本日もランドソルは晴天なり―――なので今日も元気よく【美食殿】は仕事に駆り出されています。
今回の行先は【フォレスティエ】が管理している作物園である。
位置する場所は『エルフの森』と呼ばれているエルフ族が棲む大きな集落ある方角に存在しているのだが、比較的ランドソルに近い場所に位置している。
その理由として『ギルド【フォレスティエ】』の活動方針が
・動植物の管理
・人間社会勉強および交流活動
そのため、エルフの森から少し離れているのだ。
一応、エルフ族が管理していることになっているが、働き手としては
他種族間での共同管理農地と言ったほうが分かりやすいかもしれない。
「今回は農園だったっけか」
「目的は野菜に香辛料…あとは薬草もって言ってましたね」
「それって全部食べ物なのか?」
「う~ん…香辛料は頑張れば?食べれますね。でも実際、香辛料は加えるものであって、単体で食べるような代物ではないですね~」
「ふ~ん。…じゃあ、調味料っていうやつ?」
「まぁ、大体そんな感じですね。匂いを付けたり、消したり、味を付けたりとか~ですね。食べ物を日持ちさせる目的に…なんて使い方もあるらしいですよ」
「へぇ~、すげえな香辛料」
「ヤバいですよね~☆」
―――香辛料はすごいのである! ちなみに日本では「ハーブ」「香辛料」「スパイス」って部位や用途で名前分けしてるらしいよ!
中世のヨーロッパでは一部の香辛料が貴金属のような贅沢品扱いをされていて、『いっぱい使えるのが貴族のステータス!』な感じだったらしいよ。昔の日本では肉食文化がなかったり、発酵食品を使っていたりしていたのであまり食文化に合流することはなく、漢方として使われていたとか…
脱線した話は戻すとして、今回のサレンからのお仕事も騎士とペコリーヌが馬車の護衛として付いている。
しかし、コッコロが今日も同行していない… なぜなら彼女が『ハイエルフ』と呼ばれる上位種族だから。サレン曰く、「普通のエルフに対しては遺伝子レベルで特攻持ちなので会わせたくない」…とのこと。
―――なにか例えると…水〇黄門さま御一行が、最初から「徳〇家の家紋があしらわれた印籠」を最初から見せびらかしているみたいなものだ。
ち・な・みにハーフエルフに対してはそういうのは無いよ、見た目エルフでも中身がほぼ人間や獣人に近いからね。
「今回もペコと一緒か~」
「なんですか~? 私と一緒じゃ嫌ですか~、ぶーぶー」
「嫌じゃないけどさ、また腹減ってうるさくなるのがなぁ…」
「ふっふっふっ。今日の私はあの時の私じゃあ、ありませんよぉ?」
半目で疑いの視線を送られているのに、何故か不敵な笑いをしてるペコリーヌ。だって、なぜなら―――
「今日は普段より大目に食べてきましたし、お昼ご飯も自分で用意しましたので! ドヤァ~」
「……あっそう」
隣に居るペコリーヌのドヤ顔を間近で見ていた騎士はさらりと視線を進行方向正面に戻した。表情はまさに「興味なし」の一言に尽きる。
「ちょっとリアクション薄すぎません? あの~、もうちょっと構ってもらいたいんですけど~? もうちょっとイチャイチャしたいんですけど~」
「なら、サレンの仕事が終わってからな~」
騎士の肩を揺らしながら、ヒロインに対する扱いに抗議する。
「いやいや。こういう時でしか二人きりになることないじゃないですか。騎士くんいつも子供たちと遊んでますし…」
「ペコも遊んでるじゃないか」
「そういう訳じゃないんですよ……はぁ……」
【サレンディア救護院】での騎士は基本子供たちの遊び相手だ。しかも子供たちが力尽きて寝るまで遊び相手をしてるものだから、ペコリーヌが騎士と二人きりで居られる時間は無いに等しい。
……一度、騎士の寝室に夜中忍び込もうとしたことがあるが、無事スズメに捕まり怒られている前科がある。
というわけで、こういう滅多にないチャンスを使用して親密度を…なんて思っているペコリーヌなのだが、ここにおわす騎士さんには色恋のい文字すらも理解できてないのでペコリーヌのラブコールはシャボン玉のように騎士に当たっては弾けて消えている。
