うちのオペレーターが過保護過ぎる。   作:杜甫kuresu

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タイトルはキーワード。

せっかくここすき欄を催促したのでコメントしておきましょうか…………と思ったら連打してる人が居て開幕で爆笑した、そういえばそういう機能だ。
私もモスティマの一人称の部分は好きです。極端に可愛く出来ないのが逆にいい、いいんですよこれくらいで。最後にすこーしだけ優しいぐらいで丁度良いんです。連打するのも当然でしょう(ろくろ回し)。

あ、では本編をどうぞ。このコメントの置き場所に困ってます。


”エになるやつ”

「…………うっ。オリジムシを食べるなど、ニェンはどうかしている……」

「ドクターは情けねえなあ。しっかりプロのアドバイス通りにやったんだぜ? アレはよ」

「そういう問題か…………?」

 

 頬杖を付きながら二日酔いにも似た、唸り声のような溜息を零す。ドクターがこんな反応をするのも珍しい事だが、ニェンは横で見ながら呆れたように溜息を付いていた。

 

 というのもだ。昨日出されたニェンの料理が、おおよそ食せるとは思えないものだったのに起因する。題してオリジムシの旨辛煮込み鍋、オリジムシ本来の味付けについて色々忖度をしてもまだ食したいとは思い難い品名だ。

 元凶こそからから笑って食い尽くしてしまったが、一般人のドクターの胃には少し早すぎた。案の定、妙な頭痛や吐き気に苛まされての仕事となった。

 

「しかしありゃあスパイスが足りねえよなぁ~。旨辛ってやつは舐めてやがるぜ、辛味は多ければ多いほど美味いんだ! だろ、ドクター?」

「全く思わない。アレに加えて激辛など、人が食すものとは思えないな…………けほっけほっ」

 

 咳き込み方が、少し辛そうなものだった。ニェンは頭をかいて困ったような表情を描く。

 

「お前らの胃ってのは存外に繊細だな…………私は食べるってことに関しては、もっとこう。熱量とか、意地とかがあると思ってたぞ」

「だからって金属は齧らないし、其処らへんのキノコは拾い食いしない」

「あぁ~!? 私の料理が金属とかそこらのキノコと同じだってえのかぁ!?」

 

 喧嘩腰というよりは、”あんぐり”という形容が相応しい返事だった。どうやらドクターの物言いが相当にショッキングなものだったらしい、焦っているようにも見受けられるだろう。

 

「罵詈雑言を浴びせるのも悪いとは思う。だがはっきり言って、アレは並の胃が受け付けるものじゃない。オリジムシは食べ物ではないからな…………私は、今後遠慮させてもらおう」

「…………そうかぁ。うーむ、そこまで言われちゃ私も申し訳なくはなるな。悪い」

 

 だがな。

 そんな事を言ってニェンが目を光らせてドクターの方へと向き直る。経験則上彼は察していたが、大抵この目つきをしているニェンは碌な思案をしていない。

 

 彼女は退屈が苦手で、故に派手なことなども好む。聞くには相当長い年月を生き、良くも悪くもそれに飽いている。

 逆に考えると、彼女が生き生きとしているのは”相応におかしなこと”になるだろう。

 

「しかしアレの噛みごたえは悪くないぞ。後中身、肝とも肉とも言い難い感触がかなり面白かったぞ! 後は他の肉とは違う類のエキスが出てたもんだから、もしかしたらチーズタッカルビ風にしたら美味いかもしれん。私は趣味じゃないが、味噌汁の出汁に使うのも良いんじゃねぇか? いや待て、そう言えば今の話からするに食えないのかお前ら…………大変だな……生きるの飽きねえか…………?」

 

 背中を丸めながら、憐れみすら混じった視線をドクターに浴びせるニェン。普通、オリジムシを食せるか否かで生への飽きは問われない。当然ながら、食べないからだ。

 

