「ういーす、お待たしー。 ハイ、なんか肉系のバリクソ辛いやつ、あとなんか野菜めの変な汁」
「あぁ? こんなの俺、頼んだか?」
ここはランドソル城下街の中心から離れに位置する、『貧民街』や『スラム街』などと言われる中にある小さな酒場
荒くれ者たちの溜まり場として利用される『暴れる仔ヤギ亭』
酔った人たちの豪快な怒号や歓声、たまに絶叫も飛び交うその店には場違いな少女がひとり、愛想もなく淡々と給仕をしていた
「おいクロエ、おめぇメニュー間違ってんじゃねぇか?」
「ない。たぶん」
いちゃもんを付けてくる客をスルーする少女、作られたのを持って来てるだけだから文句は調理担当に行ってもらいたいところ
「クロエ! こっちァ酒の追加だァー! 酒持ってこぉーい!」
泥酔とはいかないが、ちょっと手前まで来てる客が給仕をしている少女――クロエを呼んで酒の追加を頼んでいる
「え、ちょー、待ってよ。ソレもう5杯目だけど大丈夫なの?」
「ケッ… 何言ってるんだぁ? てめぇみたいなガキに心配されるほどヤワじゃねぇんだよ。 さっさと酒だ酒!」
「や、あんたの肝臓とかどーでもいンだけどさ… 金よ金、金の話」
クロエは客を心配してるわけでなく、この酔っ払いが飲み食い分の金を持っているかどうかの問題だ。 この酔っ払い程度なら食い逃げしてもとっ捕まえる自信があるが、捕まえたところで金がなきゃ意味がないのだ。
金が払われないのなら自分に支払われる賃金に影響するのだ。
「ここの店長頭おかしいから、客が飲み代払わないと店員の監督不行き届きとかゆって、謎にうちが怒られるんだよねー。 マジ勘弁っすわ」
「聞こえてんぞクロエぇ! 誰の頭がおかしいだとぉ⁉ てめぇ、バイト代10割カットすんぞ、この野郎!」
ここ店長の愚痴を言っていると奥のほうから店長の怒鳴り声が飛んできた。 店内はならず者たちでうるさいというのに、何故か聞かれてしまっていた。
クロエは店長の謎の聴力に心の中で悪態突くしかなかった
「はぁ… ソレただの賃金不払いだし…」
「おめぇ、働いてること内緒なんだろ? だからこんな場末なロクデナシ共が集まるような店で働いてるんだもんなぁ?」
「あーハイそっすねぇー、働かせてもらって感謝してまーす」
いつものやり取りだ、クロエはもうこんなことに慣れている。いや、慣れてしまったというべきか…
「おいおい店長、ロクデナシってひどすぎるぜ⁉ 俺たちゲームで遊んでるだけだよなぁ?」
ある一人の男が店長の言葉に反論し、周りもその言葉に続けていく
「そうそう! 無邪気に遊んでるだけよ、娯楽をするには金が掛かるのは当たり前だもんなぁ」
「まぁ? 店を出た後に、急に気前が良くなって、勝者に祝儀をあげたりすることがあるかもなぁ」
「(はぁ……聞こえてない、聞こえてない)」
クロエは男たちの盛り上がりを無視しながら、いつもどおりに給仕を続けるのであった
「やべぇ… 体中のあちこちが痛いわ… 足が重てぇ」
ファントムキャッツとの戦いのあと、騎士は帰路に立っていたが、いかんせん体力を消耗し過ぎた。さらに1時間も追いかけっこしていたのだ、気づいた頃には見知らぬ土地。
――いわゆる迷子、というのになってしまっていた
見回す限り、ここは騎士とコッコロが活動拠点としている場所でもなく、サレンディア救護院がある場所や
「こいつ、こんなの持ちながら戦ってたのか… 本気で来られたら死んでたな、俺」
騎士は
ファントムキャッツは盗んだ多くの金品を運びながら騎士から逃げ、しかも戦っていたのだ。もし、本気の状態で戦っていたのなら結末は逆転していただろう
