「お~いサレン、荷物運び終わったぞ。」
サレンたちがマホたちと会談している間、騎士は外でせっせと馬車の荷降ろしをしていた。
騎士はあの戦いからサレンに叩き起こされるまで気を失っていた。騎士の頭脳では咄嗟に状況を把握するのは難しかった為、把握する前にサレンの有無を言わせない命令により、最後まで働き続けることになった。
騎士も騎士で働いているうちに自分が襲われて気を失った事は記憶のどこかに飛んで行ってしまったようだ。
「あら、意外と早かったじゃない。お疲れ様、一度休憩しましょ? あたしも仕事がひと段落着いたことだし、あんたに話さないといけない事もあるしね。」
「話したい事?」
「今日のことよ、護衛最中に色々あったそうじゃない。さっきまでそのことについて話していたのよ。」
「あっ⁉ そうだった! てか、俺どうして無事なんだ?」
騎士は今になって自分の状態を確かめ始めた。それを見たサレンはただ、あきれた表情をしていた。
「今更その反応するの? …はぁ~、あんたホント馬鹿ね。」
「は? 喧嘩売ってるのか?」
ハイハイ、と言いながら騎士の反論を受け流したサレンは建物内に戻っていく。サレンの後ろで控えていたスズメも後に続く、騎士も渋々着いて行った。
日は落ちて、辺りは暗くなっている。子供たちが寝る時間のためか、サレンディア救護院の中は朝方にくらべて静かになっていた。
周りが静かなせいか、はたまた建物の老朽化のせいか、3人の歩く音が良く聞こえていた。
「静かに移動してね、子供たちが起きちゃうから。」
「だってよスズメ、転ばないように足元注意しろよ? なんなら俺がおぶってやろうか?」
サレンは自分の口に人差し指を当て、騎士に静かにするよう釘を刺したが騎士は気にせずスルーし、すずめをからかった。
「ちょっと! なんで私に振るんですか?! 釘刺されたの騎士さんじゃないでですか!」
「スズメ、静かにしなさい。」「スズメ、ちょっとうるさい。」
スズメは騎士の発言にとっさで反論したものの、声が大きくなってしまい2人に注意されるハメになった。
今の流れが腑に落ちないスズメが「ぷく~」っと両頬を膨らまして無言の抗議をした。 が、可愛さぐらいしか伝わっていなかったようで、スズメの顔を見た2人は思わず笑みが零れていた。
2人の笑みに釣られてしまい、スズメにも笑みが零れた。いじられ役になるのはちょっぴり嫌なのだが、こんな風な時間を過ごすことは嫌じゃなかった。
執務室に到着したサレンと騎士は、テーブルを挟んで対面になるようソファーに腰かけた。スズメはお茶を入れるため、席を外している。
「で、話ってなんだ?」
騎士はスズメが持ってくるお茶を待たずにサレンに話を振る。
「スズメが来るまで待とうと思わないわけ? …まあ、スズメはあたしと一緒に話を聞いてたから別にいいけど。」
サレンはスズメが合流するまで本題には入らず、違う話題や愚痴を聞かせようとしていたのだが、この男には場の雰囲気を考える頭がないことを改めて理解した。
「結果から言うとあんたが襲われたのは勘違いよ。」
「なんだそりゃ?!」
この反応は当たり前である。勘違いが原因であの戦闘に発展したのだ、割に合わなさすぎる。
「ざっくり言うと、あんたを襲った相手たちはね、誘拐されたギルドマスターの匂いや魔力を追っていたみたいなの。それを辿ったらあなたに出会ったってこと。」
「じゃあ、俺が助けたあの娘があいつが捜していた『ヒメサン』っていうことか。」
「あら意外、心当たりはあったのね。」
サレンは意外そうな顔をした。騎士もそこまで馬鹿ではないのだが、サレンには『脳みそ筋肉のバカ』として捉えられているのだ。
「それしか考えられないからな。ていうか、こっちから話掛けても通じてなかったぞ。あのオオカミ女は完全に俺のこと敵として見てたからな。」
「馬鹿と馬鹿が出会ったのが悪かった、ということね…」
「さっきからサレンは俺に喧嘩売ってるのか?」
さっきから馬鹿にされ続けていた騎士もさすがにイラッときたのか、騎士の態度が変わる。
「あんたは手加減っていうのを学んだ方が良いわ。今回はあっちも手練れだからよかったけど、もし違っていたら相手死んでたわよ。 あ~あ、あっちの負傷者よりあんたのほうが重症だったらな~、賠償金取れたのにな~。」
