ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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二人の決意

 

 

ゴーナイトさんのリアルでの性別は男性だ。

俺も男性だ。

 

ユグドラシル時代、たった二人で毎日ログインしてはギルドの維持費を稼ぐ日々。楽しくやってこれたのは、確実に向かいに座る彼のおかげだった。女性ほど気を遣う必要もなく、気楽に話して金策を続けられた。残ってくれた彼には感謝している。

 

モモンガとゴーナイトは久しぶりに、安全にもくもくと仕事をしていた。書類仕事だ。

アルベドからもらった報告書を二人で分担して処理していく。大体はアルベドとデミウルゴスが見てくれたのだから問題ないだろうと思って、読み切ったら判子を押すだけの作業だ。

 

今日はナザリック地下大墳墓、ゴーナイトの自室に備えつけられた執務室を借りて行なっている。

彼の部屋には何度か招かれているというのに、毎度緊張するのは仕方ないことだろう。

 

「(今日は呼んでくれるかな?)」

 

寝室に行けるだろうか。そこで、恋人のように過ごす。モモンガはちょっとー本当はかなりー期待している。

なぜなら彼を愛しているから、そういう深い触れ合いをしたくてたまらない。

 

今日の彼の装いは全身白金のフルアーマーだ。まるでマネキンのように特徴がなく、頭部も体部分もつるりとしている。体にぴたりと沿うように作られた鎧だ。胸部が盛り上がっていないため、女性用アーマーではないのだと思う。男女兼用だろうか。

その下にいつも着用しているシャツとズボンを履いているのが、鎧の隙間から見える。

 

ゴーナイトの種族、ゴーストナイトは鎧に憑依する。鎧は、特定の職業でなければ着用できないなど制限がある物を除いて、男女専用問わず憑依できる。また、課金することで鎧の下に魔法が付与されていない衣服を着用できた。

鎧が壊されると本体である魂の部分が出てくるのだ。魂は弱く、魔法防御、物理防御共にかなり低い。なので、鎧が壊されたら終わりだ。

ゴーナイトは鎧を壊されることを嫌い、またゴーストナイトらしさを求めて、極限まで自身の回避率を上げている。お陰でその他のステータスがあまり伸びておらず、ギルドメンバー内の戦士職の中では下の上という悲しい位置にいる。

しかし、回避率を左右する運の良さ(LUC)は上の上だ。リアルラックがいい日は、クリティカルを連発して敵のヒットポイントをガンガン削っていた。

 

「(そういえば、運の良さの検証とかしてないよな。ゴーナイトさんにくじ引きさせたら、絶対に当たるんだろうか?)」

 

パンドラズ・アクターに探させていた幻術の指輪も見つかった。この書類仕事が終われば、俺たちはエ・ランテルに向かう。やっとゴーナイトさんと合流できるわけだ。

 

その前にやっておきたい事があった。

 

俺はその為にも処理速度を上げた。ゴーナイトさんから視線を感じても辛抱する。あなたに触れるのは後で、必ず。

 

 

 

 

モモンガさんが1.5倍の速さで仕事を終わらせていく。何か用事でも思い出したんだろうか。この後時間を取ってもらうのは厳しいかもしれない。

私の頼み事は長時間に及ぶ。相談だけして、また後日頼もうかな。

 

自身に積み上げられた山の処理を終えると、今度は私の方に積み上げられた山に着手した。

 

「終わったら、少し時間ください」

「いいですよ」

 

モモンガさんからのお誘いは珍しい。

彼は精神的に疲れるはずなのに、やっぱり速いスピードで仕事を片付けていった。見る見るうちに山は減り、一時間後には全てが終了した。

 

「終わった」

「お疲れ様でした。モモンガさん頑張りましたね」

「ええ、やりたい事がありますので」

「それは……?」

 

期待せずにはいられない。今度はモモンガらさんから誘ってもらえるのか?

 

「ゴーナイトさん。俺はこれからエ・ランテルに行ってナーベラルを回収します。帰ってきたら、しばらく時間をいただけませんか?

「か、構いませんよ。いくらでも」

「……よかった。では、行ってきます」

「いってらっしゃい」

 

モモンガさんは転移した。

私は彼がいなくなった部屋で、自分の顔を抑えた。皮膚があれば赤く染まり、ほてっていただろう。

 

「なんだよ、いくらでもって。期待しているのがバレバレじゃないか」

 

多分モモンガさんだって気づいている。そして彼は喜んでくれた。ならば恥ずかしいがる事はないだろう。堂々としていよう。

休憩時間を与えていた二人のメイドが戻ってくる。済んだ書類ーバインダーに収められているーをアルベドに持って行かせた。

そういえば、アルベドには自室がなかったので、先日ギルドメンバーと同じく第九階層のスイートルームを与えておいた。不足なく使えているだろうか。今度家具一式を贈ってもいいかもしれない。その時はモモンガさんにみつくろってもらおう。その方がアルベドも喜ぶだろう。

 

ゴーナイトは、帰ってきたメイドたちと共に今度は家具探しを始めるのだった。

 

 

 

 

程なくして、モモンガさんとナーベラルが帰宅した。時間にして三十分くらいだろうか。本当に速い。

 

『お、俺の部屋に来ませんか?』

「……伺いますね」

 

勘が働いた。これえっちなお誘いのやつだ!!

