といってもオリジナルキャラを出すつもりはありません、出ても原作のようにモブとしてだと思います。あくまで設定のみです。
料理を作り終えた騎士とマホたちは普段より多めに作った食事を囲い、会話を交えつつ昼食を取っていた。
普段より多い理由としては 1.客人がいる 2.相手が
1の理由は当然のことで、2も十分に理解できる、3は完全にという、どこから仕入れた分からない知識から来ていた。
まぁ、騎士は出されたら出された分食べる人間であったので何も起こることはなかったが、彼女たちの認識――『若い男性=よく食べる』が定着してしまったのだが…
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しかし、同性の集まりということで男性と接することは極端に少なく、家族以外は全く… という状態だ。自分からだと恥ずかしいということで行動できず、されど近寄って来る男はもれなく全てがストライク範囲外、もはや暴投か危険球だ。
結果、男性の知識は聞いた話と本の世界ということになってしまった。 ――ギルドハウスに招かれた騎士は男性1号だった。
「(モゴモゴ…)」
「やっぱり若い男の子はぎょうさん食べるなぁ~、張り切って作った甲斐があったわぁ。」
「沢山作った甲斐があったもんさ! でも買い出しに行かないといけなくなったね。」
「それなら食べ終わったらみんなで行くさ~、人手も増えているから買い物が楽になるよ。」
「(モゴモゴ…)」
「それにしても食い過ぎじゃねぇか? あんま無理しなくていいんだぜ?」
「あぁ~、食事に夢中な王子はんもええわぁ」
「そ、そうかな…? 私にはちょっとわからないや。」
騎士は食べることに夢中であった、周囲の会話には参加せずに食事の手と口だけを動かす。マコトは沢山用意した料理を黙々と食べ続けている騎士を見て、無理をしているのではないか? と心配しており、反対にマホは手料理をたくさん食べてくれる騎士を見て喜んでいる。
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騎士の食事が落ち着いたタイミングでマホが騎士へ話しかけた。すでにマホは姿勢を正し、騎士に体を向けて話しかけている。
「あんなぁ王子はん? ここに招いたのはうちの仲間を紹介するだけでは無いんよぉ。」
「ん? どういうことだ?」
どうやらマホがギルドハウスに招いたほかの理由があるらしい。マホがわざわざ、姿勢を正してから話しかけるということは何かしら話があるのだろう…
「先日の王子はんとの戦いでマコトはんとカオリはんがケガを負ったやろ? 回復魔法使ってはいるけども、完全回復にはどうしても時間が掛かってしまうんや… そんで、お二人には治安維持を担当してもらっていてなぁ――」
「ほかの仲間には腕っ節に自信があるやつがいないからな、あたしとカオリが動けないと治安維持活動に問題が出ちまう。」
「そうだよ~、私とマコトがケガしてることがバレたら調子に乗るやつらが少なからずいるんさ~。困ったものさ~」
マホの言葉をマコトとカオリが繋いでいく。どうやら治安維持組が二人してケガを負ってしまった結果、穴がポッカリ開いてしまったということである。
「そんな訳で王子はんにはなぁ、大事を取ってお二人のケガが治るまでに代わりとして治安維持活動を手伝ってもらいたんよぉ。」
「ちあんいじ? なんだそれは?」
「それじゃあ、あたしが説明してやる。あたしたちがやってる治安維持活動っていうのはな――…」
治安維持について知識がなかった騎士に、現役者であるマコトが説明する。
マコト、カオリがしている治安維持活動は、主に喧嘩の仲裁やひったくり・万引きなどの窃盗犯確保などである。また、依頼を受けて警護なども行うことがある。
そのほかにも道案内や迷子の捜索なども行っているが、もっぱら後者はカスミなどの非戦闘員のメンバーが引き受けることが多い。
今回、マホが騎士へお願いした内容はマコトたちが行っていることをやってもらうのだが、必要以上に相手をボコボコにする騎士に任せて大丈夫なのだろうか…?
「治安維持っていうのは大体わかったが、俺に任せていいのか? 俺は手加減っていうのが苦手なんだよ、前回みたいになっても知らんぞ。」
騎士自身、マホのお願い事を引き受けることに何ら問題はない。が、サレンに言われていた『手加減の出来なさ』を気にしていたようだった。
さすがだぞ! 自分の 弱点を ばっちり わかって いるんだな!
