プリンセスコネクト! Re:Birth   作:UNAG3

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メッチャ難産でした、文字数多すぎてごめんよ。 あとやたらネット回線が切れるんですよね? PCだけだからルーターには問題無いはずだけど…あれ? 俺、またなんかやっちゃいました?


第13話

「で、今日は問題を起こさないで済みましたか?」

 

「なんで俺がいつも問題を起こしてる前提で話しかけるんだ?」

 

カスミとの治安維持活動を終えて、騎士はいつもの宿に帰宅していた。 現在はコッコロと共に夕食を取っている。

騎士はコッコロの扱いについて異論を挟むが、だいたい問題の原因か中心に立つことが比較的多いので、コッコロの考えはあながち間違ってはいない。

 

「今日は何もなかったし、何もしなかった。喧嘩を売ってくる男がいたけど結局どっか行ったから問題なし!」

 

「それはそれは、何よりでございますね。」

 

あのナンパ男の逃走によって騎士は助かっていた、でなければコッコロのお仕置きが放たれるところであった。

 

「それにしても主さまが街の治安維持とは… わたくし的には後学のために色々と経験なさるのは良いと思いますよ?」

 

「…俺も記憶を失ってることを理由にして甘えるわけにはいかない、今はカスミがフォローしてくれているから頑張ってみるよ。」

 

「カスミ…、その方も【自警団(カォン)】のお方ですね? わたくしの時間が空き次第、【自警団(カォン)】のみなさまに挨拶に参りましょう。どうせ主さまのご様子を伺うついでですので…」

 

「俺のところなんて来なくていいって」

 

どうやらコッコロは騎士の活動を見ようとしてるらしい。 そんなことを聞いた騎士は嫌がっていた――さながら授業参観を嫌がる子供のようだ。見た目は全然違うが中身はさほど変わらないかも知れない…

 

「それでコッコロは今日、ペコのところに行ってたんだろ? どうだった?」

 

「そうですね~… ぼちぼちってところですかね? ペコリーヌさまのお話によると人気が出過ぎて困っているだそうです。あそこ虫料理などの人間(ヒューマン)にとってメジャーな料理が少ないんですけど、最近は獣人(ビースト)のお客様が増えてるそうで…――」

 

ペコリーヌのヘルプとして呼ばれていたコッコロは今日の出来事について騎士に話した。

ペコリーヌが務めている飲食店はゲテモノ店で有名になっているが、最近コッコロが言っているとおり人間(ヒューマン)以外の客層が増えている。売上的には良いのだがウエイトレスが不足しすぎている、なんならペコリーヌ一人しかいない。 募集はしているのだがメイン料理がアレの為、ウエイトレスすら近寄ってくれないらしい。そのためコッコロが臨時のウエイトレスとして雇われたのだ。

 

「そっか、そっちもなかなか大変なんだな。 ペコも困ってるんじゃないか?」

 

「そうですね、ペコリーヌさまは注目を浴びることやご身分を知られることを非常に避けていらっしゃいますから…。」

 

「俺たちにペコの本当のことを言ってくれるのはまだ先かぁ~。」

 

「ペコリーヌさまが自ら打ち明けるまで、気ままに待ちましょう。なんせわたくしたちは美食殿(仲間)でございますからね。」

 

「そうだな…」

 

コッコロと騎士は、ペコリーヌが自分の名前や生まれ、経歴などを隠していて、さらに自分ことを知られるを極端に避けていることを知っていた。 実際この件について、騎士はコッコロに教えられただけであり、むやみに触れないよう釘を刺されただけである。

 

「それにしても主さまはペコリーヌさま相手だとお優しくなりますよね?」

 

「そうか? まぁ、あいつを見てると守ってあげなきゃなって思ってるからな、なんか知らんけど。」

 

「……」

 

ペコリーヌに対して、騎士を基準に考えると過保護とも取れる扱いをしていることに、コッコロは疑問を抱いていた。どうしてか騎士にとってペコリーヌは最優先の保護対象になっている、「もしかすると騎士の失われた記憶にはペコリーヌの素性が関係しているのではないか?」と考えているコッコロは、ペコリーヌにさっさと素性を明かして欲しいところだ。――コッコロでも気になるものは気になるし、何より自身の使命が関係してるかもしれない要件なのだから… 