「それにしても、ここ何処だ…? 方向さえ分かればなんとかなりそうなんだが…」
迷子の迷子の騎士くん、ここには助けてくれる都合のいい犬のお巡りさんなどいない、話しかけてくるのはだいたいチンピラや貧民の物乞い程度だろう。そんな中、ファントムキャッツを起こすか、どこか人の集まっているところへ行くか悩んでいた
「おい、お前。まさかだと思うが、道に迷ってるんじゃないかにゃ?」
「⁉」
担いでいる(引きずっていたけど担ぎなおした)ファントムキャッツから声を掛けられ、驚く騎士。 思わず反射的に地面に叩きつけようとしていたが――
「待つにゃ⁈ あたしの話を聞くにゃ!」
ファントムキャッツから制止の訴えをされて、騎士は手を止めた。 どうしてだか、ファントムキャッツから敵意は微塵も感じられなかったからだ
「お前って見た目のわりに物騒なヤツだにゃ、女の子を雑に扱うと嫌われるにゃ…って待つにゃ!話はこれからだにゃ!」
何も言わずに動き始めた騎士に再び訴えるファントムキャッツ、さすがに空気が読めていなかったファントムキャッツが悪そうだ
「とりあえず降ろしてくれにゃ。お前、私を運んだまま動き続けると死ぬぞ?」
「お前を降ろしたら何されるかわからん。逃げるかもしれないし、俺を殺す可能性だってある、馬鹿か?」
「あたしよりバカっぽいお前には言われたくないにゃ。あたしはお前と話がしたいんだにゃ、だから逃げないし殺しもしない」
続けて「なんなら腕を縛ってくれても構わない」と言うが、騎士は彼女の言葉を信じて降ろしてあげたのだ。降ろされた側は『ぽかーん』とういうような表情を浮かべている
「言った私が言うのはアレだが、馬鹿なのかお人好しなのか分からないにゃ… まぁこっちにとっては有難い話なんだがにゃ」
「うるせぇよ。で、話ってなんだ?」
「気が変わった。まずお前の手当てが先にゃ、どこか酒のある場所に行くにゃ」
「ん? 何故、酒なんだ?」
「傷の消毒をするためにゃ、行くなら飲食系の方が良いだろう…あそこなら水とかもたぶん揃ってるにゃ」
ファントムキャッツは自身の話を後回しにして、騎士の手当てを優先するそうで、騎士を先導するように前を歩き始めた。さきほどの戦闘では騎士が勝ったというのに敗者側である彼女のほうがピンピンしている
「なんで、俺を助けようとする? 先ほどまで戦ってた相手だぞ? しかもお前を殺そうとしていた相手だ」
「なんでって言われても… あたしは曲がりなりにも弱者と言われる人たちのために悪と戦っているにゃ。それでお前は悪じゃない、そう思ったからにゃ、ただそれだけにゃ」
「…お前も十分にお人好しだな」
「そうにゃ、あたしはお人好しの大怪盗『ファントムキャッツ』だにゃ!」
元敵同士の二人は話しながら、ファントムキャッツの先導のもと進み続ける。 彼女いわく、騎士たちが居る場所は『貧民街』と呼ばれる区域らしい。 ここにはならず者や犯罪者などがわんさか居ることもあり、治安は非常によろしくないとのこと。また、何らか事情でここに住むことになった人たちもいるので、その人たちを庇護するためファントムキャッツは義賊として悪人を懲らしめているらしい。
ちなみに悪人から金品を盗む理由は「悪い人と同じ手口で痛い目合わせる方が、あいつら悔しがるだろうなぁと思ったからにゃ」だそう
そして騎士たちは大人数の声が聞こえてくる、とある居酒屋の前に着いた。ここらへんは明かりが少ないせいか、夜だとかなり目立っている、それに人の声が非常にうるさい
「人の数が多いということは、その分在庫の数も十分あると見える… とりあえずここでいいにゃ、さっさと行くにゃ」