「いやいや、そこは何とかして欲しいのだけど… まぁ君一人で治安維持活動はさせないから安心してくれ。短期間だが、私が君のパートナーになろう!」
「そうやなぁ…、うちも王子はんに着いて行きたいのやけど、うちにしかできひん仕事がおるからなぁ。」
そのことを十分に理解している一人であるカスミが、代行の期間中だけ同行することを提案した。マホも「ぜひ、うちも一緒に!」といきたいところだが、彼女は【
マホはいつもマイペースで自由にしているイメージであるが、仕事においては公私混同を極力避けるタイプだ。 彼女でしか処理できない仕事もあるので、簡単に同行するとは言えなかった。
「カスミひとりで大丈夫さ~? なんなら私かマコトも着いて行くよ~?」
「あたしもカオリの意見に賛成だ。」
カオリとマコトはカスミと騎士だけでは不安なので、どちらか片方が着いて行こうとする。不安要素の原因である騎士は言わずもがなである。また、カスミは治安維持活動はあまり参加していない、普段は頭脳労働を行う子で腕っ節も強いとは言えず、騎士の手綱を握る光景が浮かんでこない、せいぜい振り回されるのがオチである。
「心配をしてくれるのは有難いけど、お二人には安静にしてもらって、早く治ってもらいたいんだよ。」
「まぁ、そう言われたらそうだけどさ…」
「でも、カオリはんはホンマに大丈夫なんか? 無理しなくてもええで?」
「大丈夫だ。安心してくれと言っても無理だと思うが、私の出来る範囲でやるし、無茶は絶対にしないことを約束するよ。」
「ならええんのやけど… 王子はん、カスミはんに何かあったら助けてあげてぇな?」
「あぁ、身を守ることだけなら任せろ。」
結果的にカスミと騎士で短期間の治安維持活動を行うことになった。けれど、どうしても二人が心配なので、マホたちはちょいちょい様子を見に行こうと思ったのであった。
「あたしとカオリは買い出しに行ってくるけど、無茶しないようにな。」
「勿論さ、マコトさんとカオリさんも怪我人なんだから気を付けてよ?」
「わかってるさ~、じゃあこれから治安維持活動よろしくさ~。」
これからは全員が別行動になる。マホはギルドハウスで事務仕事、マコトとカオリは食料の買い出し、カスミと騎士は治安維持活動の為に自分たちの
現在、カスミたちが警邏のために管轄区域を巡回している最中だが、周囲の住民からちょくちょく声を掛けられていた。内容はどれも「カオリ、マコトのケガ」についてばかりで、彼女たちの人気、知名度の高さがうかがえる。つい先日の出来事なのに、うわさが広まる速度は途轍もなかった。
「やっぱり、マコトさんやカオリさんたちが居ないとみんなは不安のなのかなぁ…。」
「どうした急に?」
「先ほどからマコトさんたちのケガの具合について聞かれたり、心配する声を多く聞いたよね? それは単に二人の容態に対して心配しているだけではなく、いつ現場復帰してくれるかとも受け取れるんだ。」
「ん?… ごめん、俺に分かりやすく言ってくれ。」
「つまり、自分の生活を守ってくれる人が居ないことに不安を感じている人もいるんだよ。」
カスミの受け取り方は大方当たりであった。マコトとカオリがある程度の抑止力となっていることもあり、その抑止力が無くなってしまえば自分の生活に影響が出る可能性が高くなるのである。二人の容態よりも自分の今後を心配する者は少なからず存在していた。
「俺たちは今までのやつらに舐められていたってことか。」
「うん、まぁ… 言葉遣いはあれだけど、そうとも言えるね。だからさ、私たちが頑張ってマコトさんやカオリさんが居なくても安心だ!ってことを皆に知らしめなきゃ。」
「言っていることは大体分かるが、どうすればいい?」
「それは地道にやっていくしかないだろう、信頼は時間でしか解決できないからね。よろしく頼むよ、騎士さん。」
「こっちもよろしくな。」
(ほんまに大丈夫やろかぁ…、ふたりとも頑張ってなぁ。)
こうして、遠くから二人の様子を隠れて見ていたマホがいる中、心配だらけの新米コンビによる治安維持活動が始まったのであった。
「カスミちゃんじゃないか、どうだい? 探偵業のほうは順調かな?」
「まぁ、ぼちぼちってところかな? やっぱり、一人だと難しいところがあるよ。」