 

場所は変わって【自警団(カォン)】のギルドハウス。マコトは療養のために実家に戻っているので今はマホ、カオリ、カスミの3人が集まっていた。

 

「あ゛~、しんどかったぁ~…」

 

「今日はお疲れさんやったねぇ、カスミはんよく頑張ったなぁ、えらいえらい。」

 

「カスミお疲れさ~、久しぶりの現場なのに偉いぞ~。 でも、カスミがこんなにへばっているなんて、今日は大変だったのか~?」

 

帰宅したカスミ対してマホが頭を撫でてあげ、カオリが労いの声を掛けていた。 騎士と違い、カスミはへばっている様子であった、カスミは裏方なのでマコトやカオリと比べてしまうと体力はないが、そうはいっても獣人(ビースト)だ。 人間に比べれば十分な体力はあるはずなのだが…

 

「だって! 騎士さんから目を離すと、どこかふらりと行ってしまうんだよ⁉ 私が言ってもジッとしてくれないから、もう大変だったよ…」

 

カオリが予想以上に疲れている理由はやはり騎士にあった様子、カスミの言う通り問題を起こすことはなかったが、カスミにとっては騎士そのものが問題だったのだ。 騎士本人にはあまり自覚がないが、気になることや興味に対してすぐさま行動するので、まるで赤ちゃんみたいと思われている。おそらく治安維持活動を行っていた場所はあまり訪れた記憶が無いため色々動きたかったのであろう。 その結果、カスミが苦労役を担ってしまっているが…

 

「王子はんは記憶喪失と言うとったんからなぁ、それも関係してるかもしれへんよ? ウロチョロするなんて子供みたいでかわええなぁ。」

 

「そうかな~? まだ判断材料が少ないから、そう決めるわけには。」

 

「私とマコトの分まで頑張れカスミ~」

 

「うぅ~、カオリさんは~。他人事だと思って~…」

 

自分の苦労を正確に受け止めてくれる人が居ないことを知ってか、カスミは項垂れた。

 

「ところでカスミはん?探偵のお仕事で助手が欲しいと言うとったことありますやろ? 王子はんはどうや?」

 

「えぇ~… 確かに助手を雇ってソロ活動から脱却したい身ではあるけれど… 騎士さんを助手にするメリットなんて腕っ節の強さ以外に無いんじゃないか? お世辞でも探偵事に向いているとは思えないよ。」

 

「あれ~? カスミはまだ探偵やってたんさ~?」

 

「当たり前だ。ギルドに入ったからと言って本来の職を手放すつもりないぞ、だって私は名探偵を目指しているんだからな。」

 

「そうだったんだな~。でも、カスミ一人で寂しいとかは無いの~?」

 

「寂しいとかはないけれど、人手が欲しいってのはあるね… 地道にやっていくさ、名探偵の道は長いからね!」

 

マホはカスミが探偵業の助手を欲しがっていたことを知っていたので、なんとなく騎士をあてがってみたが案の定NGのようだ。カスミの言う通り、現状は腕っ節の強さ意外に魅力が無いというのは、マホも正直なところ同意見ではあった…。

カスミ自身の助手に対するハードルの高さも相まって、まだまだソロは卒業できなさそうだ。


 

カスミと騎士がコンビを組んでからもう7日が経ち、騎士も治安維持活動になれてきた様子。また、カスミも騎士の扱いが大体分かるようになってきた。実際は、騎士が興味に対してとことん反応し続けていった結果、興味の対象が無くなってしまったからである――言うなれば難易度が減ったのだ、もちろんカスミの頑張りもあるが。

 

現在はカスミが建物の屋根に上がって周囲の把握や声を探り、騎士は下で待機してカスミの指示を受けて現場に急行したり、自分の判断で行動するという作戦で活動を行っていた。これは「互いの利点を利用した作戦」と言ってカスミが決めた、騎士の意見はガン無視している。当然といえば当然なんだが…

 

「今日は何もなさそうだな~、すご~く暇。」

 

「それはそうだけど油断大敵だよ、ひったくりや喧嘩なんて毎日起きるんだから気を引き締めよう?」

 

