それでは、本日もお楽しみください。
「レンタル彼女の練習?」
「そう。最近入って来た後輩の子なんだけど、お客さんからクレームが来ちゃう位人見知りなのよ。木ノ下和也にも練習はこの前お願いしたんだけど、まだまだ足りなそうなのよね。」
「そりゃ大変なこった。」
「で、アンタに練習台として彼氏役をやって欲しいってわけ。」
「…ほーん。レンカノの先輩も大変そうだねぇ。了解。んじゃぁ彼女の個人情報を分かる範囲で教えてくれ。人見知りしか情報ば無いのは流石にキツいんでね。」
「桜沢墨ちゃん。大学1年生よ。後輩ではあるんだけど、まだ彼女の事はあまり深くは知らないのよね。あとは人見知りの自分を変えたくて、このバイトを始めたって言ってたわね。」
「それでレンカノねぇ。荒療治過ぎやしませんかねぇ。」
「別のバイトをした方がいいかもだけど、彼女も考えてこのバイトを始めたんだと思うわよ。」
「さいですか。今回はストーカーは止めてくれよ。」
「…分かってるわよ。」
ーー透視点
と、いうわけでそう言ってちづるは家に帰っていった。
なんか最近デートする事が増えて来た気がするなぁ。グッバイ俺の安寧の灰色の日々よ。オフトゥンちゃん貴方が恋しいわ。なんっつて。
ーー墨視点
今日はレンタル彼女の練習です。私が人見知りなのを心配して水原千鶴さんが練習台として男の人を紹介してくれました。幼馴染だから好きに使っていいと言っていたけど、どんな人何だろう。知らない男の人は怖いです。
集合場所に行くと千鶴さんが言っていた特徴の人が待っていました。でも中々声をかけられません。恥ずかしいです…。彼もこちらに気づいたらしく、彼から声をかけてくれました。
「こんにちは、桜沢墨ちゃんで合ってるかな?俺は市倉透です。一ノ瀬…水原千鶴からは話は聞いてるかな?今日はよろしくお願いします。
彼はそう言って会釈してくれる。悪い人ではなさそうだ。
「…あ…え…さ…」
彼はそこから何も話す事はなかった。おそらく、私が話し始めてくれるのを待っているのだろう。彼の思いやりを無駄にしたくない。
「…さっ…桜沢…墨…です…。きょ…今日はよろしく…お、お、お願いします…」
凄い弱々しい挨拶になってしまいました。恥ずかしいです。
「あの…えっと…その…」
「ん?」
優しく声をかけてくれる。彼は待ってくれている。私が口下手なのを知って。私が勇気を出さなくちゃ。
「…どこに…行きましょうか…?」
「ん、じゃあ水族館にいこうか。あとタメ口で話そうよ。そっちの方が練習になるだろうし。」
「…うん…分かった。」
そういって彼は歩きだしました。時折、私の事を見て歩調を合わせてくれているみたいです。
「俺の話は彼女から聞いてる?」
「…お、幼馴染って言ってました…あ、あと、好きに使っても良いって。」
「…アイツも余計な事を言うねぇ。まぁ良いさ。」
千鶴さんからはオフレコでって言われて彼に対する愚痴?惚気?話を聞かされていたりします。幼馴染って言っていたけど、恋人じゃないのかな?
私は彼の手を握ります。レンタル彼女の最初の研修で恋人繋ぎをしてあげると、相手が喜ぶって言ってました。
「お、それはポイント高いねぇ。レンタル彼女についてはよく分からないけどさ。」
水族館に向かい受付を済ませてパンフレットを貰いました。彼はスマホを取り出して何か操作していました。
「ありゃ。ここの水族館早く来るとペンギンが近くで見れるサービスがあったみたいねぇ。今回は見れないみたいで残念。ま、いっか。」
水族館内を適当に散策した後に、私たちはイルカショーの会場に向かいました。前は子供たちに譲って、私たちは後ろ側の席に座って観戦しました。
「いやーダイナミックで面白かったねぇ。ちょっと休憩しようか。」
そういって彼と水族館内の喫茶店に向かう。結構メニューが豊富な店の様だ。彼はコーヒーとクレープを。私はカフェラテとアイスクリームを注文しました。近くの席を探して着席します。
「おぉ美味い、ここのコーヒーは当たりだねぇ。覚えとこ。」
このままだとデートじゃなくてただのお出かけになっちゃいます。私は勇気を出してソフトクリームを差し出しました。
「お、ありがと。…ん〜ちょっと高くて食べづらいかな。あと目をつぶらないでこっちを見てくれた方が好印象かな。」
彼は駄目な所はこうした方が良いよとキチンと指摘してくれます。いつもはこんな風に教えてくれる人がいないので新鮮です。
「んじゃ、こっちもお礼。どうぞ。」