「そうか、とにかく頑張ってな。」
警邏中に声を掛けられるカスミ、今回は自身の探偵業について聞かれていた。一応、探偵としての依頼を個人的に受け付けているカスミが警邏を行っている光景を見て、不思議に思ったのだろう。
現状はカスミの返答の通りで、決して順調ではない。一人での活動では限界があったこと。そして、探偵としての知名度よりも【
名探偵を目指すカスミとしては違う方で名が広まっていることはあまり喜べることではなかった。
「そういえば、カスミは名探偵だったっけか?」
「名探偵を目指している探偵だ! …さすがに自分の現状で名探偵と自称できないな。」
「それで、なんでカスミは一人で探偵をやってるんだ? ほかの仲間がいるじゃないか。」
ソロ活動を卒業したがっているカスミに対してストレートな質問が飛んできた。
「なんでっても言われてもなぁ… これは私のやりたい事であって、ギルド活動じゃないからね。」
「ふ~ん、そんなもんか。」
勿論、ソロ活動にはそれ以外の理由があるのだが…、カスミは特に言おうとは思わなかった。
そんな雑談をしているなか、また誰かが声を掛けてきた。 今度は若い男の2人組である。
「ここらで見ない顔だけど、ここに来るのは初めてかい?」
「そこのパッとしない男よりも、俺らとちょっとだけ遊ぼうぜ。」
「君めっちゃ可愛いし、おごるぜ?」
典型的なナンパ男たちだった。しかも現在は昼を過ぎたくらいなのでまだ明るい、そういうのはまだ早いのではなかろうか?
「あ~、すまないが私たちは仕事の最中なんだ、君たちだけで遊んでおくれ。って、君たち酒臭いぞ⁉」
「そんなつれないこと言わないでさぁ~」
「日が暮れるまででいいからさ? ね?」
彼らはここの区域に来てから日が浅い連中であった、いつもうるさいマコトが居ないことを耳にして明るいうちからナンパを始めているらしい、しかし結果は芳しくなかった。やっぱり昼間はダメだろう…
「こいつらカスミの知り合い?」
「今の会話からどうやってその答えが出たんだい… 君は馬鹿かな?」
「そこの男は君の彼氏?」
「違う! コレのどこが私の彼氏に見えるんだ⁈ 私の好みは賢い人で君たちのような馬鹿ではないぞ!」
お年頃の少女であるカスミは、騎士のことを彼氏と思われたことで少し癪に触った。好みでない男を彼氏と勘違いされるのは普通に嫌だった。
「じゃあ、良いじゃん~。一緒に遊ぼうぜぇ~。」
「だから仕事中と言っているんだ! 失礼する。」
「おい!待てって!」
昼間から酒を飲んで、酔っ払っている男たちはまだ引き下がらないでいた。 悟ったカスミは無視を決め込み、その場を後にしようとするが… カスミは男に腕を掴まれてしまった。
「なぁ、腕を放してくれないか? 君にケガはさせたくない。」
「おいおい、俺たちよりちっちゃいのにどうやってケガさせるんだよ。」
こういった事には慣れていないカスミはどうしようかと考える。実際、魔法を使えばこの男たちなどなんともないが、出来るだけ穏便に済ませたいと思っているので魔法を使うことに少しためらいがあった。
「それともこのパッとしない男に助けてもらうのか? ははっ、こんな弱そうなやつに?」
「は? 俺に喧嘩売ってるのか?」
「騎士さん⁈ こんな挑発に乗るのは止めてくれ! これ以上、問題ごとを起こしたくない!」
ナンパ男が騎士に挑発したこと理解したカスミには冷や汗が垂れ始めた。このまま喧嘩でも始めてしまえば注目の的である、しかも騎士は相手を必要以上に痛めつけるため、そんな光景が民衆にさらされると【
カスミがそんなことを考えながらも、状況は刻々と進んでいた。
「おいおい、そんなひ弱そうな体格じゃ俺には勝てないぜ?」
「まー君、ちゃんと手加減しないとダメだぞ~。」
喧嘩を吹っ掛けた男は上半身を脱いで自分の肉体を見せつける。その外見は十分鍛えられていて、騎士と比較してしまえば騎士の方がひ弱に見えるだろう。
自分の肉体を自慢げに見せた男はファイティングポーズをし始める。それを見かけた周囲の人たちが囲むように集まってきたが、喧嘩の野次馬になるだけであって、仲裁を考えている人は誰もいなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 穏便に済ませないか? ケガをするのは嫌だろう?」
