しほ「時には昔の話を」   作:ゼブラーの野郎

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帰らざる日々

 

 ティーガーⅠ<ギャラギャラギャラ!

 

しほ「左に旋回!車体を斜めにして砲撃を受け流し、次弾装填の隙を狙って反撃だ!」

 

千代「右に旋回よ!後方の敵に注意しつつ前方の敵陣の間を突き抜けて一気にフラッグまで辿り着くの!」

 

蝶野「どっちなんスかぁ!」ギャラギャラギャラ

 

しほ「ちよきちぃ!貴様何をやっている!」

 

千代「何って指示を出してるのよ!」

 

しほ「車長は私だ!」

 

千代「いいえ私よ!」

 

しほ「やいの!」

 

千代「やいの!」

 

 しほ&千代『ヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノ!』

 

好子「二人とも!やいのやいのと言い合っている場合じゃないよ!」

 

 ファイアフライ<ド ッ ! \ドグワァァン!/

 

 ティーガーⅠ<シュポッ

 

審判「ティーガーⅠ、走行不能!よって、サンダース大学付属高校の勝利!」

 

蝶野「だー!また負けたー!」クヤシー

 

しほ「ちよすけぇ!貴様邪魔をするため来たのか!そもそもティーガーの乗員は5人だ!おりろスッタコ!」

 

千代「あなたこそ何よ!無茶な指示ばかりだして!トーヘンボク!」

 

しほ「やいの!」

 

千代「やいの!」

 

好子「いい加減にしなさいっ!二人とも仲良くできないなら戦車から降りて!」

 

しほ「でもちよちよ丸が・・・」

 

好子「仲間同士でケンカしてなにが戦車道よ!二人とも反省しなさい!」

 

しほ「う・・・す、すまん・・・」ショボン

 

好子「しまちょんも!いいわね!?」

 

千代「しま・・・私は島田千代・・・」

 

好子「いいわね!?」クワ

 

千代「・・・・・・はい」チョボン

 

蝶野「秋山センパイこっえー!」ケタケタケター

 

 

サンダース生徒「・・・なんだかもめてるみたいですね」

 

サンダースリーダー「HAHAHA!たった一輌でここまでやるなんて大したモンだと思ったけど、仲間内でケンカまでしてるなんて!あの子達大物になるかもね!HAHAHA!」

 

 

 ――戦車喫茶〈ルクレール〉――

 

好子「な”ん”た”って”ぇ!?お金持ってないの!?」

 

千代「語弊がある言い方をしないでちょうだい。島田流はお金持ちよ。ただ私は一ヶ月に五万しかお小遣いをもらえないの」

 

しほ「ご、ごまん・・・だと・・・」ワナワナ

 

好子「そんなー!札束で履帯作れるくらいたんまり持ってると思ってたのに!戦車の消耗品を揃えるのに五万くらいじゃ結局カツカツ生活だよー!」

 

菊代「そう嘆かないでください。それでも続けられるだけありがたいじゃないですか」

 

好子「そりゃそうだけどね・・・もっとガッポリ持ってると思ってたから・・・」

 

千代「あなたが私のことを単なる財布としか見ていなかったことがよーくわかりましたわ」

 

しほ「ごまんえん・・・貴様ちよきちぃ!そんな大金を高校生風情が持ち歩いて!誘拐されても知らんからな!ちくしょうめ!」

 

千代「なにを怒っているのしぽぽん」

 

しほ「うるさい!この歩く身代金め!島田流なんかだいっきらいだ!バーカ!」

 

好子「しまちょん!お小遣い前借りしてきて!」

 

百合「おスネかじり虫!憧れます!」

 

菊代「コーヒー来ましたよ。お砂糖入れます?」

 

蝶野「分身の術見せてくださいよ!分身!」

 

千代「なんなのよ!なんなのよあなたたち!」

 

 

 \ドグア!/

 

 ティーガーⅠ<シュポッ

 