「おい! 最初の方は分かるが後のほうは俺関係ねぇだろ!」
今回の事件?の内容から話題の方向がどんどん脱線していた2人は気にすることはなく、談笑に花を咲かせていた。
そうしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。スズメがお茶を持ってきてくれたのだろう。しかし、ずいぶん遅かったようだが…
「すみません、大変お待たせしました。」
「どうしたスズメ? どうせ、こぼしたから掃除して遅れたとかだろ?」
騎士の問いかけに「スッ」と視線を横にずらしたすずめ。完全に図星であった。
その反応に騎士は笑うが、主人のサレンはため息をつくのであった。
「このままじゃ廊下の床を踏み抜くとか壁を壊すとかやりそうで怖くなるわね…」
「ちょっと、お嬢さま⁈ さすがの私でもそんなことは…し、しないと思います、よ?」
「もうすでにやらかしたとか?…」
サレンの呟きに対して自信のない返答をしていたため、まさかと思うサレンと騎士。そんな2人に対してスズメは首を横にブンブン振って、自分の無実を訴えた。
「ほ、ほらお茶ですよ~、一息ついてくださいね~。」
スズメはさっさとお茶を配り始めた。露骨に話を切り上げてきたので、スズメいじりは一旦終了だ。
「ところでお嬢さま? 騎士さんへのお話は終わったんですか?」
「ええ、先ほどね。本当はスズメを待とうかと思ったんだけど…。」
「でも、早く始めてよかったじゃないか。結果オーライってやつだよ。」
「むぅ~」
また先ほどの流れになりそうな騎士の発言にスズメは拗ねてしまった。
「こらっ! これ以上すずめをいじるのはやめなさい。」
「いや、そんなつもりなかったんだけど… ごめんな?スズメ。」
「もう騎士さんなんて知りませ~ん。」
お盆を胸に抱いてそっぽを向いて騎士の発言を無視しようとする。しかし、3~4回ほど騎士が謝ったあたりで機嫌が元に戻ってしまっていた。
それを横で見ていたサレンは自分のメイドのチョロさに少しばかりか不安を抱いてしまったが…
「そういえばあんた、今日はここに泊っていく?」
「なんだ? どういう風の吹き回しだ?」
いきなりサレンが親切さを醸し出したので騎士は少し警戒心を抱いた。 その警戒心を感じ取ったのか、サレンの目つきが若干鋭くなった。
「ただ、あんたの体調を気遣っただけよ。そんな状態で帰宅途中を襲われたりでもしたら後味悪いの。 あと、そんな状態でコキ使ったことに一応罪悪感はあるのよ。」
「そうですよ騎士さん! 私もここに泊っていくのがよろしいと思います! 体調を考えて、今晩ぐらいは安静にしたほうがいいと思います。」
「わかった。それじゃあ今晩はここで寝させてもらうよ。」
2人に今晩はサレンディア救護院に泊まっていくことを提案された騎士は、おとなしく言葉に甘えることにした。
「お嬢さま、騎士さんがお休みする部屋はどうしましょうか?」
「それなら2階にある来客用の部屋でいいじゃないかしら? スズメ、あとはお願いね。」
「わかりました、お嬢さま。では騎士さん、私に付いてきてください。」
「じゃあ、おやすみ。また明日な。」
「はいはい、おやすみなさい。夜更かししないですぐ寝るのよ。」
どうやらサレンとの話はここでおしまいのようだ。スズメが騎士の寝室に案内するため部屋を後にし、騎士もそれに続いた。
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「今日はこちらの部屋でおやすみになってください。」
部屋の扉を開け、騎士に部屋の中を見せるスズメ。騎士の目からでもしっかりと管理が行き届いていることが伺えた。
「この部屋は普段から使ってるのか?」
「いいえ、使われたことはまだ無いと思います。ですが、いつでもお客さまを迎えられるようにと掃除はいつもやってるんです。」
「なるほどな。えらいなスズメは。」
「えへへ~、そんなことないですよ~。」
騎士に少しだけ褒められただけなのに嬉しそうに照れ始めた。 ドジでチョロいメイドさんである。
「朝食も用意しますので起きたら降りてきてください。では、騎士さんおやすみなさい。」
「ありがとう、スズメ。 それじゃあ、おやすみ。」
