しほ「時には昔の話を」   作:ゼブラーの野郎

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夏の終わりに

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・・・・・・・・・・・・・・・

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・・・・・

・・・

・・

 

 好子《・・・黒森峰との試合に勝った後も、私達の戦車道は続いた》

 

 好子《大金星をあげた私達のことを聞きつけて、各校は前にも増して試合に意欲的になってくれて、逆に申し込まれるくらいだったわ》

 

 好子《聖グロとも、サンダースとも、プラウダとも、西呉王子グローナとも、ヴァイキング水産高校とも、知波単学園とも、継続とも・・・色んな高校と再戦した。勝った試合もあったし、また負けた試合もあった》

 

 好子《でも勝敗がどうであれ、試合の後にはいつの間にか相手校の生徒と仲良くなっていたわ・・・不思議とね》

 

 好子《戦車道を通じて、色んな人と出会えて、色んな所へ行って、色んな思いでを作れた・・・》

 

 好子《戦車道をやっていて、本当に良かった。そう思えたものよ》

 

 好子《でも・・・・・・》

 

・・

・・・

・・・・・

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・・・・・・・・・・・・・・・

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 ――戦車喫茶〈ルクレール〉――

 

好子「昨日菊ちゃんが淹れてくれた紅茶、とってもおいしかったね~」

 

菊代「聖グロリアーナの皆さんからいただいた茶葉なので、味も品格も保証付きですからね」

 

百合「サンダースの方々からお頂戴したケーキセットと一緒に食べてしまいましたが、お贅沢すぎて少しもったいなかったかもしれませんね」

 

蝶野「それよりそれより!プラウダからお中元が届いてますよ!じゃーん!」ドッカ

 

千代「喫茶店に宅配物持ち込まないでよね」

 

蝶野「んな細かいこと気にしてると老けますぜチヨチヨセンパイ!しほセンパイなんか玉の肌!」

 

千代「なっ!私はしぽりんと同い年よ!」

 

好子「そんなことはどうでもいいから中身は何か見てみようよ!」ワクワク

 

千代「・・・仕方ないわね。オープンザプライス!」ガパッ

 

菊代「わあ、蟹ですよ!カニ!」ドコカニ

 

百合「なんとまあ!イカの塩辛の瓶詰まで同梱されております。手紙もあるので読み上げますね」ガサ

 

百合「《ホカホカの蒸かしたジャガイモに溶けたバターを乗せ、その上にイカの塩辛を乗せて食べるとおいしいわよ!》とのことですわ」

 

好子「すごくハイカロリーっぽそう・・・プラウダ飯は女の敵ね・・・」

 

 

 <ガチャ カランカラン・・・

 

しほ「・・・」

 

菊代「あっ、しほさん」

 

蝶野「見てくださいセンパイ!プラウダからお中元ですよ!毒盛られてないか調べます!食べていいスか!?いいスよね!?ね!?」

 

百合「お待ちになってくださいまし。毒見の役割はこの私にお任せくださいませ。ほんの微量な毒でさえ全て喰らい尽くしてみせます」キリッ

 

菊代「調理は私にさせて下さい。しほさん、蟹はお鍋にしますか?刺身にしますか?」

 

千代「蟹くらいで騒ぐことないじゃない。プラウダもどうせなら10杯くらいくれればいいのにね」

 

好子「これだから貴婦人は・・・あれ?どうしたのしほちゃん。なんだかいつもと様子が・・・しほちゃん?」

 

しほ「・・・」

 

好子「・・・ど、どうしたの?・・・」

 

 

しほ「本日を持って、我々マロニエチームは解散とする」

 

 

好子「・・・」

 

百合「・・・」

 

蝶野「・・・?」

 

好子「・・・・・・えっ」

 

 

菊代「ど、どうしてですか?なぜ急に・・・」

 

しほ「西住流の上の方々と戦車道連盟から警告を受けた。即刻チームを解散しろと。これ以上続ければ、戦車道連盟は然るべき対応を取るとのことだ」

 

