やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。(大改訂版) 作:シェイド
コマチとのデートは次回になります。
……今更ですけど12歳と9歳のデートってどんなの……?
「ハチマン、耐えて見せろ!!」
「いや、ちょ、それは……!?」
「うりゃあああ!!」
「痛い痛い痛い痛いっ!!」
遠征から数週間後。
俺は今、ノアールに言われてダインさんの攻撃を身体に受けていた。
まるで狂っていると思われても仕方がないかもしれないが、これもまた修行の一環である。
……先程近くを通りかかったコマチとバーラさんには、「コマチのお兄ちゃん、危ない人だねぇ」「あんなのお兄ちゃんじゃない……気持ち悪い」と辛辣なコメントを頂いたばかりではあるが、これは修行なのだ。
俺のステイタスの欠点、圧倒的な耐久のなさ。それを手に入れるためにこうして攻撃を受け続けているわけだ。
剣を受け止めるだけで衝撃が走り、足払いを食らって地面に倒される。
立ち上がってすぐに剣を振られ、また防御して……と、終わりのない連続攻撃を絶賛くらっている。
「よし、それくらいでいいだろう。変な受け癖がついても困るからのぅ」
「う、ういっす」
「がっはっは、中々根性あるなぁハチマン!」
「あ、あざっす……きっつ」
身体がどんな箇所も痛い……満遍なく身体を動かされ、鍛えられたようだ。
これでどれくらい上がるんだろうか……これで5ぐらいしか伸びなかったら……つらすぎるなぁ……。
***
今日はリヴェリアとの勉強を一時間で切り上げ、バベルを訪れてみた。
結構貯まったヴァリスで、リク・シュトラウスに軽くて硬いシリーズのグリーブと首を守る防具をオーダーメイドしようと思うのだ。
「……やっぱこの塔の天辺、だよな」
相変わらずここにくると視線を感じる。だがそこまで嫌味な視線ではないため、悪気はないのかもしれない。
だが……少々気持ち悪いな。
(ロキが言うには神々が住んでるというが……俺を見ているのは神、ってことか?)
どちらにせよ直接何かをしてくるわけではないのなら気にすることもないのだろう。
俺は視線をずっと感じながらも、バベルへと入るのだった。
***
「あはっ、また気づいたわ。いいわ、欲しい……すごく欲しい」
「……調べたところ、彼の名はハチマン・ヒキガヤ、【ロキ・ファミリア】所属のLv.1ですが……一ヵ月を立たず、すでにソロで8階層に到達するなど、かなりの逸材……才能を秘めているかと思われます」
「そう……うふふ、ロキのところなら手は出しにくいけれど……出さないわけにはいかないわ。あんなの初めて……あははっ」
***
「な、なんだ、急に寒気に襲われたぞ……」
いやな予感がするが……なんとかなるだろ、多分。
バベルに入り、前と同じように【ヘファイストス・ファミリア】が店を構える階に到着すると、またしても聞こえてきた。
『おっ、腐り目くんじゃーん!やっほー☆』
「うっざ」
ここにくるとコイツがいるんだよなぁ……マジで何なんだろう。
『今日はどういったご用件で?』
「……ヴァリスが貯まったからリク・シュトラウスにオーダーメイドを頼もうと思ってな」
『へぇ~あ、確かに前より強くなってる。いいねいいね、さすが腐り目!』
「はったおすぞこの野郎!」
腐り目腐り目言いやがって……ノアールたちは気にした様子はないぞ?
いや……たまに他の団員からは「うわぁ……」とかいう反応されるけど……フィンたちには何も言われないからいいのである(泣)。
そうして受付に話しかけようとした、その時。
「君がリクの防具を買っていった少年かい?」
「ひゃ!?」
走ってきた赤髪の美人な女性に突如として肩を掴まれ、高い声を出してしまった。
『あはははははっ!ハチマン女の子みたいにひゃ!?って!ひゃ!?って!アハハハハッ!』
「うるせえなこの声……」
「やっぱり聞こえているのね?」
「え?」
「ちょっとついてきてもらえるかしら」
そういわれて手を掴まれた俺は。
女性に、奥の部屋へと連れられて行くのであった。
***
「いきなり連れ込んで悪かったわ。私はヘファイストス。【ヘファイストス・ファミリア】の主神よ」
「【ロキ・ファミリア】所属のハチマン・ヒキガヤです」
「そう、ロキのとこの子なの……」
赤髪の美人さんは神だった。まあ、大体この都市で美人やらイケメンは神か上級冒険者と相場は決まっているのだが。
「早速だけどこの剣を見てもらえるかしら?」
「剣……?」
神ヘファイストスが俺に見せてきたのは一本の剣だった。
……なんだこの剣、武器の違いがちゃんと分かってない俺でも感じる、圧倒的なまでのオーラ。
「この剣、実はね……」
『僕なのさ!』
「……は?」
俺がここに来るたびに聞いていた声……は?
