やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。(大改訂版)   作:シェイド

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アストレアレコード何回見ても泣いてしまう……


訓練と勉強

 俺はダンジョンに潜る傍ら、【ロキ・ファミリア】の団員に剣を教えてもらったり、戦闘での動き方だったり、文字だったりを教えてもらうことになった。

 フィンに紹介されたのはノアールさんという初老の人だった。

 

「ノアールには僕も新米の時にお世話になってね。ハチマンも戦い方からダンジョンでの心得などを教えてもらうといい」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「うむ。フィンからある程度のことは聞いておる。儂には精霊などさっぱりなんでな。儂が教えられるのは技と駆け引き、それから先人の知恵と言ったところだ。儂との訓練では魔法は禁止する。いいな?」

 

「はい」

 

 要するに魔法に頼るなってことだろう。リヴェリアにも言われたことだが、魔法は使いすぎると精神疲弊(マインドダウン)を起こし、気絶してしまうらしい。これが家の中などならまだしも、ダンジョンで起こしてしまえば命にかかわってくる。

 さらに、昨日ロキに【ステイタス】を更新してもらったところ……

 

ハチマン・ヒキガヤ

Lv.1

 力:I0→I10

耐久:I0

器用:I0→I7

敏捷:I0→I3

魔力:I0→22

 

 魔力の数値だけ異常なまでの伸びを見せていたのである。

 他の数値は概ね他の冒険者と変わらないらしいが、魔法を行使しただけでこの伸びだ。かなり強力な魔法な上、精神力(マインド)をかなり消費するということが分かったためしばらくは禁止とされてしまった。

 リヴェリアとの勉強の時に少しずつ使用していって様子を見ることになっている。

 

「では早速始めるとしよう。儂は優しくはないぞ?」

 

「お願いします!」

 

 モンスターを駆逐するのが俺の目標。

 俺たちみたいな人間をもう生み出さないように、コマチを守っていけるように。

 

「じゃあまず、館内の雑巾がけから始めるぞ」

 

「へ……?」

 

 

***

 

 

「うおおおおおおおっ」

 

「もっと早く!もっと丁寧に!」

 

「うおおおおッ!」

 

 俺はノアールさんに言われて大きい館内の至る所を掃除することになった。

 掃除自体は家でもやっていたし、雑巾だって使ったことはある。

 だが……

 

「ほっほ、綺麗になっていくなぁ」

 

 なんとなくこれ修行と関係ない気がするんだけど!

 

「うりゃあああ!」

 

 隣ではコマチも同じように雑巾がけをしている。

 だが【ステイタス】の差も少しだけあり、俺の方が速い。

 

「ふはは、俺は雑巾がけを極めてる男だっ」

 

「お兄ちゃんキモい」

 

 午前中四時間ほど雑巾がけをしていたせいかテンションがおかしいことになっていた俺だったが、コマチがゴミを見るような目をしていたのですぐに冷めた。

 キモいとか実の兄に言っちゃ駄目だろ……いや、実の兄だからこそ言っていいのか?

 昼食を食べた後、コマチとともにファミリア兼用の図書館へと向かう。

 そこでは、すでに講師であるリヴェリアが数冊の本と紙を持って待っていた。

 

「ノアールに掃除させられたらしいな。懐かしい記憶だ……」

 

「…ってことはリヴェリアさん達も?」

 

「ああ。私にフィン、ガレスも新米冒険者の時にな……地獄だったな、本当に……」

 

 どこか遠い目をしているリヴェリアを見て、これからなにしろと言われるのか恐怖を抱いた。

 コマチは興味深そうにへぇ~とした感じでしかなかったが。

 

「では、今日からは共通語(コイネー)について学んでもらうぞ。そうだな、半年ぐらいで不自由ない程度には使えるようになる」

 

「勉強ですね!頑張ります!」

 

「うっす」

 

 明らかに態度に差があるものの、二人ともしっかりと取り組む気のようであったからか、リヴェリアは特段苦労することなく共通語(コイネー)を初めとして、ダンジョンについても教えてくれるようになった。

 それにしても……どこかで見たことあるんだよなぁ、この文字。

 名前は確か……日本語だったか?

