ソードアート・オンライン ~たった一人の為の英雄~ 作:まっちゃんのポテトMサイズ
メッセージを受信した音に叩き起こされ、俺は重い瞼を開け、ベッドから降りる。
視界の左下の時刻に視線を飛ばすと、まだ午前7時。
二度寝でもしようともう一度ベッドに横たわり、瞼を閉じたが、やけに思考が澄み切っていて寝られなかった。
俺は溜息を吐きながらベッドから降りてメッセージを確認する。
ノーチラスからだった。ボス戦の手助けをして欲しいとのことだった。
俺はメッセージの返信をし、宿屋の外に出た。
すると、目に日光が差し込み、反射的に手を翳した。
顔を逸らし、コートのポケットに両手を入れ、集合場所である迷宮区前までゆっくりと歩く。
フィールド上にプレイヤーがあまり居ない所為か、遠くで戦っているであろう
それだけなら良くあることの一つだった。しかし、その音に混じって女性の短い悲鳴も混じっていたのだ。
俺はそれが聞こえる方に向かって走り出す。五分間も走っていると、異常な数のモンスターが緑の髪をした見覚えのあるプレイヤーを取り囲んでいる現場に遭遇した。
直ぐに野太刀を構え、そのプレイヤーの前方にいるモンスター達を一太刀で吹き飛ばし、彼女に向かって手を伸ばす。
彼女がその手を取ると直ぐに引っ張って俺の背後に回らせる。
「HPの損傷は?」
「…少しだけです」
「なら良かった。少し待っていてくれ。直ぐに終わらせる」
俺はエクスカリバーを鞘から引き抜き、モンスター達の間を縫うように駆け抜ける。
数秒後にモンスター達は切り刻まれ、全て青い破片に変わった。
エクスカリバーを鞘に仕舞い、彼女にポーションを差し出す。
彼女は何も言わずにそれを受け取り、一口で飲み干した。
「随分と無茶なレベリングをしているようだな」
「そんなことしませんよ。私はただ自分の実力相応のレベリングをしていただけです。貴方の様に一度に大量のモンスターを相手になんてしませんよ」
「そうか。それなら良い」
「…では。私はまだレベルを上げなければいけませんので」
彼女はそそくさと立ち去り、俺も迷宮区に向かおうと一歩踏み出すと、背後から女性の声が聞こえてきた。
「あのプレイヤーに邪魔さえされなきゃよかったのに…!!」
振り返ると、数メートル先の木陰にこちらを睨みつけている女性プレイヤーの姿を見つけた。
そのカーソルは緑色だったが、今の発言からして、あの異常な量のモンスターを連れてきたのはそのプレイヤーだろう。
もしそうだとするのならば、それは
かと言ってそれが行われた確証すら得られていないので何もすることはできない。俺は足早にそこを後にして迷宮区へと向かった。
マップを眺めながらそこへ向かうと、既にその前にある広場に大勢のプレイヤーが集まっていた。その奥にキリトとアスナ、そしてノーチラスと何時しかぶつかった紫髪の少女の姿があった。
プレイヤー達は俺に気づき、視線を飛ばすと、一斉に驚いた様に目を見開いた。
俺はそれを無視してプレイヤー達の間を掻き分けながら進み、ノーチラス達の元に向かう。
ノーチラスは俺に気づくと、手を挙げて駆け寄ってきた。
「悪い。待たせた」
「時間には間に合ってるから大丈夫」
「そうか。なら良かった」
俺はそれだけ言うと、紫髪の子に近寄り、「初めまして。今日はよろしく」と声をかけた。
紫髪の子は俺を見上げ、手を差し出した。
「うん!こちらこそよろしく。ボクの名前はユウキ。君の名前は?」
俺はその手を掴み、暫く口籠っていると、ユウキは笑顔を見せて「言いにくいなら良いよ」と言った。
「ありがとう。それでいてくれると助かる」
俺がユウキの手を離すと、集団の中央にいるリーダーを務めているであろう青い髪の見慣れた青年プレイヤーが声を上げた。
「皆、これからボスの情報を伝える!よく聞いておいてくれ!」
その声に聞き覚えがあり、俺はその声の方に視線を移した。
視界に入ったのはディアベルだった。<<DKB>>と<<ALS>>は合併されたのか、リンドとキバオウは彼の話を熱心に聞いていた。
前の様に言い争いをすることも無くなり、それが起きるような雰囲気も無くなっていた。
「…二つのギルドは合併したのか」
「いや、ただディアベルさんのリーダーシップが凄いだけで合併とかはしてないよ。…もしかしたら僕の情報量が少ないだけかもしれないけど」
「そうか。彼だったら何とか取りまとめられるだろ」
ノーチラスは何も言わずにコクリと頷いた。
「ボスの名前は不明。容姿は他人に近い顔を持つ獣の性質を持つ人食いの怪物だ。ダメージを与えづらい相手だが、チャンスは必ずある!!行くぞ!!」
ディアベルのその声に反応するように、集団全員がこぶしを突き上げ、雄叫びを上げた。
空気が振動しているのを皮膚で感じながら、リーダーシップの高さにため息が漏れてしまう。