審判「ティーガーⅠ、走行不能!よって、アンツィオ高校の勝利!」

 

アンツィオ統帥「ぅわーっはっはっは!やはり我々はつおいっ!ティーガー戦車に勝利したぞー!今夜は皆でパーティーだ!」ソーレソレソレドドンガドン♪

 

アンツィオ生徒P「ウチのP-40重戦車の玉砕アタックのおかげッスよね。完全にブっ壊れちゃいましたけど」

 

アンツィオ生徒K「もう古いものだったし、買い替えないといけませんね。これからは貯金しましょう。おやつの回数も減らさないと・・・」

 

アンツィオ統帥「な、なんだとぉ~!?アンツィオ名物のおやつを減給だと~!?おのれ~あの野良虎め~!覚えてろ~!」プンプン

 

 

百合「なんだかアンツィオのおドゥーチェさん、勝ったのに悔しそうにされてますね」

 

菊代「勝つために多大な犠牲を払ったからですかね」

 

千代「なによしぽりん!ぜんっぜん勝てないじゃない!」

 

しほ「五月蠅い!無駄に負けている訳じゃない!我々にとっていい経験になっているはずだ!」

 

千代「そんなこと言っても――」

 

好子「二人とも」

 

しほ「っ・・・ちよすけ、今は言い争うのはやめよう・・・」

 

千代「・・・そうね・・・この子怒らすと怖いし・・・」

 

 

 ――戦車喫茶〈ルクレール〉――

 

百合「ご覧になってください。戦車シミュレーションの砲撃スコアで満点を獲得しましたよ」フンス

 

 しほ&千代『おお~~~』

 

好子「私だって装填所要時間が前回のスコアの半分以下になったよ!」ブイ

 

 しほ&千代『おお~~~』

 

蝶野「自分、大洗の伝説の飛ばし屋こと、音速銀婆(クイックシルバー)の異名を持つ冷泉さんに弟子入りして、操縦テクを学んできました!」

 

 しほ&千代『おお~~~』

 

菊代「私、西住家の整備倉庫で子供の頃のしほさんの写真を見せてもらいました」

 

 しほ「おお――・・・なんだと!?」

 

 千代「わー、見せて見せて」

 

菊代「これです」ピラ

 

好子「わあ・・・10歳くらいかな?」

 

蝶野「アハハハハ!センパイが幼女ー!」ケタケタケター

 

しほ「笑うな!お前だって子供だったことくらいあるだろ!」

 

百合「あら、こちらの方をご覧ください。背丈は子供なのにおヒゲをはやしておられますわ」

 

菊代「あ・・・たぶんこれ髭じゃなくて黒ずみですよ。写真の場所が整備倉庫だし、きっと汚れたんですよ」

 

好子「しほちゃんと同じくらいの年齢かな?友達?」

 

しほ「ん?・・・ああ・・・懐かしいな。そいつは西住家に専属で就いていてくれた整備士の息子で、たしか・・・常夫という名だったな」

 

千代「しほさんったら随分マセてたから、こんな小さな時からボーイフレンドがいたのよ」

 

百合「なんと!しほさんは意外とお遊び人だったのですね」

 

しほ「そんなんじゃない。よく父親の仕事について来ていてな、同年代ということもあって一緒に遊んだりもしたが、今ではどこにいるのかもわからない」

 

好子「どうして?」

 

しほ「西住家とその父親の整備士との契約期間が切れてな。別の所で整備士を続けているとは聞いている。息子の常夫も整備士になったとか・・・」

 

しほ「あいつは、大きくなったら整備士になって、自分が整備した戦車が日本一になるのが夢だとよく言っていたよ。今でも同じ夢を追っているのかもな」

 

菊代「もうお会いにならないんですか?」

 

しほ「まさか。会う必要もないし、理由もない。達者でやっているならそれでいいさ」

 

千代「ふーん、しほさんは昔の男のことなんかどうでもいいのね」

 

