プリンセスコネクト! Re:Birth   作:UNAG3

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とりあえず原作1章、2章は終わりました。

思ったより何倍も時間かかりましたよ…、毎日お休みだったら楽なのになぁ~


第20話

あれから数時間が経ち、もう外は暗くなっている。ペコリーヌ、コッコロ、騎士そしてスズメはあの騒動についてマコトから事の顛末を聞くため、マコトに連れられて【自警団(カォン)】のギルドハウスに訪れていた。

 

マコトから今回についての話はマホ、スズメ、【美食殿】3人がすでに聞き終えていた。ムイミという少女、それを狙う二つの勢力についてはある程度は共有できただろう。語り手のマコトは説明を終えるとすぐにオクトーの元へすっ飛んで行った。

 

結果として今回の出来事はマコトたち――【自警団(カォン)】は何かしらの片棒を担がされたという見解でいったん話は終わった。

 

「ミラクルマホりん、くるりんぱ~っ♪ これでええやろうか?」

 

マホの回復魔法が全員に掛けられ、破れたりほつれたりしていた衣服の修繕がされていく。マホの回復魔法は傷だけではなく、衣服の回復すら出来るらしい。傷自体はコッコロによる回復魔法で治しているが、衣服まで治せないので、身だしなみを気にする年頃の少女としてマホの気遣いは大変ありがたかった。

 

「ありがとうございます、マホさん」

 

「お礼なんて良ぇんよ、ペコリーヌはん」

 

「おぉ…、服が元通りに、って言うよりも新品同然になってません?」

 

「はい、わたくしもそのように感じますね…。傷と衣服の回復が同時に出来る魔法ですか…」

 

マホの魔法で新品同然になった衣服を見回すスズメとコッコロは不思議そうにしてる

 

「うち、生き物より服の修繕のほうが得意なんどす。ついでやさかい、ちゃっちゃと直したんよ。余計なお世話やったら堪忍しとおくれやす♪」

 

「いえいえ、助かります~。このままボロボロの姿をお嬢様に見られれば心配かけちゃいますから、ありがとうございますっ♪」

 

「本当に助かりましたよ、ヤバいですね☆」

 

「ありがとうございます、マホさま」

 

マホに感謝を告げる3人だったが、感謝されているマホの表情は少し困ったような感じだ。

 

「や~、なんだかマコトはんが迷惑かけてしもたらしいし。えろう怖かったんちゃう?」

 

「ですけど、あんな出来事があったのに死人どころか大きな怪我人すらがでてないのがすごいとしか…」

 

いきなり、あんな大爆発に巻き込まれたりなんやりしていたけども、スズメはあまり怖いという感情はなかったらしい。

 

「あの馬車に乗ってたムイミ?ノウェム?ちゃんは【ラビリンス】っていう組織に着いて行ってしまいましたけど」

 

「そのことなら、うちも情報収集として部下を放っとるんよ。とりあえず追跡もさせてるんやけど、秘密結社というだけあって影を掴むことすら正直なところ難しいなぁ…」

 

秘密結社【ラビリンス】とムイミを追うためにマホは部下を放っているが、逃げ隠れがかなり上手らしく犬獣人の嗅覚すらごまかすほどの徹底ぶりに苦戦しているらしく、現状の進捗は芳しくないのこと。

 

「何や、わけわからない感じやけども、うちらのせいで面倒なことに巻き込んでしもうたんどす。できるかぎり力添えするわぁ」

 

「お心遣い、痛み入ります。ところでスズメさまの依頼はどうしましょうか?」

 

「そういえばそうでしたね、ですが馬車は木っ端みじんに消えちゃいましたけど…」

 

スズメの依頼のことをすっかり忘れていた様子のペコリーヌ。馬車は無くなり、今はもう夜、これから馬車の手配をしてから目的地に移動するにしても到着は朝になりそうだ。

 

「あ、それなら【自警団(カォン)】の方々が代わりに準備してくれるようでして、また日を改めてから出発しましょう」

 