「大丈夫だって、手加減はするからさ。」
自信の考えていた通りに事が進んでしまっていることに気づいたカスミは何とかして喧嘩を止めようとしているが、周囲の野次馬たちのせいで上手くいかない。
「騎士さんも周囲に乗せられないでなんとか言ってくれ!」
「大丈夫だ、一発で終わらせる。」
「違ぁぁぁぁぁぁぁう‼ この大馬鹿どもぉぉぉぉ‼」
残念ながらカスミを除くと、この場に居る人たちは漏れなく全員が馬鹿のカテゴリに分類される。カスミのように後先考えるような者は誰一人と存在してなかった。
(どうしよ、どうする、どうなってしまう⁉ ここから怪我人を出すことなく、穏便に事を済ませる方法は⁈)
カスミは自慢の頭脳をフル回転させ、この状況を打破する解決策を模索する!――すると、ある記憶がカスミに引っかかった。
(たしか… 男性が喧嘩をする前に、自信の強さを見せつけて相手の戦意を挫く、みたいなことをやっていたことを見た記憶があるぞ? そうしたら穏便に済ますことが出来るかも! …まぁ、書物での知識だけれど。)
「な、なぁ騎士さん? 私は君の強さを知っているけど、ここに居る人たちはそれを知らない。だから、喧嘩を始める前に君の強さを見せてつけてみないか?(さぁ! 私の話に乗っかるんだ!)」
「そんなことして、何か意味ある?」
(なんで私の話には乗ってこないんだ⁉ この馬鹿野郎‼)
ナンパ男の簡単な挑発にはチョロイン並で食いついたのに、カスミの話には全然食いつかない騎士。カスミのなかで騎士への好感度は真っ逆さまで急降下している。
だが、自分の描いたゴールを目指すためにカスミはあきらめない!
「いや~、私も騎士さんのカッコいいところが見たくてね? 試しに思い切り足元を殴って、力比べとかどうかな?」
「君は力が強いのが好きなの? ならカッコいいとこアピールしなきゃな。 ――オラッ‼」
男はカスミにアピールするため、足元の舗装された道を殴り、少し陥没させた。このナンパ男、自分の力に自信を持って当然くらいの力量であった。それを見ていた野次馬たちは大盛り上がり、次は騎士の番だ、と言わんばかりの流れができ始めていた。
場の流れを感じ取ったカスミは心の中で、ナンパ男と野次馬に少しばかり感謝をした。…こいつらが原因だったはずなのにね。
「こんなの見て何が面白いんだか… まぁいいや、怒られない程度で壊さないようすればいいんだし。 ――そらっ」
「「「「「は?」」」」」」
一瞬の出来事で、周囲の人たちは黙り込んでしまった。そそのかしたカスミも一緒のリアクションを取ってしまっている。
騎士の腕は肘まで隠れるように足元の道に突き刺さっていた、それなのに大きな音も衝撃も破砕もない。ただ、不思議に思える光景が残った。
騎士は周囲のリアクションを気にする事はなく、そのまま突き刺した腕を引き抜く。抜いた際、手の形は手刀の形のようだった。
「さて、やろうか。」
騎士は喧嘩する気満々だったので男に声を掛けるが、反応が帰ってこない。騎士もおかしさを感じて少し首を傾け、疑問がある表情を浮かべている。
「あの~、俺たち帰っていいですか?」
「あぁ…、そうしてくれると私も助かるよ、気を付けて帰るといい。」
「「じゃあ!」」
ナンパ男の2人はカスミに了承を受けたことでサクッとこの場を後にしてしまった。周囲の野次馬たちも先ほど盛り上がりが嘘のように霧散して、こちらもすぐにどこかへ行ってしまった。
「何だったんだろう? おかしな奴らだな…」
「君がその筆頭だと、私は思うよ…」
その後も、日が落ちるまで警邏は続いたが問題が起こることはなかったが、騎士がヤバい奴という噂が周囲に拡散され、噂には尾ひれが付きまくって… ――この日、【
後半駆け足にしちゃいました、書きたいよりも早く投稿したいという思いが先行しちゃいましたね… 本当に申し訳ない。
騎士君はまだ助手君には昇格しないよ! なるのはもうちょっと友好を深めてからになります、だって好感度低いし仕方ない。
それともう少しで第一章始められるかもしれない! この小説書き始めてから1ヶ月以上たってるのにね~? 進行遅くてすみません!