「そう言ってもなぁ~」

 

もうすでに昼時を過ぎていた、カスミと騎士はすでに昼食を取り終えているので、今は午後の警邏に励んでいる。が、最近まで毎日のように起きていたひったくりや喧嘩が嘘のように無かった。 そんな理由もあって騎士は完全にだらけてしまっていた。カスミはそんな騎士を見て注意していると…

 

「お~い! 騎士く~ん!」

 

カスミの耳に「騎士」と呼ぶ女性らしき声が入ってきた、騎士と呼ばれるのは下で待機している男以外にいないだろう。騎士のほうへ視線を落とすと彼も反応していたようで声が飛んできた方向を向いている。カスミも同じく、声の方向へ視線を辿っていくと大小の少女二人を確認できた。声の主でありそうな少女は騎士のほうへ、手を大きく振っている。

 

「手を振っている彼女とその隣の子供は騎士さんの友人かい?」

 

「あいつらは俺のギルドメンバー。大きい方がペコリーヌ、小さい方はコッコロだ。」

 

「え? 騎士さんってギルドに入ってたの?」

 

「あれ? 言ってなかったか?」

 

「いやだって、所属ギルドがあるのに他所のギルド活動を手伝うって話あまり聞かないから…」

 

カスミの言う通り、他所のギルド活動を手伝うという事例はほとんどない。 所属しているギルドから書類上のつながりがあるギルドへ出向する。ということや、契約を結び、共同でクエストなどを行う。これらが一般的には普通であり、今の騎士が無償でギルド活動を手伝うのは異例であった。

そんな背景を含めてカスミは少し驚いていたが、最も当の騎士本人にそんなこと分かるはずなかった。

 

「おいっす~☆ 時間が出来たので、騎士くんのことを見に来ちゃいました。」

 

「今朝ぶりですね主さま。お見受けしたところ今日も問題なさそうですね。」

 

「おっす、ペコ。それとコッコロ、二人とも仕事はどうしたんだ?」

 

ペコリーヌとコッコロが騎士のもとに到着した。 これで久しぶりに美食殿メンバー全員が集まることになった、最近は騎士が治安維持活動の手伝いをしていることや、ペコリーヌとコッコロで繁盛中のお店を支えていたこともあり、なかなか3人で集まる余裕が出来なかったのだ。

 

「今日はお昼で閉店することになったんで、それなら騎士君に会いに行こうかな~と思いまして。」

 

「へぇ~… よく俺の場所が分かったな? 俺とカスミでここら辺を巡回しているのに。」

 

「それはですね~、コッコロちゃんにお願いしまして――」

 

「わたくしが精霊を使って主さまのことを探したんですよ、場所は大体分かっていましたから探す時間がかからなくて助かりました。」

 

騎士の疑問にペコリーヌが答え、コッコロが話を続けた。 カスミと騎士は街の警邏の為に同じ場所にとどまることはほとんどなく、愚痴を言いつつも歩く足は止めていなかった。それを簡単に見つけたコッコロの探索能力の高さがうかがえる。

 

「精霊だって⁈ そこの君は精霊使いなのかい⁉」

 

騎士たちの上で3人の様子を見ながらも周囲に注意を払っていたカスミが急に話へ加わって来た。どうやらコッコロに興味が湧いたようで、カスミはギルド活動のことを頭に端に一旦置いておくことにした。残念ながら自身の知識欲には勝てなかったようだ。

 

「あ、あの~? あなたは?」

 

「あ、すまない、申し遅れたね。 私の名はカスミ、獣人ギルド【動物苑】傘下の一つである【自警団(カォン)】に所属しているものだ。今は騎士さんと一時的ではあるがコンビを組んで治安維持活動を行っているのさ。」

 

「あなたがカスミさんだったんですね。初めまして、私はペコリーヌって言います、騎士君が所属している【美食殿】のギルドマスターをしています。」

 

「では、わたくしも自己紹介を… わたくしは主さまである騎士さまにお仕えしているコッコロと申します、いつも主さまがお世話になっているとのことで挨拶に参りました。どうぞよろしくお願い致します。」

 

