コッコロちゃん大勝利のあと、別れたペコリーヌがバイトを始めてから1ヶ月が経とうとしていた。
飲食店で住み込みのバイトをしているそうだ。ペコリーヌの見た目と性格により男受けが良く、すぐに看板娘のようになった。
ペコリーヌ目当てで常連になる客層もおり、店はそれなりに繁盛していた。
「いらっしゃいませー!空いている席へどうぞー!」
今日も朝から元気に働くペコリーヌは常にお客さんへの笑顔を忘れない。この笑顔につられてお客さんは朝早くからわざわざやってくるのだ。
「ペコリーヌ!これ持っててくれ!2番テーブルだ。」
料理人兼店長のマスターに呼ばれるペコリーヌ。
「はいマスター!」
マスターが作った料理をお客さんへすぐ届けに向かう。
「お待たせしました!こちらが『コオロギと野菜のスムージー』と『さなぎサンドイッチ』になりますっ!」
ペコリーヌが運んでいたのは昆虫食であった。実はペコリーヌがバイトしていたお店は昆虫食をメインとする飲食店だった。だからこそ『それなりの繁盛』で止まってしまっている、やはり虫を食べるハードルは高いのだ。実際、ペコリーヌにつられて入店した客の中に後悔した人たちは少なくはない。
ペコリーヌも働くまでは昆虫食を扱う飲食店とは露知らずだったが、諸事情で数年前から文字通り泥水すすってでも生きてやる状態だったので特に気にもしなかった。
「いや~、ペコリーヌちゃんは今日も可愛いね。仕事のやる気が湧いてくるもんよ。」
常連のお客さんに声を掛けられた。現在は朝8時ほど―この時間に来るお客さんは少ないため、仕事量もその分少ない。話をするのに余裕があるのでこれ目的で人の少ない朝・昼頃を狙うお客さんはそれなりにいる。
「ありがとうございます!ごはんをしっかり食べてお仕事頑張ってください!」
もちろん笑顔で返すペコリーヌ、ビジネスではなく本心からの笑顔ができるのが彼女の一番の魅力かもしれない。どこぞのロリエルフとは違うのだ。
朝から常連のお客さんたちと世間話をしながらペコリーヌの一日が始まった。
「じゃあ、今日も稼ぎに参りますか。」
朝からコッコロは宿をでて働きに行く…のではない。目的地はもちろん闘技場、初日で大勝したことにより味を占めたことで連日のように通い詰めていた。
ちなみに自身の主さまは置いて、一人で出かけている。一緒のときはだいたい食事と睡眠、ギルド活動ぐらいだ。
育児放棄のようであるが、コッコロは自他ともに認める天才である。自身が気軽に闘技場や移動が出来るようにするため、ペコリーヌと別れた後から騎士に対してスパルタ教育を施し、約1ヶ月で会話が成り立つところまで来ていた。やったぜコッコロ!しかし…
「もう行くなよ…
記憶を失う前からなのか
「はぁ?今までだれがお金を出して,主さまのお世話をしていたと思っているのですか?」
「おい、話し逸らすな。」
「勝ちすぎると目を付けられて出禁になるかもしれないから、わ・ざ・と、負けているのですよ。これぐらい理解してもらいたいですね。では、行ってまいります。」
「なら今日はしっかり勝って、帰って来いよ。」
コッコロを見送り、騎士も出かける準備をする。食事は宿の食堂で取れるので問題なしだが、そのおかげで料金は割高である。
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「ご馳走さん。」
朝食も食べ終えて向かうのは『サレンディア救護院』、身寄りを失ってしまった子供たちを保護している施設へ足を運ぶ。騎士は救護院へ手伝いの約束をしていた。
「よぉ、スズメ。今日は手伝いに来たんだがサレンはいるか?」
サレンディア救護院へ訪れると玄関掃除をしているメイドのスズメに会った。まだドジはしていないようで何よりだ。
「おはようございます、騎士さん。お嬢様なら中でお待ちになっています。こちらへどうぞ。」
「あぁ、邪魔するよ。」
掃除を一時中断したスズメに連れられ救護院内に入る。まだ朝なので子供たちの姿はちらほら見える。
「あー、騎士くんだ!おはよう!」「今日も遊んでくれるのー?」「わーい!騎士が来たー!」
朝から元気な子供たちも出迎えてくれる、うちのエルフもこれくらいなら楽なんだがな。
「すまんな、今日は仕事で来たからお前たちの相手はできないんだ。いずれ暇なときにかまってやるからな。」
「えー」、という声で子供たちが駄々をこねるが無視して約束相手、もとい雇い主のサレンに会いに行く。
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「いらっしゃい、よく来てくれたわね。今日、あんたに頼みたい仕事は馬車の護衛よ。これから出立する馬車について行って物資の搬入を手伝い、帰路を護衛してちょうだい。わかった?」
