やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。(大改訂版) 作:シェイド
今回はハチマンやコマチの謎について少し開示。
どうして彼らがこの世界にいるのか……みたいな?
「ったく、どうしてフィンは俺をここに派遣したんだよ……」
「あー!【ロキ・ファミリア】から一人寄越すっていうのは貴方だったのねハチマン!」
「【アストレア・ファミリア】全員いるじゃねえか……」
闇派閥の襲来、三か所同時に起きたその対処のために、現在『遠征』中の【フレイヤ・ファミリア】が抜けた穴を【ロキ・ファミリア】が戦力を分散させて対応しているのである。
……どうせオッタル一人に潜らせて、残りの幹部連中は『戦いの野』でお互いに戦ってそうだが、確かめる術がないので追及することは出来ない。
ま、経験を積む、強くなるという意味合いでは闇派閥では物足りないのは共感できる。俺とコマチだけは極東派の狂った奴らに狙われているので一概には言えないのだが、他は恐らくそういったことはない。
だからこの住居地区に派遣され、やってきたのだが……フィンの奴、アストレアの連中がここにくると分かってて俺を派遣しやがったな。
闇派閥の対処を終え、後始末をしているとアストレア眷属に話しかけられる。
「おいおいマジだったのかよ。【闇王子】なんて大層な名前つけられた奴が【腐眼】なんて異名を持つ理由が分からなかったが、本物見たら一発で納得出来たんだけど」
「ね?だから言ったでしょライラ!ハチマンは目に呪いがかかっているのよ!」
「失礼な奴らめ……」
「も、申し訳ありません【闇王子】!二人とも彼に謝ってください!」
「「え、なんで?」」
息ぴったりだなこの二人……あ、いや違うな。【
アリーゼ?コイツは当然素である。
「な、なんでって人の容姿を貶すなど、人としてやってはいけないことでしょう!?」
「貶してなんかいないわ!ハチマンの目は特徴的ねって話をしてるだけなの!」
「いや、さっき呪いがかかってるとか言ってたよね……」
ポンポン特に考えずに発言してくるから、たまに物凄いダメージを負わされるんだよ。正義を掲げる連中がどうしてこんなに濃い面々なのだろうか……。
「あ、あの!」
「ん?」
「【闇王子】ハチマン・ヒキガヤさん!ずっと前からファンでした!あ、握手してくれませんか!?」
「え、あ、お、おう……」
後ろにいた他の眷属の中から一人のエルフが前に出てきて、突然そんなことを言ってきた。
冒険者は『偉業』によりランクアップを果たし、二つ名をつけられる。加え、上のレベルに上がるほど、知名度は段階的に上昇していく。
代表的なのはフィンだろうか。フィンは自身の野望のために、ロキに頼んで【
人気も人それぞれだ。リヴェリアはその神すらも超えうる凄まじいまでの美貌と王族であること、唯一の魔法属性により9つの魔法を操ることから、恐らく世界の魔導士の中で最強を誇るため、人気は高い。
ガレスは男性人気が凄まじい。酒の飲み比べで他の冒険者たちと親交を深めていると言うこともあるが、やはり男らしさが一番の理由だろう。
俺の妹、コマチも人気が凄い。二つ名の【
……俺?いやさっきの反応で分かるだろ。人気ねえよ。
曰く、暗い、怖い、目付き悪いの三拍子。
だから、俺のファンと名乗る奴は貴重なのだ。
「なあっ!?」
「【アストレア・ファミリア】団長、団員に男を取られる……情報誌にでも提供したら超喜ばれそうな光景だな」
「はぁ……厄介ごとがまた増えるではないか」
「え、えっと、前にダンジョンで助けてくださり、ありがとうございました!ヒキガヤさんは本当にかっこよくて!Lv.4で深層の『階層主』を一人で倒したとか、【フレイヤ・ファミリア】の【猛者】と引き分けたとか、本当に凄いと思います!尊敬してます!」
「お、おう。なんだ、その……サンキューな」
「い、いえ!私が一方的に憧れているだけなので……」
もじもじしながらこちらを見つめてくるエルフの少女。なんか顔赤いけど大丈夫なんだろうか。
それにしても、こんな風に真正面から言われたのは初めてだな……やべっ、にやけそう。
「……」
「……なぁ、あれガチギレしてね?」
「ああ、ちょっと離れた方が良さそうだ」