「駄目ですよペコリーヌ! 「諦めたらそこで
「……? 何かわからんけど頑張れ」
「いえ、分かってもらわないと困ります。騎士くんも頑張ってください」
「お、おう…頑張ってみるよ」
とりあえずペコリーヌ相手になると『はい』か『イエス』しか選択できないので、とりあえずうなずいておくことにした。
さて、今更ながらであるが騎士とペコリーヌたちは森に中にある一本道を進んでいる。辺りには木や草が生い茂っており、中型の動物や魔物が簡単に隠れることが出来そうな場所ばかりである。
そんなことで騎士が辺りをうろうろ見回しながら馬車の護衛をしているわけだが、本来そこまで警戒しなくてもいいだ。
なぜなら【フォレスティエ】のメンバーが定期的に魔物狩りを実施しているから魔物や凶暴な動物などは基本姿どころか生息すらしていない。なのだが……
「なんか強い視線を感じるぞ…、俺たちさっきから何かに見られてるような」
「そうですか? わたしにはそういうの感じませんけど?」
騎士はなぜか【美食殿】としてクエストに出ていた際、魔物に襲われる前兆と同じような感覚を感じていた。
「いや、あっちの方から感じる。ちょっと見てくる」
「えぇ~、襲ってこないなら良いじゃないですか。ほっときましょうよ~」
「何もなかったらすぐに戻るから安心してくれ」
「はいはい、分かりましたよ。気を付けてくださいね、あと無茶はしないように」
「ありがとう。行ってくるよペコリーヌ」
騎士はペコリーヌの了承を得たことで、すばやく森の中に向かっていった。そんな背中を目で追っていったペコリーヌは何かしらやらかさないことを祈るばかりである。騎士の強さは知っているので安全面に関しては全く心配してない。
そして、さっそく騎士は怪しい奴を見かけた。今までに見たことのない、すごい怪しい奴だった。―――だって、叫びながら逃げてるんだもん。
「な、なんで追いかけてくるんですかぁ~~⁈」
「この野郎! 待ちやがれぇッ!」
「ヒィいいいいいい⁉ なんで?なんで? 私、何も悪いことしてないのにィイイイ⁈」
絶賛、緑の帽子をかぶったエルフの少女が騎士から逃げていた。それはもうすごい形相で、なんなら女の子がしていい顔じゃないよ、ソレ。
騎士の異常な足の速さを見て、少女は地上を走るのを止めて木から木へと軽々と飛び移り、必死に逃亡するが―――
「よっしゃァアアアア! 捕まえたァアアアア‼」
「うぇ⁉ ちょっ⁉ 待ってくだあああ―――」
なんと騎士くん、別の木に移動するために飛んでいる最中だったエルフの少女の足を、まるでダンクするかのように掴んでは、そのまま仲良く地上へ落ちていった。きっと母なる大地が二人を抱き留めてくれるだろう。
いきなり剣を振り回さなかったことに騎士の成長感じるが、少女から見てみれば恐怖に違いないだろう。あぁ、南無三……
「イタたたた……。 ふ、ふえ……?」
「なんだ、ただのエルフじゃねぇか」
「ちょちょちょちょ! 近い! 顔近いです!」
落ちた二人の構図は、騎士の体がエルフの少女に覆いかぶさるようになっていた。傍から見ればラブコメ感出てるが、そんなものは当事者には関係ない。
「で、お前は何者だ」
「あ、あや、あややや、あやとりだいすきあや太郎ーーーーーー‼‼」
「……あやたろう? てかうるせぇ…」
「ひぃいいい、食べないでくださぁああい!」
「いや、お前は誰だって聞いてるんだよ…」
「わ、私は! ま、まだ未発達なので期待に沿えましぇん⁈」
「いや、だからさ……」
「ポポポポポ…―――」
まったく会話が成り立っていないと言うか、そもそも言葉を認識しているかのレベルだった。さすがの騎士も付いていけず呆れてきていた、遂にはなにも言ってないのにひたすら喋り始める始末だ。
すると、あることを思い出した騎士―――前にサレンが泣きじゃくる子供に目を合わせて「深呼吸して落ち着きましょう」とか言ってたじゃないか!