どうやら頼みたいことは護衛らしい。ところどころでモンスターが活発しているため、運送業を営んでいる人たちが護衛を頼む量が増えている。
「馬車と荷物を守ればいいんだろ?ついでに物運びもか。」
「ちゃんとうちの人たちも守って頂戴ね。」
「わかってるわそんなもん。で、馬車と人の数はどこになってる?」
さすがにここらへんは聞いた方がいいだろう、馬車10台とかだったらシャレにならん。さすがの俺でも完全には守りきれない。
「馬車の数は3台、従業員は馬車に1人ずつ乗るようにしてるわ。もちろん護衛はあんただけだから。」
護衛についてはそうだろうな、むしろ、居ないほうがやりやすいので助かるぐらいだ。
「わかった、ちゃんと給料用意しておけよ。」
「うるさいわね、貧乏でも給料は出すわよ。ほら、さっさと行きなさい。わたしは事務整理で忙しいの。」
しっしっ、と追い払うような仕草で退出を促すサレン。さて、お仕事やりますか…
馬車の列を護衛をし始めてからおよそ1時間だろうか?特に異常はなく、順調のペースで進んでいる。遭遇したモンスターは全部で5体だが多いか少ないかはさっぱりわからない。
「それにしても、お兄ちゃん強いなぁ。うちのお嬢さんとはどんな関係なんだ?」
列の先頭を進んでいる馬車の横を歩いていると声を掛けられた。
「サレンのことか?あいつと知り合った切っ掛けはスズメのドジがはじまりだ。スズメの紹介で知り合っただけ。」
「あ~、あのドジメイドか。」
どうやらスズメのドジは一般常識レベルかもしれない。しかし、そのドジメイドの『ドジ』のおかげで雇い主、もといサレンに会うことができた。
「そう、そのドジメイドがドジ踏んだおかげでこうして仕事をもらえたわけ。」
「いや、聞きたいのは男と女の関係だよ。どうなんだ?」
しらんがな、出会ってまだ2週間ほどだ。ちょくちょく救護院に足を運んでいるがサレンは忙しいためほとんど外出しているか籠って仕事している。だからあまり会話をすることがない。
「まだ知り会ったばかりだ、どうもこうもねぇよ。」
「いいじゃねぇか、減るような話でないんだからさ。移動は暇なんだよ。」
モンスターと遭遇した時はあんだけ騒いでたのにもうこれか、順応するのが早いわ。
「うるせぇ、俺だって暇なんだよ。ところで、今んところモンスターに会う頻度は多いのか?少ないのか?」
とりあえず話題を変えよう、気疲れしてくる。
「今日はマシなぐらいだ。周りの話では倍ぐらい増えているなんて聞いたぞ。被害は出るわ、雇う護衛を増やすにも金は掛かるわでどこの商人も頭抱えてるらしい。」
「なるほどな…モンスターの群れに襲われる話は?」
「う~ん…群れに襲われる話は聞いてないなぁ。襲われてもせいぜい2∼3体ぐらいほどがほとんどだよ、頻繁に出くわすんだよ。」
群れは滅多にないのか?しかし、ギルド活動として3人でクエストに向かった際は2回、群れに遭遇している。偶然だろうか…
サレンディア救護院から目的地に到着するまでの4時間はモンスターに遭遇することはなく、馬車3台は無傷で目的地にたどり着くことができた。
馬車への荷物積み込みはほとんど騎士が行っていた。そもそも馬車の運転手しか同行してないので当たり前だが…
サレンができる限り人件費を減らした結果、『護衛・積み込み担当』の騎士、運転手の3人という最低限の人材で仕事を行うことだった。
力仕事なら1人で粗方できてしまう騎士はサレンにとって救世主に近かった。相場の半分以下で雇うことができるし、そこら辺の人材よりは信頼が置ける良い便利屋だ。
また、騎士はお金を貰えるから特に気にしていない。そもそもお金の計算ができないし、相場の金額を知るなどもっての外だった。彼の頭では『お金は大事』で知識は止まっているのだ。
荷物も積み終えると、太陽は十分に上がっていた。昼食を取ってから移動しようと思っていたが、馬車の運転手たちは騎士の腕前を信用していたため、移動しながらでも安心して昼食を取ることにした。そのことについては、騎士も早く帰りたいので同意して、食べ歩きをしながら帰ることにした。
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帰路についてから2時間くらいが経っただろうか、モンスターに遭遇することなく順調に馬車隊は進んでいた。…が突如、爆発音が周囲に響く。
「な⁉いったい何があったんだ?」
馬車の運転手が慌て、荷を引く馬も音につられて暴れだす。騎士は馬車隊を守るため、腰の剣を片手で構えて周囲の警戒と音の発生源方向を探す。
(鳥の群れが逃げ出している…方向はあっちか?)