「アリーゼ……」
この子、俺の目とか気にしないのだろうか。世間からの評判はあまりよろしくない俺だからつい勘ぐってしまう。
俺の『偉業』や他派閥との抗争が異常すぎて疑われているというのは分かっている。早熟スキルなど前代未聞だったろうし、何より【ステイタス】の公開をする冒険者なんていないからそれすらも知られていない。
それでもアストレアの連中はそれを聞いてこない。アストレア様はやはり神か。いや神なんだけど、こう、神の中の神といいますか……まぁオッタルと引き分けたってのはデマなんだけどな。
あれは実質完全敗北したようなもんだし。
「その、今度一緒に食事でもどう、ですか?」
「……い、いいぞ」
「ありがとうございます!」
食事の誘いについ乗ってしまったが、エルフの少女が喜んだ様子で他の団員の元に向かったので今更断るのも気が引けるし……仕方ないな、コマチに相談してみるか。
「ハチマン」
「あ?なんだアリー……」
「ハチマンはセルティのような女の子が好きなのね!?」
「はあ!?」
「そうなのね!そうなのよね!?いきなり目の前で手を握った挙句食事の約束!?」
「お、おい、揺らすのはやめてくれ……」
「初対面じゃないにしてもデレデレしすぎだわ!!」
ハチマンの肩を両手でつかみ、ガンガン揺らすアリーゼ。
されるがままのハチマン。
「……これで無自覚ってどうなってんだよ、このあほ団長の脳みそは」
「団長が狡猾になったら、それはそれで嫌だがな」
ライラは呆れ、輝夜は面倒くさそうに息を吐く。リューはこの光景を見て唖然としているが、他の団員からすれば既に見慣れた光景だ。
……セルティは未だに自分の世界に浸っており、まさか自らの行動が団長を混乱させていることなど思ってみていないのだが。
「目がどんどん浄化されているのも気味が悪いわ!」
「浄化されるのはいいことじゃないのかよ……」
結局、様子を見に来たフィンが場を収めるまで、アリーゼに詰め寄られ続けたハチマンであった。
***
「……起きたのね」
「……誰だ?」
「あら、寝ぼけて脳まで退化してしまったのかしら。退化するのはその目だけにしておきなさい」
「寝起き早々これかよ雪ノ下……」
「ヒッキ―!もうそろそろ到着するって!」
「……おう」
「先輩、なんか目が凄いことになってますよ?まるでゾンビが進化したみたいです!」
「ついにゾンビ超えちゃったよ……」
「お兄ちゃん!ちゃんと雪乃さんたちの言うこと聞くんだよ?」
「俺お前の兄だよね?」
「ヒキタニ君、今日はよろしく頼むよ」
「俺としては全然よろしくしたくないんだけど」
「キマシタワー!!」
「ちょ、姫菜鼻血出てるから!」
「っべー、この面子で神社とか超アガルっつーか?最高っしょ!」
「あはは、やるのはお手伝いだけどね」
「戸塚、お前がいてくれるだけで俺は幸せなんだ!」
「ヒッキーキモイ!!」
「いい感じに盛り上がっていてくれて助かるよ」
***
「……はぁ」
黄昏の館にある自室で目を覚ます。
最近よく見る夢だ。
初めて見る顔のはずなのに、どうしてか名前を知っている複数の人間。相手もこちらの名前を知っている様子だった。
断片的にしか浮かんでこないせいか、毎回彼女らと俺が何をしたのかが分からない。神社で手伝いをすることは分かっているのだが、まず神社自体を俺は見たことがないはずなのだ。
なのに、どうして記憶にある?
「コマチもいたが……コマチが見た夢とはまた違う感じなんだよなぁ」
コマチもたまに見るらしい。俺たちを知る人間たちとの交流、俺たちも相手のことを知っている様子だった。
前世の記憶とも考えられたが、神社と言えば極東にある。それになぜあそこまで極東派に俺たちは命を狙われる?
……やっぱ一度、極東に行く必要がありそうだ。
「にしても案内が欲しいところだな……あ、そういやアリーゼのとこの副団長が極東出身だったっけ?ちょっと頼んでみるか……」
そして一人で【アストレア・ファミリア】の本拠に赴き、今度は輝夜に話に行ったことでアリーゼが爆発したのはまた別の話である。
アストレアの眷属残り七人の詳細が知りたいと思う今日この頃です。
次からようやくアストレアレコード編、大規模抗争に入ります。
続の方も新章に入らないとな……。