帰宅後すぐ睡眠ばっかりしてたよ、時間たりないね
第22話
あの騒動の後、【美食殿】の3人はとある部屋に集まっていた。部屋にはベットが2つ備え付けられており、それぞれにペコリーヌとコッコロが座り、余った騎士は床に胡坐をかいている。
「ふぅ~、今日は色々あって大変でした。もうお腹ペコペコぉ~」
「周囲に流されっぱなしでございましたね。主さまは一度お休みになられますか?」
「いや、俺も腹減ったから食べてから寝ることにするよ」
「それにしても私たち全員を泊まることになったのはありがたいですね」
「はい。サレンさまのご厚意で、この【サレンディア救護院】で保護してもらうことになりましたので、しばらくはここが生活拠点になるでしょう」
3人はサレンの気遣いによって【サレンディア救護院】で保護されることになった。
サレン曰く「スズメを助けて貰ったり、騎士には格安で働いて貰っていたり…などの恩を仇で返したくない」のこと
なぜ保護と言われているのか…もちろん【
―――【美食殿】の3人はバッチリ目を付けられてしまった、+クリスティーナで厄介度が急上昇である。
ということで
「俺たちの荷物はどうする? あとで持ってくるか?」
「もう外は真っ暗ですから、荷物は明日にでも持ってきましょう」
「なら私もお手伝いしましょうか?」
「ありがとうございます。では、その後にペコリーヌさまの荷物運びをお手伝いしましょうか」
「いえ、その必要はありません。私の持ちものは今持ち合わせている物だけなので大丈夫です」
ペコリーヌが置いている自身の剣と頭に付けているティアラに指を指す。これがあれば大丈夫のこと、なんとも逞しさにあふれているではないか
「あれ?ペコは財布とかもってないのか?」
「あぁ、それならここにありますよーっと」
騎士に財布の有無について問われたペコリーヌは、自分のたわわに実っている胸の谷間に手を差し込み、財布を取り出した。
「ペコリーヌさまはそこにおさいふを入れているのですね」
「お金は大事ですからね。ここだと落ちることないですし、盗まれる危険もありません。それにお店の男性の方々相手だとおまけしてくれることもありますからね~、一石二鳥なんです」
「「へぇ~」」
ペコリーヌは『女』を武器にして、世の中をたくましく生きているのである…ということもなくただの偶然。男性の店員がおまけしてくれる理由をペコリーヌは一切理解していない。
谷間に財布を入れている理由としては、服にポケットがなく、ポーチを下げながら戦うのもちょっと…,
ということで消去法により、唯一ものを入れることが出来そうな谷間が候補として残っちゃっただけ。
「それにしても…それだけのお荷物で不便なさらないのですか?」
「う~ん、そうですねぇ…住む場所を転々としている身としては荷物がない方が楽なんです。けど、コッコロちゃんの言う通り不便を感じることは流石にありますね」
「なるほど…、わたくしたちも宿屋で生活している身なので荷物は最低限のものしかありません。はやく定住先を見つけることが出来たら生活が楽になりそうなものですが…」
「私たちの収入だけではマイホームは夢のまた夢ですよね~」
【美食殿】メンバーはもれなく全員、その日暮らしをしているのが現状。―――「衣食足りて礼節を知る」ということわざがあるけれど、どうせなら「住」も知りたいところだ。
ペコリーヌとコッコロが談話をしていると、部屋のドアがノックされる。コッコロが入室を促すとスズメの返事が返ってきた。
「失礼します。みなさま、お料理の準備が出来ましたので付いて来てください」
「やったぁ!ごはんが食べれますよ!」
「えっ? ちょ、ちょっとペコリーヌさん⁉ 食卓の場所わかるんですかぁ⁉」
今日一番のテンションでペコリーヌはごはんの元へ駆けていった。案内人であるスズメすら置き去りにして…
「いただきま~す!」「「いただきます」」
「はい、召し上がれ♪ 残り物悪いのだけど遠慮なく食べてね」
「ぜんぜんそんなことありません! ごはんを作ってくれるだけで大感謝です! ヤバいですね☆」
「ふふっ、ありがとう。騎士も美味しいもの食べて、暖かいベットで寝なさいよね?終わりよければすべてよしって言うでしょ」