「へぇ~、ペコリーヌさんとコッコロさんね… こちらも今後ともよろしくお願いしたい。(えっ⁉ 騎士さんって実は偉い人だったり? だって、すごそうな使用人がいるって相当だよ⁈)」

 

3人が互いの自己紹介を終えるが、カスミにとって知りたいことがさらに増えてしまった。 このままではギルド活動に支障が出てしまうかもしれないが、残念ながらカスミの意識はさらに遠くなっている。

 

「で、ちょっとコッコロさんに聞きたいんだが、君のさっき言っていた「精霊を使って」っていうのは本当かい?」

 

「はい、そうですが…? それが何か?」

 

「すごい才能じゃないか⁉ まさかこんなところに精霊使いに出会えるなんてね! 今日は良い日かも知れないぞ⁈ でも、よく見たら君はエルフ族なんだね、エルフは魔法適正を持って生まれてくるのがほとんどだと聞く… だとしたら――――」

 

「いきなりすごい早口で喋り出しましたね、この人。」

 

どうやらコッコロが精霊使いという事実に、カスミは物凄く興奮しているようだった。ちなみにペコリーヌもこれほどではないが同じようなリアクションを取っていたのでコッコロは特に動じることはなかった。もちろん、騎士もその場にいたが意識がハッキリする前なので当然記憶にない。

なので騎士にはカスミが驚いている理由がよく分からないでいた。

 

「どうしたんだカスミ? コッコロの精霊がすごいのか?」

 

「何言っているんだい! …いや、記憶を失っている騎士さんが知らないのも無理ないか?」

 

「あのですね、騎士くん? コッコロちゃんのような精霊使いって非常に珍しい存在なんですよ――」

 

不思議に思った騎士はカスミに質問を投げるが、ペコリーヌが代わりにその理由について教えてくれた。

 

まず、この世界には精霊というドラゴン、エルフ、ビースト、ヒューマンなどといった生命体と異なる存在がいる。生と死の概念が無く、あらゆる縛りがない――本当の意味で自由な存在と言われている。一般常識的には意思疎通がほぼ不可能であり、まして使役するなどはおとぎ話レベルであった。

また、精霊の存在を感じたり視認出来たりするのは、だいたい才能か生まれた種族で決まることが多い。ちなみに魔法を使える者は精霊を知ることが出来るが、魔法が使えないものは感知することすらできない。そのため、精霊は魔法使いにとって重要なマナと同じ存在と言われている所以である。

 

という訳で実はコッコロちゃん、世にも珍しい精霊使いであったとさ。 精霊との意思疎通をこなせる程の才能を持つ存在は、大魔法使いと言っても遜色ないくらいの才能を持っているが、ここまでのレベルだと魔法の才能と結びつかないイレギュラーだ。けれどコッコロは魔法の腕もかなりある天才であった。

 

「ふ~ん、実はコッコロってすごいやつだったり?」

 

「もう今更ですよ主さま… でも、わたくしのすごさを理解したのであれば許してあげましょう。」

 

騎士にあきれるコッコロだったが、上に見られることに関しては悪い気はしなかった。おそらくコッコロを褒めていなかったら手か足は出ていただろう。 カスミは現在、コッコロの精霊に夢中だった。どうやらペコリーヌが騎士に説明している間、コッコロに「精霊を見せてくれ」とお願いしていたらしく、今は一人で何かをブツブツ呟いてる。

 

「そうだ、騎士くん。治安活動が終わったらみんなで食べに行きませんか? 最近は一緒に食べることがなかったので寂しいんですよ! あ、ちなみにコッコロちゃんの了承は取ってます! ヤバいですね☆」

 

「それだったら俺に聞く意味無くね?」

 

「まぁそうですけど、騎士くんがオッケーって言ってくれるかなって思いまして。」

 

「何言ってるんだよ、俺はペコの誘いなら必ず行くぞ?」

 

「あ、ありがとう…ございます…。 や、ヤバいですね…。」

 

ペコリーヌは騎士の返答を聞きたくて、あえて質問してみたのにカウンターを食らって顔を赤くする。騎士の言うことは大体いつもと変わらないので、今の発言もペコリーヌには予測出来ていたのだが、自分の頭の中で言われるのと実際に言われるとでは威力が全然違ったらしい。

 