スズメは騎士に軽く礼をしてから部屋を後にした。部屋に残ったのは騎士一人だけだ。
「そういえば、俺一人で寝たことないような…」
今まで騎士はコッコロかペコリーヌが必ず隣か近くに居たので一人で寝るという経験をしてこなかった。好きとかの理由ではなく、目を離せないためという赤ちゃん同様の扱いを受けていたためだが…
とりあえず騎士は用意されたベットに横になって、周囲を見る。なんだか落ち着かない雰囲気だった。
「なんか部屋が広く感じるなぁ…」
環境に違和感を感じながらも、朝食の時間に起きれるようにさっさと目を閉じた。
次の日の朝、スズメは朝食の支度を終え、騎士を起こすために部屋へと向かっていた。サレンはすでに起きており、朝食を食べる準備は出来ている。子供たちもすでに起こし終えた。残るのは騎士のみであった。
「失礼しま~す。騎士さ~ん、すずめです。 …は、入りますよ~?」
「ZZZ…」
ノックをしても返事がなかったので部屋に入るスズメ、騎士はまだぐっすりであった。
「いい顔で寝てらっしゃいますねぇ~ さっそくカーテンを開けて…、お~い朝ですよ~! 騎士さん起きてくださ~い! 朝食出来ましたよ! 」
騎士の顔を覗き込むスズメ、起こすためにまずはカーテンを全開にして日を浴びせる。人に起床を促す定番、子供たちを起こす際は毎回やっていることだった。
「う、う~ん…」
こうかはばつぐんのようだ! しかし、騎士は日差しから逃げるように布団で顔を隠そうとしていた。それを見たスズメはすかさず騎士から布団を奪い取るため、騎士の布団を引っ張り始める。
「ちょっと! 早く起きてくださいよ~! みんな待ってるんですから、お嬢さまに怒られますよ~! …って引っ張る力が強っ⁈ ちょっ!?あわわわわ――‼」
サレンの名前を出して脅しをかけるが、意識が薄い相手には効果がなかったのだろうか? 騎士の布団を引き込む力とスズメの引っ張る力の差が大きすぎて、釣られた魚のようにスズメは騎士のベットに引き込まれてしまった!
「ちょっと… 騎士さんの力強すぎですよ~、って⁈ 近い! 顔近い⁉」
ベットに引きずり込まれたスズメは騎士の顔と鼻先近くまで接近していた。メイドとはいえ年頃の娘であるスズメは思わず顔を真っ赤にする。
「(うわ~っ、男の人とここまで近づいたのは初めてです! …騎士さんってこうして見ていると可愛いほうの顔立ちしてますね。)――ひゃっう⁈」
突然、騎士がスズメの背中に手を回し、抱き寄せた。当然寝ぼけているだけなのだが、スズメはお構いなしに自分の世界へトリップしていた。
「ちょっと! いけませんよ騎士さんっ…、私はお嬢さまに仕えている身なのですよ? こんなことお嬢さまにバレてしまったらなんて言われるか――」
「zzz…zzz…」
返答はもちろんいびきだけだったが、そんなの関係なかった。スズメの脳内はすでに乙女モード全開であった。スズメも恋に恋するお年頃であり、理想の男性と…なんて妄想するのは1度や2度ではない。
だんだん迫ってくる騎士の顔に対してスズメは意を決したかのように目をぎゅっと瞑る。
――スズメは主人のサレンより先に大人の階段を上がるつもりは無いと心に決めていたのだが
「ごめんなさい…お嬢さまっ」
「な~にがごめんなさい、よっ!」
「あいたっ⁈」
自分の世界へ潜り込んでスズメは頭部の痛みと無理やり現実へ送還された。 慌ててベットから飛び出すとサレンがチョップの構えをしながら立っていた、どうやらサレンにチョップをされたようだ。
一瞬で冷静になったスズメは自分の一連の言動を振り返り、茹でタコのように赤くなった。
「あ、あの⁉ い、いつから、こ、この部屋に?」
「あんたが『いけませんよ騎士さん』ってところぐらいかしら? ねぇ、あなたは何のために此処に来たのかしら?」
「も、申し訳ございませんでしたぁ‼」
スズメは顔を赤くしながらもサレンへ何回も平謝りを繰り返す。
「もういいから、そこどいて頂戴。」
「なにをするんですか?」
「何って、コイツを起こすのよ。 …こんな風にねっ!」
「あだぁっ⁈」
ベットの傍に立っていたスズメをどける。サレンは寝ている騎士に馬乗りになって、利き手の右腕を大きく振りかぶった、狙うは騎士の右頬。