サレンの言葉がスターターになるようにして食卓に並べられた多くの料理たちにさっそくがっついているペコリーヌと騎士の2名。そんなふたりを見て、せめて客人らしく節度を持ってくれ、と思うコッコロは礼儀正しく食事を取っている。
ペコリーヌに至っては食事よりも吸収のほうが近い光景を作り出してしまっているので、もてなす側のサレンとスズメが流石に引き気味の表情を浮かべていた。
「…今更ですけど、騎士くんってけっこう顔が広くないですか?」
「俺の顔が広い…?」
「いやいや、顔が広いっていうのは知り合いが多いって意味よ。アンタの顔の大きさじゃないわ」
「そうなのか…知らなかった」
自分の顔をぺたぺた触っている騎士にツッコミ兼訂正を入れるサレン。騎士くんはまた少し、賢くなった。
「あ~話を戻しますけど、騎士くんはここで生活している人たちとはお知り合いなんですよね?」
「まぁな。スズメに出会ってからはサレンにちょくちょく仕事貰ってたし」
「騎士さんは子供たちになつかれてるんですよ。ここへ来るたびに子供たちの遊び相手をしてくれるのでこちらも大助かりなんですよ」
「初めて来たときは遊び道具が少なかったからなぁ」
騎士は仕事のついでに子供たちの遊び相手をやらされていたので、子供たちからしてみれば定期的にやって来るアスレチックのような扱いをされていた。
しかも、そこらにある遊具よりも騎士の耐久性とアトラクション性、
「いちおう言っておくけど、うちの子たちに良からぬことをしたらただでは済まさないわよ」
「良からぬことってなんだよ…? てか、俺だけか?」
「あたしには【サレンディア救護院】の子供たちを守る義務があるの。あの子たちを傷つける不逞な輩は、あたしの剣の錆にしてやるから」
「主さまはどんな粗相をしたのですか…」「騎士くん何かしでかしたんですかね~」
騎士の両隣で食事をしているコッコロとペコリーヌから疑惑の目線がチクチク刺さる。
「俺は何もしてないぞ」
「アレは十分しでかしてたわよ」
「さすがにあれはもう見たくないですね…寿命が縮まっちゃいます」
なんせ騎士には子供たちにせがまれて人力フリーフォールや人力回転ブランコをしていた前科がある。
「あぁ~もう!今日は本当に疲れたわ~。大急ぎで山奥の屋敷から駆けつけてさ?【
「あらまぁ、お嬢さまはまたお出かけになられるのですね」
「そ~なのよ…。確実に徹夜になりそうで老けちゃいそうだわ、間違いなくお肌も荒れるわよコレぇ…」
などと申しているが、ハーフエルフならまだしも純エルフであるサレンの場合は特に問題なかったりする。老けるなど言っても誤差レベルのようなもの…。
「ところでサレンさんはどうやって騒動を聞きつけたのですか? 遠い場所に居たみたいですけど?」
「そう言われてみればそうですよね、私は仕事で1日留守する予定でしたし…」
「それはね、昔の部下だった人が頼みに来たのよ。『クリスティーナ副団長を止めてくれ』ってね」
「へぇ、【
スズメとペコリーヌは意外そうな顔をした。王宮関係者は上下関係が厳しいところだ、お偉いさんが白を黒と言ってしまえば黒になることだってあるくらいには…。しかも軍部の人間が命令違反まがいのことをしていたのだ、ある程度事情を知っている人物にとっては驚きもの。
「クリスティーナが例外なだけで、基本は正義感が強い人たちの集まりだしね。軍縮の影響で規模が年々小さくなっているけど、信念と強さは常に大きくなってると思うわよ」
「あちら側も不安は疑心感を持っている方々がいらっしゃるということですかね」
「クリスティーナは何と言うか、自由気ままな人なのよね~。馬の合わない人はいっぱい居そうね、あの様子だと」
サレンはクリスティーナと馬の合わなそうな人物を考えると真っ先に銀髪少女の顔が浮かんだ。そして場を取り持つ役目である口下手な団長の心中を察したのであった。
会話を交えながら食事をしていると玄関のベルが鳴らされた。
「あら、こんな時間に珍しいですね? ちょっと席を外しますね」
「暗いから気を付けろよ~」
「騎士さんったらからかわないでくださいよ~」
茶々を入れられながらも、スズメが玄関へ向かっていった。
「あれはたぶん、あたしを迎えに来た馬車だわ」
「迎えですか?」
「そういえばサレンさまはこれからまたお出かけなさるんですよね」
「いやだわぁ、あたしも疲れたからゆっくり寝たいところなのにぃ…。2つ3つの文句を言ってやろうかしら」