好子「それってどういう・・・」

 

しほ「西住の者でありながら連盟が定める規約に違反し、再三の注意を無視して無法行為を繰り返してきた私達に、とうとう堪忍袋の緒が切れたらしい」

 

しほ「黒森峰に勝利して以降、他校にも何度か勝利することができた私達の活躍は世間一般にも知れるところとなり、話題になった」

 

しほ「それは即ち、戦車道連盟が無法者の野良チームを野放しにし、管理できていなかったことを意味する」

 

千代「・・・!」

 

しほ「西住流にとっても、次期後継者である私がこんなことをしていると世間に知られ、流派のイメージが損なわれたとカンカンだ」

 

しほ「そんなうつけ者である私達が、西住流の逸見先輩率いる黒森峰を下したことで、西住の名は地に落ちた」

 

しほ「私達が名を上げたことで戦車道の認知度は上がっても、西住流と連盟の顔に泥を塗ったことになったのだ。我慢の限界を迎えた大人達は私にこう言った・・・」

 

 

しほ「チームを解散し、金輪際、私がチームの仲間と顔を合わせることを禁ずると・・・お前達と縁を切れとな」

 

千代「・・・!」

 

百合「そんな!」

 

しほ「西住流次期後継者の私が、無法者の素人共と付き合うなど言語道断だと。さすがに頭に来て怒鳴り返してやったがな・・・」

 

菊代「横暴です!解散だけならまだしも、そんなことにまで従う必要はありませんよ!」

 

しほ「拒否するならば法的措置も辞さないとのことだ。私達が戦車を盗んだ話・・・出るところに出れば、まずいことになる」

 

菊代「あっ・・・」

 

しほ「拒否するなら、お前達を警察に突きだすと言われた」

 

好子「で、でも・・・」

 

しほ「逸見先輩は・・・戦車を貸し出したのは自分、黒森峰が負けたのは自分の実力不足だと、私達をかばってくれていたがな・・・」

 

しほ「大人達の言う通りにしなければ、お前達は高校生にして前科持ちにされてしまう。選択肢などない」

 

菊代「私はイヤです。しほさんと絶交するくらいなら、牢屋でもどこへでも放り込まれてもかまいません」

 

しほ「私がお前達を巻き込んだんだ。これ以上迷惑をかける訳にはいかない」

 

菊代「でも・・・」

 

しほ「お前達が交流を続けるのは問題ない。私が引き下がればいいだけ・・・それでも当分は風当たりは冷たいだろうがな。お母様が配慮してくれなかったらどうなっていたか・・・」

 

好子「・・・しほちゃんはそれでいいの?・・・私達、もう会えなくなるんだよ」

 

しほ「私が始めたことだ。私が終わらせる。わかってくれ・・・」

 

好子「・・・」

 

千代「・・・本当にワガママな人」

 

 

百合「そんなのあんまりです!メンツだのなんだの・・・大人は横暴です!戦車道とはそのようなものでいいのですか!」

 

しほ「大人には大人の事情がある。とりわけ今の戦車道は微妙な時期だ。世間体を気にしなければ、廃れて行く一方・・・」

 

百合「っ・・・そんなの・・・」

 

百合「・・・・・・戦車なんて・・・戦車なんて・・・・・・私、戦車なんて大っきらいです!」

 

しほ「・・・それでいい。五十鈴、お前は華道に生きる人間だ。私の我がままで引っ張り込んですまなかった・・・戦車になど、もう乗るんじゃないぞ」

 

百合「~っ・・・」

 

しほ「もう夏も終わる。どちらにせよ、学校が始まればこうして面を合わせることも難しくなるだろう。私達の戦車道は一夏だけのものだったということだ」

 

好子「・・・」

 

しほ「私は黒森峰に戻って、一から出直すことにする。学校の皆も前のように腑抜けたままではなくなっただろうしな」

 

蝶野「センパイ・・・」グスッ

 