サレンは狙いを定めた瞬間に躊躇なく右手を振り抜いた。「パチーン」とかではなかった、「スパァッーン‼」って感じの音が周囲に響いた。
「あんたいつまで寝てんのよ! さっさと起きなさい‼」
「ん⁈ 何だ⁉ 何が起きた!?」
「もう朝食の用意できてるし、子供たちも待ってるの。」
「サレン? スズメもいるのか… あぁ…すまんちょっと寝坊したみたいだな。悪い、今起きる。」
起きたことを確認したサレンは馬乗りをやめてベットから降りた。騎士も身体を伸ばしてからベットから降りた。
「思い切り叩かなくてもいんじゃないか?」
「スズメがあんたのこと起こそうとしても起きなかったのよ。」
「そうだったのか…、ごめんなすずめ?」
「いえいえ! そんな、私なんてそんなっ!」
「なんかスズメがテンパって見えるけど…」
「いつものことだから無視して良いわよ。さっさと朝食食べるわよ。」
サレンに続いて騎士とすずめも階段を降りて、朝食の用意された食卓へ向かった。
「騎士くんおそ~い、ぼくおなかすいたー!」
「お兄ちゃん早く食べようよ~。」
「ごめん、みんな。ちょっと寝坊した。」
朝食が用意された食卓に着くと待っていた子供たちにどやされる騎士。子供たちに謝りながら騎士は席に着いた。
サレンが周りを見渡し、子供たち全員がいることを確認する。
「みんな居るわね? それでは、いただきます。」
「「「いただきますっ!」」」
サレンの合わせて子供たちが一斉に声を出し、食事が始まった。 朝食は必ずみんなで食べる、これが【サレンディア救護院】の決まりである。客人の騎士も例外ではないのだった。
「飯はスズメが作っているのか?」
騎士は食事中に疑問に思ったことを聞いた。スズメがこの場にいる人数分の食事を準備するのは不可能と思ったからだ。
実際子供だけでも10人程いるし、献立も子供の歳に合わせているため違いもある。すずめでなくてもこの仕事を一人で済ますのは大変だろう。
「お料理のほうはお手伝いのおばさまにお願いしていまして、私がしているのはお手伝いぐらいです…」
「そうだったか。」
今、ちいさな子供に食べ物を食べさせているのおばさんが料理を担当しているらしい。
サレン自身、従業員を増やしたいのだが懐の事情で不可能のため、親切に手伝ってくれるおばさんにまかせっきりにしている。
ちなみにすずめと子供たちは料理のお手伝いをしながら勉強をしているが、年長組の子供たちのほうが料理の成長が早いそうだ。
「ねぇお兄ちゃん? わ、わたしがこのお味噌汁作ったの。ど、どうかな? ちゃんとできてる?」
右隣に座っている少女―クルミが騎士に声を掛ける。【サレンディア救護院】年長組の一人であるクルミは年下の子供の世話や料理の手伝いなどしている頑張り屋さんだ。
「クルミは料理が出来るのか。 すごいぞ~、えらいぞ~」
「ちょっとやめてよ~ 髪がぐちゃぐちゃになっちゃう~」
騎士は褒めながらクルミの頭を雑に撫でるので、クルミは抵抗するが嫌がる素振りはなく笑って雑な、なでなでを受け入れていた。
「アヤネも手伝っているのか?」
左隣に座って食事をしている少女―アヤネにも聞いてみる。こちらも年長組の一人であり、スズメの1個下なのだがまだまだ現役わんぱく少女だ。
「私は下の子たちと遊んでるから良いの! それとぷうきちのお世話もあるしね~」
『おいアヤネ、俺名前を勝手に出すなよ! もういい歳なんだからアヤネには家事を覚えて、お淑やかになってもらいたいんだがなぁ~。 頼むぜ坊ちゃん。』
「ぷうきちはそこに居たのか、おはよう。」
『おっす、坊ちゃん。』
ぷうきちは大きめの熊のぬいぐるみ―なのだが何故か喋る。しかも常識人であり、よくおてんばなアヤネを叱ってたりする。
いつも一緒にいるのでアヤネとぷうきちは2人で1人なのである。
「げっ、聞こえてたのかぁ。 あと、私は立派なレディだよ。」
「はいはい、さっさと朝食食べる!」
「「は~い。」」
喋り続けていると
「なぁ? サレンたちは毎朝全員で食事を取るようにしているのか?」
「そうよ、みんな揃うことが出来る時間って朝ぐらいしかないのよねぇ。本当は私も子供たちと遊びたいんだけど…仕事で忙しいのよ。あと、人もお金も足りないから悪循環になってる感じがするのよね。」