「この剣、私が下界に降りてきて100年かけて作ったものなんだけど……人格が宿っていてね。自らが認めた使い手以外には全く力を発揮しない鈍ら同然になってしまう面倒な剣でねぇ…」
『ちょっとファイたんそんな言い方ないよ!』
「事実でしょうが……それとファイたんはやめなさい」
『えー、可愛いのにファイたん』
……つ、つまり剣に人格があり、自ら使い手を選ぶ、と。
なんだそれ、聞いたことも考えたこと……はあるが……それでも神ヘファイストスが100年の年月をかけて作り上げた剣……すげぇとしか感想が浮かばない。
……コイツの声は神には聞こえてるんだな。
「あの、それで俺はどうしてここへ?」
「貴方がどれほどの大器を備えているのかは知らないわ。だけど、この子が貴方が良いというのなら貴方に託したい。私はそう思ってるの」
「……ってことはあれですか?この剣を俺に、と」
「そういうことになるわね」
「……すみません無理です」
『ええ!?』
まさか断れるとは思ってなかったのか、剣が驚いた声を上げ、神ヘファイストスも目を見開く。
確かに誰もが欲しがる武器だろうし、この世で最強の剣と言っても間違いはないのかもしれない。
だが………
「……理由を聞いてもいいかしら?」
「はい。俺はまだまだ弱いんです。それはLv.1だからとかじゃなくて……技術も拙く、自分だけの剣も見つけられていない。そんな弱い俺がこの剣を使ったところで、全然扱うことが出来ないと思います。武器に詳しくない俺でも感じるくらいに強いオーラを持つこの剣は……俺には早すぎる」
俺は弱い。
確かに親父と母さんを失った時よりは強くなっただろう。運動神経もよくなり出来ることも増えたのは事実。
それでも、まだまだ強くはない。弱いままだ。
【ロキ・ファミリア】に居ればそれが身をもって味わえる。何度やっても勝てない模擬戦、打ち負かされるたびに弱さを思い知る。
俺には、まだこの剣を使う資格はない。
「……そう、本当にこの子が見込んだ通りの子だったわね」
「え?」
『あははっ、ハチマンを見定めた僕に間違いはなかった!君はちゃんと分かってる人だ』
神ヘファイストスと剣にそういわれ、理解が追い付かない。
……まさか試されていた?
「この子が見込んだとはいえ、もし力量を弁えないのなら預けるわけにはいかなかった……試すような真似をしてごめんなさいね。でも、君はちゃんと分かっていた」
『別に今じゃなくていいんだハチマン。強くなった時、どうしても僕の力を使いたい時、その時こそ、僕は君の力になるよ』
「お、おう……」
「この子は使い手が見つけられないままずっと昔からいるし……焦らないでいいからね」
「……はい」
決めた。
俺の目標の二つ目。
この剣に見合う使い手になること。
ちなみに一つ目はコマチを守れるぐらいに強くなることだ。
「さて!じゃあ呼んだ二つ目の理由ね」
「え、二つ目…っすか?」
「ええ。リク、待たせて悪かったわね」
神ヘファイストスが呼んだ扉から入ってきたのは、青髪の少年だった。
「コイツが?」
「そうよ。あなたの防具だけを選んで買っていったって話はしたでしょ?」
「おお!ついに俺の防具が売れた!!見る目あるなお前!……目は腐ってるけど!」
「一言余計だろ……」
活気あふれる少年に肩を叩かれつつ、神ヘファイストスに説明を求める。
それによると、なんでも鍛冶師と冒険者の間では専属契約を結ぶことで、お互いに得をするようになるらしい。
冒険者がダンジョンで手に入れてきた鉱石やモンスターのドロップアイテムを鍛冶師に提供し、鍛冶師は冒険者に武器や防具を格安で提供する。
まさに互いにwinwinな関係というわけだ。
「ならよろしく頼むわ」
「おうよ!じゃんじゃん鉱石取ってきてくれ!作り続けてやるぜ!」
「早速でいいか?首を守る防具とグリーブが欲しくてだな……」
「ああ、じゃあ俺の工房で話そうぜ。ヘファイストス様失礼します」
「ありがとうございました」
「いえいえ。二人とも仲良くね」
『ハチマン!待ってるからね!!』
「……はいよ」
神ヘファイストスと剣に見送られながら、俺はリク・シュトラウスと執務室を後にするのだった。
これが俺と相棒のレイ、リクとの出会いであった。
ふーむ、最後の相棒であるトトはどれくらいで出すか……結構先になりそうだなぁ。