しほ「将来、黒森峰が全国大会で優勝・・・いや、10連覇できるようにしてみせるさ。それが私の今の夢だ」

 

千代「フフ、最後まであなたらしい無茶な話ね」

 

 

しほ「それじゃあ・・・私は去るよ。これからお偉い方に頭を下げて周らねばならんからな」スッ・・・

 

菊代「・・・しほさん」

 

蝶野「センパイ!」

 

百合「・・・」

 

しほ「お前達も達者でやれよ。もう会うことはないだろう・・・」

 

 <ガチャ

 

 

しほ「・・・」

 

 クルッ

 

 

 

しほ「・・・・・・戦車道をやっていて良かった・・・お前達と出会えて、一緒に戦車に乗れて、本当に良かったと心から思うよ。ありがとう」

 

 

好子「・・・!」

 

 

しほ「・・・じゃあな」

 

 カランカラン・・・ <バタン

 

 

千代「・・・・・・またなって言いなさいよ」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

好子「・・・・・・それ以来、私はしほちゃんと会っていないわ」

 

好子「菊ちゃんと亜美ちゃんは西住流の門を叩き、門下生になったから特例としてしほちゃんと会うことができた。それでもしばらくは話すことすらダメだったみたい」

 

好子「千代ちゃんも立場上、しほちゃんと会うこともあったそうよ。でも私と・・・とりわけ百合ちゃんは西住流に入るなんてことはできなかったわ・・・どうしてもね」

 

好子「あれ以来、百合ちゃんは戦車が大嫌いになっちゃって・・・華道に戻るきっかけにはなったけど、戦車なんて見るのもイヤになったみたい」

 

好子「もうずっと昔の話・・・結局、あの夏に私達が戦車道をがんばったことで、お金をもらえた訳でも、何かの資格をもらえた訳でもない・・・でも」

 

好子「あの日々の全てが虚しいものだなんて誰にも言えないわ。形の無い大切な財産をもらえたのは確かだもの」

 

 

みほ「・・・」

 

優花里「・・・お母さんも色々あったんだ・・・」

 

華「お母様が戦車を嫌うのにも理由があったのですね・・・」

 

麻子「しかし、それだけがんばっておきながらなんとも虚しい終わり方だ」

 

好子「そうでもないわよ。チームを解散した後、今まで戦った皆が私達を称えてくれたの。聖グロの隊長さんから手作りの賞状とトロフィーをもらったわ」

 

優花里「ウチに飾ってあるやつ!なんのトロフィーなのかなーって思ってたけどそういうことだったんだ!」

 

麻子「なぜ知らなかったんだ」

 

好子「友人関係も広まったし、大切な思い出もできた。戦車道をやってて良かったわ・・・しほちゃんが言ったように、私もそう思うの」

 

好子「だからあなた達も、勝ち負けも大切だけど、もっと大事なことを戦車道から学んでね」

 

沙織「はい!」

 

華「心配無用です。もうすでにたくさんのことを学んで、たくさんのものを得ていますから」

 

麻子「単位と遅刻取り消しの報酬もな」

 

 

 <Prrr

 

みほ「あ、電話」Pi

 

桃【西住ぃ!貴様一体どこで何をしている!秋山の家に偵察映像を取りに行ってから何時間経ったと思ってるんだ!】

 

みほ「あっ!すっかり忘れてた!早く学校に戻って作戦会議しないと!」

 

沙織「急がなきゃ!麻子!何分で学校に着ける!?」

 

麻子「ここからなら飛ばして5分、私なら3分で着ける」

 

華「さすが麻子さん!すぐに行きましょう!」

 

優花里「お母さん、散らかしちゃったけど片づけは帰ってからするから!西住殿、行きましょう!」

 

みほ「う、うん・・・・・・あの・・・」

 

好子「ん?」

 

 

みほ「ありがとうございました。お母さんの話を聞けて・・・なんだか、少しだけお母さんのことがわかった気がします」

 