「なんでペコリーヌさまは、いつもと同じことを繰り返してるんですか?」

 

「さぁ? なんでだろうな。」

 

コッコロの言う通りで、このようなやり取りは一度や二度ではなかった。 理由としては単純で、ペコリーヌは騎士から好意と取れる言葉を聞きたいから。けれど、毎回騎士から言葉をもらっては恥ずかしがっているので、それを傍から見ているコッコロには不思議でしょうがなかった、騎士もコッコロと同様だ。…恋心などを知らない主従コンビには理解できない内容だった。


 

「いや~、夢中になりすぎてしまって…すまなかったね。出会って早々なのにお願いを聞いてくれて、ありがとうコッコロさん。」

 

治安活動を思い出したカスミはふと我に返ったらしい、使役している精霊を見せて貰ったお礼をコッコロに伝える。

 

「いえ、そんなことはありません。主さまが日ごろからお世話になっている方であるカスミさまのお願いですから、この程度ならいつでもお申し付けください。わたくしに出来ることであれば善処いたしますので。」

 

「ありがとうね、また出会う機会があれば是非よろしく頼むよ。」

 

「わたしたちも帰りましょうか、騎士くんたちの邪魔をするわけにいきませんからね。行きましょうかコッコロちゃん。」

 

「はい、ペコリーヌさま。では主さま、カスミさま、お気をつけて治安活動に励んでくださいまし。」

 

「分かってるよ、それじゃあとでな。」

 

「はい! また後で~!」

 

話も一区切りついたのでペコリーヌは騎士たちと別れることにした。 このまま話し続けたいところだが、騎士たちは仕事中なので邪魔をし続けるのは良くないので騎士たちに手を振り、ペコリーヌとコッコロは一旦別れを告げた。 騎士も手を振り返し、ペコリーヌたちの姿が見えなくなるまで見送り続けていた。

 

「騎士さんの仲間は良い人たちじゃないか?」

 

騎士と共にペコリーヌたちの姿を見送ったカスミは素直な感想を騎士に伝えた。

 

「そうだな、今の俺にはもったいないかもな。」

 

「それにしても騎士さんに従者がいるとはね、実は偉い人だったり?」

 

「いや、俺が知りたいよ。物心ついたときにはすでにコッコロとペコがいたからな、どうして俺の仲間になったのか分からないんだよなぁ~」

 

「えぇ… そこは普通、気にする事だよね?なんで聞いてないの?」

 

「いや、聞いたところで別にっていうか、あいつらが俺の仲間だっていうことが分かってるから良いかな~なんてね。」

 

「…やっぱり、騎士さんって私たち一般人とは違うな~」

 

騎士には仲間になるまでの過程や経緯は特に気にならないことらしい、そんな返答を聞いたカスミは互いの感性の違いを改めて理解する。

休憩はここまでだと言わんばかりに騎士とカスミは治安維持活動を再開するため、足を動かし始めた。

 

「(そういえばペコリーヌさんだっけ… どこかで見たような顔してるけど気のせいかな?)」

 

ふと、ペコリーヌが気になるカスミであったが、それは一旦置いておくことにした。 今はギルド活動が最優先だ。


 

時間は過ぎて、空は暗くなろうとしている時間だった。 今日も無事に活動を終えることが出来た騎士は、宿屋に戻ってペコリーヌとコッコロに合流していた。 今夜は久しぶりの【美食殿】での食事なので、ペコリーヌは傍から見ても分かるほど喜んでいる分かる。食事場所はすでにペコリーヌが決めているらしく、現在は3人でそこに向かっている最中である。

 

「なぁペコ? 今日は何を食べる予定なんだ?」

 

騎士は今日の夕食について、先頭を歩くペコリーヌに聞いてみた。

 

「今日はですね、初めてランドソルに来た際に行った場所へ行きます。騎士くんは覚えてないかもしれませんが。」

 

「あぁ、あの飲食店でございますね? でも、あのお店は他所よりも金額がお高かったような… わたくし、持ち合わせ少ないのですがよろしいのですか?」

 

「はい! 今日はコッコロちゃんと騎士くんへ、日ごろの感謝ということで私が払いますので安心してください! ヤバいですね☆」

 