私は今日もモモンガさんに触れてもらえる箇所、衣服が見える部分が多いかチェックしてから部屋を出る。

残念なのは、今日憑依している鎧がシンプルすぎる事だろう。これでは格好良さも可愛げもない。それだけが気がかりだった。

モモンガさんの部屋の前に到着して、メイドと護衛たちに暇をやった。彼らも慣れたもので何も言わずに命令を聞いてくれる。

私は滑り込むように中へ入った。

 

「お帰りなさい。さっきぶりですね」

「ただいま戻りました。……こっちです」

 

モモンガさんは応接用のソファに座っていた。彼は立ち上がり、自分の手を引いてどこかへと案内する。

扉を抜け、廊下を歩き、奥の扉を開ける。その部屋は寝室だった。私たちはベッドの縁に腰掛ける。

 

「ん?」

「どうかしましたか」

「いえ。気のせいです」

「そうですか?……それで、どうしますか?」

 

彼の手の甲から滑り、いやらしく腕をさする。モモンガはその手を取って、ジッと私の顔を見つめた。いつもの甘ったるい雰囲気とは違い真剣さがある。私は黙って彼の言葉を待った。

 

「ゴーナイトさん……あなたが好きです」

「はい。私も同じ気持ちですよ」

「それで、その……だから…………」

「はい」

 

そこからモニョモニョと口ごもる彼が、不慣れで可愛いと感じる。私だって女性経験があったわけではない。だが、今から何が起こるのかは予測がついた。

ついには黙ってしまった彼に、微笑んでしまう。温かな気持ちのままモモンガさんにキスを……口部分を彼の歯に当てた。

 

「……モモンガさん、私とシテくれませんか?」

 

直接的な言葉にするのは、はばかられて。とても恥ずかしかった。

アンデッドではなく肉体があれば、増幅する熱を持て余していただろう。

モモンガさんはガパリと口を開いて、それから何度も頷いた。

 

「良かった。断られたらどうしようかと思いました」

「断るなんてあり得ません。俺だって同じ気持ちで、さっきだって言いたくて……」

「何となく、伝わりましたよ。だから私から言い出せました」

「ゴーナイトさん……」

 

かん。二人が重なる。十分な時間がたって離れた。

 

「……それで、コレを使おうと思うんですけど」

「そ、それは流れ星の指輪じゃないですか!?ゴーナイトさん、一体どうするつもりですか?」

「どうって、モモンガさんとエッチできる体にしてください!って願うんですよ。願えばどんなものだって叶うんでしょ?」

「そうですけど……えー、ちょっと勿体ない気がします……」

「勿体なくない。今の私たちにとっては大事です。やらせてください」

「……その指輪はあなたの物です。俺に止める権利なんてありません。本当に使うんですね、ゴーナイトさん」

「あなたと、もう一歩踏み込んだ関係になれるなら、この指輪を使うことだって惜しくありません!」

「嬉しいです……。それで、なんて願うんですか?」

「えっと、私とモモンガさんをエッチできる体にしてくれ!と願う予定なんですが、よろしいですか?」

「それでお願いします。……もしもの時は俺の指輪も使いましょう」

「モモンガさん……ありがとうございます」

 

私たちは互いを抱きしめ合う。そのまま指輪を起動させた。

 

「指輪よ、私は願う。私とモモンガさんをエッチできる体にしてくれ」

 

指輪に彫られた星の一つが瞬き、穏やかにくすんだ。私は指輪をアイテムボックスに戻す。両手を彼の背に回して、頭を肩にうずめた。

 

「……叶いましたね」

「ですねえ」

 

なんとなく、わかる。自分たちの中に新しいパッシブスキルが誕生した。

 

「よかった。かなり上手くいきましたね。パッシブスキルならオンオフの切り替えが可能だから、普段の生活に邪魔になりませんよ」

「想像以上に使い勝手が良いですね。アンデッドの特性には助けられてきましたから、新しいパッシブスキルが邪魔にならないのは助かります。…………性能は、どうなんでしょうか?」

「それは試してみないと」

 

口にしてから、とんでもなく恥ずかしくなった。試すとは、つまり致すという事だ。これからヤると決めていても、照れてしまう。

モモンガさんの肩口に額を擦り付ける。するとモモンガさんが体重をかけてきた。大した重さではなくて、はじめは何かと思った。体重の上に圧を加えられて、気づいた。

彼に従ってベッドに寝転がる。モモンガさんが私を見下ろしていた。

 

「……………………」

 

そこから動かない。何も言わない。

気持ちはわかるけれど、もどかしいので、こちらから勇気を出した。

 

「あの、今オンにしたので、触ってほしいです」

「は、はい」

 

どこから触るか手が迷っているので、私はシャツのボタンやズボンのボタンをさっさと外していく。鎧の下まで手が届かないが、中途半端な状態で充分だろう。

 

その証拠にモモンガさんが覆いかぶさってきた。

 

 

〈つづく〉

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