好子「・・・そう・・・厳しい親かもしれないけど、しほちゃんがあなたの事を大切に思っているのは確かよ」

 

みほ「!・・・」

 

好子「しほちゃんが勝つことにこだわるのは、あなたに自分と同じ思いをさせたくないから・・・自分がかつて大人達に言われたように、仲間にまでひどいことを言われないようにするためだと思うわ」

 

みほ「・・・」

 

好子「まあ、自分自身であなたのこと強く攻めすぎちゃうなんて、あの子もお馬鹿さんよね」

 

みほ「あはは・・・」

 

 

優花里「西住殿~!行きますよ~!」

 

みほ「あ、うん。今行くー。・・・じゃあ、お邪魔しました」ペコ

 

 

好子「・・・青春時代かぁ・・・・・・みんな、どうしてるかなぁ・・・」

 

好子「・・・・・・」

 

好子「・・・もう・・・そろそろいいよね」

 

 

 

 

 

 ――戦車喫茶〈ルクレール〉――

 

好子「みんな、集まってくれてありがとう。本当に・・・随分久しぶりね」

 

菊代「好子さんから連絡が来た時は驚きましたよ。こうしてここに集まるなんて、何年ぶりですかね」

 

百合「あれから何年経ったかなんて、怖くて数えたくありません」

 

蝶野「皆さんすっかり歳食っちゃってますからねー」アハハハ

 

千代「あなたもでしょ。いつまで独りでいる気なのやら・・・それより、あの人は来るのかしら?」

 

好子「もう家元を襲名したんだし、昔の言いつけを守る必要もないはずだから、きっと・・・」

 

 

 <ガチャ カランカラン・・・

 

好子「!」

 

 

 

しほ「この店も変わったわね・・・・・・でも、窓から見えるマロニエの並木だけは変わっていない」

 

 

好子「・・・しほちゃん」

 

 

しほ「・・・せっかく久しぶりに仲間で集まったんだ・・・・・・時には・・・昔の話をしようか」

 

 

 おわり

 

 

 

  ・

  ・

  ・

 

 ~おまけ~

 

 

 \ハハハハハハ!/

 

千代「そうそう、懐かしいわね。しぽりんったら常夫さんの前では言葉使いを変えて・・・」フフフ

 

蝶野「あの頃のセンパイ、ずーっと中二っぽい感じの喋り方してましたよね。あーハズカシイハズカシイ」

 

しほ「う、うるさいわね!五十鈴だって親への反抗でどうのこうの・・・似たようなものだったじゃない」

 

百合「わたくしは思春期故の健全な反抗期です。何もおかしなことではありませんでした。しほさんのそれとはモノが違います」キッパリ

 

菊代「しほさんは常夫さんに合わせるために口調を矯正したんですよ。大変でした・・・あんなに男っぽい口調だったのを女性っぽくするなんて、聞く方も恥ずかしい・・・」

 

しほ「余計なことは言わなくていいの!」

 

好子「フフ、こうしてるとなんだか昔のことを思い出しちゃうわね。あの夏の日々が、遠い昔のように感じるけど、つい昨日のことのようにも思えるわ・・・」

 

菊代「そうですねぇ・・・」シミジミ

 

しほ「・・・・・・皆に話がある」

 

千代「三人目!?」

 

しほ「ちがう!・・・今度、戦車道のプロリーグの発足に辺り、私がプロリーグ設置委員会の委員長を努めることになったわ」

 

好子「すごいじゃない!さすが西住流家元ね

 

しほ「そこでリーグ選手の強化訓練を行うのだけれど・・・教官の人員が足りなくて困ってるの。優秀かつ士気を上げるために名のある戦車乗りが必要なのよ」

 

蝶野「!センパイそれって・・・」

 

菊代「・・・家元、まさか」

 

百合「・・・・・・もしかして」

 

千代「・・・」フ・・・

 

好子「しほちゃん・・・」

 

 

 

しほ「また私達で戦車に乗ってみる気はないか」ニッ

 

 

 ~おわり~

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