「人に関してはアヤネちゃん、クルミちゃんがこっちのことを手伝ってくれるので多少無理は効くんですけどね。」
どうしても貧乏がいろいろな部分に影響しているようだ。
「ねぇ! お兄ちゃんもここに住まない? そしたら毎日私たちと遊んでくれるよね!」
「わ、わたしもお兄ちゃんと一緒に暮らせるんだったら嬉しいな…」
「騎士さんがここに居てくれたら力仕事担当が出来て助かりますね。」
なんだか騎士がサレンディア救護院でお世話になる話の流れが出来ていた。女性しかいないサレンディア救護院に力のある男手が出来るのは助かることなのでしょうがない。また、知能レベルが同じのせいかやけに子供たちに人気なのである。―たまに大人げなく本気で遊ぶ時があるのが玉に瑕だが…
「手伝いにくるのは全然良いんだが、俺にはギルド活動をしたり、なにより記憶を取り戻さないといけないから…。まぁ、何かあったらここでお世話になろうと思うよ。俺、宿暮らしだし。」
「なに勝手に世話になろうとしてるのよ。責任者のあたしがOK出さない限りここには住ませないわよ。」
「「「え~」」」
子供たち+スズメからブーイングが飛んでくるがサレンは綺麗にスルーした。
騎士が来るとなれば
「ほら、さっさと食べちゃいなさい。 このあと、あんたが昨日助けた娘がここへ来るはずだから準備しなさいよ。」
「えっ? なんで? というかその話は昨日するべきなんじゃ…」
「あんた、気絶してお互い名前を知らないでしょ? しっかり彼女たちと自己紹介して、お互いに謝りなさい。良いわね!?」
「ごちそうさま、あたしは執務室で仕事してるから。 スズメはマホさんが来たら騎士を連れていくよう言っときなさい。」
「は、はい! かしこまりました。」
朝食を食べ終えたサレンは食器を片付けて仕事に向かった。子供たちもごちそうさまを言って、次々と外などに遊びに出かけ始めていた。
「スズメ? ここに剣って置いてないか?」
「剣?ですか…って!なんで剣なんですか?!」
「いやぁ、昨日戦った時に持ってた剣折られちゃってさ、念のため持っておきたいんだよ。」
「それは分かりますけど… でも、ここなら襲ってくる人なんていないと思いますよ。」
「これから俺のことを襲ってきた連中が来るんだろ? 持っておいたほうがいいじゃん。」
「えぇ~…」
すでに説明を終えていて、互いの誤解も解消しているはずなのに警戒度が下がりきってない騎士の反応を見て、スズメはどう対応すれば良いのかわからなくなった。
「スズメがわからないならサレンに聞いてみるよ。」
「ちょっと! これ以上お嬢さまに気苦労を掛けちゃダメです! ちゃんとした剣ではなく、鍛錬用の剣ならありますけど大丈夫ですか?」
「ないよりマシだからそれで良いよ。」
サレンに要らない情報を与えないためにもスズメは騎士の要望に素直に従うことにした。けれど、問題を大きく出来ないように鍛錬用として刃が潰してある剣を渡すことにした。――嘘は一応ついてないので問題ないはず…
「あのぅ… くれぐれも問題を起こさないようお願いしますね?」
「サレンもスズメも、俺を何だと思ってるんだ?」
もちろん、「問題児」とは言えないスズメであった。決してブーメラン発言になることを意識したわけではない。
スズメは渡す剣を取りに外の物置小屋に向かう、騎士もスズメのことが不安なので後を着いて行く。
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スズメと騎士は外の物置にいた、その物置は木造で年季の入った様子だった。
そのため、物置の中でスズメが剣を探しているのを待っている騎士は気が気でなかった。
「たしかここらへんだったはず…?」
「大丈夫かスズメ? 場所さえ教えてくれれば俺が捜すぞ?」
「大丈夫です! いちおう騎士さんはお客さんですからね。それにこの物置もだいぶ傷んでますし、怪我されても私が困りますから。」
だからこそ騎士が代わってあげようとしているのだが、当の本人は気づいていない様子。
とりあえず、スズメが代ろうとする気配が感じられないので騎士はいつでも助けに入れるよう構えていた。
「あ! ありましたよ騎士さん!」
「ゆっくりでいいからな~」
どうやら、ドジを起こすことなく剣を取ってきてくれたようだ。騎士は少しだけ安堵した。