どうやら今夜の夕食はペコリーヌが奢ってくれるようだ。 最近はお店の繁盛で賃金が増え、けれど繁盛のせいで休みが無い… という感じで、結果的にペコリーヌにはそれなりの余裕が出来ていた。 ペコリーヌいわく「今夜だけなら問題ナシ!」とのこと、懐事情にはそれなりの自信があるらしい。

 

そのまま歩き続けていると、あるお店の前でペコリーヌは足を止めた。どうやら目的のお店に着いたようだ。

 

「はい騎士くん! このお店がこれから食事するお店です。ちょっと金額は高いですが美味しいお店なんですよ! ヤバいですね☆」

 

「へぇ~、ここがそうなんだな。 ん?ここってにちょっと近いかも。」

 

「そうですかね? わたくしには近いとは思えませんが…」

 

「いや、ギルドハウスからではなくてな? 治安維持活動で巡回しているルートに近いんだよ、ここ。」

 

「まぁまぁ、そのお話は一旦あとにしてさっさとお店に入っちゃいましょう!」

 

目的のお店前で会話を始めた騎士とコッコロの間に割り込んだペコリーヌは、二人の背中を押して入店した。 もうすでにペコリーヌは食事を待ち切れなかったようで、お腹ペコペコのペコリーヌのあだ名は伊達ではない。 本来、ペコリーヌは騎士たちをもてなす側だったのにそんな雰囲気はどうやら持ち合わせていないようだ。

 

「ここに訪れたのは久しぶりでございますね、あれからもう1ヶ月以上が経ったなんて早いものですね。」

 

「そうですね。ですが、あの時と違って騎士くんがこうして喋れていますから。」

 

「まったくです、あの時は本当に…――」

 

3人はお店に入り、席に着くと、前回訪れたときのことを思い出して雑談を始めた。騎士は二人の話に割り込んだり、付いていけるはずもなく… 今は他持ち沙汰なので、とりあえずあたりをキョロキョロしていると、店員と思われる人物が自分たちの座席に向かって来るのが見えた。 だが、騎士にはその人物になんだか見覚えがあった。

 

「ご注文を伺いに来ましたって⁈ えぇ!なんで騎士がここに居るんだ⁉」

 

「いや、むしろこっちが聞きたいわ。 マコトはここの店員なのか?」

 

見覚えのある人物が来たと思えば、療養中で実家に戻っているはずのマコトであった。 慣れた動きで溶け込んでいたので少し気づくのに遅れてしまった程なので、働き始めたの最近ではないようだ。

 

「おや、この店員さんは主さまのお知り合いでございますか?」

 

「このお店に騎士くんの知り合いがいたとは…、ヤバいですね☆ もしかすると、なにかしらの融通が利くかも~。」

 

騎士と店員の女性がどうやら知り合いだったことを知るコッコロとペコリーヌ。ペコリーヌのほうは、とっさに知り合い特典を期待し始めていた。

 

「こいつは【自警団(カォン)】メンバーのマコトだ。お前は自宅で療養してるってマホたちに聞いていたけど…」

 

「それはそうなんだけどよ… なぁ?ところでこっちのお嬢さんたちは騎士の友人か?」

 

「ギルドメンバーだよ。」

 

「おいおい、お前ギルド入ってたのかよ。」

 

騎士がすでにギルドへ加入していたことを聞いたマコトは、昼間のカスミ同様に驚いていたが今は接客中の身であるので深く聞くことはなかった。

 

「あ~、さっきもコイツが言ってたけどあたしの名前はマコトだ。今は家の手伝いの最中でな、こうして接客してるんだよ。」

 

「ここって、あなたのご実家だったんですね。私はペコリーヌって言います、【美食殿】のギルドマスターをやってます。」

 

「わたくしは主さまの騎士さまにお仕えしております、コッコロです。どうかお見知りおきを。」

 

マコトの自己紹介に合わせてペコリーヌとコッコロも自己紹介で返す。

 

「そっか、仲間であたしの店に来てくれたんだな。 これも何かの縁だ、2、3品くらいサービスしてやるよ。」

 

「わ~い! ありがとうマコトさん! さっそく注文良いですか?」

 

「ありがとうございます、マコトさま。」

 

「じゃあ、俺も頼もうかな~。」

 

