!
百合「「ひゃあ!」」グララ!
旧アッサム「指示通り、こちらの気配を知らせるためにわざと外しました。次は?」
旧ダージリン「履帯を破壊し、身動き出来なくなったところで撃破するのよ。単騎で挑んできた勇気は買うけれど、二度と立ち向かう気が起こらないほど叩きのめすの」
旧オレンジペコ「いくら西住流とはいえたった一輌でなんて、私達も舐められたものですね」
旧ダージリン「いいえ、西住しほ・・・あの子の目は真っ直ぐで、決して私達をコケにしている訳ではなく、本気だったわ。だからこそ、叩きのめしてあげるのよ。砲撃」
チャーチル<ドッ! マチルダⅡ<ドワ! グワ!
\ドォン!/ \グワァ!/ \ドーン!/
好子「「わああっ!むちゃくちゃ撃ってきたよ!危ないよー!」」ドォーン!
百合「「まるで地震のように激しく揺れてます!こ、怖いでございます!」」ドゴォーン!
\ドワ! ゴォーン! ボォーン!/
好子(これが・・・これが戦車道・・・考えが甘かった・・・実弾を使った戦車同士の撃ち合いが、どれくらい怖いか覚悟しておくべきだった・・・)
好子(こんな状況で落ち着いてなんかいられっこない・・・戦車で戦うなんて・・・こ、怖い・・・怖いよ・・・)
しほ「秋山、五十鈴、これが戦車道だ。初めての砲撃は身がすくむ。怖くて当然だ。だが怯えるな。その恐怖心に打ち勝ってこそ、道は開かれるんだ」
ティーガーⅠ<ギャギャギャギャギャ!
好子「!」
しほ「こちらからも行くぞ。二人とも、構えろ」
マチルダⅡ乗員「敵接近!こちらに向かってきます!」
マチルダⅡ車長「返り討ちよ!ダージリン様の指示通り、脚を狙うの!撃て!」
マチルダⅡ<ドッ! \ドーン!/
マチルダⅡ車長「チッ!外した!」
ティーガーⅠ<ギャギャギャギャギャ! <ガン!>
マチルダⅡ車長「!?横っ腹に着けられ――」
しほ「五十鈴!撃て!」
百合「!・・・は、はい!撃ちます!」
ティーガーⅠ<ドワァ!
>ド ォ ン !<
マチルダⅡ<・・・シュポ
審判「マチルダⅡ、走行不能!」
好子「っ・・・す、すごい」ジィ~ン・・・
百合「・・・じ、じんじんします・・・身体の芯まで衝撃が伝わって・・・これが・・・これが戦車!」ジィ~ン・・・
しほ「秋山、装填だ」
好子「はっ!は、はい!よいしょっ・・・!」ググッ・・・
好子「お、おんもいなぁ!こんなのホイホイ持ち上げるなんて、戦車女子ってホントに人間?」グググ・・・
旧オレンジペコ「マチルダが撃破されるとは・・・」
旧ダージリン「・・・どうやら、認識を改める必要があるわね。操縦の腕はかなりのもの。けれど次弾を撃たずに慎重な点、砲身が動いていない点を見るに、操縦手以外は素人のようね」
旧ダージリン「陣形を変更。マチルダはチャーチルの守りを。クルセイダーは相手を掻き回してやりなさい。手加減は無しよ。虎を狩るのに気を抜くと、こっちがやられるわ」
好子「よい・・・しょぉ!」ガコン!
好子「はあ・・・はあ・・・戦車ってこんなに大変なんだね・・・私、ちょっと甘かったみたい・・・」ゼーゼー
しほ(秋山の体力的に、撃てて後3発・・・いや、2発か。確実に当てる角度と距離まで詰めて、1発で仕留めなければ・・・だが)
チャーチル<ギャラギャラギャラ マチルダ<ギャラギャラギャラ
しほ「くっ・・・マチルダが邪魔でフラッグに近づけない・・・懐に潜り込むには、マチルダをどけるしかないか。秋山、あとでもう一度だけ装填してもらうぞ」
クルセイダー<ギュオオオオン! <ドッ! \グワァン!/
好子「うわー!撃たれてる!しほちゃん撃たれてるよ!」
しほ「わかってる!クルセイダーがうっとうしいが弾が惜しい。フラッグを仕留める!」ギャラギャラギャラ!