「今日はもう遅いから、今晩はうちで泊まっとおくれやす。もちろん代金は要りまへん、むしろ賠償金を払う立場やさかい、せめて荷物の代金だけでも【自警団(カォン)】で支払わせとくれやす」

 

「いえいえ、運んでいたのは荷物を入れるための空箱ですからお気になさらず」

 

スズメはマホの提案を丁寧に断った、すでに代わりの馬車を用意してくれるということがあったのでスズメはそれで十分とのこと、もしこれが主人であるサレンならきっと違っていただろう。

 

「マコトはんも騒動の犯人であるオクトーはんってひとを問い詰めたりしていそがしいさかい。もろもろ済むまでうちが王子はんたちのお相手すんで♪」

 

「「……王子はん?」」

 

聞きなれない単語に首をかしげるペコリーヌとコッコロ、「あちゃ~」と言いたげなそうなスズメ。

 

「そのひと…、うちの王子はんどす♪」

 

マホが騎士に指を指して「王子はん」と呼んでいる。

 

「えっと~…、騎士くんのことでしょうか?」

 

「そのひとは運命的に巡りおうた。うちの王子はんどすえ♪」

 

照れた表情をしながらペコリーヌの疑問に答えたマホ、そんなマホを見たペコリーヌは即座に騎士へ視線を向け、睨み付ける。しかし、いきなり睨み付けられた騎士は何故ペコリーヌがそんなことをしているか全く理解していない様子、案の定キョトンとしている。

 

そんなことをしていると玄関から扉の開閉を知らせるベルの鳴り声が聞こえてくる。

 

「ハイタ~イ、ただいまっ☆ パトロールついでに、頼まれた馬車の手配とかしてきたさ~♪」

 

「あぁ、カオリはんお帰りやす~。お疲れさんやね、座って休んでおくれやす。」

 

「疲れてないから大丈夫さ~私は元気いっぱいよ~!」

 

ギルドハウスにカオリがパトロールとついでのおつかいから帰ってきたようだ。すでに日は暮れて夜だというのに元気いっぱいの様子だった。

 

「お~、騎士がいる!あとお客さんもいるのか? 遊びに来たなら大歓迎よ~」

 

「ようカオリ、相変わらず元気だな」

 

「うんうん、元気だけが取り柄さ~!」

 

気さくに挨拶を交わすカオリと騎士を見てペコリーヌとスズメは少しだけムスッとした態度になりかけている。何故かというと、騎士の周りには女性が多くなってきている気がするからだ、しかもほとんどが騎士に対して好意的である。マホなんてなんでそうなったか詳しく聞きたいくらいまである。

 

「マコトの代わりにパトロールして、町をたくさん走ったせいですごく腹ペコさ~♪ 厨房でお菓子作るけど、お客さんたちはたべるさ~?」

 

「わたくしは小食なので大丈夫ですけど、ペコリーヌさまは…」

 

コッコロの横から空腹の合図かのような音が響き始めたので、ついコッコロは反射的にペコリーヌに振り返ってしまう。

 

「……お昼から何も食べてないので、大変助かります」

 

さっきまで恋敵を見るかのような視線をカオリに向けていたペコリーヌ、空腹を前にしてはあっさり陥落するしかなかった。腹が減っては戦はできない、ペコリーヌにおいて恋愛も含まれるそうで…

 

「あっ、よかったら手伝いましょうか?」

 

「ううん、お客さんは休んでてほしいさ~♪ 材料があればもっとご馳走作れるけど~」

 

「せやったらマコトはんに頼んでみて、帰りに買ぉてきてくれるようにしましょか?」

 

マホはマコトに料理の材料買い出しを頼むために通信魔法を展開する。今回はマコトが取り込み最中なことを考慮して簡単なメッセージだけを送る簡易通信を飛ばそうとするが―――

 

「ほぁ? 何やろ、手ごたえがないというか途切れたというか…、どうも妨害された感じやわぁ…?」

 