 取り敢えず仕事に一段落ついたのか、げっそりしたドクターが椅子にもたれかかる。

 

「ふぅ…………まあ、オリジムシ入りは御免被るのだが……そのチーズタッカルビ? だったか、それは美味しいのか?」

「ん? ああ、ドクターは食ったことがなかったか」

 

 ニェンは目を丸くした後、すぐに納得した素振りを見せた。この男の娯楽に対する無頓着さは見れば分かる。

 

「美味いぞ~、つっても私も最近食べるようになったんだがな」

 

 二の句がドクターには読めてしまったような気がした。

 

「ドクター、食ってみるか?」

 

 ほら、予想通り。

 ニェンはよく、やってみるかと尋ねてくる。理由は知らないし、考えてみたところでドクターには察せられる自信がなかった。あまり人心には心得がない。ましてや人ならざるものであれば、尚の事。

 

 深い意味もないのかもしれないが、彼にとっては不思議だった。

 自分が関心を寄せられる”面白いもの”だとも思っていなかったからだろう。

 

「…………別に構わないが。あまり辛すぎると食事どころではない」

「大丈夫だって、心配すんな。オメーの好みの加減は掴めてきてるよ、昨日だって何だかんだ”辛すぎる”ってことは無かっただろ?」

 

 ニヤリとしてみせた鉛の瞳に、ドクターは納得の表情で返す。

 確かに舌に乗せてヒリヒリする程度では有ったが、味付け自体は随分口に運びやすかったような気はするのだ。それが余計に異物を胃に入れることになった事実はさておき。

 

 いつか彼女は言った、「辛味ってのは生き方なんだ」等と。曰く、丁度良い痛みと強烈な刺激が舌の上で“爆発”すると、人生の滋味豊かさについて悟れるそうだ。

 美学に則るなら、幾ら言っても丁度良い方が良いのだ。其処ら辺、無視はしても配慮できない人物ではなかった。

 

「ならまあ、別に問題はない」

「じゃあ食え。食って、遊んで、惚けて、もっと人生に色を付けろ。オメーは無色透明で、そりゃあビー玉みたいで細工としては上等だが……普通に生きるにゃあ。ちょいと、大変だからな?」

 

 真っ赤な指先でつまむような仕草をすると、ニェンがカラカラと笑う。

 ドクターは多種多様な評価を受けてもう慣れたものだが、ニェンのそれは存外に高いものであると直感で感じていた。その程度の見る目はないと、ロドスアイランドの指揮系統は握れない。

 

 客用のソファに寝転がると、尾をゆらゆら遊ばせて目を瞑る。

 

「何が楽しくてそんな不器用に生きんだよ。暇なときぐらい素直に興じておけって、人生は短いんだろ?」

「私の成し遂げたいことは…………その短い人生を、かつかつに使うしか無いものでな」

 

 それを聞くなりげたげたと、何がおかしいのか爆笑し始める。

 長く、大きく、何より心底おかしそうに笑っていた。ニェンの笑い声にドクターは反応を示さない、ただ静かにその終わりを待つだけだ。

 

 止まった。止まると起き上がり、今までとは全く別の――――――何だか末恐ろしい、壮大な背景に富んだ笑顔を孕ませる。

 

「あの娘が目をかけるのも分からなくはない」

「そうか?」

「分からねえのか? いや分からねえだろうなぁ、そうともさ。分かんねぇから良いし、分かんねぇから駄目なんだぜ。ドクター?」

 

 訳が分からないな、ドクターが溜息をつく。

 ふと時計に目を向けると時刻は昼へと近づいていた、相手方も気づいているのかニヤニヤとしている。

 

「まあこまけー話はどうでもいいや。ともかくいい人生はいい飯が必要だ、っつーか何だっていいことに越したことはねえ。オメーはいいものが手に入る場所にいる、勿体ねえだろ?」

「何でも良ければいいという話ではないような……」

「そうだ、誰でもじゃない。オメーは、そうなのさ」

 

