ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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超絶久々に投稿します。
リハビリに一本。できたらもう一本投稿予定です。
予定は未定なので、できなかったらすみません。


(番外編)ゴーナイトと女子会

 

 ――これは、ある日のナザリック。

 まだゴーナイトが冒険者登録をしていないころのお話し。

 

 

 ゴーナイトの執務室に二人の異形がいた。

 片方はゴーストナイトのゴーナイト。今日は漆黒の禍々しい鎧にとりついている。ゴーナイトの当番であるメイドのチョイスだ。ゴーナイトの力強さを表しているらしい。

 ……俺ってメイドたちから禍々しい存在って思われているの?

 

 もう片方はサキュバスのアルベドだ。

 いつだって白のドレスを着て、美しい笑みを見せてくれる。

 そういえばアルベドって所有物少ないらしいんだよね。自室もなかったぐらいだし。今度、俺の持ち物の中から、似合いそうな服をモモンガさんとみつくろってやるか。

 

 

 執務していたゴーナイトは手を止めて、机の前に立つアルベドと目を合わせる。

 アルベドは「お話ししたいことがござきます」と言った。

 

「私と?」

「はい。できましたら、ご内密に」

「急ぎか?モモンガさんへの許可はとったか?」

「急ぎではありません。アインズ様から許可はいただいておりません」

 

 ここでゴーナイトはアルベドをまじまじと見た。

 アルベドがこのナザリックの主の許可を先にとらず、ゴーナイトに話しを持ってくることは珍しかった。

 モモンガに許可をとらない例えとして挙げられるのが、ゴーナイト個人に用がある場合だ。

 ゴーナイトは自身を指さした。

 

「つまり、私自身に用事があると?」

「左様でございます」

 

 アルベドは深く腰を折った。

 急ぎじゃない。内密に。俺に用がある。

 なんだろうね?

 首を傾げていると、アルベドが折った腰を元に戻す。

 

「実は、折り入ってゴーナイト様にご相談したいことが……」

「うん。言ってごらん?」

「私とシャルティアとアウラに、恋愛講座を開いてほしいのです」

「……なんだって?」

 

 ゴーナイトは自身の耳を疑った。

 

「恋愛講座です。アインズ様を虜にした、その方法を学びたいのです。どうか、お願いいたします」

 

 土下座でもしそうなほど、真摯に願われる。

 俺はすぐに返事ができなくて、一日待ってもらうことにした。

 

 アルベドが部屋から出ていく。

 俺は当番のメイドや護衛を休憩を与えて、執務室と繋がる寝室の方へ足を向けた。

 

 ベッドにダイブしたら、すぐに〈伝言〉の魔法を使う。

 相手はもちろんモモンガさんだ。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ゴーナイトさんから〈伝言〉が使われた。

 アインズはすぐに応答する。

 

「――はい。俺です。どうかしましたか?」

『相談したいことがあって連絡しました。今、時間空いていますか?』

「大丈夫ですよ。宿屋でゆっくりしていますので、時間ならあります。それで、どうしたんですか?」

『あのですね、ちょっと困ったことになりまして……。アルベドから恋愛講座を開いてほしいと言われたんです』

「恋愛講座?なんで、また」

『モモンガさんを虜にした方法を学びたいそうですよ。ねえ、どうしましょうか』

「どうしましょうかね……」

 

 ナザリック内において。

 アルベドとシャルティアがモモンガを愛しており、正妃の座を争っていることは有名な話しである。

 そして、ゴーナイトとアインズが恋人同士であることは、もっと有名な――それこそ常識といえるほど――当たり前の話題としてNPCの間で共有されていた。

 

 ゴーナイトとアインズの馴れ初め。

 

 それはユグドラシル時代にまでさかのぼる。

 お互いが酔っ払った勢いのまま、自身のフレーバーテキストを書きかえたのが始まりだ。

 ゴーナイトは「モモンガを愛している」と、アインズは「ゴーナイトを愛している」と書き加えた。

 

 ゲームが現実になったとき……この世界に転移したとき。ゴーナイトとアインズの世界は変わった。

 フレーバーテキストの通り、愛情が芽生えたのだ。

 

 それからはお互いの気持ちを確認して、体を触りあって、繋がって。

 現在に至るまで、恋人としては幸せな日々を過ごしている。

 

 つまり、何を言いたいのかというと。

 アインズを虜にした方法など、無いのだ。

 ゴーナイトはアピールをしてアインズを振り向かせた訳ではないのだから。

 

 強いて言うなら、フレーバーテキストを書きかえることだろうか?