そう言って彼は私にクレープを差し出してくれました。口の中にイチゴとクリームの香りが広がります。クレープを食べ終わった彼は立ち上がって、
「ちょっとトイレ。すぐ戻るからここで待っててね。」
彼を待っている間、周りの景色を眺めていました。ここには釣り堀もあるみたいです。今度来た時の参考にメモしておきます。
その後も水族館内を散策しました。彼はふわふわ浮かぶクラゲをジーっと眺めていたり、チンアナゴが出てくるまで待っていたりする姿が印象的でした。
「今度は墨ちゃんからもっと話しかけてくれると嬉しいかな。恥ずかしくて難しいかもだけど。内容なんて何でもいいんさ。相手と仲良くなりたいって気持ちを持って話しかけてくれる、その気持ちだけで嬉しいからさ。」
彼は優しい人です。今日も千鶴さんのお願いを聞いて私のレンカノの練習に付き合ってくれました。ただ、私は一つだけ気になることがありました。
「あっ…あのっ…。とっ、透さんは…千鶴さんのこと…どう…思ってるんですか…?」
彼の雰囲気が少し変わりました。鋭いような悲しむような視線を私に向けてきました。
「…それは一ノ瀬から指示された?」
「…い、い、いえ。わ、私が気になったから…聞いてみただけ…です…。」
話を聞いていると、千鶴さんは彼に対して好意があるように感じました。彼女はとても綺麗で強くて優しい人です。初対面の相手にする質問にしては踏み込みすぎで、不躾だったかもしれません。彼女が好意を持つ彼の気持ちを純粋に知りたかっただけなんです。彼の気持ちを聞いてみたかっただけなんです。
「…そっか。」
そのときの彼の笑顔は少し寂しそうに私は感じてしまいまいました。少しの間静寂が流れます。最後にする話ではなかったかもしれません。
「…ご、ごめんなさい…。」
「…いや、良いよ。墨ちゃんが純粋に気になっただけみたいだしね。んじゃ、また。今度はその類の質問はしないでくれると助かるかな。」
そう言って彼とは今日のレンカノデートは終わりました。彼には結局はぐらされてしまいました。でも彼の表情を見ていると、とても悲しんでいる様に感じました。彼はどうしてか彼女と距離を置こうとしているように見えます。彼の悩みを聞いてあげたい、彼が私にしてくれた事の恩返しとして。今度は彼の話を聞いてあげよう、そう決意して私は帰路につきました。
ーーその日の夜
「…恋人繋ぎしてたわねアンタ。」
「…お前見てたのかよ、結局ストーカーしてんじゃねぇか。もう彼のこと悪くいえねぇじゃんかよお前さん。」
「私は良いの、アンタが変なことしないか見張ってただけだし。」
「しねぇよ。それを世間一般ではストーカーっていうんだろ。彼女に見つかったら折角の練習が台無しじゃねぇか…」
「…フン。」
「何でそっちからお願いしておいて不満なのか分からんのだが。彼女が実際にレンタル彼女してんのこれからもストーカーするつもりか?」
「そのつもりはないわよ、今回だけ。」
「…さいですか。…で、何で俺耳かきされてんの?どういう状況これ?」
「墨ちゃんとレンカノしてくれたご褒美よ。男の子ってこういうの好きでしょ。」
「もちろん好きだが…そういう風に言うと台無しだぞ…。」
「そんなの知らないわよ。あと今度出かける時は私にもやってよね。恋人繋ぎ。」
「どうしてやらにゃならん?あれはレンタル彼女の練習だから仕方なくやってただけだ。」
「鼻の下伸びてたわよ。」
私は透の頭を小突く。
「あんな可愛い子と恋人繋ぎしたら誰でも伸びるわ。アホか。」
「ふーん。私と一緒にいたときはそんな事なかったと思うんだけど。」
「幼馴染だからな。別枠だ別枠。」
「…そう。今日は楽しかった?」
「楽しかったねぇ。水族館なんて一人で行くとこじゃないから行けて新鮮だった。」
「そう。今度私も連れてってね。」
「えぇ…。ま、いいけど。コーヒー美味かったし。」
今日の夜も更けていく。
彼の頭の感触を確かめながら、居なくなってしまった彼が今ここにいる心地よさを感じながら。
ちづるが和也の悪い所ばかり真似してしまっている気が…
原作での裏の関わり具合考えるとおり主、過労死するんじゃね?と思ったり思わなかったり。
どうしてもハーレムものって負けヒロインが出てきてしまいますよね。どうせなら全員幸せになれって思うのは私の我儘でしょうか?今作はその方向性ではありませんが、全員ハッピーエンドになる物語は他の作者に期待することにしましょう。
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