一ノ瀬ちづるに幼馴染がいたら   作:さっきのピラニア

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駄文ですが本日もお楽しみください。


2017年12月25日 クリスマス

今日はクリスマス。

アクターズスクールの同期である海君とお出かけ兼、木ノ下和也のお詫びの品選びに出かけた。

透にそのことを伝えると「クリスマスデート楽しんでらっしゃい。」と完全に他人事だった。なんかその余裕綽々な態度がムカつくのよね。彼女いないくせに。

海君とはアクターズスクールの課題の本読みに付き合ってもらった。人前でこういう事するのって初めてだからちょっと不安だったけど案外何とかなるものね。

お出かけの終わり際、木ノ下和也が突然現れた。本読みに夢中で彼に気付くことができなかった。彼にはストーカーの前科がある。次やったら絶対通報してやる。

もう彼には隠しておくつもりはなかったので、私が駆け出しの女優であることを伝えた。彼は私が悪い男に騙されていると思ったらしい。彼なりに考えがあっての行動だったようだ。普通にストーカーだけど。タイミングが良かったので伊豆の時のお詫びとしてスマホケースを渡した。彼は泣いて喜んでいた。ストーカーだけど。

 

 

「…今日も彼の事か、好かれてんねぇ。彼もプレゼントを貰って嬉しかったんじゃない?」

 

「…プレゼントじゃないわよ。ただのお詫びよ。」

 

「…で、どうしてウチに居んの?俺のクリスマスルーティーンは家に引きこもって、シチューとケンタとホールケーキ腹一杯食ってシャンパン飲んで呪詛を唱えるって毎年決まってんだよ。」

 

彼はシャンパンを既に開けているらしくほろ酔いの様子だった。

 

「そんな事しても、誰も幸せにならないわよ。」

 

「…分かってんだよ。ただの自己満足だ。」

 

テーブルには料理が広げられている。明らかに一人分じゃない。残しておいて明日も食べる予定なんだろう。コイツ、普段は真面目に料理しないけど、一応作れるのよね。

 

「…まぁ、彼にプレゼント渡せて良かったな。」

 

「…お詫びだって言ってんでしょ。」

 

「へいへい。」

 

そう言って彼はシャンパンを傾ける。コイツ、お洒落な事に関してはとことん似合わないわね。ビールを飲んでいる姿の方がよっぽど似合うわね。失礼だけど。

 

 

「ねぇ…」

 

「ん、何だ?」

 

「…はい、プレゼント。メリークリスマス。」

 

私は鞄から袋を取り出し、彼に渡す。

 

「ん、ありがと。んじゃ、俺からもお返しだ。大したものではないけどな。」

 

彼はクローゼットから少し大きめの袋を取り出して、私に手渡す。

 

「開けても良い?」

 

「どーぞ。俺も開けるかな。」

 

袋を開けると中身は加湿器と50センチ位あるクマのぬいぐるみだった。

私からはストールをプレゼントした。

 

「…どうしてぬいぐるみなの?」

 

「お前の部屋少し殺風景だなと思ってな。ぬいぐるみでもいれば華やかになるだろ。あと加湿器は女優は身体だけじゃなく喉も大切にしろって俺からの思いやりだ。」

 

「…余計なお世話よ。台本とかもあるから部屋にモノを置きたくなかっただけよ。」

 

「さいですか。じゃあなして俺にストールを?」

 

「アンタの私服が地味だからよ。今度、それに合う服選んであげるから付き合いなさい。」

 

「えぇ…」

 

彼は少し面倒臭そうな顔をする。溜息をついている彼の隙をついて、彼のグラスに手を伸ばす。

 

彼はすぐに気づき、強めに手首を掴まれた。

 

「…させんぞ。この前の事を忘れたのかよ、未成年。」

 

「クリスマスだから良いじゃない。今日は飲みたい気分なの。」

 

「絶対飲ませんからな。」

 

そう言って私からグラスを取り上げ、一気に飲み干す。残りのシャンパンは冷蔵庫に持っていてしまった。

 

「…ケチ。」

 

「ケチで結構。成人まで我慢しな。」

 

そう言って彼は私の前にカップを置く。中は私のお気に入りのカプチーノの様だ。

 

「…ありがと、でも騙されないからね。」

 

「とか言って飲んでんじゃねぇか。」

 

「飲まないと勿体無いからよ。」

 

「へいへい。それ飲んだら帰りな。」

 

「嫌、今日は止まってく。私を帰らせたいなら家までおぶってって。」

 

「…ほら早く乗れよ。帰るぞ。」

 

「嫌。今日はここで寝る。」

 

「お前は子供かよ…」

 

「未成年だからまだ子供よ。成人さん。」

 

「…言い返せねぇ…まいった。俺は床で寝るからな。」

 

「家主を床で寝させるわけにはいかないでしょ。一緒に寝ていいわよ。」

 

「だが断w「断ったら襲われそうになったって叫ぶから」…分かったよ…。」

 

「よろしい。シャワー浴びたいから服貸してよ。」

 

「…今日はホントに図々しいねぇ…高校の時のジャージ位しかないが良いか?」

 

「…うん。」

 

私はジャージを貰い風呂場でシャワーを浴びる。熱い湯が身体を流れる。この状況は完全にカップルのそれなのに。彼は全然そんな素振りさえ見せてくれなかった。幼馴染という関係が邪魔をしてるんだろうか。答えは出ない。

 

着替えて部屋に戻ると、彼は既に寝る体制に入っていた。私もベットに入り込みつぶやく。

 

「うら若き男女、密室、クリスマス、何も起きないはずがなく…」

 

「おいやめろ。そのネタはあかんやつや。」

 

私は黙って彼の背中に抱き着く。彼も結構飲んでいたみたいでお酒の匂いがする。

 

「くっつくな。いろいろ当たって変な気分になるだろうが。」

 

「当ててんのよ。…ねぇ。…あの時の事は話してくれないの?」

 

彼は少し逡巡したのち、大きなため息を吐く。ベットから起き上がり。煙草を持ってベランダに出る。

私もベランダの前に体育座りになった。

彼は私を一瞥した後、煙草に火をつけ一服する。携帯灰皿をもて遊びながら答えた。

 

「今もお前に話すつもりはない。もう一ノ瀬の近くには和也も海君もいる。…それでいいじゃねぇか。」

 

「……全然説明になってない。どうして彼らの話になるの?」

 

「…説明するつもりはないからな。察せ。お前が理由に気付いたら、俺は話すかもしれん。」

 

そう言って彼は紫煙を吐き出す。しんしんと降り積もる雪を見つめながら。

 

「…話すつもりなんてないじゃない…。」

 

「…ほらもう寝るぞ。」

 

彼は煙草を消し、ベットに入る。私も彼に続いて入る。抱き着いた彼の背中からはお酒と煙草と、ちょっと悲しみの香りがした。

 

 

私が朝、家に戻ったとき木ノ下和也に見られて盛大に誤解されたのは、また別のお話。

 




ご褒美イベントになるかと思いきや、悲しいクリスマスになってしまいましたね。

プレゼントの設定は透の性格的に50cm位ぬいぐるみと小型の煮沸型の加湿器です。

ちょこちょこお酒の描写入ったりしてるので年齢層のアンケート取ってみます。ぜひご参加ください。大学以上のネタが入ってたりするので…

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