「おうさ、じゃんじゃん食べてってくれよな!」

 

どうやらマコトがサービスをしてくれるようで、ペコリーヌのテンションはさらに上がった。さっそくメニュー表を開いてマコトに注文をしている、値段などはいっさい気にせずに食べたいと思ったものを片っ端から頼み始めている。予想以上の注文の多さに少し困った表情を浮かべていたマコトに気付いたコッコロ、自分と騎士の注文は落ち着いてからにしようと心の中で決めたのであった。

一方、コッコロから待ての指示を受けてしまった騎士はペコリーヌの注文した料理をいくつか取ってやろうと考えてた、なんせ自分が注文できなくなった原因はペコリーヌなのだから。


 

頼んだ料理たちを待っている間、ペコリーヌたちは話をしながら時間を潰していると近くの座席からある話が耳に入る。 なんだか「怪盗が出る」やら「ファントムキャットが~」などの単語が聞き取れた。

 

「他のお客さん、『ファントムキャット』の話してますね。 昨夜に現れたって話を今朝のお客さんから聞きましたけど、やっぱり有名人なんですね。」

 

「そのようです、今日はどこも『ファントムキャッツ』の話題を耳にしますね。」

 

「???」

 

ペコリーヌたちも『ファントムキャッツ』の話を持ち出すが、騎士は全く分かっていなかったようで、そんな様子を察したペコリーヌが補足に入る。

 

「あの『ファントムキャッツ』っていうのは怪盗と呼ばれる人物で、その人物が昨夜にとある商会の金品を盗んだって話です。」

 

「盗んだって… それって悪い奴じゃないか。」

 

「確かに主さまのおしゃる通りでございます。ですがそのお方は『義賊』と言われ、乞食(民草)から慕われる存在らしいですよ。」

 

「そうなんです、そのファントムキャットさんは盗んだ品々は貧しい人に分け与えているそうで、盗み入る場所も悪徳業者や非合法なお店だけらしいですよ。なんだかヤバいですね☆」

 

ペコリーヌとコッコロから『ファントムキャッツ』について色々と聞いた騎士だが、盗みを働く存在が人気になっている理由がいまいちわからなかった。 だって騎士はコッコロとペコリーヌに「盗むことは悪いことでダメなことである」と教えられたのだから。

 

「でも、騎士くんの言う通りでどんな理由があろうとなかろうと盗みを働くことは悪いことですから、真似しないでくださいよ?」

 

「そのくらい分かってるよ。」

 

一応、ペコリーヌから釘を刺されたが騎士は特に真似しようだなんて露ほどにも思ってない。

 

「盗人の情けに期待する人たちがいることに、わたくしはどうかと思いますね。それってただの『イタチごっこ』になりませんか?」

 

「ん? どうして『イタチごっこ』なんですか?」

 

「それはですね、私が思うに――…」

 

コッコロが何故『イタチごっこ』と思った理由は、まず盗まれる側の悪徳者と盗む側の義賊そして悪徳者の被害に遭う人たち、これらの三角関係から来ている。 悪徳者が騙し、巻き上げた金品は義賊である『ファントムキャット』が盗み、騙された人々に還元するという流れが悪いとコッコロは考えていた。

 

なんせ最高の保険(ファントムキャッツ)がいるのだから、対策などしなくても「彼の存在が自分たちを守ってくれる」と思っている人々がそれなりには居るのだろう、だから搾取する側とされる側が今だ多い。

コッコロの考えを簡潔に言ってしまうと――

 

過剰な保険(義賊風情)がいる限り人々は自立しないですし、成長の妨げになるだけだと… わたくしはそう思いますね。」

 

「こ、コッコロちゃんは騙す側だけでなく義賊(守る側)も悪いと思うんですか?」

 

「はい、そうです。まぁ、わたくしにとっては騙される方もそうですがね。」

 

店内の雰囲気がガラッと変わるのを感じる、周りの客もコッコロとペコリーヌの会話に耳を傾け始めていた。なお騎士は内容に付いていけず、ボーっとしていた。

そんな周りを他所に、コッコロは話を続ける。

 

「いいですかペコリーヌさま、この世は弱肉強食が基本なのですよ? 知識量や地位、財産などの在る無しも十分それと同じでしょうが。」

 