ということで目の前に居る少女を黙らせるために同じことを実行しようとする騎士。
・Step1 とりあえず顔をブンブンして目を合わせてくれなさそうなので少女の顔を片手でこちらに向かせる。――俗に言う「あごクイ」である。これでガッチリ目線がベストマッチした。
「ぽ、ぽぽぽぽぽッ⁉(な、なんですと⁉)」
・Step2 あとは簡単だ、やさしい声音で少女に深呼吸を促す。
「ほら深呼吸してみろ、深呼吸」
「は、はいぃいい!」
「ゆっくりでいいから…そうそう」
「すぅ~、はぁ~、すぅ~、はぁ~…」
「そうそう、ちゃんとできるじゃないか」
なんと、騎士は少女をなだめることに成功した! 日々の生活を無駄に過ごしているわけではないのだ。やればできる子、それが騎士くんなのである。
そして、一度落ち着いた少女を立たせて本題に入るとする。
「あ、ありがとうございます。おかげで落ち着くことが出来ました…」
「そうか、なら良かった」
「そ、それでわたくしに何か御用で…?」
「いや、なんで逃げてたのか聞きたくって―――」
次の瞬間、少女は逃げようとするが…残念,騎士に両肩をがっちりホールドされた、もう助からないゾ☆
「おい、ちゃんとこっちを見てくれ。俺はお前と話がしたいだけだ」
「はぅううう…」
少女はテンパりながらも逃げることを止めてくれたようだ。しかし、立ち止まってくれたのは良いが一向に騎士に目を合わせてくれない。
「まぁいいや、俺は騎士って名前だ。【美食殿】っていうギルドに入っている」
「あの…、その…、私はアオイって言いますです…。ギルド【フォレスティエ】に所属してます…」
「じゃあアオイはなんで俺から逃げてたんだ?」
「だ、だってすごい速さで追いかけて来られたので、怖くて…それで…」
アオイのごもっともである。いきなり森のなかで追いかけられたら逃げるのが普通だろう…。別にアオイは悪くない、悪いのは騎士で正解だ。
「そっか、俺が原因だったか…。ごめんなアオイ、怖がらせちゃったな」
「そんな、頭を撫でなくても…、ふひィッ⁉」
「どうした?」
「な、なんでもござりませんよ?」
人との距離感が分からない騎士はとりあえず子供たちに接するようにアオイの頭を撫でてあげると、変なおもちゃのようにアオイから音が出てくる。見てみたら顔が真っ赤になって、騎士から必死に目線を逸らしてはすぐ戻すの繰り返しが始まった。…普通に奇妙過ぎて怖くなってくる。
―――ところで皆さんは『吊り橋効果』もしくは『恋の吊り橋理論』をご存じでしょうか?
カナダの社会心理学者であるドナルド・ダットンとアーサー・アロンによって1974年に発表された「生理・認知説の吊り橋実験」によって実証された感情の生起に関する学説です。
ざっくりしちゃうと、このアオイさん……見事にはまっています……。突然の恐怖によるドキドキが長続きして、本人が落ち着いても続いたせいで「まさか、これが恋愛感情⁉」みたいになってしまった模様。「怖い人」→「優しい人」にすぐ変わって見えたせいもあるかもしれん…
「(な、なんでこんなにドキドキがッ? でも私は騎士?さんのこと、怖いとは思わなくなってますし…… うそ⁉ これのドキドキは…まさかの恋と言うやつですか! いやいやいやいや、そんなまさか~だって初対面ですよ? しかも、恋愛小説でも見ないような出会いですよ? 普通恋に落ちるんだったらもっとロマンティック感でますよね、ね? …いや『事実は小説より奇なり』といいますが、しかし…。 で、でも目を合わせようとするとさらにドキドキが! ぐ、ぐるじぃ…胸がぐるじぃ…! で、でも…騎士さんの顔つき悪くないかもぉ ワルの中に隠れた優しさをかん、じ…―――)あばぁ……」
「おい! 寝るな! 起きろ!」
わずか5秒もない時間でアオイの脳内は処理落ちするまでこんなことになっていた。普段からお手製の木こり人形である『だいじょぶマイフレンド試作1号』との会話訓練で得た高速一人会話のおかげで、脳内がオーバーヒートするまで思考を巡らせることができるようになっていた。
「おいおい……とりあえず戻るか。【フォレスティエ】のメンバーだって言ってたし、一緒に行けば何とかなるだろう」
アオイが気を失ってしまった以上、騎士がこれからどうこうできることもなく……とりあえずアオイを抱えてペコリーヌの元に戻ること
……にしたかったが、それを拒むように騎士の頭上から声が投げかけられた―――
「そこの男! 今すぐその子から離れなさい!!」
騎士はかつて戦った、ムイミと呼ばれていた少女の姿を思い出す、しかし上から投げられた声と重ならない―――しかし、彼女が繰り出していた謎の力…あの力が襲ってくる前兆、前触れの感覚が今、騎士の五感全てを刺激していた。
「―――嘘だろ? くっ、まずいッ!」
そして、その力は躊躇なく騎士に対して振るわれた―――
とりあえず途中で投稿しま~す。アオイちゃんのキャラ好きだからなんか書きやすいわぁ…是非ともネタキャラになってもらいます。
扱いって言うか、カテゴリとしては『色物ヒロインもどき』かなぁ~? なかよし部と合わさるとネタキャラ性能ががっつり上がります(予定)