「元気だなぁ、お前…」
ファントムキャッツは騎士の手を取って、にぎやかな店の中へ入って行った
場所は戻って、クロエが働いている『暴れる仔ヤギ亭』。酔っ払い共の声が店中に響き渡っている、きっと店外にもこのうるささが漏れているだろう
「そうとも、俺たちがやっているのはただのゲームだ。 つまりだ、負けたってべつに払う義務はねぇってこと」
「おいてめぇ、まさかだと思うがよ。 …今の負け分、払わねぇつもりじゃあねえだろうなぁ?」
「あぁ? 払うって何をだ? これはただのゲームだぜ?」
とある席の客2名がどうやらヒートアップしている。どうやら賭けで負けたのに逃げようとしているようだ、もちろん勝った側はそれを許すはずもなく…
「この野郎…! ぶっ殺してやる!」
両者はつかみ合い、周りを気にしようともせずにそのまま喧嘩に発展してしまった。そして、周囲の客は大盛り上がり! こんな幼稚な理由で喧嘩が始まるのはいつものことで、この店一番の名物である
「あーもう、ここの客はすぐそういう…、あんたらさァ外でやってくれない?」
クロエは退出を促すがヒートアップしている客相手にそんな言葉届くはずもない、また届いても聞く耳持たないが…
客が散らかした後片づけはいつもクロエがやっているのだ、面倒ごとを店内でやられるのは勘弁願いたいのだが、そんなこと誰も気にしていない
「がはは! いいぞ、今夜も盛り上がってきた!」
店主がこうなのだ、誰もこの喧嘩を止めてはくれない
「はァ… うちはこの片付けしないから」
「さぁ、ご来店中のクソ共! 本日のメインイベント、勝つのはどっちだ⁉ 1口10000ルピから、それ張った張ったァー!」
店長の言葉に食いつく客たち。各々が自分の金を取り出し、勝つ側のテーブルに掛け金を置いて行く
そんな場違いな雰囲気になってきたクロエは、一度距離を置いてため息をついていた
「ぷー… 登場人物全員アタオカ。ほんと、しょーもない店…そのくせ客だけは次から次から――ハイ、らっしゃーせー」
愚痴をこぼしていると、言ったそばから新しい客がやってくるのだが…
「こんばんわにゃ、大分にぎやかだけど席空いてるかにゃ?」
「えっとー… 見ての通り、いま絶賛取り込み中なんですけど、皿とか瓶とか色々飛んできますけど、それでもいいなら案内しますよ」
「よろしく頼むにゃ、あと度数の高い酒と水を早く持って来てくれると助かるにゃ」
「かしこまー、ではこちらに…ってきゃぁぁああああ⁉」
クロエはさっそく新しく来た客を席に連れて行こうとしたときに、血だるまになっている男を視界に入れてしまい思わず悲鳴を上げてしまった
「あーあ、言いそびれてたにゃ。あたしたち2名だから、よろしくにゃ」
「えっそこ⁉ 驚くのそこに見える⁉ どう考えても血だらけの人が原因でしょ。なにこれ、おかしいのうちだけ? もう嫌だこの仕事、ヤメたい…」
頭のおかしい連中に囲まれてしまったクロエは混乱してしまった。この居酒屋で働き始めてから、自分の常識がどんどん浸食されているように感じ始めていた、クロエは考えるのを止めて、何も考えずに仕事に従事することにした
「さて、気分はどうだにゃ?」
「なんか眠たくなってきたわ…」
「寝るにゃよ~、寝たら多分死ぬにゃ~」
騎士を席に着かせたファントムキャッツは傷口の確認をしながら、騎士の意識を保つために声を掛け続ける。
実は騎士の眠気は死にかけているからではない、なんせいつもならベットでお休みしている時間なのだ。だって赤ちゃんだもん、しょうがないだろ?