「サレンは大変だな」
愚痴を呟いているとスズメがサレンを呼んでいる声が聞こえていた。どうやらサレンの予想通りだったようで、すぐさま玄関へ向かう準備を始める。
「うちのスズメがお世話になったのに、あまりおもてなしできなくてごめんなさいね」
「いえいえ、そんなことありませんよ。ここで生活できるなら十分過ぎますよ」
「はい、ペコリーヌさまが言っている通りでございます。わたくしたちがサレンさまの庇護下に置かれるだけで十分でございます」
「ふふっ、ありがとう。みんなは大船に乗ったつもりで安心してね、あたしがしっかり庇ってあげるから。…といってもあなたたちも巻き込まれた側だし、あたしがみんなの分まで色々言いつけてやるから」
そう言ってサレンは馬車に乗って事情聴取を受けに出かけて行った。スズメがサレンと入れ変わるようにして戻ってきた。
「お客さんである皆様方は食事が終わり次第、自室に戻ってもらって構いません。お片付けは私がやっておきますので」
「ですがこの量をおひとりで片付けるのはいささか苦労するのでは? わたくしもお手伝いします」
「いえいえ、お客さんに手伝ってもらうのは…。今日は色々と助けられた身ですから皆さまは気を使わなくてもいいんですよ」
「おっと、そういう訳にはいきませんよ。私たちは食事も寝床も与えられた身です、何か手伝わないと申し訳ない気分になっちゃいます。それにこれから一緒に暮らす家族なようなものじゃないですか」
「…ありがとうございます!これから色々お世話になると思いますので、どうかよろしくお願いします!」
「「あっ⁉」」
【美食殿】の3人へスズメは頭を下げたが、タイミングがよろしくなかった。手元には重ねた食器を持っていたことを忘れてお辞儀の体勢をしたものだから、重ねている食器も一緒にお辞儀をしてしまい、食器たちが床に引かれるように落ちていった。のだが―――
「―――よっと、なんとか割れずに済んだな」
「おお!ナイスですよ騎士くん! ヤバいですっ☆」
「あ、ありがとうございます! またお嬢様に叱られるところでしたぁ~」
騎士がスズメの足元へ飛び込み、落ちた食器たちをダイビングキャッチしていた。
「良い反応速度でしたね、流石は主さま。…もしや、最初から注意してました?」
「うん。これが初めてじゃないし」
「ちょっと騎士さん⁉恥ずかしいこと言わないでくださいよぉ~、もうっ」
ドジが恥ずかしくなったスズメは、少し顔を赤くしながらも騎士がキャッチした食器を受け取ろうとすると、ふと気づいたことが出来た。
―――スズメの足元で騎士は寝そべりながらスズメへ視線を向けているのだ。
もちろん、スズメはメイド服でスカート丈はバッチリ短め、世の男たちが大好きなチラリズムにも応えられるポテンシャルを備えている。そんなのを足元から見上げたら
「あの~、騎士さん? …質問ですが、何色が見えましたか?」
「ん? しr―――うおッ⁈ ちょっ⁉何するんだよ!」
「み、見ないで下さ~い‼ 目つぶっててぇ!」
スズメは顔を真っ赤にしながら足元に寝そべっている騎士の顔を容赦なく踏みつけようとするが避けられる。そして再度踏みつけようとするも、また騎士に避けられる…
恩人に仇を返すようだが、今の彼女にはそんなこと何処かに飛んでいた。とにかく今はこの
「あらまぁ、騎士くんったら…。こうもドンドンと音を鳴らすと寝ている子たちが起きちゃいませんかね? さて、スズメさんをとめますかね~」
「そうですね、よろしくお願いします。―――結果論ですが私たちが手伝って正解でしたね、サレンさまがスズメさまを心配する理由がしっかり分かりました」
「はいは~い、そこまでですよ~。ほ~ら、騎士くんはここから離れましょうね~」
ペコリーヌが顔面を足でぐりぐりされている騎士の足を引っ張って、スズメの足元から離脱させてあげた。これでスズメも収まってくれるだろう。
こうして【サレンディア救護院】に【美食殿】の3人が新しく生活に加わることなった。
サレンの外出が多いことを考えると子供たちの世話やスズメと騎士のフォローでコッコロとペコリーヌは忙しくなりそうである。
第2章です。といってもゲーム的には3章ですけどね~
この章での主な事件はシャドウ程度ぐらいそこまで長くならないかも?ほとんどキャラストーリーの消化になりそう