「ん~? マホが魔法しくじるのは珍しいさ~?」

 

「あのう…、どうかしましたか?」

 

マコトへ通信魔法を使ったはずのマホは、小さく唸りながら何か考え込む仕草を始めた。そんなマホに疑問を持つカオリとスズメが声を掛けて不思議がるのだが…

 

「気のせいなら良いんやけど。カオリはん、帰ってくるまでになにか不審なこととかあらへんかった?」

 

「うん? 特にそんなことなかったけど…。ちょっとだけここら辺の空気が重たかったていうか、動物たちが静かだったというか…、何かあったならもっぺん見回ってくる?」

 

マホの質問の本質に理解してないながらも、カオリは今日思ったこと、感じたことをそのままにしてマホに伝える。 

 

「ううん、その必要はあらへん はぁ~、なんで早ぉ気ぃつかんかったんやろ? 王子はんに会えたせいで気が抜けてたやろか」

 

「どうしたんだ、マホ~?」

 

マホの呟きの意味が分かっていないカオリは不思議そうな目でマホを見ていたが、マホの表情が普段状態ではなく警戒を表すような表情になっていたことに気が付いた。

 

「みなはんはうちの後ろに下がっててや。カオリはんは臨戦態勢になってておくれやす。…どうも物騒なお客はんがお越しになるようやわ」

 

いつもよりワントーン低くなったマホの言葉に、スズメ以外の人たちはギルドハウス外に対して警戒の表情を浮かべるのだった。


 

「ど、どうしたんですか⁉ みんな怖い顔しちゃって…?」

 

「しっ…、静かにしておくれやす。どうも非常事態になったかもしれまへん」

 

いきなり周囲の雰囲気がガラリと変わったことに気付いたスズメは不安の声を上げるがマホにたしなめられる。

 

「お客はんたちには避難してもろたほうがええんやけどなぁ…」

 

「そ、それってまた戦闘に巻き込まれるとか⁉」

 

「どうやらこのギルドハウスは何かしらの集団に囲まれているようです。うかつに動けば狙い撃ちでしょう」

 

コッコロの言葉を聞いたマホは自分でも確かめるために索敵魔法を使用してみるが…、どうやら大当たりのようで、ギルドハウスは集団に囲まれていたのだった。

 

「あかんなぁ、コッコロはんの言う通り本当に囲まれてはるわぁ」

 

「え、えっ?どういうことです?」

 

「敵襲ってことじゃないですかね? う~ん、それよりもご飯が食べたい…、もうお腹ペコペコですぅ」

 

物騒なことが起こりそうなことに慌てるスズメと物騒なことになることを分かっていても食欲が優先されているペコリーヌであった、ずいぶん対称的なリアクションだ。

 

「うちらはのほほんと平和的な活動をしてんねやけど、一体どこの誰さんやろ……んっ?」

 

マホが微かな音がこちらに近づいてくるの感じ取った。カオリも同様の様子でほぼ同タイミングで音を感知していた。

 

「足音がするさ~! 堂々から真正面からきた! よぉし、迎撃するさ~♪」

 

カオリはうっきうきで音が聞こえる方へ向かっていく。なお、見た目は楽しそうだが目つきは猟犬だ。

 

扉が開かれるのと同時に、カオリの足が上がろうとする。

 

「あの~、失礼ですがお二人が感知していらっしゃるのは、おそらくマコトさまかと…?」


 

「ちょっ、ちょっと待て!あたしだっ、攻撃すんなよ⁉」

 

「お~、マコト? まぎらわしいのさ~、危うく私の餌食さ~」

 

近付いてくる足音の正体は返ってきたマコトだった。コッコロが黙っていたら、おそらくカオリの空手がマコトに炸裂するところだ。同士討ちは何とか避けることが出来た。

 

「あはは…。良かった、敵さんを迎え撃つ準備は万端ってところか?いつもみたいに呑気にしてたら、一網打尽だぜ?」

 