「ハイお待ちー、一番強い酒と水でーす」
「助かるにゃ、出来ればだけど綺麗な布とか無いかにゃ?」
「それはないですね、すいませんッス」
「ならいいにゃ、ありがとにゃ」
クロエに頼みの品を渡されたファントムキャッツはさっそく騎士の手当てを始めた、初めは刺さったままのナイフたちから抜いていく
「ほんとに死んでないのが不思議だにゃ…、むしろわざと刺されにいってないかにゃ?」
「そうでなきゃ勝ち目がなかったからな、そっちから距離を詰める機会を貰わないと嬲られるだけだった」
「普通は考えても実行はしないにゃ、やっぱりバカだにゃ。 …ほ~れ、ちょっと染みるけど我慢だにゃ~」
話をしながらだが、手当の動作は丁寧だ。慎重にナイフを抜いていき、水で傷口の汚れを洗い落とす。その後に酒を口に含んで傷口めがけて霧状に吹きかけた、本来なら最後に布を当てたいところだが、無いものねだりをしていてはしょうがない、素直に諦めることにした
「あの~、ちょっち口挟んでも?」
傷の手当を眺めていたクロエが会話に加わろうとしていた。ファントムキャッツは手当の手を止めず、頷いた
「このにーちゃんの傷ってどうしたんです? まさか、ここに来るまでに誰かに襲われたとか? うち、もうそろ帰るんッスけど心配なんですよね」
「そのことなら心配無用にゃ、これはあたしのやった傷跡にゃ」
いきなりカミングアウト、しかしクロエはまだ言葉の意味を理解するのに時間が遅れていた
「ここまで来るまで人に会わなかったよな?」
「そうだにゃ、ということで帰り路は安心するんだにゃ」
「ちょいちょい え、待って、もしかして、もしかするかもだけど、ここに加害者と被害者揃ってない? なんなら殺し損ねたみたいなケガしてるけど… なんでこんな通常営業できるのさ」
クロエにとって二人の会話は驚きそのものであった、これなら「外で襲われたんだよね~」みたいな返答のほうがよかった。加害者と被害者が一緒に居て、さらに手当てもしているってのはどういうプレイだよと、クロエはツッコミたい衝動に襲われるがグッと抑えて接客を再開させる
「ぷー… そーいえば、何か頼みます? うち、これでも居酒屋なんで食うもの飲むもの、ある程度はありますよ」
「なら身体に良さそうなヤツ、なんかないか? これでも死にかけなんだ」
「いや、これでもって言われても見ても分かるし。むしろどれだったら死にかけなんだか教えて欲しいわ、なんなら刃物でハリネズミ状態とか死んでない方がおかしいし」
さっそく騎士のボケ(本人自覚無し)に対して、クロエのツッコミが刺さった
「良いツッコミだにゃー。じゃあ、あたしも同じものをにゃ、今日はさんざんだったからにゃ~」
「おい加害者。 なんで今日一日お仕事がんばりましたってリアクションしてるの? ねぇこの流れワザとだよね、ね?」
もちろんファントムキャッツのボケもクロエは逃すことなく、丁寧にツッコミを入れた。この流れがいつまでも続きそうに感じたため、クロエはツッコミを一度中断して、とりあえず頼まれた品を持ってくることにした
「ああクソッ! どいつもこいつも俺をバカにしやがって!」
「なんか、しょーもなさそうな客が荒れてるにゃ」
「ここは賑やかな店だな、よく行くようなところとは全然ちがうや」
おそらく賭けで負けたであろう客がキレている様子。 そんな荒れた客と騒いでいる客たちのことをボケーと眺めながら、加害者&被害者コンビが場違いのように、のほほんとしていると
「おう? なんだァ、ねぇちゃん何見てんだァ? 俺が大負けしたのがそんなに面白ぇのか、あぁッ⁉」
荒れた客とファントムキャッツが目を合わせてしまったようだ。案の定、こっちに寄ってきて絡んできた、しかも酒がかなり入っている様子だった
「なんだにゃ、負けた腹いせに八つ当たりかにゃ? はぁ見た目通りのしょーもない奴だにゃ」
ノータイムで煽るファントムキャッツ、どうやらスルーする気はないらしい。 彼女の今日の成績は1戦1敗、理由はどうあれ、負けて終わるのは大っ嫌いなのである
「うるせぇ、なめんじゃねぇ!」
荒れた客はテーブルにある酒瓶めがけて、腕を横に振ってテーブルから弾き飛ばす。飛んだ方向はファントムキャッツが座る方向だったが、彼女は平然とした様子で飛んできた酒瓶をキャッチした、お返しにドヤ顔を飛ばす
