やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。(大改訂版)   作:シェイド

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とりあえず15年前の話はここでやめます。
早く先の展開がやりたくなってしまった。
最低限の話はしましたし……うん、次はどこまで飛ばそうか……。


器と伸びしろ

「お兄ちゃん!!」

 

「……コマチ?」

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

「ぐああああっ!?」

 

「完全に傷の上に乗っかっておるな」

 

 ハチマンは【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院のベットで目を覚ました。

 黄昏の館に近い路地裏だったためか、起きてきたシェイニーがフィンに報告。すぐさま容態を確認し、ここに運び込んだ。

 遅効性の劇毒を食らっていたハチマンは死の危険性もあったが、なんとか一命を取り留めたのだ。

 

「……にしてもハチマン、一体何があった?」

 

「それは……」

 

 フィンの質問にハチマンが答える。

 よく分からない男に襲撃されたこと。その男のレベルは恐らく2であったこと。

 

「格好から察するに……今オラリオで危険思想を抱いている闇派閥(イヴィルス)の連中とみていいだろう」

 

闇派閥(イヴィルス)……?」

 

「ああ。ゼウス、ヘラという巨大派閥が消えてから表に姿を現した連中だ。今のところは大きな動きはないが、秩序を嫌い、世界を混沌に陥れようとしているらしい」

 

「なんか、その、曖昧だな……」

 

「まだまだ情報が足りてなくてね。勧誘されたという冒険者の話ではモンスター信仰もあったりと、多岐に渡って派閥が存在しているらしいけど……もしかしたらハチマンを襲ったのは極東派かもしれないね」

 

「極東派?」

 

 極東……何故か俺の記憶にある風習や食べ物が存在する地域か。

 そういや転移者だの異世界人だの言ってたなアイツ。記憶が奪われているだの世界の矯正力だの色々言っていたが、俺には親父と母さんとコマチと四人で暮らしてたんだ。意味わかんないこと言いやがって。

 

「極東派はあまり過激派ではなく、オラリオ自体にも興味がないと聞く。唯一関心を示すのが、世界の理を壊す者だけらしいんだけど……これがさっぱりでね」

 

「……そんな派閥もあるんだな」

 

 世界の理を壊す……俺の壊れた【ステイタス】も関係していたりするのだろうか。

 

「とにかく!」

 

 あ、ロキ居たんだ。

 俺のベッドの上でスヤスヤと眠り、頭を撫でているコマチとフィンしか視界に入ってなかった。

 珍しく静かだったのもあって全く気付かなかった。

 

「ハチマンが無事でよかったで」

 

「……おう」

 

 そのロキの微笑みは、神が眷属に見せる一つの顔なのだろう。

 慈愛の心を持ったロキのその言葉に、自然と心が暖かくなるのを感じた。

 

 

***

 

 

 治療院は三日で退院できた。

 ナイフから俺の身体に浸透してきた猛毒は、ダンジョン中層域に生息する【ポイズン・ウィルミス】の地上に進出した劣化種のものだと判明し、同じ解毒薬であっさりと治ったのだ。

 しかし、俺はLv.1のため発展アビリティである耐異常を習得しておらず、そのせいで後遺症にならないようにと入念に診てもらったため三日かかったというわけである。

 【ディアンケヒト・ファミリア】には高価な回復薬の他に、義足や義手なども販売されていた。冒険者として覚悟はしておくべきだと改めて思う。

 もちろん、そうならないように全力を尽くすが、コマチを守るためだったら……腕一本くらい安いものだしな。

 

「ただいまー」

 

「お、もう大丈夫なのかハチマン」

 

「しばらくは激しく体動かしたりすると危険かもしれないから、しばらくは運動禁止って言われたけど」

 

 最初に会ったのはノアールだった。

 本当にノアールに手ほどきしてもらっていて良かった。もし我流を貫いていれば、俺はあの男には勝てなかったはずだ。

 ……最後は自爆という、後味の悪い結末だったけどな。

 

「……よく生きて帰った!」

 

「……うっす」

 

 ノアールの笑みに、俺は一礼を返す。

 生きて帰る、まずノアールが俺に教えてくれたこと。

 それが守れて本当に良かった。死んだら何も残らない。死んだら守れない。

 だから、生きて帰る。

 

「そういや、ロキの奴が呼んでおったな。なんでも部屋に来いとな」

 

「分かった」

 

 ノアールと別れ、ロキの部屋に向かう。

 部屋ではロキが、ベッドの上で待っていた。

 

「帰ってきたなー、ハチマン」

 

「なんの用だ?」

 

「Lv.2相当の敵と死闘を繰り広げたんやろ?ならランクアップしとるかも分からへんし、【ステイタス】更新せん?」

 

 ランクアップ。

 器の昇華とも呼ばれるそれは、文字通り人間の可能性を広げるものだ。

 更に強くなれると言った方が簡単かもしれない。人間が神に近づいていく過程といったところか。

 

「じゃあ、頼むわ」

 

 そうして上半身を脱ぎ、ロキに更新をしてもらう。

 そして。

 

「……おめでとうやハチマン、ランクアップ出来るようになっとる」

 

「……これって、喜んだ方がいいのか?」

 

 淡々と告げるロキに、恐る恐る声をかけてみる。

 

「明らかに早すぎる……これ、公表なんてしたらハチマンは一躍時の人になること間違いナシや」

 

「……目立ちたくないんだけど」

 

 ロキに【ステイタス】を書き写した羊皮紙を受け取り、内容を見る。

 

ハチマン・ヒキガヤ

Lv.1

 力:S945→S966

耐久:F378→E401

器用:S921→S935

敏捷:SS1010→SS1048

魔力:D568→C607

 

 魔法とスキルに変化はなかったが……軒並み数値が上昇している。己の全力を長時間続けるとこうなるんだな……昨日のあれはまさに死闘だったし、死ぬかもと何度も思ったからな。そう考えれば妥当か?

 

「正直、ここでランクアップしてもええのかもしれん。というか、普通のファミリアなら即ランクアップや」

 

「……ってことは俺は違うと?」

 

「ウチのファミリアは戦力が揃っとるし、敵対派閥とも拮抗しとる。そこらの弱小ファミリアに喧嘩を売られるようなこともないから、じっくりと強くなれるんや。そこでなんやけど……ハチマンの【ステイタス】はまだまだ伸びると思う。【強者願望】の早熟効果がどこまで効くのかは未知数やけど、今回の伸びからしても相当伸びしろを残しとるはずや」

 

「そう、かもな」

 

「スキルを検証していく上でも、積み上げていく強さをもっと強固にするためにも、ウチとしてはランクアップは先延ばしにしてええと思っとる」

 

 ……恐らく、最短でのランクアップで常識を覆して、俺が目立ってしまうことも考えてのことだろう。もちろん、闇討ちされようが簡単に殺される気はないが、目立つよりは目立たない方がいいに決まってる。

 

「でも最終決定はハチマンに任せるわ。この力はハチマンのものやしな」

 

「……決めた。ランクアップは当分しない」

 

「……わかったで。ま、ランクアップおめでとさんやハチマン。非公式にはなるけど、古代からの時代の中でも多分最速のランクアップ記録やと思う。誇ってええで」

 

「……おう」

 

 こうして、俺のランクアップは一旦お預けとなり。

 しばらくの間、鍛錬を積む時期が続くのであった。

 




シェイニーは基本的に八幡の影の中に異空間作って寝ています。力を与えた代わりに休眠しているような感じです(ご都合主義)。
次話から時が飛びます。
やっぱり飛ばすならアイズ入団のところでしょうかね……。
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