騎士はスズメから剣を受け取り、鞘から剣を引く抜くが…
「おい、スズメ。 この剣折れてるんだけど…半分ちょっとしかない。」
「えっ⁈ ホントですか? どれどれ… あら本当です、ポッキリ折れていらっしゃいますね…」
「まぁいいか、刀身が駄目だったら鞘でどうにかすればいいか。 紐ないか?できれば頑丈なものが良い。」
「紐ですか? 丈夫かどうかは分かりませんが、紐なら物置で見つけましたよ。使えるかどうか別ですが…」
鞘と剣を固定したいので騎士はスズメに紐を探してもらうことにしたが、すでに見つけていたようだ。
紐を取りに行くために再度、スズメは物置の中へ入って行った。すると…
「きゃっ⁉」
「⁈ どうしたスズメ!」
スズメの悲鳴が聞こえたのでとっさに物置へ入って行く、騎士の目に映っていたのは紐に雁字搦めになっているスズメ。
この短時間でどうやったらこんな風になるのか騎士にとって摩訶不思議だった。
とりあえず暴れて周りがめちゃくちゃにならないようにそのままスズメを担いで物置外へ持ち出した。
「ちょっと私の扱い雑じゃないでしょうか? せめてお姫さま抱っこしてほしかった…」
「それはドジを減らしてから言って欲しいな。 ん?最後の方なんか言ったか?」
「なんでもないですよ~」
「ほらっ、紐解くからジッとしとけよ~。」
騎士はスズメに絡まった紐をほどいていくが、スズメは顔を赤くしている様子。
「どさくさに紛れて、変なところ触らないでくださいね!」
「変なところってなんだよ…」
「・・・」
騎士はスズメの言っていることが理解できなかったのでそのまま作業を続けてた。一方、スズメは自分ひとりだけ意識していたことを知り、余計恥ずかしくなった。騎士は紐がある程度解けたら、剣で紐を少しずつ切っていった。
「よし、これで大丈夫だ。…もう動いていいぞ。」
「騎士さんのバカ…」
「どうしたいきなり?」
紐が取れ、自由に動けるようになったスズメは早歩きで建物内に戻ってしまった。
そんなスズメを見送った騎士は、スズメから取った紐で鞘と剣を結び、試しに剣を振ってみることにした。
「う~ん、やっぱりしっくりこないな。何回か振ったら鞘が飛んでいきそうだ、さっさとお金貯めて剣かうか…」
片手で剣を持ち、縦・横と軽く振ってみたが、騎士にはいまいちのようだ。
実際、一般人では鞘を飛ばすことができないくらいにはがっちり縛り付けてあるのだが、騎士の振る力と速度が速いだけだった。
・
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・
しばらく身体を動かして自身のケガの治り具合などを確かめていたら、聞き覚えのない声が騎士の耳に入ってきた。
どうやら方向からしてサレンディア救護院の門からに聞こえる…
「スズメがいるから大丈夫か… いや?スズメは大丈夫なのか?」
スズメに対して大分失礼なことをつぶやきながら、騎士は再び身体を動かし始めた。
「――――――‼」
「やっぱり、誰か来てるなぁ… しかも近付いてる。」
聞こえる声?がだんだん近づいていることに気づいた騎士は一度、運動をやめて声?の元へ向かおうとした。
「誰もいないのか? 俺に話しかけられても案内できないぞ…」
歩き始めてすぐだが、すでに足音が聞こえている。 どうやら走ってきているようだ。
騎士がちょうど角を曲がると、声の元と思われる女性がすごい笑顔で手を振り、駆け足で騎士の方へ向かって来るのがわかった。
「ん? あのヒラヒラの服と特有の耳は…、昨日助けた娘か?」
「あぁ! また王子はんと会えてうれしいわぁ~。ギュ∼」
先日助けた
なんだコイツ? と思いつつ、騎士は少女の名前を聞くことにした。
「すまんが、あんたの名前を聞いてないんだが…」
「ああ、すまんなぁ。つい嬉しくなってもうて… うちはギルド【
「ん? 王子はんって俺のことか?」
「せや、王子はんはうちの運命のお人で、前世では恋人同士だったんよ♪…多分…」
なんだコイツ?! もうそれしか思わなくなってしまった騎士、マホマホ王国のマホ姫にさっそくおいて行かれたのであった。
エンジェル来ましたけど引いた方が良いんですかね?
やはり、股間に従うべきなのだろうか…