「おい、そのまま進んでくれ!移動しながら音の出所を警戒する!」
「わ、わかった!」
騎士の指示に従い再び移動を始める馬車隊たち、音につられてモンスターが来る可能性も考えながら周囲を警戒する。すると、視界の隅に何かが映った。
「何だあれ?なにか飛んできてるような…」
飛んできているが、自身の近くに落ちるほどの高さ・速さではなかった。騎士は目を凝らしていると…人間らしきシルエットが見えてくる!
「まずい!人間か⁉」
護衛対象の馬車隊から少し離れてしまうが騎士の実力では問題無い距離。すぐ戻れば良いと思い、騎士はとっさに飛んでくる人物目掛けて駆け出す。
距離が迫るとモンスターではなく、
スライディングで
「おい!生きてるか?返事しろ!」
とりあえず声を掛けて反応を伺う、
「とりあえず馬車に合流したほうが良さそうだ、この娘の服もところどころ破けているし…近くで戦闘でもあったのか?」
救助した
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「いきなり走り出して居なくなったと思えばもう帰ってくるとは…同じ人間かよ。…ところでお兄ちゃんが担いでいる娘は誰だ?」
合流すると運転手に声を掛けられた。騎士が駆け出したことについて、いっさい心配はしてないさそうである。
「さきっき爆発音の関係者かも知れない、放り投げだされたように飛んでるのが見えたから助けた。意識は薄っすらあるから生きてる。とりあえず荷台で休ませたいんだが空いてる場所はあるか?」
「それなら一番後ろの馬車だったら場所は残ってるかもしれないぞ?」
「わかった、ありがとう。」
助けた女性もとい少女を荷台の空きスペースに寝かせ、騎士は周囲の警戒に戻る。馬車隊も移動を再開させる。
それから馬車隊と騎士は周囲を注意しながら帰路を進んでいると荷台がボロボロになっている馬車が見えてくる。朝と同じ道を進んでいるので今日中に何かが起きたのは確かである。モンスターに襲われたのだろうか?周囲に馬や人は見当たらない、逃げたのか連れ去られたのだろうか…
騎士はボロボロになった残骸に近づき、状態を確認する。
「荷台はボロボロだが、荷物が積まれている形跡はない…。しかも外側よりも内側から壊れたような感じに見えるなぁ。」
良く確認してみるとモンスターなどに襲われたような形跡にはみえない。馬車の外側部分に目立った傷がついてないのだ。
詳しく周囲を観察していると金属同士が弾きあう音が微かに耳に入る。現在、進んでいる道は両脇が林になっている細い道…林の中で戦闘が起きているのだろうか?騎士は音の方向に体を向けて戦闘態勢に入る。
「みんな止まってくれ!近くで何かが争ってる雰囲気がする。」
彼らはそのような雰囲気を感じることはできないが、戦いのエキスパートに見える騎士が言っているのだからと、声に応えて馬車隊は一時停止する。
その間に騎士には聞こえていた微かな金属音はとっくに無くなっていた。音が聞こえていた方向から馬車を遠ざけるよう指示したあと、騎士は林の茂みに近づいて聴覚を研ぎ澄まし、微かな音を感じ取ろうとしていた。――瞬間だった!
「あたしらの姫さんを何処にやったぁ⁉」
怒声とともに突如現れた青紫色の
原作とおりに時間進めましたが、モヤモヤします。けれど細かく物語を執筆する余裕や表現力もないので諦めました。騎士くんを少しずつしゃべるようにしたかったのですが、物語の進行上しかたなくこうなりました。実力不足で申し訳ないです。
ここまで喋ってるの見ると、岸君ってより上条さんみたいじゃね?