「でも! 弱い人はどうするんですか…? 好きで弱いままでいる訳ではないんですよ⁉」

 

「確かに、誰もが搾取される側(弱者)になりたいとは思わないでしょう。なら簡単なことですよ、搾取する側(強者)に回るか、弱者にならない程度に力を付ければよいだけの話です。」

 

「みんながみんな、簡単に強くなれるわけじゃありません! 最初から強い側に立っているコッコロちゃんは分からないからそんなこと――っ⁉」 

 

コッコロに投げられた言葉に思わず声を大きくして反論するペコリーヌだったが、コッコロの眼を見て思わずたじろいでしまう。

普段と何一つ変わらないはずなのに、何故か違うように見える。それは呆れ、期待外れ、落胆といった感情が込められているからだろうか?

ペコリーヌの言葉の続きを待たずにコッコロは口を開く。

 

「では、ペコリーヌさまは最初から弱い側に立っていたのですか?」

 

本当の自分に気付かれていると思ってしまったペコリーヌは、心臓を締め付けられるような感覚に陥った。

 

「はいよ! こいつらが注文の品だ。料理が来るまで話しながら待つのはオッケーなんだが、もうちょっと明るい話題にしてくれ…」

 

ペコリーヌとコッコロの間に割り込むようにして、料理を運んできたマコトがやって来た。 だんだんヒートアップしている状況を見ていた周囲の客たちは、心の中でマコトへの称賛を送る。 さすがは、面倒見がよくて親友の恋路を応援する正義の女の子だ! 頼りになるな!

 

「なぁ、マコトは弱い人はどう思う? 悪い良いどっち?」

 

騎士からいきなり話を振られたマコトは少し驚いたが、テーブルに料理を並べる手を動かしながらも考える素振りを見せた。

 

「う~ん、悪いとかそういうのは考えたことねぇから… あたしは『守ってやらないと』って思うかな?」

 

「それはずっとか?」

 

「それはないな、それじゃあ守るやつの為にはならねぇよ。」

 

2つ目の質問に答えたマコトは考えることもなく、騎士へ即答した。マコトにとって誰か守ることは『手助け』の延長であって『保護』ではないのだ。

 

「マコトさまはしっかりとした考えをお持ちのようですね。 いいですかペコリーヌさま? 弱者をただ守る、救うだけではいけないのです。成長を促せなければ何の意味がないのですよ。それは強者による自己満足…自慰行為の一種のようなものですから。」

 

「コッコロちゃん… そんな考え方もあったんですね、少し勉強になりました。」

 

「じ、自慰行為って… 女の子がそんな言葉使うなよ///」

 

どうやらこの話に一旦の区切りがついたようだ、ひと悶着も無く?無事に終わって何よりである。マコトはなぜか恥ずかしがって顔を赤くしているが…

 

「なぁ、早くごはん食べていい? 腹減ってるんだけど?」

 

騎士も話の区切りを感じ取ったのだろう、みんなに空腹を訴えていた。目の前に料理を置かれても一人で食べ始めないのはコッコロとペコリーヌの教育(しつけ)のおかげだろうか?

 

「あ、ごめんなさい騎士くん! なんだか空気悪くしちゃってごめんなさい。 料理も来たことですし、いっぱい食べちゃいましょう! それでは!」

 

「「「いただきます!」」」

 

「(ペコはいつも通りに戻ったかな?)」

 

先ほどまでの雰囲気が無くなったことを知ったのか、周囲の客も普段どおりに戻っている。再び、にぎやかな話声が聞こえてくる。

騎士は食事をしながらペコリーヌの顔をちらりと見た。「ペコリーヌにしんみりした表情は似合わないな」と感じる騎士でだった。

 




やめて! 騎士くんの身体能力でファントムキャッツが負けてしまったら、闇のゲームでファントムキャッツと繋がりがある猫獣人の少女の精神までも負けちゃう!

お願い、死なないでファントムキャット!

あんたが今ここで倒れたら、野良猫たちや住民たちとの約束はどうなっちゃうの?

ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、騎士くんに勝てるんだから!


次回「タマキ死す」 ――これはキミと繋がる物語――
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