一ノ瀬ちづるに幼馴染がいたら   作:さっきのピラニア

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本日も駄文ですがお楽しみください。


2018年4月某日 病院

--透視点

 

 

ちづるからどうしても小百合おばあちゃんに会って欲しいと懇願された。どうしても彼女から強くお願いされたらしく、断り切れなかったらしい。

 

小百合おばちゃんに会うのはとても気まずかった。今更どんな顔をして会えばいいのか。一度ちづるから離れた自分に、彼女と会って話す資格があるのだろうか。

 

お世話になったあの人に責められるのが、辛かった。元気だった小百合おばあちゃんの弱っている姿を見るのは…もっと辛かった。

 

重い足を引きずり病院に向かう。病室の前で短く息を吸い込む。覚悟を決め、ノックをして扉を開ける。

 

「…小百合おばあちゃん…久しぶり。」

 

昔と同じ様子で、小百おばあちゃんは迎えてくれた。

 

「こんにちは、透君。よく来てくれたわねぇ。東京に戻ってきたってちづるから話は聞いていたけど、中々顔を見れなくて寂しかったわ。」

 

「…ごめん。」

 

「責めているわけじゃないの。せっかく東京に戻ってきたんだから、ちょっとだけでも顔を出してくれればよかったのに、と思っただけよ。」

 

小百合おばあちゃんの様子は昔と変わらなかった。ただ、点滴に繋がれた姿と、少し痩せこけた姿は、俺にどうしようもなく死期が迫ってきているという現実を突きつける。

 

「あと、こんなタイミングでいうのはズルいかもしれないのだけれど…」

 

彼女は申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。俺の目を真剣に、真っ直ぐ、真っ直ぐ見つめて。

 

「私はもう長くない。自分の最後が近いのは覚悟しているわ。…ただ…私が居なくなってしまうとちづるには家族がいなくなってしまうの。…たったひとりでこの広い辛くて厳しい世界に取り残されてしまうの。…あなたは弱い彼女も、最近の強い自分っていう鉄の鎧で必死に覆ってる彼女も知っているわ。」

 

「…うん。」

 

「あの時の事は透君の選択なのだから、私には間違っているなんて分からないわ。あなたの人生だもの。あなたが決めなくちゃ意味がないわ…でもね…もし…もし、私がいなくなった後にちづるの隣にいてくれるなら…」

 

彼女はとても弱弱しく、懇願するように言葉を絞り出す。

 

「どうか…どうか…ちづるを……よろしくお願いします。」

 

「………」

 

「今すぐに決めて欲しいわけじゃないの、和也君っていう頼もしい人もちづるの傍にいるのだから。」

 

「…そうですね…」

 

「…でもね、これは私の我儘になってしまうけれど、私は透君がちづるの傍にずっといてほしい。ずっと…ずっと彼女を見てくれていた貴方に。彼女の事を考えてくれた貴方に。…これは私の勝手な推測なのだけれど…透君がちづるから離れたのは、ちづるの為を思ってのことなんじゃないかしら?」

 

悪戯っこのような笑顔でそう言った。

この顔はちづるにそっくりだ。小百合おばあちゃんはやっぱりちづるのおばあちゃんなんだ。

俺はこの時、どんな表情をしていたんだろうか。

 

少しだけ最近の話をしてから、俺は椅子から立ち上がる。

 

「じゃあね、小百合おばあちゃん。時間があるとき、また話に来るよ。」

 

「待ってるわ。透君が好きなお菓子もいっぱい用意しておくから楽しみにしておいてね。」

 

「…うん。ありがとう。」

 

おばあちゃんは俺に向かってウィンクしてくる。この人があと50歳若かったら、この人に恋をしていたかもしれない。

 

 

病院を出る。あんなに重かった足取りがとても軽い。

心に刺さった棘が一つ取れた様な、そんな気がした。

 




ここは明確な原作との分岐ルートになります。ここでの小百合さんのお願いは和也ではなく透に向かうことになります。
14巻からの八重森との絡みとか内容とかが完全に捻じ曲がるのでどうしよう…どうしよう…週末練りますかね…

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