深海の駅   作:NiOさん

7 / 13
『伊豆・小笠原海溝』 -9,780m

「……あれ(・・)

 

 1階の人骨(・・・・・)調べれば(・・・・)よくね(・・・)?」

 

 

 それは何というか、降って湧いた天啓であった。

 

 

#####################

 

 

 地下5階から6階へと向かう階段の『1番』を選んだところ、間違っていたようで、1階へと舞い戻ってきた俺……贄野(にえの) (こひつじ)は、『また、げろげろだ~』と嫌な顔をしている幼女、ひさげ あかりちゃんを連れて、再度改札口へと向かう。

 

 そこには、先ほど同様、たくさんの骸骨が山積みされていた。

 

 あかりちゃんも、少しだけ慣れたようで、青い顔をしながら遠巻きでそれらを見ている。

 

 俺は改札を飛び越えて、改めてそれらを観察する。

 

 よくよく見てみると、むき出しの白骨死体だけではない。

 

 一部、生前の着衣だと思われるスーツやらカバンやらが、下の方に散らばってもいた。

 

 ……恐らく全員、俺と同じ、社畜だったのだろう。

 

 終電からのホーム就寝、そしてここでの苦労まで、簡単に想像でき、一瞬で共感できた。

 

 俺は頭を下げると、今度はその服やカバンの探索を始める。

 

 その中から、いくつかのメモ用紙を見つけた。

 

 全く関係ないと思われるものも、勿論あったが……。

 

 

 予想通り(・・・・)階段の順番を(・・・・・・)記載したメモも(・・・・・・・)見つかった(・・・・・)

 

『3141592653』

 

『3→1→4→1→5→9→2→6→5→3』

 

『①3②1③4④1⑤5⑥9⑦2⑧6⑨5⑩3』

 

 

 そこにあるメモには、共通点があった。

 

 

 いずれも(・・・・)地下10階までの(・・・・・・・・)道のりしか(・・・・・)記載がなかったのだ(・・・・・・・・・)

 

 よく考えれば、それはそうだろう。

 

 何しろここに居る白骨死体(ひとびと)は皆、出口を目前にして朽ち果てて行った者たち、なのだから。

 

 ……これはこれで、当然有難い情報なのだが、ラストの階段の番号が解らないとなると、やはり1番から順番に調べて行かなくてはならず、階段を何度も繰り返し降りなくてはならない。

 

 もちろん俺もだが、あかりちゃんにとっては特に、厳しい戦いになる。

 

 他に何かないか、更に誰かのカバンを探してみる。

 

「……ん?」

 

 ……そこには、おかしな日本語が、書かれていた。

 

 

『さんいし いこくに むこう。

 

 さんご/やく なく さんぷ。

 

 みやしろに むし さんざん やみに なく』

 

 

「『産医師 異国に 向こう』……?

 

 なんで、ひらがな……?

 

 

 ……あ、これは、多分、違うな……」

 

 

 

 少し考えて、俺は気づく。

 

 

 

全部数字で表せるわ(・・・・・・・・・)

 

 恐らく、何かの数字のゴロ合わせだな。

 

 そんで、『産医師(314)』から始まる数字の、覚え方ってことは。

 

 全く確信は無いけれど。

 

 

 

 ……多分(・・)円周率だ(・・・・)

 

 

#######################

 

 

 よくよく考えると、ヒントはあった。

 

 地上階の数字が『3』。

 

 地下階の数字が、『1』『4』と続けば。

 

 勘が良い人なら『3.14』を思いついて、『π』についてスマホでググるだろう。

 

 ……いや、そう言えばスマホは圏外なんだった。

 

 なんだ、じゃあ結局、ココで『円周率を覚えている人』のメモを確認しないと、クリアできない、ってことか。

 

 ……まあ、良い。

 

 

 俺は、改めて、そのメモを確認する。

 

 

さんいし(3.14) いこくに(1592) むこう(65)

 

 さんご(35)/』

 

 スラッシュは恐らく『円周率を覚えている人』が書いたもので。

 

 

 このスラッシュで切れるところが、11番目の数字となる。

 

 

 ……すなわち、地下10階から地下11階へ降りる階段の番号……『11番目の数字』は……『5番』だ。

 

 ……何故、円周率なんだろう。

 

 ミスると一階に戻るからかしらん。

 

 俺はスマホで『円周率記憶法』を写真に収めた後。

 

 ひとまずゴールに近づいたということで、幼女に報告する事にした。

 

 

「多分ゴールがわかったよ、あかりちゃん!」

 

「ほんとぉ!」

 

 

 

 笑みをいっぱいに浮かべるあかりちゃんに、こちらも嬉しくなって笑顔で返す。

 

 

 

 

 ……こうして(・・・・)

 

 

 いくつかの違和感を(・・・・・・・・・)抱きながらも(・・・・・・)

 

 

 ……俺はあかりちゃんとともに、地下11階を、目指すことにしたのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。