クルセイダー<ギュオオルル! ティーガーⅠ<ギャギャギャ!
しほ「今だ五十鈴!撃て!」
百合「うつー」
ティーガーⅠ<ドッ!
マチルダ<グワア! \・・・ポシュ/
しほ「秋山!すぐに装填だ!一気に決める!」
好子「ううぅ~ん!」グググ・・・
旧ダージリン「砲撃!」ドワ!
しほ「!」グンッ
ティーガーⅠ<ガァン! <ゴォン!>
旧ダージリン「!・・・咄嗟に車体を斜めに・・・芯を外された」
しほ「秋山!無事か!」
好子「いてて・・・う、うん・・・すぐに装填するから。よい・・・しょお・・・」ググ・・・
好子「ふんんん~~~!」グググ・・・ガコン!
好子「ぜー!ぜー!・・・い、いけるよ!」
しほ「五十鈴!撃て!」
百合「発射!」
ティーガーⅠ<ド ッ !
チャーチル《ゴガン!》
しほ「!・・・浅かっ――」
旧ダージリン「とったわ」
チャーチル<ド ッ !
\グワァ!/
ティーガーⅠ<・・・ポシュ
審判「ティーガーⅠ、走行不能。聖グロリアーナ女学院の勝利!」
旧ダージリン「ふう・・・まさか・・・たった一輌相手に冷や汗をかかされるとは、少々不格好な試合だったわね・・・」
旧アッサム「あの子達がこれから腕を上げれば・・・今度はどう勝負が転ぶかわかりませんね」
旧ダージリン「ええ、本当に・・・少し期待してしまうわ。どこまでやれるようになるのか・・・フフ、楽しみね」
好子「・・・はあ・・・はあ・・・負けちゃったね・・・」ゼーゼー
百合「でも、自分で言うのも何ですが、初めての試合でよくおやりになった方ではないでしょうか、私たち」
好子「うん、ほんとそうだよね。なんだか・・・負けたけど自信がついたかも!」
百合「これからもっと練習して上手くなれば、次は勝てるかもしれませんよ!」
好子「初めは怖かったけど大砲を撃った時は感激しちゃったし、すごくわくわくしたよね。また試合をやってみたくなっちゃった。ね、しほちゃん」
しほ「・・・・・・ああ、そうだな。二人とも、初めてでよくやった」
好子「?・・・しほちゃん?」
しほ「・・・・・・勝つことはできなかったが・・・よくやってくれた・・・本当に・・・っ・・・」
好子(しほちゃん・・・泣いてるの?・・・)
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好子「後になってわかったけど、しほちゃんは私達に砲撃の感覚と試合の恐怖心に慣れさせるつもりで試合を組んだみたい」
好子「でも・・・それでもしほちゃんは、血が出るくらい唇を噛み締めてたの。本気で勝つつもりだったんだってわかったわ」
好子「私は最初から、どうせ勝てるわけがないなんて思ってたけど、しほちゃんは勝つ気だった。それを知って、私も百合ちゃんも、本気でやらなきゃって思ったものよ」
沙織「・・・一瞬ダージリンさんが昔から高校生やってたのかと思ってちょっとびっくりしちゃった。聖グロの呼び名って受け継がれてるんだったね」
華「でもダージリンさんなら何十年も昔から高校生でも不思議ではありませんね」
麻子「不思議だろ」
みほ(お母さんも負けたことがあったんだ・・・)
優花里「それで、次はどこと試合を?」
好子「聖グロとの試合後一週間、しほちゃんからの連絡は無くなったわ。突然よ突然。何も言わずに音信不通になっちゃって、私も百合ちゃんもただただ待ってた」
好子「とにかく私達は戦車道の勉強をしながら、しほちゃんを待ったわ。夏休みに入る前日、ようやっとしほちゃんから連絡があったの」
沙織「なんて言われたんですか?」
好子「北に向かう、準備しろ、とだけよ」
沙織「雑把ぁ・・・」