しほ「そんなんじゃないと言ってるだろう!貴様こそ子供の頃は私の後ばかりチョロチョロ追いまわしていたクセに!」

 

千代「なななななな!そんな昔のことを引き合いにださないでよ!」

 

しほ「今では男の尻を追いかけているのか知らんがな!」

 

千代「そそそそそそんなことないわよ!私は純愛タイプだし・・・というかそんなことはどうでもいいでしょ!」

 

 

ウェイトレス「お待たせしましたー。コーヒー6丁お待ち-」コトッ

 

菊代「あ、コーヒー来ましたよ」

 

好子「はーい。いつもすみませんね武部さん」

 

ウェイトレス「えっ?どうして名前を・・・もしかして私、美人ウェイトレスって有名なの!?」ヤダモー

 

好子「なふだ」チョイチョイ

 

百合「武部さん、わたくしモーモーさんのおちちも欲しいです」

 

蝶野「スティック10本ください!」

 

 しほ&千代『ヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノ!』

 

 

 \ドワオ!/

 

 ティーガーⅠ<シュポッ

 

審判「ティーガーⅠ、走行不能!よって、継続高校の勝利!」

 

百合「あらら・・・もう少しでしたのに・・・」

 

菊代「でもいい試合でしたね!きっと次は勝てますよ!うん!いけるいける!」

 

しほ「・・・」 ムウ・・・

 

千代「確かに前より操縦も砲撃も装填も精度が上がっているし、試合中のエンジントラブルにも即座に対応できてた。ポテンシャルはいいんだけど、一輌だけなのがどうもね・・・」

 

 

継続高校隊長「いい試合だったね。たった一輌だと油断しなくて良かった。ウチにもいい経験になったと思うよ。また試合をしてくれるかい?」スッ

 

しほ「はい。もちろんです。こちらもいい経験になりました」グッ

 

継続高校隊長「では、これで」ソッ・・・

 

好子「ちょっと待ってください。それウチの戦車の履帯です」

 

継続高校隊長「・・・気付くとはさすが、目の付けどころがいいね」

 

好子「・・・でも、ネコババしたくなる気持ちもわかります。少しでも部品が必要なのにお金は簡単に手に入らなくて・・・お互い大変ですよね・・・」ポロポロ

 

継続高校隊長「・・・そうだね・・・大変だよ・・・本当に・・・」ポロポロ

 

蝶野「二人とも、なんで財布持ったまま泣いてんですか?」

 

 

 ――試合の帰り道・・・

 

 雨<ザー・・・ザー・・・ザー・・・

 

好子「わー!走って走ってー!」タタタ

 

千代「まったく!この豪雨の中で戦車がガス欠なんて・・・どうして私までこんな目に!」タタタ

 

蝶野「仕方ないッスよー。修理代がかさんだんでガソリン代もケチってたんですからー」タタタ

 

千代「そもそも交通費ケチって戦車で移動してるからガス欠になるのよ!もー!」タタタ

 

菊代「あ、あれです!あれが予約してる下宿です!」タタタ

 

 

しほ「ふう・・・ずぶぬれになってしまったな」ボトボト

 

千代「こんな小さな下宿に押し掛けることになるとは・・・少しでもいいホテルとか無かったの?」

 

好子「仕方ないよ。資金面の問題でね・・・今日の会場と明日の会場が近いから、ここで泊まるのが最善だったし」

 

千代「はあ・・・明日はボンプル高校と竪琴高校と連戦、その前に朝の内に給油に行かなくちゃならないし・・・こんなに大変だとは思ってなかったわ」

 

蝶野「いいじゃないですかぁ楽しいし!明後日はBC高校自由学園連合と試合、その次は青師団高校、ヨーグルト学園、ワッフル学院と三連戦スよ!」ワクワク

 

菊代「ハードスケジュールですけど、がんばりましょう!」フンス

 