 そんなこと、NPCたちにはできない。

 ……アイテムを使えばできるけれど、彼らが主人の心を変えてしまうなど願うとは思えない。

 

 ゴーナイトは困ってしまった。

 

『……でね、恋愛講座を断ることは簡単なんですよ。でもね、あの子たちのうち誰かはいつかさ、モモンガさんの正妃となって子供産むかもしれないじゃないですか?』

「俺、アンデッドですよ……?子供つくれませんよ?」

『アイテムの力で何とかなりますよ。それでね、今のうちから仲良くしておくのは大事なことだよなと、思うのです』

 

 いつか、モモンガの子供を抱っこさせてほしいから。

 いつか、その子供と色んな話しをしたいから。

 いつか、その子供にもモモンガとの仲を認めてもらいたいから。

 

 そのためには、母親の助力が必要だ。

 

 恋愛講座を開いて、母となるアルベドたちと仲が縮まればそれで良し。

 でも、教えるものがないのだ。だから、困っている。

 

「……ゴーナイトさんが俺の子供産んでくれたら、すべてが解決するのでは?」

『…………俺ですか!?えー!?考えたことないですよ!』

 

 というか、俺が産むの!?

 モモンガさんは??モモンガさんが産んでくれないの??

 

 そう言ったら「その話しはまた今度」と言われてしまった。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 二日後。

 結局、未来がどうあれ、仲良くなることは良いことなので恋愛講座に参加することになった。

 いや、俺が開くのか?

 

 執務室の応接用の長いソファでアルベドたちと一緒に机を囲む。

 アルベドと俺、向かいにシャルティアとアウラが座る。

 

 今日はメイド二人体制で今回の講座をサポートしてもらう。

 一人は給仕、もう一人はホワイトボードに要点を書き込む書記の役だ。

 ……めちゃくちゃ気合い入ってんなあ。

 

 お茶菓子にはひな祭り用のお菓子「あられ」を用意した。ユグドラシルの頃、参加したイベントでゲットしたアイテムだ。

 色とりどりで一口サイズのそれを、可愛いガラスケースに取りだして、皆が食べやすいようにする。

 俺は食べられないから、皆で食べてね。

 

「さて、お菓子もお茶も行き渡ったところで、まず皆に説明しておきたい。あ、気楽にな」

 

 といっても、真剣に聞いてくれる。なので、こちらは努めて気楽な感じで話し始める。

 

「今日の集まりは恋愛講座となっているが、内容は雑談になると思う」

「それはなぜですか?」

 

 アウラが聞いてきた。

 俺は痒くもない頬をクセでポリポリとかく。

 

「だって思い浮かばないからさ。モモンガさんを落とした方法ってのがさ」

「それは……つまり自然体でアインズ様を落とした、ということでありんすか?」

「違うな。気づいたらお互いに恋に落ちていた、からさ」

 

 嘘じゃない。本当でもないけれど。

 

「だから、私から話せることは昔話だ。私とモモンガさんが何をやってきたかを話す。それを聞いて、モモンガさんを落とすヒントにしてくれ」

 

 各々思うところはあるのだろう。お互いに顔を見合わせて、それから頷いてくれた。

 

「よし。それじゃ、出会いから話していくぞ。あれはユグドラシルという世界ができてしばらくたった頃で……」

 

 クラン時代に出会ったこと。

 ナザリックを手に入れたこと。

 仲間たちがそれぞれの理由でナザリックに来られなくなっていったこと。

 

 そこでぽろりと話してしまった。

 ――ユグドラシルが消える未来を。

 

 口が滑った。本当に、やってしまった。

 慌てて口元を抑えたが時すでに遅く。

 

 アルベドたちが、俺を凝視する。

 その瞳があまりにも真剣だったから、俺は覚悟を決めて話した。

 

「ずっと黙ってて、すまない」

 

 頭を下げると、周りの部下たちは慌てだした。

 各々「頭を上げてください」とか「謝らないでください」とか言ってくれる。

 でも、こんな大事なことを秘密にされていたら、気分は良くないだろう。

 俺はしっかりと頭を下げた。

 