 

 

***

 

 

「おいおいどうしたハチマン!短剣を振るう腕が下がってきておるぞ!」

 

「すんません!はっ!」

 

「もっと肩の力を抜け。自然体で早く振るう、それを心掛けろ!」

 

「はいっ」

 

 ノアールさんによる訓練は至ってシンプル。

 自分の形になるまで、剣を自分自身の一部であると思えるまで素振りをすること。

 人それぞれで最終的な形は違うらしいが、模範的な構えや振り方を身に着けるところから始めるべきと言う。

 基礎基本が大事だってことだろう。何回も言われてやらされているから理解している。

 

「ふむ……とりあえずあと500回は両方とも素振りをしておけ。儂は少し外すが……サボるなよ?」

 

「はいっ」

 

 サボるなよと釘をさされたが、強くなるためには基礎基本が大事だ。俺は親父に少し教わっていたとはいえ受け身の取り方ぐらいしかまともにできない。武器の振るい方なんかはほとんど我流だ。それを綺麗な正しい形に矯正してくれているのだから、練習あるのみである。

 しばらくの間一人で剣を振るっていた。

 目の前にモンスターがいると仮定し、イメージした状態で切り裂くように短剣を振るう。

 そのうち数えるのも忘れて両方を連続で振るったりしていく。

 力任せに薙ぎ払うのではなく、一撃一撃のキレ味を最大限にするように。

 

「さて、どんな様子……ほう」

 

 ノアールが帰ってきたにも関わらず、集中して短剣を振るい続けるハチマン。

 

「中々根性がある、それに才能もありそうだな……いい冒険者になるだろう」

 

 ノアールはその姿を見て感想を告げるのであった。

 しかし、わざわざ取りに行ったものを使わせてみることもしなければならないと思い、ハチマンに素振りをやめさせて取ってきたものを見せる。

 

「それは……」

 

「剣だな。お前が使っている短剣ではなく、長剣だ。これは儂が若い頃に使っていた剣だが……お前にやろう」

 

「え!?」

 

「動きから見ていて思ったのだ。お前は短剣より長剣の方が多分使いやすいはず。まぁ、どんな武器でも扱えた方がいいに越したことはないのだがな」

 

 とりあえず振るってみろというので、両手で構えて振るってみる。

 ……確かに短剣より力は入っているだろうけど、そんなに違うのか…?

 

「まだまだ鍛錬が足り取らんお前には分からんだろうが、儂の目から見れば歴然たる差だ。これからは剣を主体として訓練していくぞ」

 

「わかりました師匠」

 

 俺はまだまだ素人同然だ。それに対してノアールは長年ダンジョン探索をしてきた先人だ。その先人が言うのならそうなのだろう。

 

「かっか、師匠か。儂はそのような柄ではないが……悪い気はせんな。これからはそう呼んでもらっても構わん」

 

「はい師匠、これからもご指導よろしくお願いします」

 

「うむむ……これは少々むずがゆいな」

 

 そんなやり取りもしつつ、俺はノアールに師事していくこととなった。

 

 

***

 

 

「おいハチマン、勉強に身が入っていないようだが?」

 

「ごめんなさい…」

 

「お兄ちゃんったら居眠りなんてしちゃ駄目だよ!」

 

「前はお前だってしてただろ……」

 

「二人とも私語は慎め」

 

「「はい……」」

 

 リヴェリアの授業はとことん分かりやすい。全く文字が書けなかった俺たちが今では名前と身近にある食べ物の名前は書けるようになっているのだから。

 それでも……午前中にノアールに扱かれることで身体的に疲労がたまっているのか、居眠りしてしまうことも多い。

 そのたびに叱られるのだが……って、コマチは何もなくない?寝ちゃ駄目だよコマチちゃん?

 

「しかし、二人とも読み込みが早い。これなら二ヵ月ほどで共通語(コイネー)はマスターできるはずだ」

 

 読み書きができるようになれば日常生活で困ることがなくなる。

 もちろん、オラリオ内の区画を覚えていかなければならないのであるが。

 勉強時間を終えて夕食の会場へと向かおうとした時、俺だけリヴェリアに呼ばれて残らされた。

 

「な、なんでしょうか…」

 

「ハチマン、お前は何を焦っている?焦って強くなれるほど強さというものは一長一短で身につくものではない。教養も同時にやっていくのだからもう少し落ち着きを持て」

 

「……だけどっ、俺は強くならないと!」

 

「……今は私たちがいる。コマチは必ず守るし、ハチマン、お前だって守る。大切なファミリアの一員だからだ。それをもっと自覚しろ。焦ってダンジョンで生き急ぐなんてことはしないでくれ」

 

「……わかった」

 

 確かにちょっと無理していたかもしれないな。リヴェリアの助言には感謝だ。

 今はもう二人ぽっちじゃない。俺たちは【ロキ・ファミリア】の一員なんだから。

 

「それでは夕食を食べに行こう」

 

「うっす」

 

「相変わらずの返事だな」

 

 リヴェリアとともに夕食の会場に向かいつつ、少しだけ肩の荷が下りたと感じた俺であった。

 明日はダンジョンに潜る日だな……頑張ろう。

 




よし、毎日更新できてるぜ!
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