やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。(大改訂版)   作:シェイド

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しばらくは同じような話が続くんかなぁ。


訓練と正義

「……なるほどな」

 

「あれ、精霊じゃないの?」

 

 きょとんとした様子で首を傾げているアイズ。

 フィンが言った特殊ってのはこれのことか……。

 

「アイズ、一つ聞きたいんだが」

 

「何?」

 

「こんな目の腐った精霊がいると思うか?」

 

「いない」

 

 即答かよ。いや、そう答えさせようとしたのは俺なんだけども。

(シェイニー、起きてくれ。ちょっと異常事態が起きた)

 心の中だけで問いかけると、少しして反応が返ってくる。

(なにー?って、目の前の女の子……精霊の反応がする)

 え、アイズが精霊だったのか?

 

「お前の方こそ、精霊じゃないのか?」

 

「違う。私のお母さんが、精霊……」

 

 お母さんというフレーズを口にしたアイズは、次の瞬間には拳を握りしめ、歯を食いしばるような様子を見せた。

 お母さんが精霊……ってことは父親がヒューマンで、半人半霊ということになる、のか。

 

「そうか。フィン、これのことか?」

 

「……そうだね、精霊に一番近しいのはハチマンだ。教育係としてリヴェリアがついているが、戦闘訓練は僕やガレスだけだと時間が限られているからね。ノアール達にもお願いするつもりではいるけど、ハチマン、君にも協力して欲しい」

 

「……わかったよ」

 

「ほんと!なら今すぐ剣を!」

 

「……中庭で待ってろ」

 

「おや?強制任務がまだ終わってないんじゃなかったのかな?」

 

「……すみません、逃げたくて嘘つきました」

 

 ニコリと笑みを浮かべるフィンに、俺は視線を逸らしながら答え、迅速に執務室を後にした。

 

 

***

 

 

「やああああ!!」

 

「甘い」

 

「ほぐっ!?」

 

「脇をもっと閉めろ。そんで肩の力を抜く……そうだな、一度両肩に力を入れてみろ」

 

「……で?」

 

「で、解放する」

 

「……何も変わってないよ?」

 

「そうか?なら、もう一度かかってこい」

 

「やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「遅い、もっと速くだ」

 

「あああああああ!!」

 

 先程よりも明らかに鋭くなったアイズの剣を受け続ける。

 結局、アイズに剣を教えることになってしまった。人に教えることなどコマチ以外にしたことなかったから不安もあったが……剣速は早くなってるし、問題はなさそうである。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「終わりか?休憩にしても……」

 

「休憩なんていらない!もう一回!」

 

「ったく、少しは落ち着いて視野を広げるような特訓をした方が良さげだな」

 

 ぼやきつつも、ハチマンも時間の許す限りアイズの訓練を行うのであった。

 

 

***

 

 

「お兄ちゃん?もしかしてロリコンなの?」

 

「えぇ……」

 

「そうなんよコマチー、ハチマンなぁ、幼女のような体形に興奮するらしくてなー。ウチも何回か血走った目で見られたこともあるんよ……あれは完全に獣の目やったな~」

 

「主神に手を出そうとか……この馬鹿、ボケナス、ハチマン!」

 

「手を出してないし、出す気もない。それにロリコンでもねえって。あと、俺の名前は悪口じゃないからね?」

 

 アイズとの訓練の後(アイズのリヴェリア先生による勉強時間がきたことによる)、一人で部屋で手持ちの道具や装備を確認していると、ロキとコマチが部屋を訪ねてきた。

 訪ねてきて早々言い始めたのがこんなことなのだが。

 

「アイズちゃんって7歳なのに凶戦士(バーサーカー)の如くモンスターを殺したいって思ってるんでしょ?戦い方なんて教えていいの?」

 

「……教えた方がマシなんだよ」

 

「アイズたん、いつでもダンジョンに向かう気満々でなー。ウチとしては、あれは見過ごせんかったんや。もし他のファミリア……其処らの弱小ファミリアに入ってダンジョンに潜っとったら……」

 