マコトも今の状態に関しては分かっている様子。話し方には『ここを囲っている敵』について分かっているようなニュアンスを感じ取れる。

 

「敵ってのはどこの誰さんどす? うちら、状況が分からへんのやけど?」

 

マホがマコトに置かれた状況と自分たちの敵について聞くと、後ろに居るペコリーヌとスズメが『自分たちも気になる』ような感じでうんうん頷いていた。

 

「ん~…、一から十まで説明する余裕はなさそうだけどな…。とにかく、今回の一件は全面的にあたしのせいだ

! ごめんな! あたしが軽率に動いたせいだよ、申し開きする余地もねぇ」

 

「どういうことなのさ~?」

 

「よぉわからんけど、謝らんといて。うちらは一連托生、ひとりだけに責任をなすりつけたりせぇへんよ」

 

突然頭を下げて謝るマコトを不思議に思うカオリ、そしてマホは状況が見えなくとも誰か一人のせいにはしない。

 

「マコトはんの責任なら、それはみんなの責任どす。せやからみんなで対処しまひょ。できるかぎりで良ぇから事情を教えとおくれやす」

 

「ありがとう…。どうもオクトー先輩の様子がおかしいからよ、ギッタンギッタンにして問い詰めたんだよ。そしたら、今回の一連の騒ぎが見えてきた―――」

 

マコトの話によると、今回の件について依頼者であるオクトーに事情を吐かせるために少しだけ荒い扱いをしたそうで、おかげでムイミという少女を捕獲することが目的だということが分かった。

しかし、オクトーも依頼者が居るらしく、その人物は頭が上がらない存在だという。結果、オクトーもていよく利用されていた。

 

「という訳で、全部誰かが裏から糸を引いてたみたいだな。…あたしたちは今回の黒幕にハメられたんだよ!」

 

苛立ちをぶつけるようにして地面をたたくマコトに対し、まだ状況について飲み込めていないマホたち。

 

「ハメられたっていうのは? 黒幕ってのは一体なんなんや…?」

 

「⁉―――みんな伏せて! 敵が来たさ!」

 

カオリが突如叫び、同時に何かを破砕したような音と衝撃がギルドハウス内に響く。

そして、破砕音、衝撃と同じように破片が飛んできたが、カオリがマホたちの前に出て、守るように飛来物をはじき落とす。

 

「ハァ~イ。呼ばれて飛び出てGood night♪ 夜分遅くに失礼する、歓迎してくれ! お客さまだよっ♪」

 

土埃の中から黒を基調とした衣装をまとった金髪でグラマスおねえさんがウインクをしながら登場してきた。片手にはしっかりと剣が握られていた。


 

「うおぉ⁉ 壁をぶち抜きやがった! 無駄に派手だなぁ⁉」

 

「……あなた、たしか【王宮騎士団(NIGHT MARE)】の?」

 

壁を壊して登場した女性にこの場に居る全員が視線を向ける。その中で、カオリはいつでも命令さえあればOKと言わんばかりの構えを取っており、準備は十分。ずっと話に参加していなかった騎士も立ち上がり、いつでも行けるように剣を握りしめている。

 

「あぁ、礼儀として名乗っておこうか。騎士なんてのは肩書で、別にお上品な作法は学んじゃいないんだけど。冥土の土産だ、ワタシの名前を脳みそに刻んでおけ」

 

女性はいかにも自分が格上かのような振る舞い、態度で自身の名を明かす

 

「我が名は『クリスティーナ・モーガン』栄えある【王宮騎士団(NIGHT MARE)】の強く美しい副団長様だよ」

 

『副団長』という言葉に反応するマホとペコリーヌ、そんなことを一切気にも留めないクリスティーナは言葉を続ける。

 

「今宵は街をうろつく目障りな獣どもを駆逐するために参上してやったよ。さぁ、誰から屠っててほしい?死にかたと順番くらいは選ばせてやるよ! あははは☆」

 

