学部の仲の良い友達から伊豆半島に旅行に行かないかと誘われた。他の友達もみんな行くし、空気を読んで参加することに。透にこの事を言うと「青春だねぇ」とか言っていた。何か腹が立ったので軽く蹴っ飛ばした。「あべしっ」とか呻いてた気がする。どこの拳の断末魔だ。
当日はちょっと体調が悪かったけど、旅行の予定は変えられないし、お金も勿体ないので参加することにした。
ここで大きな問題が一つ。旅行先に木ノ下和也がいた。しかも彼の元カノも一緒に。
私は一ノ瀬ちづるモードだったので。彼の事は初対面の体で挨拶した。
急に彼にコンビニのトイレに呼び出されて、元カノのヨリを戻しても気を悪くしないでくれとか言ってきた。何?私レンタル彼女よ?お客に本物の彼女ができても関係ないっつーの!どれだけおめでたい頭してるのと文句を言っていると、外から元カノの声が。焦って私は水原千鶴モードになった。今思い返してもあの選択は間違っていなかったと信じたい。彼が彼女を強引にでもコンビニの外に連れ出してくれればベストだったんだけど。あのヘタレは大事なところでポンコツだ。あと私が伊豆の生まれ?ちゃきちゃきの江戸っ子だわ。
流されるまま、彼の友人達と過ごすことになり。別れる話になって幼馴染との殴り合いがあった。彼曰く、ち〇こで恋してんじゃねーぞ、という話らしい。
彼の幼馴染に呼び出されて木ノ下和也の過去の話をされた。朝顔の話。現実は心折れそうになる事ばっかって話。現実に溺れて夢を見なくなったって話。彼は悪い奴じゃないって話。そして付き合ったお祝いにフェリーのチケットをくれた。
彼は幼馴染としてずっと木ノ下和也の隣にいた。今も隣にいて、間違った道に進もうとしたら正そうとし、彼の為に何ができるか考えている。
私は透の為に何かできているんだろうか?幼馴染として。一度彼から離れてしまった私は。彼は私に何かを隠している。誰にも言えない何かを。それは多分私の事。それを知らない限り、本当の意味で彼の隣に立てない。お互いの気持ちに蓋をしたままじゃ、この先に進めない。いつか彼に聞くことができるだろうか?聞いてしまったら彼はまた離れてしまうんじゃないか?本当に独りぼっちになってしまうんじゃないか?臆病な私が邪魔をして、前に進めない。
このまま幼馴染の気持ちを無下にしたくないので、木ノ下和也と一緒にフェリーに乗った。そこで私も限界が来てしまいフェリーから落下。咄嗟に彼に助けてもらったけど、彼も溺れてしまった。何とか事無きを得たけど。あの時は一歩間違ったら死んでいたかもしれない。今思うとゾッとする。結局学部の友達には後で急遽体調悪くなったから勝手に帰ってしまったと説明した。あまり深く聞いて来なかったので、理解のある友達で助かった。
「…で、体調が更に悪化したから俺を呼び出したわけだ。そりゃ誰だって体調崩すわ。」
透は私の部屋にいた。「体調悪いから看病に来て」と言ったら直ぐ来てくれた。
私はベットで完全にダウンしている。
彼はマスクをして完全防備している。彼曰く「風邪をうつされて、一ノ瀬がこっち来て無限ループするのが嫌」だそうだ。らしくもなくアルコールのウェットティッシュまで持参してる。
「風邪に良さそうなもの適当に買ってきた。お粥作るからキッチン借りるぞ。」
彼はそう言って料理を作り始める。ネギが見えたからネギ粥だろうか。
本当に今回は疲れたなぁ。私は天井を見ながら少し微睡んでいると、いい匂いがしてきたので目を覚ます。隣にはお粥を持った彼の姿があった。
「お粥ここに置いておくぞ」
「…食べさせて。」
「だが断る。」
風邪をひいているせいで甘えん坊スイッチが入っているのかもしれない。甘えん坊スイッチってなんだ。
「冷蔵庫に冷えピタ入れとくから、温くなったら交換しておけよ。あと、ここに塗れタオル用意しておいたから後で身体拭いておけ。」
「めんどくさい、拭いてよ。」
「だが断る。」
私は不満そうな顔をしたが完全に無視された。そりゃそうか。私は熱でおかしくなっているのかもしれない。
「ねぇ。」
「なんだ?」
「…今度、伊豆に旅行連れてってよ。今回の件で全然楽しめなかったからリベンジしたい。」
「…なんで俺が一緒に行かにゃならんのだ。」
「時々ご飯作ってあげてるでしょ。そのお礼頂戴よ。」
「…図々しいねぇ。…分かりましたよ、一ノ瀬お嬢様。じゃぁこの前泊まった場所教えてくれ。時期的に厳しいだろうが、予約取ってみるわ」
「……あともう一つ注文。同じ部屋にして。」
「…は?いや普通、男女別の部屋だろ。」
「幼馴染だし私は気にしない。」
「いや俺が気にするんだが、同じ部屋だぞ。」
「この時期に二部屋予約取れないかもしれないでしょ。」
「なぜこんなに注文が多いのか…。何?この後俺クリーム塗ってお酢振りかけられて食べられちゃうの?俺、白熊みたいな犬飼ってないんだけd「返事は!?」…はぁ、分かったよ。一部屋で予約しとくよ。」
何とか彼を説得できた。結構強引だったけど。旅行のリベンジしたい気持ち半分、旅行で彼の気持ちを知りたいのが半分。
「ねぇ、最後に一つだけお願い。」
「なんだ?無理な注文ならもう聞かんぞ。」
「…手、握ってて。私が眠ったら帰っても良いから。」
「…まぁ、それくらいなら。」
彼は私の手を握る。彼の手はひんやりしていて気持ちよかった。
昔、私が風邪をひいたとき看病しに来てくれたことがある。この時の私は彼に手を握ってもらっていたのを覚えている。後日、彼も風邪をひいて私が看病しに行ったんだけど。彼はその時の事を覚えていて、今回は対策してきてるのかもしれない。過去の反省は生かせる男のようだ。本音はちゃんと顔くらいは見せて欲しかったけど。看病してもらっている身だし贅沢か。
そういえば、彼に手を握ってもらったのは何年ぶりだろうか。昔は彼に良く引っ張られていた。彼の手はその時よりも、全然大きくなっていた。
もう一度彼の手を握り返し私は目を閉じた。
まさかのヒロインが看病されていくスタイル。初めて2000字超えた…
原作にファーストキスの表現がないか目を皿のようにして探したがなかったはず…はずだよね。どこかでこの話も書きたい(書けるとは言ってない)
本当は透をフェリーに乗せて助けてもらおう考えましたが、今後の展開に影響せずに書ける自身がなかったんじゃ…作者の文才が…文才がないばっかりに申し訳ない…。あと透が性格上絶対にこのタイミングで伊豆に来ないのじゃ…
オリ主が入ることで一つエピソードが増えます。
個人的なお話ですが、お盆休みは9日連続でテニスしながら、この作品を書いていました。あっという間のお休みでした。
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