「……確実に死んでただろうな」

 

 正直、死に急いでる感がこれまで見てきたどの冒険者よりも強い。

 アイズがどう考えているのかは分からないが、一長一短で身に着くほど、強さというものは簡単に手に入るものではない。俺だって剣技だけで言えばノアールにはまだまだ敵わない。模擬戦で勝つのは、ただ【ステイタス】の差ってだけだ。

 アイズの戦闘スタイルは、よく見る新人冒険者と同じ。ただ得た力を子どもの癇癪の如く振るうお粗末なもの。

 実際にダンジョンに連れて行ったというリヴェリアがダンジョン禁止令を出したってことは、恐らくすぐに死んでしまうと危惧したからなんだろう。

 

「で、なんか俺に用か?さすがにそれだけを言いに来たんじゃないだろ?」

 

「コマチは、お兄ちゃんにロリコン疑惑がかけられることを心配して来たのでありますっ!」

 

「敬礼すんじゃねえ、アホ」

 

「あだっ」

 

「……少しこれ見てくれるか?ハチマン」

 

 アホな妹にチョップをした後、ロキが渡してきた紙を受け取り、内容を見る。

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

Lv.1

 力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

《魔法》

【エアリエル】

・付与魔法(エンチャント)

・風属性

・詠唱式【目覚めよ(テンペスト)】

 

《スキル》

復讐姫(アヴェンジャー)

・任意発動

・怪物種に対し攻撃力高域強化

・竜種に対し攻撃力超域強化

・憎悪の丈により効果向上

 

「……なるほど」

 

「魔法はハチマンの【悪夢】に酷似しとる。そして問題はスキルや。こんな強力なスキルはほぼ発現せん。どれほどの強い憎しみを持っているか、想像するだけでも嫌になるで」

 

「超ってどんだけだよ……」

 

「レアスキル中のレアスキルには間違いないやろうな。だからこそ、魔法といいスキルといい、アイズたんに教えるわけにはいかないんや」

 

「こんなの教えたら絶対無茶し続けるよ……」

 

 復活したコマチが紙を横から覗き見つつ呟く。

 ……アイズ()、過去が重そうだ。

 

「だからハチマン、しっかりみてやってくれんか。もちろんいつでもとは言わん。せやけど、気にかけてはいて欲しい。目的は違えど、強さを求める者としても頼むわ」

 

「……はいよ」

 

 ロキの真剣な目に、珍しくまともなお願いだったため普通に返事をしてしまった。

 ……自分のことで精一杯なところではあるが、なんとか両立させるしかねぇか。

 

「おお!お兄ちゃんが珍しく素直!今のコマチ的にポイント高いよ!」

 

「そのポイントを貯めるとなんかあんのかよ……」

 

 コマチの謎なポイント制は放置して、道具の確認を続けたのであった。

 

 

***

 

 

「またかよ……」

 

「死ね、異世界の者よ。お前の存在はこの世界に混沌をもたらッ!?」

 

「それもう飽きたっての」

 

 闇派閥(イヴィルス)の奇襲……恰好から察するに極東派だと思われる連中の攻撃を回避し、反撃を食らわせ意識を失わせる。

 これで本日四度目。毎回Lv.2以上を向けてくる奴らの総戦力が知りたくなってくるところだが、拠点が巧妙に隠されているのか未だに闇派閥(イヴィルス)の本拠地は見つけることが出来ていない。

 

「あっ!そこにいる腐った目の男!まるで【闇王子(ダークプリンス)】みたいな風貌ね!」

 

 大半の連中を自爆できないように縄で縛り終えた時、前方から近寄ってくる少女に気づいた。

 真っ赤な髪を揺らしながら手を振ってくる少女は、近頃躍進を続ける【アストレア・ファミリア】の団長、アリーゼ・ローヴェルだった。

 最近Lv.3にランクアップを果たした彼女は、笑顔を浮かべたまま他団員を置いてけぼりにしてこちらに近づいてきた。

 

「……まるでじゃねぇ。本人だ、本人」

 

「あら、奇遇ねハチマン!」

 