「てめぇ、何なんだ藪から棒に! あたしらを襲撃するとはいい度胸じゃねぇか、戦争するつもりか⁉」

 

宣戦布告、挑発といったクリスティーナの言葉に、食いかかるマコト。カオリも今にも飛び掛かりそうなほどに敵意をあらわにしている。このままではギルドハウス内で戦いが始まってしまいそうだ。

 

「辛抱しとおくれやす。戦ったらあかんえ、相手はんの思う壺どすえ。ほんま、戦争になってしまうよ?」

 

「止めんな、姫さん! 話し合いの余地なんかねぇよ!あいつら揃いも揃って重武装じゃねえか⁉」

 

「マコトのいうとおりさ~、やらなきゃやられるよ?」

 

マコトとカオリが言うこともマホ自身理解していた。ギルドハウスはすでに、クリスティーナ率いる【王宮騎士団(NIGHT MARE)】に囲まれているし、壊された壁付近には重武装で待機している姿が見えている。数で押し込まれる光景が目に浮かんでしまう。

 

「喧嘩なら、買ってやんよ!」

 

「はは、元気がいいな犬っころ。お前から死にたいか?」

 

「あぁ、調子こいてんじゃねぇぞ、コラ! あたしを殺せるもんなら殺してみろよ!」

 

「ちょ⁉ 簡単に挑発に乗らんといておくれやす…。何で、そう血の気がおおいんの?」

 

無理やりマコトの手を引いて、クリスティーナとの距離を離そうとするマホ。状況を把握する前に事を起こしてしまうのは勘弁願いたいのだ。

 

「えぇっと、クリスティーナはん? 【自警団(カォン)】のギルドマスターとしてご用件を伺いします。これは一体どういう了見どす?土足で余所の家に上がり込んで、…ちょっと礼儀知らずとちゃいますか? いくらなんでも王家直属ギルドだからって何でもかんでも許されると思たら、あきまへんえ?」

 

マコトとカスミをなだめているマホも別に怒っていないわけでないのだ、浮かべる表情と言葉遣いは丁寧にしているつもりなのだが、声は真逆になってしまって、途中からドスが効いた口調に変わってしまっている。

 

「ふはは、良い度胸♪ ワタシにおびえず気勢を吐いたことは賞賛に値するが、口の利き方がなっていないな?天に向かって唾を吐く、慮外者が! 我らには国王陛下の後ろ盾が…錦の御旗がある、正義は我ら【王宮騎士団(NIGHT MARE)】にあるわけだっ☆」

 

国王陛下の後ろ盾があって動いているのが一番の問題だ、これが貴族程度の地位相手ならマホにもやりようがある。むしろ、貴族程度ならマホのいる場所に襲撃なんて手段をとるバカは居ないはず。

こうしてド派手に【王宮騎士団(NIGHT MARE)】が動いている現実こそが国そのものが後ろに居る証拠になってしまっている。

 

「無駄だ、姫さん。もう交渉ができる段階じゃねぇ。ハメられたっつったろ? そこのメイドに襲撃したのが問題だったんだ」

 

「ほぇっ? わわ、私のせいなんですか⁉ ごめんなさい!」

 

いきなり話の向き先がやってきたスズメは思わず声を上げる。普段の癖からなのか、とっさに謝罪の言葉も一緒に口から出てしまう。

 

「いいや、あんたのせいじゃない。ただ所属ギルドがまずいんだ」

 

「スズメはんの【サレンディア救護院】は【プリンセスナイト】の傘下ギルド、そこにおる【王宮騎士団(NIGHT MARE)】もおなじくくりなんや。そして、スズメはんが乗っている馬車にうちらが襲撃してしまった…」

 

「で、【自警団(カォン)】は獣人たちの互助組織【動物苑】の傘下ギルド。そして【動物苑】と【プリンセスナイト】は歴史的にも死ぬほど仲が悪い、何度か小競り合いにはなっているらしい」

 

