一ノ瀬ちづるに幼馴染がいたら   作:さっきのピラニア

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伊豆旅行リベンジも今回で終わりです。
それでは本編をお楽しみください。

お気に入りに数が減ってるのを見ると結構来るものがありますね…仕方ないのですが…


2017年7月某日 伊豆半島リベンジ④

部屋に戻ると布団がピッタリくっつけて敷いてあった。私たちはカップルか夫婦に見えていたのだろうか?彼もしばらくしてから戻って来てから、布団を配置を見て少し驚いていた。

 

「一ノ瀬の仕業か?」

 

「……違うわよ。」

 

「…なんだ今の間は。」

 

「それは別の理由よ。アンタもさっき話してくれなかったし話すつもりはないわよ。」

 

「ふーん。まぁいいけど。んじゃ寝るか。布団離すz「駄目」…なんでやねん。」

 

「関西弁になってもごまかされないから。」

 

そう言って私は電気を消して布団に入る。

 

「…はぁ…これも身から出た錆なのか?…分からん…」

 

彼もあきらめた様子で布団に入る。

 

「もし襲ってきたら、思いっきり金的食らわせるから。」

 

「…襲わねぇよ…おやすみ。」

 

「ん。お休み。」

 

そういえば彼と同じ布団で寝るのは何年ぶりなんだろう?昔は良くお互いの家に泊まってご飯を食べていた。なんか今更だけどすごく恥ずかしくなってきた。私はこの感情をごまかすように大きく深呼吸をして目を閉じた。プールと卓球で想像以上に疲れていたらしく、私はすぐに眠りに落ちた。

 

 

ー透視点ー

 

ちづるは既に眠ってしまったようだ。

布団からこっそり抜け出し、売店へ向かう。まだ営業しているようだ。遅くまでお疲れ様です。

飲み物と煙草とライターを買い、喫煙所に入る。吸うのは何か月ぶりだろうか。東京に戻ってきてからは捨ってないな。火をつけ軽く一息吸い込む。うん、うまい。

彼女はこの旅行で俺からあの時の本音を聞こうとしたのだろう。流石に露天風呂でしかけてくるとは思わなかったが。

『何でも一つ言うことを聞く』という条件で卓球で負けた後、あの時の事を聞く可能性に気付いたとき、かなり動揺してしまった。さっき使わなかったってことは、絶対俺が話してくれないことを察していたのだろう。確かにあの時に使われても俺は話すことはなかっただろう。

 

部屋に戻り布団に入った瞬間、ちづるに抱き着かれた。まだ寝ている様子だったが…コイツ本当に寝ているのか?彼女の名状しがたい柔らかな感触を頭から必死に振り払い、眠りについた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日の早朝、目を覚ますと目の前には彼の背中があった。寝ている間に抱き着いてしまったらしい。微睡みながら彼の背中に顔を押し付ける。昔から変わらない彼の匂い。これで彼の事は変態と言えなくなってしまった。彼もまだ起きていなさそうだしもう少し堪能させてもらうことにしよう。

 

満足した私は、透を起こし、軽く身支度をして共に散歩がてら外に出る。あまり暑くもなく風がとても気持ちが良い。二人で海岸沿いを歩いていると遠くにフェリーが止まっているのが見えた。多分この前私が落下したやつかな。

 

 

「…船、怖いか。」

 

「ううん、大丈夫。」

私は否定した。聞いてきたってことは不安そうな顔をしたのが、バレているのだろう。

彼が何もできなかったことに負い目は感じさせたくなかった。彼は何も悪くない。この一件は完全に私の不注意なんだから。

 

「…まぁ…なんだ……。そういったもんは案外何とかなるもんだ。」

 

…全く説得力が無い。

 

「私がまた落ちたら、彼みたいに助けてくれる?」

 

「…どうだろうな?泳ぎは人並みだから、助けられる自信はないな。体調の悪いときは船に乗らないでもらえると助かる。」

 

彼らしい言葉だ。ホントは絶対助けてやるとか男らしい言葉を聞きたかったけれど。

 

「意気地なし。」

彼の背中を軽くはたく。

 

「解せぬ。」

彼は少し不服そうだ。

 

 

「…ありがとうは言ったか?」

 

「は?」

 

「ありがとうは言ったかって聞いてるんだよ。彼に命助けてもらったんだろ。」

 

「…言ってない。謝りはしたけど。」

 

あの時、私はありがとうとは言っていない。ごめんなさいとは何回も言ったけど。

 

「…やっぱりな。そういう時は謝罪じゃない。感謝の言葉を相手に伝えるんだよ。」

 

「…今度言っとく。」

 

「よろしい。」

 

…フェリーでの一件で、船が少しだけトラウマになってしまった。

あの場所に透がいたら彼は同じように助けてくれたのだろうか?答えは分からないけど何だかんだ言って助けてくれそうな気がする。

 

散歩から戻り朝食を食べ、帰り支度をしていると、彼の鞄のポケットに煙草が入っているのが見えた。

 

「アンタ煙草吸うの?」

 

「まぁな。たまにだけど。」

 

「身体に悪いから止めなさいよね。」

 

「大人にはどーしても吸いたくなるときがあるのよ。未成年ちゃん。」

 

「…なんかその言い方ムカつく。」

 

「ほら、もう行くぞ。観光する時間が無くなっちまうぞ。」

 

私たちは旅館をチェックアウトし、動物公園に向かった。パンフレットを見ると露天風呂に入るカピパラがいるらしい。なにそれ超見たい。

 

「あ、やべぇ。すっかり忘れてた。」

彼は鞄からカメラを取り出した。

 

「アンタ、カメラ持ってきてたんだ。」

 

「おう、使わないともったいないと思ってな。今更だけど、旅館の写真とか料理の写真とか撮っておけばよかったな。」

 

と、いうことはこの旅行のほとんどは誰にも共有されない私達だけの秘密になる。そう考えると少し嬉しくなった。でも思い出として形に残しておきたい気もする。

 

「ねぇ。」

 

「…何だ?」

 

「私も撮ってよ。この旅行の記念に。」

 

「…おうよ。」

 

彼はカメラを構える。意外と様になっている。

 

「1足す1は?」

 

「2!」

 

今回の旅行は楽しかった。料理も美味しかったし、水着も褒めてもらった。カピパラも可愛かった。…そして彼の事もまた少し知ることができた。撮影も今日イチの笑顔ができた。

 

ただ、この旅行で彼からあの時の話は聞くことができなかった。

縮まったと思った距離がまた少し遠くになってしまった。数か月で縮まったと思ったけど全然そうじゃなかった。わずかの差でも全然埋まらないその距離はいつ縮まるんだろう。どうしたら彼の隣に立てるんだろう?分かんないや。

 

私はまだ狭い世界にいる。大学、養成所、そして彼のそば。彼は今までどんな景色を見てきたのだろう。私が気持ちに素直になれば教えてくれるのだろうか?

 

 

今日も答えは出ないまま。叶うかも分からない夢に向かって、日々を浪費していく。

 




初めてオリ主視点が入りました。当初はほとんどオリ主視点で書くの予定だったのですが…
アニメで煙草を吸っている姿って昭和的でエモくて好きです。(ただしイケメンに限る)サイコパスの狡噛慎也とかね。

感想があったら書いていただけると嬉しいです。

どうでもいいことですが、伊豆半島リベンジを書いているときのBGMは忌野清志郎の「ひどい雨」でした。物語がBGMに引っ張られる無能な作者で申し訳ない…申し訳ない…

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