「…やっぱり、彼は凄い人間だ」
「ああ。本当にな。リーダーってのは苦労が絶えないのに良くあそこまで輝いて居られるのか、俺には皆目見当もつかないよ」
キリトが俺の傍に立ち、ディアベルを見つめながらそう言った。
「そうだな。…さて、もう行くとしよう。先に入っているから後で追いついてこい」
「分かった。皆を集めてから行くよ」
俺は何も言わずに頷き、ディアベルの背後を通り、「これからも頑張ってくれ」と言って先に迷宮区に入る。
それが聞こえていたのか知る由は無いが、聞こえていたのなら、それで良い。
たとえ聞こえて居なくとも、俺は別に気にもしないし、彼にはその言葉は不必要だろう。
「…さて、彼らが来る前に一仕事終わらせるとしよう」
俺はエクスカリバーを構え、地を蹴り、目前にいる敵Mobの間を縫うように駆け抜ける。
そのままの勢いで群れになって居る敵Mobを倒していくと、それらとは違う覇気を纏った、ロングヘアーの上半身が裸の敵Mobが姿を現した。
名はトリビュート。トリビュートは俺に気づくと、どこかから青と黒が基調の剣を取り出し、前傾姿勢を取り、姿を消した。
…いや、消えたのではない。速すぎて見えなかったのだ。
それは俺の懐に現れると、俺の腹部に剣を叩きつけ、勢いのままに吹き飛ばした。
俺は廊下の端の壁にぶつかるのと同時に歯を食いしばる。
HPバーに視線を移すと、HPバーは赤ゲージまで到達していた。
直ぐに回復ポーションを飲み、エクスカリバーを構える。
「フィールドボスか?…いや、それにしては強すぎる」
そう独り言を呟くと、俺はトリビュートを睨みつけた。
それも俺を睨みつけており、それと視線が交わる。
俺は一息吸い込み、地を蹴る。それに合わせるようにトリビュートも地を蹴る。
今度は明確に見えた。
トリビュートは下から剣を振り上げる。俺はそれを上体を逸らして避けると、<<ホリゾンタル・スクエア>>を発動する。
「…そんな技。今まで腐る程見てきた!!」
トリビュートはエクスカリバーを素手で掴むと、俺ごと地面に叩きつけた。
地面に亀裂が走る。
「ぐっ…!!」
「結局、お前のも二番煎じか」
トリビュートは剣を振り上げ、一思いに振り下ろす。
俺はスタン状態になってしまい、攻撃を防げない。HPバーは黄色ゲージまで減っているが、トリビュートなら一発で全損出来るだろう。
こんな場所で死んでたまるか。
動け、動けと念じるが、ピクリとも動かない。
死に際になると全てスローモーションになった様に見えると言うが、その通りだった。
それは死者に残された短い猶予なのだろうか。もしそうなら、俺はそれを放棄しよう。
今はまだ、必要ではない。
「まだ、まだ死ねない。俺は…!」
微かに動く右手を握り締め、力一杯に眼前に迫った剣にそれを突き上げる。
その拳は青いライトエフェクトに包まれており、トリビュートの剣を跳ね飛ばし、起き上がり、流れるように右足をトリビュートの顔に向かって蹴り上げる。
「それだ…!!それこそ唯一無二の技!!」
トリビュートは笑いながら、上体を反らしてその蹴りを避ける。
体勢を戻す勢いを拳に乗せ、俺の顔にパンチを繰り出してくる。
俺はそれを右手で掴み、こちらに引っ張るのと同時に右足を前に突き出す。
トリビュートは廊下の端まで吹き飛ばされる。
地を蹴り、トリビュートに近づき、赤いライトエフェクトに包まれた拳を何度も繰り出す。
トリビュートに幾らパワーがあろうと、所詮は迷宮区にいる雑魚敵と同じ程度のHP量。
30発も攻撃を浴びせるとトリビュートはポリゴン片に成った。
「アイツはいったい何何だ…」
俺はリザルト画面を消し、地べたに音を立てながら腰を下ろす。
ふと、インベントリを見ていると、スキル一覧にNew!!のマークがある事に気がついた。
そこをタップして新しく追加されたスキルを見ると、格闘技の欄に<<緊急回避>>と<<鮮血>>というスキルが追加されていた。
「…さっきの戦いで増えたのか」
俺はスキル一覧を閉じ、アイテム欄から回復ポーションを取り出し、壁に背中を預けながらそれを飲み干した。
スキルの解説
<<緊急回避>>・・・HPバーが半減、若しくはそれ以上減った時にのみどんな状況下であれ使える。初撃の拳で攻撃を防ぎ、2発目の蹴りで敵をノックバックさせて距離を取る。
<<鮮血>>・・・攻撃を防げず、動けない代わりに30連発の拳を繰り出す。
シノンとかリーファとかのIFに出て来るキャラは登場した方がいい?
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もちのろんじゃろ、このボケナスがぁ!!
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え?別にええわ