一ノ瀬ちづるに幼馴染がいたら   作:さっきのピラニア

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物語もそろそろ終盤ですね。

本日も駄文ですがお楽しみください。


2018年8月某日 あの場所

--透視点

 

 

俺はちづるに連絡を取った。話がある、と。

 

「ここに来るのも久しぶりだな。5年以上前か。」

 

そう言って俺は煙草に火をつける。

 

「…やっと話す気になってくれたのね。下らない理由だったら許さないわよ。」

 

「…分かってる。一つの俺のケジメとして、いつか説明したかった。かなり時間は経ってしまったが聞いてくれるか。」

 

「…うん。」

 

俺は煙草を取り出して火を点ける。彼女はその間何も言わなかった。一息吸い、俺は話す。

 

「まず進路に関してだ。あの時俺の学力で一番偏差値の高い大学を選んだ。唐突に話をしてすまなかった。泣かせてしまったしな。」

 

「…良くある理由ね…。」

 

「…あの時は必死だったんだよ。近くで入れる大学だと俺の学力が足りなかったからな。」

 

「…そう…」

 

「もう一つは俺はお前に不釣り合いな存在だと思ったからだ。だから離れた。…それは今になって一層強くなってると感じている。お前は俺から見たら、あまりにも眩しすぎるんだよ。あの時から1つの夢を決めてそれを追い続けるお前の姿は。」

 

煙草を一口吸う。今日はとても味気ない。

 

「年を取るにつれ、俺は臆病になってしまった。何も才能のない自分はどうしたらいいのか。時間ばかりが過ぎていく。時間は有限でタイムリミットが絶対ある。逃したら絶対戻れないチャンスもある。今、自分がこれに可能性をかけてもしダメだったらどうする。次何をやればいい?次にやったそれに賭けていいのか?才能がないのに続けていいのか?…多分、こんなことを考えている人間なんて五万といる。今日生きるのに精いっぱいの人から見たら何を贅沢な事を、と思うかもしれない。才能のあるやつからしたら。あいつまたバカな事やってんなって思うかもしれない。子供の頃は出来ること興味のあることがもっとたくさんあった。がむしゃらにやっても何も怖くなかった。でも今は怖いんだよ出来ること、出来ないことが少しずつ分かってきて、今できる事がどんどん少なくなって。そんでもう社会人になっちまった。大人になっちまった。」

 

彼女は何も言わず俺の話を聞いていた。

 

「俺にはお前の隣に立つ資格なんてない。お前には女優の才能があるんだろう。将来の日本を背負う大女優になる才能が。…才能もある、努力もしてきた。後はチャンスを掴むだけだ。だけど俺には何もない…何もないんだよ…。高校の頃、俺は3年間を陸上を賭けた。結局才能なんてないって分かってしまったけど、自分の…自分自身だけの努力で道は開けるって証明したかった。でも証明できなかった。努力ではどうしようもない事はいくらだってある。そして俺は全てを投げ出した。陸上も。過去も。お前の事も。…そんな俺がお前の隣に立つのは…不釣り合いだ…資格なんてない。俺が東京に戻って来た時は特に誰もいなかったが、今はお前には和也もいる、海君だっている。お前の事を認めて一緒に歩んでくれる人がいるじゃねぇか。…だからもうこの関係も潮時なんじゃねぇかなと俺は思っている。」

 

ちづるは俺を睨んで叫んだ。

 

「そんなの関係ない!私は自分で一緒に居て欲しい人を選ぶの!アンタと…透と一緒に居たいの!居てくれなきゃ嫌なの!…私をもう一人にしないでよ…もうひとりぼっち嫌だよ…」

 

彼女は声を絞り出す。俺に乞うように、願うように。

 

「これが今の…今までの俺の気持ちだ。お前が俺の事を思って色々してくれていたのは知っている。失望してくれたって良い。今までの関係を続けるのもお前の自由だ。俺は東京にいるし、お前の選択を俺は受け入れる。」

 

そう言って俺はその場を離れた。

帰り際コンビニに寄る。煙草二箱とビールをかごに入れて会計をする。ふとBGMが耳に入る。

 

 

『ずっと夢を見て、幸せだったなぁ

 僕は Day Dream Believer

 そんで 彼女はクイーン    』

 

 

今までの彼女との生活は夢だった。自分がこうあったら良いなと思う幸せな夢。そう思う事にした。また俺は彼女のいない日常に戻っていく。四年間できてたんだ。すぐに慣れるさ。

 

 

家に着くと、ベランダに出て煙草に火を点ける。

 

 

今までの関係を、居心地の良いこの関係を破壊してしまった。いや、良かったんだ。あの時の事を一度無かったことにして過ごしていた今が異常だったんだ。彼女が相応しい人の隣に居てくれるんだったら、それで良い。俺は今まで通りにすればいい。ちづると離れた時と同じ日常に戻れば良いだけだ。

 

 

 

一服を終えるとチャイムが鳴る。扉を開けると、ちづるだった。ちづるはまたここに来た。また裏切ろうとした自分の前に。

 

 

「…アンタの話は分かった…でも…私の気持ちは変わらないから…晩御飯作るの手伝ってよね。」

 

そう言って彼女は買いもの袋を手渡してくる。

 

いつも通りに俺の傍にいるちづるが、とてもありがたかった。

 




彼の気持ちを聞いて、彼女は変われるのでしょうか?彼との関係は変わって行くのでしょうか?

忌野清志郎(厳密にいうとTHE TIMERS)のデイドリームビリーバー。皆、一度は聞いたことのあると思います。忌野清志郎好きなんですよね。もう彼の新しい歌は聞くことはできませんが。。。彼の愛と平和を願った歌は今日も我々の世界に影響を与えている、そう信じたいですね。

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