困惑しているスズメに説明をしていくマホとマコト、しかしこんな状況に不慣れなスズメは思うように話の中身が頭に入って行かない。要はキャパシティオーバーになっている。

 

「なるほど、スズメさま…【プリンセスナイト】の構成員にマコトさま率いる【動物苑】の構成員が襲撃したという構図が成り立ちますね」

 

「では、馬車での大爆発の一件は陰謀の一環だったということですか…」

 

マコトはコッコロとペコリーヌの会話を聞いて頷く。騎士とスズメ以外は今回の出来事について理解しているようだ。

 

「【王宮騎士団(NIGHT MARE)】は身内が襲撃された報復っていう名目で、あたしらを攻めてきているわけだ」

 

「そのと~り、おりこうさんだな!抱きしめて、良い子良い子してあげたいよ! まぁ実際、きっかけは何でもよかったんだがな? たまたまオクトーの坊やが良い位置にいたので利用させてもらった♪」

 

クリスティーナが答えを述べた、報酬として今回の出来事について話し始めた。

 

「ワタシは単純に、生ぬるい平和には飽き飽きしているんだ!戦争をおっ始めたかったから、かるく仕組ませてもらったよ? こんな簡単に思いとおりになるのはいささか拍子抜けと言ったところだがな、きっと神さまもこんな日常よりも血と臓物がみたいのさ! これは運命だ、諦めて状況を受け入れろ! ともに楽しく、死闘を繰り広げようじゃないか!」

 

クリスティーナはまるでパーティの主催者、主役のような立ち振る舞いでここにいる人々に言葉を紡ぐ。そして幕を開ける宣言をする。

 

「さぁ【王宮騎士団(NIGHT MARE)】の同胞たちよ、永き泰平で倦み疲れた鬱憤を晴らそう!獣人どもの血で、なみなみと祝杯を満たそう!―――楽しい楽しい宴席の始まりだ! あっはははは☆」


 

クリスティ―ナの声に応じて外の【王宮騎士団(NIGHT MARE)】たちが動き始めた。そしてクリスティーナもマホたちに向かって歩き始める。

 

まず最初に仕掛けるのはカオリからだった、マホの制止を無視して殴りにかかるが避けられる。避けられたら当たるまでだと言わんばかりに拳と蹴りを連続で繰り出していくが当たる気配がない。

 

そして、お返しの反撃が向かって来るが剣の軌道が単純だ。これなら避けられると身体を仰け反らすが…

 

「―――⁉ へ?」

 

突然、剣が伸びた。ここままではマズイと身に着けている籠手でガードするも衝撃が体中に響き渡る。とっさの判断でカオリは後ろに飛んで、出来るだけ衝撃を逃がすことにした。そしてカオリの体はそのまま勢いよく壁に衝突した。

 

「カオリ⁉ よくもやったな!」

 

吹き飛ばされたカオリを見て、マコトも応戦していくが先ほどのカオリとの戦いのように全く当たらない。かすっているような感じすらない。

 

そしてマコトもカオリと同じように数合でいとも簡単にあしらわれてしまう。

 

「もっと楽しませてくれ! 生と死の狭間で斬り結ぶ高揚感を、生きている実感を与えてくれ! 期待外れなら、せめて貴様らの血肉を浴びて渇きを満たすしかないぞ!」

 

「ぐっ…、調子に乗りやがって!ひとの縄張り荒らしまわりやがって!」

 

もう一回、マコトがクリスティーナに一太刀浴びせようと向かっていく。

 

「マコト! ひとりでつっこんじゃ駄目さ~? 私がかく乱するから、マコトが本命の一撃を…っておっとっと?」

 

カオリはクリスティーナの剣を同じように籠手で防ぐ。最初のようにならないようにする為、回避ではなく防御優先に切り替えた。

 

「はぁ、武闘派ギルドと聞いていたから期待したものの…。連携は取れていない、練度が低い、戦意が足りない。これじゃ単なる町の喧嘩自慢というところか?それでは本物の騎士には、軍人には勝てんぞ!」

 