「さっきのは悪口に入らねえのかよ……」

 

「悪口?どうしてこの完璧美少女である私が悪口を言うとでも思ったの?私は事実しか言わないわ!」

 

「それが心をえぐってくるって話で……あーもういいや、なんでもねえよ」

 

「変なハチマンね!」

 

「あれ?俺がおかしかったの?」

 

 だが、アリーゼが言っていることはオラリオの多くが思っていることでもある。

 俺の二つ名である【闇王子(ダークプリンス)】。俺に全く持って合わない王子というワードに、神々は何考えてんだと当時は思ったのだが、ロキによると決まった経緯にあるんだとか。

 まず、女神フレイヤが興味を持ち、かつロキの眷属であるという点から適当なおふざけ二つ名は付けることが出来ない。

 しかし、俺のイメージについての話し合いの際、どこのファミリアかは分からないが……闇の波動を纏ってモンスターを大量虐殺する目の腐った男という、正直否定できない内容が語られたことがきっかけで【腐眼】なんて二つ名をつけられそうになったとこをロキとフレイヤの笑みで取り消し、今の二つ名に落ち着いたという過程が存在していたらしい。

 加えて、それが何故か都市内で広まったせいで一部の冒険者からは揶揄い半分に【腐眼】と呼ばれる始末だ。

 そう考えればアリーゼはまだマシな方……だしな。

 

「アリーゼ、この方は【ロキ・ファミリア】の【闇王子(ダークプリンス)】じゃないですか!も、申し訳ありません、うちの団長が迷惑を……」

 

 アリーゼの後ろから走ってきたエルフの少女が、俺に向かって頭を下げてきた。

 見たことない顔……あ、少し前に入団した奴か。前にアリーゼが言ってた超堅物エルフのリュー・リオン。

 

「リュー、別にいいのよ!ハチマンには何言っても問題ないわ!」

 

「お前、マジで俺のことなんだと思ってやがる……」

 

「目が腐ってて、面白いのにめっちゃ強い人!」

 

「必ず罵らないと死ぬ病なの?ねえ?」

 

 ま、アリーゼとは最初からこんな感じだからもう慣れたものなんだけどな。

 ロキに連れられ、神アストレアとの茶会に行ったある日のこと。

 アストレア様が連れてきたのが、目の前にいるアリーゼだったのである。

 そのファーストコンタクトで、出会いがしらアリーゼが俺に指をさして、こう言い放った。

 

「どうしてここにゾンビが!?」

 

 アリーゼの一言に、少ししてロキは大笑いし、アストレア様も思わず笑いだし、俺が更に目を腐らせ、それを見たアリーゼがアストレア様にゾンビはグールだった!とか言うもんだから……ロキの笑いが止まらず、混沌としたお茶会になってしまった。

 それからというもの、アリーゼは俺を見かけるたびに絡んでくる。一部の冒険者では俺たちの掛け合いを見れたらいいことがあるという謎の風習まで出来上がってる始末。

 神々は何故コイツに【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】という二つ名を与えたんだろうか……いつでも正直なところや正義感の強さからだろうが、純粋な言葉は時に人を傷つけることを知ってもらいたいものだ。

 

「団長ー、リオンー、後始末終わったよ!」

 

「はーい、今行くわ!それじゃあハチマン、また会いましょう!」

 

「しばらく顔見なくていいわ」

 

「もう、照れなくてもいいのよ!」

 

 じゃあねー!と手を振りながら仲間たちがいるであろう場所に帰っていくアリーゼと、俺に一礼してから後を追うリオン。

 ……アイズのこと、アリーゼに相談……いや、アイツもコマチと同じでロリコンとか大声で叫びそうだ。やめよう。

 俺は極東派の連中を引きずりながら、指導することになったアイズのことを考えるのであった。

 




無理矢理?それはいつものことだよねっ。
次の話で時をちょいちょい飛ばしながらアイズのランクアップ、フリュネ襲来、【アストレア・ファミリア】との絡みを出したい。
その次は……アストレア・レコードの話に突入ですかね。
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