 

 ~~~

 

千代「はぁ~・・・サッパリしたわ」チヨホクチヨホク

 

菊代「千代さん、明日の着替えも用意しておきました。皆さんの布団も敷いてありますよ」

 

千代「まあ、ありがとう菊代さん。気が利くのね」

 

しほ「そうだろうそうだろう」フフン

 

千代「なんであなたが得意げなのよ。菊代さんのお守りがないと何もできないからかしら」

 

 しほ「なんだと!」 千代「なによ!」

 

好子「また始まったよ・・・いい加減に仲良くできないのかな」

 

百合「ケンカするほど仲がよろしいという奴ですね」

 

蝶野「センパイ方!やり合うならコレっしょ!枕アターック!」ボフン

 

しほ「むぶっ!・・・蝶野・・・貴様いい度胸だな・・・」

 

千代「島田流枕投げ術をお見せしてあげるわ・・・!」

 

蝶野「はっ!あわわ・・・センパイが怒髪天に!好子ちゃんセンパイ!百合ちゃんセンパイ!菊ちゃんセンパイ!お助けくださいー!」

 

好子「任せて!しほちゃん、しまちょん、中学生をいじめたりしたらダメだよ!」

 

 しほ「うるさい!一斉撃ち方!」ボフー

 

 千代「破ー!」ボフー

 

好子「ぐえへー!」

 

蝶野「アキヤマセンパイよっえー!」ケタケタケター

 

百合「わたくしもお混ざります!昔からまくら投げってやってみたかったんですー」

 

菊代「ああ、皆さん・・・そんなに騒いだら外まで聞こえますよ」

 

 <ドリャー! ボフ!

 

菊代「ぼへ!・・・・・・やりましたねー!」

 

 \クラエー!/ \ナンノー!/ \ギエピー!/ \ダッシャー!/ \コノヤロー!/

 

 \ワハハハハハ・・・/

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

好子「――結局、その日は朝まではしゃいで眠ったわ。次の日も試合で、急いで帰ってアルバイトに向かった。終わってからまた次の試合の準備をして・・・もう毎日ヘトヘトよ」

 

華「なんだか、とても楽しそうですね」

 

麻子「・・・・・・待ってくれ・・・大洗の飛ばし屋の・・・冷泉って・・・」

 

好子「詳しく知らないけど、亜美ちゃんが言うにはけっこうなお歳の方だったそうよ」

 

麻子「・・・詮索しない方がいいかもしれない」

 

沙織「で、でも戦車喫茶のルクレールがそんなに昔からあったなんてビックリだね」

 

好子「今ほど大きくて立派じゃなかったけどね。皆の溜まり場で、丸一日入り浸って作戦会議やお喋りをしてたわ」

 

沙織「高校生らしいのかそうじゃないのか難しいところだなぁ」

 

みほ「本当に色んな高校と試合をしたんですね」

 

好子「ええ、日本中をあっちに行ったりこっちに行ったりしてね。帰り道で燃料が切れて、道端に戦車を停めて、その車内で眠ったこともあったわ」

 

沙織「やっぱり高校生らしくないや」

 

好子「とにかく連続花火みたいな毎日だったわ。試合して、練習して、アルバイトして、また試合して・・・無茶なことばかりしてたって今でも思う」

 

みほ「・・・とても大変だったんでしょうね」

 

好子「大変だったわ・・・でも生きてる手応えがあった。身体中でその瞬間を・・・時を感じている気がした」

 

好子「お金は無かったし、この先どうなるかなんてわからなかったけど・・・立ち止まってる暇もないくらい無我夢中で、全力疾走みたいな毎日で・・・楽しかった」

 

優花里「・・・」

 

華「青春っぽくていいですね」

 

沙織「男の子とのロマンスがあれば言うことナシなんだけどなー」

 

麻子「ところで、ずっと気になっていたんだが・・・黒森峰の戦車を盗んで問題にならないものなのだろうか?」

 

みほ「そういえば盗んだ戦車だったね」

 

好子「ええ、まさにその頃よ。私達の前にとうとう黒森峰の人が現れたの・・・」

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