一ノ瀬ちづるに幼馴染がいたら   作:さっきのピラニア

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本日も駄文ですがお楽しみください。


2018年8月某日 喫茶店

ーー和也視点

 

クラファンの件もあって、水原とは確実に距離は縮まっていると…は思う。自信はないけど。

俺が彼女の事で一番気になることは、透さんとの関係だ。あの人はいい人だ。俺の事情は知ってるようだけど、人との距離感を分かってて必要以上に踏み込んだり干渉してきたりしない。ただ、透さんの意図が全く読めない。幼馴染にあんなに美人がいたら付き合っていてもおかしくないのにそんな素振りはないようだ。俺だったら絶対付き合ってあんなことやこんなことをしてる。透さんは必要以上に水原に対して踏み込んできていない節がある。どうしてだろうか?水原に聞いてみても良いけど、クラファン中の事もあり、地雷案件で彼女に愛想を尽かされるのは怖い。こんなとこでもチキンな所が出てしまうのか俺よ。直接聞いてみるしか答えは出なそうだ。俺はスマホを取り出して透さんに会えないかアポを取ってみることにした。

 

 

--透視点

 

先日、和也から連絡があった。

 

『話があるんですが、近いうちに時間取れますか?』

 

和也から連絡がくるのは珍しい…ことでもないが、わざわざ会って話をしたいって事だから、クラファンの事かいちづるの事だろう。前者だったら助かるのだが、こういうときって大体嫌な方の話になってるって相場が決まってるのよね。あるいは両方か。

 

 

 

--とある喫茶店にて

 

お互い待ち合わせをして中に入り注文する。

 

 

「すまんなこっちが場所決めちゃって。最近喫煙OKの店が全然無くてな。愛煙家に厳しい世の中になったもんだ。」

 

そう言って俺は煙草に火を点ける。ホントに愛煙家に優しくない世の中になってしまったなぁ。…戦士が二人出会ったら…勝負でしょう。まぁ俺はアラミド繊維のジャケットを着てないし、和也は身長2メートル越えのフィジカルモンスターでもないし、煙草を相手の顔面にぶつけて開戦するつもりもない。というかここ公園じゃなくて喫茶店だしね。勝負は始まりません!

 

「いや、大丈夫ですよ。飲み会とかで慣れてますし。…で、察しているかもですが、水原の事です。今まで1年とちょっと、出会い方はアレでしたが、俺は俺なりに彼女と接してきました。距離を縮めてきました。」

 

「出会い方なんて関係ないさ。関係は順調かい?」

 

「まぁ、それなりには。」

 

「そりゃ良いことだ。今後も仲良くしてもらえると助かる。」

 

「…透さんはそれで良いんですか?」

 

「…どうしてそんな事を俺に聞く?」

 

「俺が水原と付き合うのは本当に良いのかって事です。透さんも彼女の事を大切に思ってるんだと思います。それなのに俺みたいなポッと出の男が現れて横からかっ攫われるのを黙って見ているというか容認している様に見えます。本当にそれで良いのか聞かせてもらいたいです。」

 

「俺の答えは変わらないさ。お互いに仲良くして付き合うのであればそれで良し。彼女が和也か誰かは分からないけれど、一緒に歩いていくのに相応しい人を見つけられればそれでいいさ。」

 

「…そこに透さんの気持ちが無いじゃないですか…」

 

「…これが俺の気持ちだけど。」

 

「…付き合えたらですけど、俺は勿論水原を幸せにする覚悟があります!絶対に幸せにします!…でも…でも…彼女を見ていると思うんです…彼女を本当の意味で一番幸せにできるのは、透さん、あなたなんじゃないかって。」

 

「…俺はただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

「透さんがこのままなら俺が絶対に水原をもらいます。透さんに水原が本気で好きって気持ちがあるなら、本気で、本気で彼女に向き合ってください。」

 

「…」

 

「…悔しいけど…めっちゃ悔しいけど…水原が透さんを選んだんなら、…あなたが彼女を選んだんなら、…俺は二人を祝福します。」

 

「…そうか…」

 

「俺からの話は終わりです。何か敵に塩を送るみたいで嫌だったんですけど、透さんにはお世話になってますしどうしても伝えたかっただけです。それじゃあ、失礼します。」

 

そう言って彼は去っていった。

俺は再び煙草に火を点ける。

 

そんなこたぁとっくの昔から分かってんだよ。アイツの気持ちなんて。俺が向き合えていないことだって。向き合えてないことが俺の我儘だってことも。

 

…今日の煙草は…旨くねえな。くそが。

 

 

--病院

 

 

「…彼女にあの時の事を話そうと思う、あの時、そして今の俺の気持ちを。」

 

「…そう…それがあなたの選択なのね。…でも一つだけあなたに言わせて欲しい。人の心は99%の嘘で出来ているわ。人はね、本当の気持ちを世間体、自分の境遇、相手との立場で本当はこんな気持ちではなかったと相手にも自分にも嘘を付くこともできる。でも、一つの真実が実現できるなら、99の嘘を付いても構わないと私は思っているわ。あなたがどんなに嘘をつき続けても、最後の最後に真実を告げてくれることを願っているわ。」

 

「…」

 

俺は何も答えられなかった。一ノ瀬ちづるという光と、市倉透という影の存在。世間では光っている人物にもちろんスポットが当たる。俺は彼女の光に耐えられず、どうしようもすることができず、逃げてしまった。逃げ出してしまった。

 

 

この世界にいる殆どの人間は影の存在だ、自分ももちろんそうだ。俺はこの世界で、どうしようもなく、圧倒的にモブキャラだ。吹けば飛ぶような何にもない普通の存在だ。自分は影の存在から脱するべく、自分の才能を探した。現時点では何も見つかってはいない。俺が影から脱そうと藻掻いている間にも彼女の光は強くなっていく、離れていく。そうやって確実に前に進んでいく彼女を見ているのは耐え難かった。彼女の隣に居るべきは自分ではないよ、と世界が語りかけてくるようだった。

 




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