マコトとカオリが挟み込むようにして攻撃を繰り出しているのだが、勝機の道筋が見えてこない。なんなら囲っているはずの二人の方がだいぶ劣勢に見える。

 

「(変な感じさ~?このひと私やマコトの攻撃を目で追っていないぽい…。なのに全く当たらない、紙一重で避けてる?)」

 

クリスティーナとやりやっているカオリは妙な違和感、不自然さを感じていた。攻めと防御がちぐはぐに感じてしまうのだ、戦い方が強者のそれではない。

 

すべての攻撃に対して剣を盾にしたりという仕草は全くなく、すべてが回避行動一点のみ、しかも後ろに目がついているのではないかと言わんばかりの寸での回避行動も見て取れる。

 

そして剣の振り方は全て力を込めた大振り、でたらめに振っているような一撃一撃が的確に当たってくるのだ。剣の速度はマコトもカオリも目で追えている。クリスティーナの剣速は特別早くない、むしろ遅い部類に入るかも知れない、なんならマホでも追えるくらいには遅い。

 

けれど、マコトとカオリの攻撃は避けられ、クリスティーナの剣は確実に当たる。そんな法則がこの空間には出来上がっていた。トリックや仕掛けやらなんやらがあるのは確実だけれども、確かめる余裕は現時点でない。

 

「マコト! いったん体制を整えるためにギルドハウスを放棄して逃げるさ! 私たちは死ぬ気でマホたちの退路を確保するさ~!」

 

「あぁ⁉ 尻尾巻いて逃げろっていうのか? 舐められたままじゃ我慢できねぇ、せめて一発だけ殴らせろ…!」

 

カオリはこの状況においても冷静になりながら戦っていたが、マコトの方は頭に血が上っていてそれどころじゃない。

 

「喧嘩ならそれでいいけど、ギルドの抗争ならハメられた時点でもう負けさ~?あとは被害を抑えつつ、撤退したほうが―――うぐッ‼」

 

カオリはクリスティーナの攻撃を耐えるが、さすがに厳しくなってきた。

 

「ほう? 見た目のわりになかなか知恵が回るようだな貴様? だが、残念。逃がさんぞ!」

 

「カオリ、どいてろ!いくらなんでも攻撃と防御は同時にできねぇだろ! こっちからガンガン攻めまくって、動きを止める! おりゃあああ!」

 

マコトががむしゃらに剣を振って、クリスティーナが攻撃に回れないほどまでに責め立てる、その隙を突くようにしてカオリも攻め込み始める。

 

「マホは私たちに回復と強化の魔法を掛けて欲しいさ! 私たちが時間稼ぎしている間にマホたちは退路の確保を!」

 

「了解どすえ、荒事なら頼りになるわぁ。 うちはあかしまへんなぁ、どうも喧嘩になるとからっきしどす」 

 

マホが魔法を展開し、戦いの最中であるマコトとカオリに補助魔法と回復魔法を掛ける。それに応じてマコトとカオリの力が加算されていく。

 

「面白い、これが獣人か! 獣の本能と人間の知性と柔軟さを併せ持っている! 嬉しいなぁ、いつだって強敵と戦うのは心躍る!」

 

マコトとカスミの力が増えていくこと感じたクリスティーナはさらに興奮した。この戦いを無邪気に楽しんでいる。

 

「簡単に終わってはつまらんから優しく撫でてやっていたのだがな…、どうやら遠慮は無用のようだ。―――こっちも、少し気合を入れてやろう!」

 

クリスティーナの言葉と同時に剣の振る速度、立ち回りがガラリと変化する。どうやら先ほどまで手加減していたのは本当らしい。

 

「うぉわああ⁉ こいつ人間か? 防御で足が一瞬浮いたぞ!…あははっ、こっちも楽しくなって来た!」

 

―――こうして、今宵の宴は第2部へ…狂乱はまだ終わらない




次回は只の続きです。

本来ならまとまってるはずなんですが、文字数多くて分割しました。
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