 ドクターには言っている意味がよく分からなかった。けたけた笑うニェンの赤い手先が、彼の首元に絡みついてくるのを呆然と待つばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

『ニェン。取り敢えず映像制作はもういい…………いや、趣味としては結構だが』

 

 第一印象として、間違いなく早死するやつだった。

 これは誰かが何とかすればどうってもんでもなさそうで、あまり使いたくはねえが”運命”だろうと思う。鉄が朽ち果てるように、その無色透明はいつか汚される。

 

 刀っていうのは、真に純正であってはいけない。本当に強度が高く有って欲しいのならば不純物を僅かながら混ぜる。

 極東ではこの技術を早くから見出してたらしく、いやはやこいつらも侮れないと驚かされたもんだ。

 

 さておき、だとするならコイツは純正100%の金属って事。珍しく、尊く、されど脆い。根本的に一撃が足りない。

 

『おもしれーだろうがよ! 大きな火花に深い過去、後は一つまみに役者の魂を込めれば何だって名作だ!』

『創作論は私にはわからないが…………それはそうと、君には別の方面での協力を期待している。圧倒的だからな、その技術と戦闘力は』

 

 鍛冶なんてやってる手前、打ち甲斐のあるもんは何だって打ちたくなる。善意とか悪意とかじゃなくて、好奇心だ。まあそんなもんだろ。他のやつだってきっとそうだ。

 良い金属を見たら使いたくなるし、アイデアが出てくれば採用したくなる。

 

『んあ? ああ、アレか。まあ別に暇つぶしにはいいけどよ、どっちかっつーとそっちの技術者連中が私は好きかねぇ、そっちなら手が空きゃ勝手にちょっかいかけてやんよ』

『それは有り難い。君の”ちょっかい”で、沢山の人が助かる。代表して、先んじて礼でも言っておくか』

 

 私はこの男を初めて見た時から、随分久しい閃きで頭が包まれていた。歳月に食いつぶされたこの頭も偶には粋なことが思いつくらしい。

 

 無色透明は駄目だ。純正の金属も駄目。その鍛造物はいつか、自分に込められた力で壊れちまう。ならどうする?

 答えはいたってシンプル。難しい現代技術も、お小言っぽい哲学も、莫大な資金だって必要ない。冴えてるな、何十年ぶりかね、この冴えは。

 

『礼ならそうだな…………おいドクター、麻雀はやったことあるか?』

 

 私が色を垂らせばいい。簡単なことだろ? じゃあ面白いことをさせればいい。

 

 コイツに足りないのはつまり、生きる事そのものだ。人であること、愛されること、楽しむこと、戦うこと、其れ即ち生命たる所以の補強。

 鍛冶屋は無からは何も作れない。だがしかし。

 

『無い。付き合えと?』

『そーだ、物分りがいいやつは楽で助かる。そうだな…………ペンギン急便だったか? あそこの娘が面白そうだ、今居るんだろ? 呼んでこい、そちらのCEOさんも含めて徹夜だ!』

 

 いい素材が有れば、いいエンタメは作れる。間違いなし。

 なあドクター、お前はどんな”柄”になってくれるんだ?




オリジムシは食べ物じゃない(異端)。食べるか食べないか議論する生物でもない。
タッカルビ、という語源に基づくとタッカルビなる料理はテラにない可能性があるのですが、拘っても意味がないのでタッカルビという単語を使用しました。ニェンって好きそうじゃないですか、可愛いですね。私も好きです、辛いの苦手だけど。

あと個人的に、「ニェンが身内判定の人間に対して”オメェ”ではなく”お前”を使うか」どうかについてアンケートを取ります、ご協力いただければ幸いです。ボイスでは大抵敵以外にはオメェなんですけど、複数形で迷うんですよね。

ニェンはドクターに”お前”を使う?

  • オメェ一択
  • たまに使う
  • 割とあやふや
  • いいやお前がメインだ
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