あまりにもカッコ悪かったのでさきほど同様に水が入った瓶を騎士方向へ飛ばしたが、こっちも同じ結果だった。こちらに視線を向けていた客たちが喧嘩に発展することを期待しているのかヤジが飛んでくる
「お待ちどー、健康第一の『黒き森のエーテル』。って言いたいところだけど騒ぎ増やすの止めてくれませんかねぇ、片付けするのうちなんですわ、マジで」
「よう、店員のねぇちゃん。 この店ァ、どうなってんだァ? どう落とし前付けてくれるんだよ、あぁ⁉」
「落とし前も何も、勝手にイキって空回りしただけじゃないっすか」
今のところカッコいいとこなしの客がとうとう店員にまで絡み始めていた。気分がスカッとすればそれでいいのだろう、だから見た目が自分より弱そうなクロエに矛先が向いたのだ。
「良い度胸じゃねぇか、…ならお望み通りッ! おらァ‼」
客が突如、クロエに殴りかかる。クロエはいきなりのことで思わず目を瞑ってしまったが――
「か弱い女の子相手に、いきなり殴りかかるのってカッコ悪いと思わないかにゃ?」
――ファントムキャッツが荒れた客の腕を掴んでいた、声はチャラけているが目はそうではなかった
「なんだよ、その目は… 俺は地元じゃ負け知らずの最強戦士、またの名を剛腕の――…」
「うるさいにゃ」
「なっ、消えッ⁉――」
ファントムキャッツは素早く体勢を低くし、相手の胸を狙って後ろ蹴り――海老蹴りを叩き込んだ。結果、名乗りを上げている最中だった客は店内をくの字で飛んでいき、そのまま出口へ飛んで行ってしまった。 周囲の人々はそんな姿を店から出ていくまで、ただ静かに見ていることしかできなかった
「ふー、さっぱりしたにゃ」
「お疲れ、お前格闘も出来るんだな」
「当たり前にゃ、最後に信じられるのはあたしの体だからにゃ」
客を店外にふっとばしたファントムキャッツはおでこの汗をぬぐう仕草をしながら席に戻り、騎士との雑談を始めた。 静かにしていた周囲の客たちは黙って自分の席に戻っていく、…どうやら彼女たちに関わることをやめたらしい
「あ、あの…さっきはありがと、おかげで助かった。はいこれ、ご注文の品」
「気にするにゃ。あいつを挑発したのはあたしだから、ただ尻拭いしただけにゃ」
クロエが助けたお礼を伝えるが、ファントムキャッツは先ほどの件は気にしていないようで、渡された飲み物を受け取る
「何だこれ?」「なにこれにゃ?」
「『黒き森のエーテル』うちらエルフ氏族に伝わる…、まーなんだ…、ハーブドリンク?」
スムージードリンク?のような飲み物を受け取った騎士とファントムキャッツが尋ねると、『ハーブドリンク』についてクロエが説明を始めた
「つっても、すでに終わってンだけどね、その氏族… 聞いた話、昔棲んでた森がガチめの災害で無くなって?みんなあちこち散り散りンなちゃったんだって――…」
このハーブドリンクはクロエの母親が昔から作ってくれていたふるさとの味というものらしい。そのふるさとはクロエが生まれるもっと前から無くなってしまったらしいが…
「苦ッ⁈」「苦いにゃッ⁉」
「そりゃそうだ、それを美味しいっつって飲む奴はそうとう味覚がイカレてるね」
ドリンクを一口のんだ二人はあまりの苦さに吹き出しそうになった。なんとなく身体に良いって感じはするが、飲めなきゃ意味がない。ファントムキャッツはこのドリンクの考案者に飲ませる気があるのか問い詰めたくなった
――一方、騎士は苦さを我慢しながらも一気に飲み干した。ペコリーヌの「出された食べ物は残さず食べる」という教えが、騎士の中でしっかりと生きていた
「や、やるにゃ~… ほらっ、私の分もやるにゃ」
「あんまり無理すんなよ、ただえさえ見た目重症なのに…」
「…ふぅ、ごちそうさま」
「ハイ、お粗末さまでしたっと」
二人分のハーブドリンクを一気に飲み干した騎士をクロエは心配しながらも空いたグラスを下げ、厨房へと戻って行った。そんな後ろ姿を見送ったファントムキャッツは話を切り出す
「さて、ここから本題にゃ… お前、あたしと組む気はないかにゃ?」
――まさかのファントムキャッツからのお誘いだった
ほんとは、ここでなかよし部を出す予定なかったけど出しちゃった。まぁ、ストーリー進行に影響ないからいいか