 

 

「あの、質問をしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?なんでも聞いてくれ」

 

 アルベドが小さく手を挙げる。

 俺はできるだけ優しい声音で聞き返す。そんな態度に安心したのか、アルベドから緊張感が抜けた気がした。

 

「ユグドラシルは消えるはずだった。なのに私たちはナザリックと共に消滅していません。それは何故でしょうか」

「わからん。これにはモモンガさんも同意見だと思う。……アルベド、シャルティア、アウラ。この件については、モモンガさんと話し合い次第、皆に明かそうと思う。それまでは、内緒にしてくれるか?」

「わかりました。口外いたしません」

 

 三人も、控えていたメイドたちも頷いてくれる。

 

「ありがとう」

 

 俺はみんなの信頼に感謝するのだった。

 

 さて、多少脱線してしまったが話しを元に戻そう。

 温かい紅茶の香りを楽しむ。

 皆が一息ついたところで話し出す。

 

「さて、過去の話しはできたと思う。次は現在の話しをしようか」

「現在というと、恋人になってからですか?」

「そうだ、アウラ。三人とも、何か知りたいことはあるか?」

 

 宙を切る音がした。

 高く手を挙げるのはシャルティアとアルベドだ。

 素早さで勝っているシャルティアの方が速かったので「シャルティア」と声をかけた。アルベドは悔しそうだった。

 美少女は艶やかに口元を緩ませる。

 

「はい。ゴーナイト様、もうアインズ様とはもういたした……」

「ストップ!その質問には答えんぞ!」

「なぜですか!?」

「なぜって……」

 

 シャルティアとアルベドが心底驚いた顔をしている。

 反対にアウラが「あちゃー」と片手で額を抑えていた。

 俺は、シャルティアがなぜその質問をするのかまったくわからなかった。

 

「というか!なぜ最初の質問がそれなんだ!?いや、最初じゃなくても困惑するし、答えられんだろう?恥ずかしい!」

 

 そう言うとにっこりとシャルティアとアルベドが微笑む。なんだ、その微笑みは。やめてくれ!

 

「では、気を取り直して……」

 

 小さく挙手するアルベド。

 俺は「どうぞ」と言う。

 

「どちらが上ですか?」

「上?というのは……?」

「夫婦でいう、夫役をするのはどちらでしょうか?」

「モモンガさんだ。私が夫役なんて考えたこともないな……」

「それは!なぜでありんすか!?」

「なぜって、うーん……モモンガさんが相手なら、俺が夫役じゃなくてもいいかなって」

 

 きゃーっ!と黄色い悲鳴が上がる。そのせいで、外にいた護衛が部屋の中に慌てて入ってきた。説明してなんでもないからと、外に出した。

 アウラもメイドたちも顔を赤くしている。

 

 

 ――――――

 

 

 

 モモンガさんが帰宅して、今度は俺の部屋でくつろぐ。

 今日の話題は恋愛講座だ。といっても、内容はほぼ雑談で終わったけれど。

 

「それでね、俺とモモンガさんのどっちが夫役なんですかって聞かれてさ……」

「どう答えたんですか?」

 

 モモンガさんが密着していた体を少し離して、顔を向き合わせる。

 そんなに気になるところかな?

 

「モモンガさんだよって言ったけど?」

「そうなんですね……さっきの質問のえっちしているかどうかは答えなかったから、それにも答えるつもりはないと思っていました……」

「え?」

「?だって、普段から夫役は俺なんですよね?そしたら、えっちの時だって夫役はアインズだって思われますよね?」

「え……あ……!???」

「あ、気づいていませんでしたか……」

「どうしよ……今から忘れてもらって……」

「その方がいいなら、そうしますか?忘れてくれって。まあ、いつかはバレると思いますが」

「うう……いつかバレるなら、いいです。恥ずかしいけど、嘘じゃないし……。というか!そうだ、ユグドラシルのことなんて話すか決めないと!」

「どういうことですか?」

 

 ゴーナイトはモモンガに事情を説明する。

 

 いつかは向き合わなければならない問題だった。

 二人は引っ付くのをやめて、うんうんうなり出した。

 結局、数時間もかかってしまい、二人の時間がなくなってしまった。

 ゴーナイト成分を充分に摂取できなかったモモンガの機嫌は悪かったらしい。

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